05
                                  ミサトの過去と母復活







 ミサトは、焦点の合わない目のまま、懐に手を入れて銃を取り出す。

 そして、照準をシンジに合わせる。

 発令所の面々は、初号機と使徒の戦いに集中して、誰もミサトに注意を払ってなかった。

 そして、ミサトの人差し指が、トリガーにかかる。

 バァーン!!


 ガシャン!!

 チュイン!

 その音に、発令所の全員が驚き、後を振り向く。

 そこには、手を押さえているミサトと、モップを打ち下ろしているレイが居た。

 プラグスーツのまま、慌ててシャワーを浴びて、ろくに拭かずに出て来た為か、濡れていた。

 床には、硝煙を放っているミサトの銃がある。

 幸運にも、誰にも当たってないようであるが・・・

「み、ミサト・・・貴女・・・い、いったい、何を」

 リツコが驚いたようにミサトの方を見る。

 リツコのその声で、ミサトの瞳の焦点が合い、ミサトが正気にもどる。

「・・・え?・・・わ、私・・・」

 ミサト自身、自分が何をしようとしたのか、理解していない。

 発令所の全員が驚いた顔で、ミサトに視線を集中させる。

 レイは落ちているミサトの銃を、モップで自分の足元に即座に持って来て踏む。

 そのまま、呆然としているミサトを睨んでいる。

「青葉三尉!」

「は、はい!」

 レイの命令口調に、慌てて返事をする青葉・・・

「保安部員に連絡を・・・日向三尉は、それまで、
葛城一尉を拘束!

「え?・・・」

 日向は、一瞬、訳がわからないと言う顔をする。

「拘束しなさい!!」

「は、はい!」

 もう一度、レイに強く言われて、
慌てて、ミサトを拘束しようとする作戦部所属の日向マコト三尉・・・

「ちょ、ちょっと」

 ミサトは慌てて抵抗しようとするが・・・

「葛城一尉!・・・
 大人しくしないと、後が大変よ!・・・
 今は、大人しくしていなさい!

 ミサトがやった事を、大まかに理解したリツコが言った。

「り、リツコ・・・」

 驚いた顔で、ミサトはリツコを見る。

 リツコは、真剣な顔で、ミサトを見る。

「貴女の為でもあるのよ・・・」

 そして、静かに言った。

「わ、わかったわよ・・・(私がいったい・・・)」

 ミサトがそう言って、大人しくすると、保安部がやってくる。

「葛城作戦部長が、指揮行動中に、錯乱、
戦闘指揮部長を銃で狙った為、それを阻止しました。
 そして、私の判断では、拘束す、隔離すべきだ思われます・・・
 記録はマギにあるはずです。
 よって、司令が帰って来て、判断し、別命が出るまで、
彼女を拘禁していてくださ・・・くしゅん!」

え?!・・・わ、わたしが・・・」

 レイが、(最後に、くしゃみをして)言った事で、
ミサトは、そこで初めて自分が何をやったかを知るが、よく理解していない。

「「「「「は!!」」」」」

 出された命令を、保安部の隊員達は即座に行動に移した。

「葛城一尉、大人しく、我々の指示に従ってください」

「同僚の貴女に、あまり手荒な事はしたくないのです」

 保安部の隊員達は、形式上はそう言っていたが、
全隊員は、既に銃をミサトに向けていた。

「わ、わかったわよ」

 ミサトは手を上げながら言う。

「では、IDと銃を」

「葛城一尉の銃はココにあるわ・・・IDだけ預かって、拘禁しなさい」

 リツコが、レイからミサトの銃を受け取りながら、そう言った。

「「「「「は!」」」」」

 そうして、ミサトは連れて行かれた。

「くしゅん!」

「レイ、もう大丈夫だから、暖かいシャワーを浴びてから、
しっかり身体を拭いて、着替えてきなさい・・・」

 また、クシャミをしたレイに、リツコが呆れたように言った。

「は、はい」

 レイは、慌てて、モップを持ったまま、発令所を出て行った。

あ!・・・使徒・・・殲滅・・・終ってます・・・エヴァの内部電源も切れてます(汗)」

 青葉が、自分のモニターを見ながら言った。

「あ・・・初号機の両手が使徒に突き刺さってる(汗)」

 シンジが、モニターを見ながら、冷や汗をかいて、呟いた。

 その格好は、少し間抜けだった・・・



 第五使徒ラミエルとエヴァの戦いがどうなったかと言うと・・・

 時間を少し戻して見てみよう・・・



 ラミエルは、行き成り、エヴァに飛びつかれた上に、接近され過ぎて、
自分の強力なATフィールドを使えず、更には側面に腕を突き刺された為、
一方的にエヴァから、攻撃される事になった。

 つまり、ラミエルは、身を護るどころか、ATフィールドを利用した最大で、
唯一の武器である加粒子砲も、エヴァに邪魔されて、撃つ事が出来ない状態に、
なってしまったのである。(まぁ、撃っても当たらないだろうけど・・・)

 ラミエルの加粒子砲は、その円周部で、ATフィールドを使い、粒子を加速させ、
その角に、収束させてから、一方方向に放つモノであり、
至近距離で、ATフィールドを中和されると、撃てなくなる。

 また、ある程度の距離であっても、ATフィールドの出力を下げられると、
強力なモノは放てなくなるが、ある程度の威力があれば、
相手のATフィールドは中和されているハズであるので、問題は無いハズであったが・・・

 この至近距離では、目標に上手く当てられないし、殆ど中和されている為、
体当り以外、攻撃出来ないし、身も守れない。

 ラミエルは、一旦、離れる為に、エヴァを振り落とそうと、
そのまま、自分ごと相手をビルに叩きつけたが、
逆により腕が食い込み、亀裂が広がってしまった。

 その亀裂に、シンはプログレッシブナイフを突き刺し、一気に広げた。

 ラミエルの身体全体に亀裂が広がり、そして・・・・

「止めだ!!」

 内部深くにあるコアに手刀を放った。

 エヴァの手刀がコアを貫く。

 そして、ラミエルは殲滅された・・・

 ラミエルは、爆発する事も無く、そのまま下に落ちるが・・・

「あ、あれ?・・・」

 エヴァも、その突っ込んだ手が奥に挟まり、シンが必死に抜こうとしても、
亀裂から抜けず、何とか、エヴァを下敷にしないようにするので、精一杯だった。

「あ、あれ・・・こ、これは予想外・・・(汗)」

 そして、初号機は、そのまま、電源切れで、機能を停止したのである・・・

 しかし、その呟きが、発令所に届く事は無かった。

 なぜなら、その時、ちょうど、ミサトの問題で、発令所は大騒ぎだったから・・・

「はぁ〜救助を待つしかないか・・・シンクロ・・・切れたはずなのに・・・
 左足・・・痛い以外の感覚がないや・・・」
               電     源
 レイが零号機で、アンビリカルケーブルを初号機に繋いで貰い、
更に協力して貰って、何とか使徒から腕を引き抜き、
戻って来たシンが、発令所の騒ぎや、その原因を知ったのは、この三十分後であった・・・





 ブリーフィング・ルームに、シンとシンジ、レイ、リツコだけが居た。

 因みに、ゲンドウと冬月は出張中であるらしい。(司令と副司令がそろって・・・)

 そこでは、使徒の事ではなく、ミサトの事についての話し合いがされていた。

「なるほど・・・(危惧していた事が、現実に起こったか・・・)」

 初号機から降りて、シャワーを浴び、着替えて来たシンが呟いた。

 因みに、シンクロの影響で、暫く左足が、上手く動かないらしいので、
松葉杖を持っていた。

「えぇ、ミサト自体、何をやったか、全然判ってなかったみたいだけど・・・
 詳しく教えてあげたら、驚いてたわ・・・」

 リツコがそう言った。

「しかし・・・なんであんな事をしたんだろう・・・」

 シンジがそんな事を呟いた。

「マギの映像を見させてもらったが・・・
 あれは、何かの暗示の影響で、トランス状態になっている人間の様子に、
ソックリだった・・・
 その辺に詳しそうな奴は、今出張中だから、帰ってきてから、
詳しく事情を聞くしかないだろう」 

 シンがそんな事を言った。

「詳しいって・・・まさか、父さん達の事?」

「司令達が?」

 シンジとリツコが、シンに驚いたように言った。

「あぁ、アイツ等が、ネルフの中で、一番ゼーレに近かく、
最も古くつき合っている人間だからな・・・」

 シンが、考え込んだような顔をした。

「ところで、シン君、お母さんは、大丈夫なの?」

 実はさっきから、支えていると言うよりも、
シンの左腕に手を絡ませているレイがシンに訊く。

 シンが歩くのを手伝う為とは言っているが、本当の所は、咄嗟の機転で、
シンジを守ったご褒美?(爆)と言う事らしく、暫くこのままであるらしい・・・

「あぁ、上手くいけば、数日で起き上がれるようになるよ」

 シンがレイに優しく言った。(少しは慣れたのだろうか?)

「本当?!」

 シンジも嬉しそうに言った。

「あぁ、でも、サルベージ後の処置が終ったばかりだから、
しばらく入院だけどね」

 シンは、シンジにも微笑みながら言った。

「そう・・・」

 リツコは心配そうに、少し大きくなったお腹をさすっていた。

「大丈夫さ・・・ユイさんは、その事も、既に知ってるから・・・
 ユイさん本人も、エヴァの中で、逆に、絶対認知させるって、意気込んで居たし、
安心して、元気な赤ん坊を産みなよ」
 シンがリツコに、微笑みながら言った。

「そうそう・・・腹違いとはいえ、僕等にとっては、新しい家族なんでから・・・」

「えぇ、新しい家族、兄弟・・・新しい絆・・・だから、身体には気を付けてね」

 シンジとレイも、リツコに微笑みながら、そう言った。

「ありがとう・・・皆」

 リツコは、目を潤ませながら、シン達にそう言った。

「兎も角、葛城一尉の事は、ゲンドウとおやっさんが帰ってくるまで、
                かんこうれい
このままの状態で、保留、緘口 令 を出しておこう」
「そうね・・・一応、発令所の皆には、臨時で出しておいたけど・・・
 もう一度、正式に出しておきましょう」

 リツコがそう言った。

 一応、現在のネルフのトップ会談であった。





 数日後

 司令執務室に、ゲンドウが帰って来た。

 既に冬月も帰ってきており、そこに居た。

 勿論、シン、リツコもそこに居る。

 ゲンドウ以外、全員、ソファーに座っている。

 因みに、なぜか、ゲンドウは床の上で、正座をして居る。

 その表情は堅く、冷や汗を流している。

「・・・と言うわけで、話して貰おうか?
(なぜ、何時も、こう言う時は、ワザワザ床に正座するんだ?・・・クセか?)」

 司令であるゲンドウの前に座っているシンが、ゲンドウに言う。

「と言われても・・・何を話せば言いのか・・・」

 ゲンドウが、冷や汗を拭きながら、そう答える。

「(・・・外には、絶対に見せられん構図だな・・・)」

 冬月はそれを面白そうに見ている。

 確かに、ネルフの司令ともあろう強面の男が、床に正座して、
一介の中学生(一介じゃないけど)に睨まれて、縮こまっている様子は、
外には見せられないだろう・・・対外的にも・・・

「おやっさんから、既に聞いた話を分析し、考えた結果・・・
 おそらく、お前なら、あの原因を知っていると、俺は判断した」

 シンがゲンドウを睨みながら言った。

「そんなこ・・・・うっ・・・(もしかして・・・あれか?)」

 心当たりのあるらしいゲンドウは言葉に詰まる。

「ゲンドウ・・・別にシン君は、怒っていた訳ではないぞ・・・多分・・・
 逆に、お前が、未だ黙っている事の方に、今、腹を立て初めているんだぞ」

 冬月が横から口をはさむ。

「・・・こ、これは、出来れば、ココに居るものだけにして欲しい・・・
 う、裏の事情なのだ・・・(それしか、原因は考えられないな・・・・)」

 ゲンドウが口を開く。

「分かっているからこそ、
レイちゃんやシンジ君をココに連れてこなかったのだろう・・・
 あの2人に詳しく教えると、
お前に対する信頼度が悪化するだけだと思ってな・・・ 」

 シンが呆れたように言った。

「ある意味、リツコ君にも、辛い話かも知れん・・・その・・・
 葛城一尉と大学時代からの親友であるゆえに・・・」

 ゲンドウは、リツコをチラチラと見ながら言った。

「そうですか・・・では、私は席を外した方がよろしいですわね・・・
(胎教にも悪いかも知れないし)」

 リツコはそう言って、席を立った。

「そうだな・・・すまないね、リツコさん・・・
(近い者とは言え、他人の事を気遣えるようになったとは、
進歩したじゃないか・・・ゲンドウさん)」

 シンがそう言うと、リツコは、外に出て行った。





「で・・・話して貰おうか?」

 リツコが居なくなったのを確認して、シンが言った。

「その・・・あれは・・・おそらく、ゼーレの暗示の所為なのだと思う・・・」

 ゲンドウはそう答えた。

「ゼーレの?・・・いったい、何時、どのような?」

 冬月が訊く。

「冬月先生は覚えているでしょう・・・あの娘が、一時失語症だった事を・・・
 しかも、かなりの重症だったでしょう」

 ゲンドウが冬月に言う。

「ん?・・・あぁ・・・あのセカンドインパクト後、あの調査船でも見たが・・・
 かなり、重症だったな、彼女は・・・」

 冬月が昔を思い出しながら、そう言った。

「不思議に思いませんでしたか・・・
 アレだけ重症だったのに、彼女が、あっさり、回復した事に・・・
 留年もせずに、普通に大学に通えるくらいに・・・
 つまり、あれから、それだけの短期間で、回復したんですよ・・・彼女は・・・
 しかも、長い間、学校を休学していたにも関らず・・・
 例え、セカンドインパクトの影響があろうとも、いえ、あったからこそ、
更に、それなりの何かがなければ、大学には入れませんよ・・・
 しかも、それがリツコ君と同じ大学にすんなり入った・・・
 アレだけのブランクがあったのに・・・」

「!・・・た、確かに、そう言えば・・・彼女にはあの頃、両親も既に死去、
親戚もセカンドインパクトで・・・普通、不可能だな・・・」

 そう言われて、冬月は、はっと気付く。

「何が行われたんだ?」

 シンがゲンドウに訊く。

「俺も、内容自体は詳しく知らないが、先ず彼女は、ゼーレによる暗示をかけられたのだ・・・
 彼女は・・・セカンドインパクトの事実を知る唯一の生き残り、
それでいて、未だ中学生で、一般人であり、ゼーレの手の者でない・・・
 だが、第一次調査団の関係で、外にその存在を知られている為、
忙殺するわけにもいかない・・・
 一般の治療機関に任せておいても、回復しないだろうが・・・
 万が一、回復され、事実を世間に喋られると、色々と問題が出て来る・・・
 中学生だったとは言え、彼女が唯一の生存者だから、その言葉は信頼性が高い・・・
 もし、彼女が何かを喋ってしまったら、ゼーレにとって、
好ましく無い状態なる可能性も高かった・・・
 しかし、唯一の生存者を、いくら治療の為と言う理由を付けても、ゼーレの機関に、
ずっと閉じ込めていては、色々な所から、かんぐられ、調べられる・・・
 そう、あの時の冬月先生、貴方のように・・・」

 ゲンドウがそう言った。

「なるほどな・・・ワシの場合は、取り込む事が出来たから、問題なかったと・・・」

 冬月は納得顔で頷く。

「それだけでなく、ワザワザ、リツコ君に接触させる為、
同じ大学に入学させたフシもあるのです・・・詳しい目的は分かりませんが・・・
 彼女の学費等の出所を調べると、裏で、ゼーレと関りのある機関から出ているハズです」


「・・・なんと・・」
               ユイ
「・・・しかし、この事は、妻 も知らないことです・・・」

 ゲンドウは冬月に言う。

「暗示の事を知ったら、ユイさんは、少なくとも、ゼーレを不信に思い、
反発以上の行動を起こしただろうからな・・・
 それは、ゼーレにとって、好ましくない事だと・・・」

 シンがゲンドウに言う。

「そうだ・・・あの時、ユイを手放す事、敵に回す事、そして、失う事は、
ゼーレにとっては、非常に拙い事だったのだ・・・
 それで、俺も、口止めをさせられていた・・・
 俺も、特に気にしてなかったので、つい先日まで、忘れていたが・・・
 こんな事になるとは・・・」

 ゲンドウは、顔を顰める。

「それで、どんな暗示をかけられたんだ?」

 シンが本題に入る。

「おそらく、使徒に対する憎しみを・・・だろう・・・
 南極で、父親に、実験台にされた記憶を封印させられてな・・・
 それが功を奏したのか、彼女は緊急時の戦術立案に関しては、
殆ど独学に近いが、かなりのモノに成長した・・・
 まぁ、戦闘指揮に関しては、疑問が残るが・・・」

 ゲンドウが答える。
                              こだわ
「・・・しかし、それだけでは、無いだろう・・・あの 拘 りは・・・
 だいたい、暗示で、殺人まで教唆する事は出来ないハズだ」

 シンがそれだけでは納得しないのか、そう言った。

「勿論、それだけではない・・・
 ドイツの軍部の記録・・・コレはシークレット扱いになっては居たが、
ゼーレ関係と言う事で、今回の出張中に、キミに言われた通り、手にいれてきた。
 当然、持ち出し禁止等の事があるので、俺が覚えてはきたのだが・・・」

 ゲンドウが渋い顔をする。

「どうだったんだ?」

 シンが訊く。

「・・・どんな状況でも、勝利を諦めない精神は持っているようだが・・・
 余裕がある時はなるだけ、敵を苦しめるように、
周りに被害が大きく出るような作戦ばかりだった・・・
 下の者達も、彼女の下につかされる事は嫌っていたようだ・・・
 確かに、そこには、作戦成功と相手は壊滅の記録があったのだが、
部下の死亡率70%以上の作戦と言う記述が、転がっていた。
 おそらく、暗示自体が、かなりの年月が経っている為、
相当根深いモノになっている事もあるだろうが・・・
 彼女も、軍部の戦術科で知らぬまにゼーレの教育を受けていた可能性も高い・・・
 事実、彼女が、一尉まで、出世する後押しとして、ゼーレ関係のモノが動いていし、
ドイツ支部にいた彼女を作戦部長にするように、ワザワザ、ゼーレから直々に、
指示がきていたのだ・・・」

 ゲンドウは冷や汗をかいたまま、そう言った。

「なるほどな・・・その暗示の所為で、使徒を自分の作戦や指揮で、自分の手で、倒す事に、
アレだけ拘って居たんだな・・・
 しかも、ネルフがUN等の軍部から嫌われ、非協力的な存在になるように仕向ける為に・・・
 だが、その役目の片方、しかも、本人にとっては重要な方を、別人に奪われてしまい、
周りを見る事が出来ないほど、情緒が不安定になって居たと・・・
 ゼーレの暗示もあったんだろうが、かなり本人にも、シンジ君に対して、
殺意が発生していたんだろうな・・・
 そうでなければ、いかに強い暗示でも、あそこまでは出来ないからな・・・」

 シンが腕を組みながらそう言った。

「おそらく・・・必ず、対使徒戦では、指揮をとりたがるか、
とらなければ気がすまないような暗示がかけられているのだろう・・・
 そうでなければ、その作戦が実際に使われるかどうか分らないからな・・・
 この辺は完全に俺の予測だが・・・
 おそらく、彼女は、自分でも、好きだったかどうかも分からないクセに、
自分の父親の敵討ちを、自分の手でやらないと、無性に気が済まない状態に、
なってしまって居るのだと思う・・・
 そして、それは相当根深いモノになっている可能性がある」

 ゲンドウがそう言った。

「なるだけ、ネルフを嫌われモノにする為・・・
 もしもの時は、全責任を負わせて、簡単に切り捨て易くする為に・・・だな」

 シンがゲンドウに確認するように言った。

「あぁ、ゼーレのメンバー内キール議長だけは、元々、俺の思惑を気付いていて、
人類補完計画を任せているフシがあるからな・・・
 俺が、ユイを取り戻す為に、騙すつもりで、人類補完計画を、
提唱しに行った時も、あっさりと許可をだした・・・
 元々、似たようなモノを考えて居たに違いない・・・
 おそらく、最終的には我々に責任を押付け、切り捨てる気なのだろう」

 ゲンドウがそう答える。

「彼女の治療は可能なのか?・・・
ゼーレの事を考えれば、下手に彼女をクビに出来ないだろう。
 下手をすれば、別の狡猾な奴が来るかもしれん・・・
 出来れば、ゼーレには極秘で治療し、こちら側に付けた方が良いだろうからな」

 シンが訊く。

「専門家ではない俺に、詳しくはわからんが・・・
 可能だとしても、かなりの時間がかかるハズだ・・・
 下手をすると、再び失語症になる可能性もあるし、精神の崩壊も考えられるからな・・・」

 ゲンドウも、そう言って唸る。

「そうか・・・ん?・・・そういや、おやっさんではどうなんだ?・・・
 何とか、出来るんじゃないか?」

 シンは冬月に尋ねた。

「なぜ、ワシに訊く?」

 不思議そうに冬月が訊く。

「いや、俺の記憶では、一緒に暮らしていた時、おやっさんは、長老として、
色々な人間の相談相手になったり、精神的なケアも上手かったから・・・
 実際に、立ち直らせた人も多かったんだぜ」

 シンは、サードインパクト後の冬月を思い出して言っていた。

「ふむ・・・ワシが未来でな・・・出来るかどうかわからんが、試して見よう・・・
 何かの糸口が見付るかも知れんからな(医者の真似事か・・・十何年ぶりだ?)」

 冬月が腕を組みながら言う。

「あぁ、頼むよ・・・でも、なるだけ、外には出さない方が良いかもしれない・・・
 特に、使徒関係には、触れさせない方が良いと思う・・・
 それと、対外的(対ゼーレ)な事を考えても、治療の事は伏せておいた方がいいだろう」

 シンはそう言った。

「わかっとるよ・・・しかし、そうなると、今度のJA発表会が当面の問題だな・・・
 リツコ君は、あの状態だから、あまり、あぁ言う所には行かせるのは、
何かと拙いだろうし・・・
 かといって、作戦部長まで行かないと言う事になると・・・」
(放射能漏れ、危険で、悪影響だからな・・・)


「まぁ、俺だけで行く訳にも行かんし・・・
 司令と副司令、直々に行く訳にもいかないしな・・・」

 シンと冬月が悩み出す。

「そうだな、俺達にも色々と・・・あ!(汗)」

 何かを思い出したゲンドウが呟く。

「どうした?」

 シンがゲンドウを不思議そうに見る。

「ふ、冬月、忘れたか、アレは、元々失敗させる気で、
あの男に、色々と準備をやらせているではないか」

「そ、そう言えば・・・開発が分かった時点で・・・」

 冬月も思い出したように言う。

「・・・何をしているんだ?」

 シンが訊く。

「実は・・・・・・」

 ゲンドウが説明を始めた。





 ゲンドウの説明が終わる・・・

「ふむ・・・つまり、一旦、JAを暴走させ、日本政府共々、
肝を冷やさせると・・・なんか拙い気がする・・・
今から、プログラムを変更するわけにもいかないのか?・・・」

 シンがゲンドウの説明を聞いて、考え込む。

「あぁ・・・既にプログラムは渡してある・・・
 今から変更するとなると・・・プログラム作製に時間がかかるし、
色々と支障が・・・
 それをする位なら、中止にした方がむしろ・・・」

 ゲンドウが冷や汗をかきつつ、シンに言った。

「どうするか・・・」

「「「う〜ん」」」

 3人を頭を捻り始めた。

 今から、下手に変更するわけにもいかないし、影で発表会を邪魔をするわけにもいかない。

 どうせなら、発表会を利用して、ある程度、ネルフに敵対する勢力を、
削った方がいいだろうが・・・

「ん・・・そうだ!・・・ギリギリで仕込むと言う事は、まだやってないんだろう。
 だったら、そんな事をしなくても、いい考えがある・・・こんなのは?」

 そう言って、何かを思いついたシンがゲンドウと冬月に耳打ちする。

「・・・た、確かに、かなりのデモンストレーションになる・・・」

 ゲンドウが、腕を組みつつ呟いた。(勿論、正座のまま)

「と言うか、それをやられたら、日重も、二度と立ち直れないんじゃないか?・・・」

 冬月は冷や汗をかきつつ、そう言った。

「しかし、元々、使徒の事を全く信じず、いまさら、ネルフの利権にあぶれたからと言って、
時田重工業が、密かに開発を進めていたアレの尻馬に乗って、
新たな利権を得ようとして、出来た共同体だろ・・・
 つまり、戦場に出た事も、戦場の事も何も考えてない金の亡者達が、
実際に戦っている人間達に、イチャモンをつける為にやっている事だろうが・・・」

 日本重化学工業共同体・・・発足したのは、第三使徒が現れた後であり、
元々、再び現れると言われていた使徒の脅威を、全く信じず、
ネルフの発足時に何の協力もしなかった為、利権からあぶれた連中が、
ネルフとは別の方向で、独自の対抗手段として、JAを作っていた時田重工業に、
今更ながら出資した者達の集まりである。

 その数は、前史に比べ、ネルフが半公開組織となった為、増えたらしい。

 最も、そのおかげで、JAの完成も早まったらしいが・・・

「まぁ、それはそうだが・・・」

「身もフタも無いな・・・その言い方」

 ゲンドウと冬月は、シンの言い方に冷や汗をかいている。

「だったら、いずれ、ゼーレの口車に騙されて、在るハズもない利権の為に、
こちらに牙を剥いてくる・・・
 だったら、使えるトコはこちらに引き込み、邪魔な奴等は潰した方が、
後々の為だろう・・・」

「つまり・・・時田重工の一部は引き込むのか?」

 ゲンドウが訊いてくる。

「まぁ、あそこの技術者には、使える人材が居そうだしな・・・
 あの社長を何とかすれば、良いだろう・・・
 だいたい、今回の奴も、完成記念と言っているが、周りの奴等に急かされ、
なんとか形なっただけで、どうせ、歩くだけでもやっとの奴だろ・・・
 発表した後で、色々と改良・・・と言うか、造り直さないと、
とても使徒戦どころか、一般の戦場にも出せたものじゃないんじゃないのか?・・・
 まぁ、本人達は気付いて無いようだが・・・」

「よくわかるな・・・」

「時田重工業のマザーコンピューターを設計図を、こっそりハックしたからな・・・
 あれは、穴だらけだったぞ・・・
 特に内燃機関として、使ってある奴も、元々は別のモノでやる予定だったのを、
スポンサーと時田社長にせかされて、
しぶしぶ原子炉に変更した危険極まりないものじゃないか・・・
 それを、大威張りで、あっちこっちに宣伝しているのだから、
技術者以外、自分達でも、その性能は全く分かって無いんだろ・・・」

「た、確かに・・・ネルフの決戦兵器より強いと宣伝もしてたようだが・・・」

「そこまでは、我々も調べられなかったぞ・・・」

 なぜか自分達よりも、内情に詳しいシンに、2人は驚く。

「しかし・・・シンは、よくそこまで調べられたな・・・
(全く、驚かされる・・・どうせ、学校の授業中にでも、
アレを使ってやったんだろうが・・・)」

 冬月が呆れたように言う。

「まぁ〜な・・・色々、多方面でも調べたからな・・・
 一応、完全に証拠もログも消して、残して無いし、
もしもの時の為、海外にバイパスを通してあるから、大丈夫だ・・・」

「それなら、かまわんが・・・」

 ゲンドウが言う。

「良いのか?・・・碇・・・」

 冬月が驚いたようにゲンドウに言う。

「こちらに、プラスになる事しか、彼はして無いからな・・・マイナス面も少ない・・・」

 平然とした顔でゲンドウが言う。

「まぁ、そうだな・・・」

 一応、冬月も納得はしたようだ・・・って、良いのか?
      未来
「人類を明日を、あの紅い世界にしない為なら、
仲間の幸せを護る為なら、俺は、なんだってやるさ」

 シンが言う。

「そうか・・・」

「そんな訳で、日重には潰れて貰う・・・多額の負債を抱え込んでな・・・
 元々、今の奴等のトップは死の商人の集まりだ・・・
 今後の事を考えれば、消えて貰った方がむしろ良いだろう」

「中々、凄い事を言うな・・・」

 冷や汗をかきながら、冬月が言う。

「こっちが命がけの戦いをして、世界をサードインパクトから守っているのに、
目先の利権に気をとられて、自分達の首を絞めている事に気付かず、
いや、見ようともせず、責任だけをこちらの所為にしようとする輩には、
滅んで貰ったほうがいいだろう・・・」

「まぁ、確かにそうだな・・・」

 ゲンドウは頷く。

「おそらく、一度、徹底的に叩いて、再起不能にでもしてやれば、
他のムシも、空想だけの利権だけで、こっちに手出ししようとは考えないだろう・・・
 まぁ、よほどの馬鹿は除くが・・・」

「一罰百戒か・・・それで、準備とか、予算とか、間に合うのか?」

「それはな、おそらく、期間と予算は・・・この程度のモノで、出来ると思うぞ・・・」

 シンが具体的な期間と金額を紙に書き、簡単な設計図もその場で書く。

「・・・しかし・・・これは・・・予算も、期間も大丈夫だが・・・」

 冬月が難しそうな顔をする。

「勿論、こっちで、かなり変えるけど・・・
 あ、オーバーテクノロジーは、なるだけ使わないから」

 シンがそう言う。

「大丈夫だろう・・・この設計図通りなら、エヴァ用のキャリヤーで、
運べるようになってるようだから、運搬の心配もない・・・
 予算の方は、エヴァに比べれば、ただ同然だ・・・俺が何とか掛け合えばなんとかなる」

 ゲンドウは頷きながら、シンに同意する。

「確かに・・・だが、技術部や開発部が、何と言うか・・・
 使徒との戦いには、役に立たない、ただ、相手の面子を潰すためにするんだろう・・・」

 冬月が心配そうに言った。

「正直に、話せば、皆ノリノリで、協力してくれると思うが・・・
 それに、チョッと改良すれば支援兵器にもなると思う」

 シンがそう言った。

「では、許可する・・・一応、エヴァの前に存在した『対使徒用失敗兵器』か、
何かと言う事にしよう・・・
 『中国政府』には、支部から、協力するようにさせておこう・・・
 おそらく、データの一部を還元してやれば、協力を得易いと思うしな」

「じゃぁ、俺は、早速、皆に話して、付属用の部品製作を開始する・・・
 元になる兵器はエヴァのを流用するし、設計図の直しは、三十分もあれば、完成するし・・・
 それを中国支部に頼んで、本体を組み立てて貰って持ってきてもらえば大丈夫だからな」

 シンはそう言って、早速立ち上がる。

「あ、朋意君、チョッと、待ってくれ!」

 出て行こうとするシンにゲンドウは声をかける。

「なんだ?」

 シンが振り向く。

「い、いや、そ、その・・・ユイは・・・もう、意識も回復しているんだろう・・・」

 すがるような目で見ながら、ゲンドウが言った。

「・・・い、今、会わない方が良いと思うぞ」

 冷や汗をかきつつ、シンが言う。

「な、なぜだ?!

 驚く、ゲンドウ・・・

【36時間耐久、大説教会】・・・
 行う体力も、聞く精神力も無いだろう・・・お互いに・・・
 後、一週間は、養生させた方が良いと思うぞ・・・
 ユイさんは、お前の顔を見た途端、始める気みたいだったからな・・・
 今は会わない方が懸命だ・・・お互いの為に・・・
 ユイさんに、倒れられたら、レイちゃんも、シンジ君も悲しむだろうし、
お前が怨まれるだろうからな・・・
 一応、2人とも、まだ出張中と言って、誤魔化しておいたが・・・
 心の準備が必要だろう」

 シンがそう答えると、ゲンドウは冷や汗を瀧のようにかいた。

「ウッ・・・ゆ、ユイの・・・せ・・・」

「じゃぁ、ワシは」

 冬月が抜け駆けしようとするが・・・

「あ、おやっさんも駄目だ・・・」

 シンが止めた。

「な、なぜだ!

 冬月が驚いて言う。

「言ったろう・・・2人ともって・・・
 それに、自分達がやってた事を思い返し、ユイさんの性格を考えれば・・・分かると思うが・・・
 ゲンドウを止めれた地位に居たのに、俺が来るまで、何もしなかっただろう・・・
 まぁ、ゲンドウと一緒に、ユイさんの説教を、たっぷり受けてくれ・・・
 俺には止められん・・・(自業自得だし・・・)」

「あう・・・」

 冬月は硬直し、思いっきり冷や汗を流していた。

「じゃ、そう言う事で・・・」

 シンはそう言い残して、出て行った。

「・・・ふ、無様ですな・・・」

 シンが居なくなった後、ゲンドウは、硬直している冬月に言った。

「・・・た、互にな・・・」

 硬直から、脱した冬月はゲンドウにそう言い返した。

 ゲンドウと冬月は、お互いに一週間後に起るであろう、
第一次ユイの大説教会』の事を考えて、顔を青くしていた。





 そして、一週間後、途中、(ユイの為に)休憩を数回挟んで、
二日間におよぶ説教会が行われた。

 説教の間、ゲンドウと冬月はずっと正座をさせられたままだった、
休憩の度に、しびれた足を突付かれると言う罰も、受けていたらしい・・・

「良いですね!・・・
 リッちゃんの赤ちゃんをチャンと認知して、責任を持つ事!
 ゼーレの補完計画を完全に潰すまで、許しませんし、
レイちゃんに心から、『お父さん』もしくは、『パパ』と呼ばれるまで、
アナタには同居も許しません!

 説教の終った後のユイのセリフはこうであった。

 因みに、レイは今でもゲンドウの事を『司令』である・・・
(しかも、長年のクセで、中々直りそうにない・・・自業自得だ)

 勿論、同罪として、冬月もゲンドウの同居が許されるまで、
自宅?に遊びに来るのは禁止されたらしい。

「なんで、ワシまで・・・」

「この人を、止めれた立場にいたのに、止めなかった先生が悪いんです!

 呟く冬月にユイがベットの上で、ぴしゃりと言う。

「ウッ・・・(十年前、せめて、シンジ君だけでも、極秘裏にこっちで引き取っていれば、
良かったかもしれん)」

 冬月は冷や汗をかきながら、心底そう思ったらしい。

「そうだぞ!・・・冬月!・・・お前があの時、止めてれば・・・」

 ゲンドウが冬月を責めるように言う。(責任転嫁・・・)

「貴方が言うんじゃありません!・・・全く・・・
 本気で、また石のひざ掛けを載せますよ!
 さらに石の座布団も必要ですか!!」(おいおいそれって・・・(汗))

「はい・・・すいません・・・」

 ユイに睨まれて、ゲンドウは縮こまった。

 父としての威厳は無くなったかもしれないが、真面目に働く事で、
幸せを手に入れられる状態になったのだ・・・

 ある意味、幸せかも知れない・・・胸のつかえも取れたようだし・・・
(ヨクヨク考えれば、本妻に愛人(二号さん?)の存在を認めて貰ったようなモノだし・・・)

 その証拠に、ユイの説教が終わった後のゲンドウの顔は、多少、やつれてはいたが、
どことなく、晴々としたモノになっていたらしい。

 因みに退院後、ユイはゼーレの目を誤魔化す為、シンの伯母と言う事で、
偽名を使って、シンジ達と住む事になった。(ゲンドウは独り暮らしのまま・・・)

 さらに、リツコをシン達の隣の部屋に引越させ、一フロアの全ての部屋を繋ぎ、
五人と一匹で、一緒に住むことになった。

 つまり、今現在、玄関の表札は、『朋意、綾波、碇、赤木』となって居る。

「あの・・・良いんですか?」

 引越の荷物運びをしている最中のユイに、(身重と言う事で、皆に言われて、
軽い物しか、運ばせてもらえない)リツコが、声をかけた。

「なにが?・・・リッちゃん」

 結構、重いモノを運んでいるユイが訊く。

「あの・・・私とこの子の事を認めて貰って・・・」

 リツコが、少しふくらみが目立ってきたお腹に手を当てながら訊いた。

「まぁ、私がエヴァの中に取り込まれてしまったのが、そもそもの原因だしね・・・
 ウチのロクデナシの所為だし・・・
 それに、シンジやレイちゃんもお世話になってるし・・・
 そのお腹の子も、腹違いとは言え、シンジ達の妹か、弟だし・・・
 私、元々、子供って、好きだしね・・・
 まぁ、そう言う事で、私も、育てるのを手伝わさせて貰えると、
ありがたいわ(罪滅ぼしの意味も含めて・・・)」

「ありがとうございます・・・」

 リツコは涙混じりに頭を下げた。

「お礼なんて、よして、こっちは、謝りたいくらいなんだから・・・
                   ゲンドウ さん
 その代わり、二度と、ウチのロクデナシに騙されないでね・・・
 勿論、他に良い人が見付ったら、その人の元に行っても、
何も文句を言わせないし、慰謝料もふんだくってあげるから、安心してね」

 ユイは恥ずかしそうにそう言った。(良いのか?)

「はい」

 リツコは、ユイに涙混じりの笑顔でそう言った。





 更に数日後の夕方・・・ネルフの廊下

 学校が終って、ある用事で、ネルフにやって来たシン達が歩いていると、
前方からカツラを着けて、チョッと変装しているユイがやって来た。

「朋・・・じゃなかった、シン君」

 カツラを着けているユイがシンに声をかけた。

「なんですか?・・・ユイさん」

 因みに、ユイの偽名は、【朋意ユイ】と言う事になっている。(バレないのかな?)

「今度、面白いトコに行くそうね?・・・企んでもいるし♪」

 ユイはニヤニヤしながら、シンに言った。

「面白いと言うか、死の商人や馬鹿な政治家連中に、
御仕置きをするつもりですが・・・って、アレの基礎理論を考えたのユイさん自身でしょ」

 色々調べた結果、かなりの政治家がJAに関与していた事がわかった。

「じゃぁ、私も行って良い?・・・アレの基礎理論を作ったんだし♪」

 ユイはニコニコしながら言う。

「え?・・・い、行くんですか?・・・大丈夫かな?」

 シンが少し不安そうに言う。

「大丈夫、知ってる奴が居ても、チャンとこのカツラを着けて、
変装して行くから、バレはしないわよ・・・
 元々、いまじゃぁ〜年も違うしネ♪
 ソックリさんが居ると思われるだけよ♪」

 現在、ユイの肉体年齢二十ウン才・・・
入った時より、若干、若返っているとか・・・

 とても14の子供を持っているとは思えない姿である。

「それに、シンジや、レイちゃんも行かない?・・・
 シン君だけが行くんじゃ、不公平でしょ」

 ユイはニコニコしながら、シンジとレイに訊く。

「え・・・あれって、日曜日じゃなかったよね?・・・」

 シンジは、学校の事を考える。

「・・・シン君も行く・・・なら、私も行きたい・・・」

 レイは即行で答える。

「ユイさん・・・一応、平日ですよ・・・なんか、早まったらしくって・・・」

 シンが冷や汗をかきながら言う。

「一応、公休って事にすれば良いわ・・・
 三人とも、成績は悪くないんだし、問題ないでしょ♪」

 ユイはニコニコしながら言う。

 事実、シンジも、時々シンやレイに勉強を見て貰っていたので、かなり成績が良い。

 今では、3人が、県の模試でもトップ3になっている。

「・・・その口ぶりからして・・・既に許可を取ってきたんですね・・・
 司令達から・・・(無理矢理・・・)」

 シンは冷や汗をかきながら言う

「へへへへ・・・レイちゃんも嬉しいでしょう・・・
 その日は、チャンとシン君と一緒にいれるわよ♪」

「はい」

 レイは頬を染めて頷く。

「シンジも行くわよね♪」

「え・・・学校・・・」

「行きたいわよねぇ〜」

 にこやかに微笑みながら、ユイはシンジに言う。

「アハハハ・・・行きたいです(逆らわない方が良いな)」

 ユイの発案を断った後の手口を知っている(既に何回か経験済みらしい)シンジは、
冷や汗をかきながら言う。

「決まりね♪・・・じゃ、そう言う事で!」

 そう言って、ユイはどこかに行く。 

「はぁ〜どうなるんだろう?」

 それはどこぞの神だけが知る事である。
(既に、作者は電波で暴走中・・・プロットと全く違う)

「さぁ?」

 シンの呟きに、シンジは肩をすくめ、
レイは、シンと一緒に居れるので、ニコニコしていた。


                                 続く





あとがき

さて・・・ユイさんが復活しました・・・

本当は、もっと後の予定だったんですが・・・

まぁ、次は、JAですね・・・

勿論、ユイさんが関ってきましたから、予定が大幅に変更!

ゲンドウの再教育にも、ユイさんが関ってきます(もう必要ないかも知れないけど)

このままで行くと、マジで、親ばかを超えた爺バカゲンドウの襲来か?

次回は一応、学校の風景も出します!

どうなる事やら・・・



P.S(別名・デビルな舘?・・・)

 そこには、一つの黒い影と簀巻きにされた三人の屈強な男達が居た。

「ククク・・・チミ達も、残念だねぇ〜・・・巻き込まれて・・・
 これで、日の目を見る事無く、名無しだよ♪・・・周りを巻き込んで」

「「「ど、どう言う事だ!」」」

「ハイ、コレ・・・最新だった奴」

 そいつは何かの書類を見せる。

 顔の青くなる三人。

「「「・・・・・・・し、知らなかった」」」

「残念だね・・・三賀、四ッ谷、五十嵐隊員・・・
 チミ達の出番は、確実に削らせて貰う・・・お仲間のもね・・・
 あぁ〜怨まれるだろうねぇ〜

「「「ま、待ってくれ! 俺達は作戦部長に!!」」」

「そうそう・・・無事に日本に帰れるかどうかも分らないから・・・チミ達は」

「「「え?」」」

「こっちの状況・・・知らないでもあるまい・・・立派なテロ行為だよ・・・
 私が弁護しなければ・・・」

「「「・・・し、して頂けないのでしょうか?(汗)」」」

「すると思うの・・・命を狙われた相手の・・・」

「「「い、いや、俺達は」」」

「てなわけで・・・」

 黒い影・・・『デビ・トリ』は、その部屋を出て、
外にいる警官とアーミー(アメリカ陸軍)達の控えている所に来る。

「I do not know anybody.
(全然知らない人達ですよぉ〜)
 Because they has the weapon,
 perhaps, is that companion of terrorist organization?
(武器を持っているので、あのテロ組織の仲間じゃないですかぁ〜?)
 It seems they enter hiding with a lot of weapon.
(こんなに隠し武器を持って入国していたようだしぃ〜)」

 机の上に置かれた検知され難い武器の山を指しながらデビ・トリは言った。

「Indeed, reporting, thank you!
(成る程、報告、ありがとう)
Put them in jail!
(ぶち込んで置け!)」

 一番偉そうな男がそう言うと、警官とアーミー達は一斉に部屋の中に入って行った。

「う〜ん、匿名で日本人に化けた三人組が、テロを起こしにくるって、
チクってや
警告して たら、マジで捕まるとは・・・しかし、バカだよねぇ〜・・・
 極秘裏にやると言っても、前回みたいにアメリカにいる所員を使うなら兎も角、
日本から送って来るのに・・・今、テロとかの警戒が、思いっきり強いのにも関らず、
アメリカ政府とかに、全く何も話を通してなかったとは・・・
 まぁ、超有能な副官であるマコトを切った時点で、
こう言う点の不備が出まくっているのは、見えていたけど・・・」

 マコトは言われなくても、ミサトの計画の抜けている所(主に書類や外部への連絡通達)を、
人知れず補ってくれている所が、多々あるのである・・・あり過ぎる位に。

 今回は、それがまるっきり無かったのである。

「もっとも、私怨で、アメリカにいる人間1人、
無理矢理、拉致したいとは言えないのもあるし・・・
ゲンドウ君  本部 も、アメリカの両支部も、ネルフ全体の恥になるから、
知らぬ存ぜぬを決め込むらしいし・・・
 ゼーレなんか、手出し出来ない状態だしね・・・まぁ、する気もないらしいけど・・・
 見返りも全く無い、超ハイリスク、ノーリターンだしね」

 つまり、やったら、見返りしで、損害だけがでかいと言う訳である。

「しかし、だからって、狙っている奴を身元の保証人に呼ぶかね?
 あの作戦だけ部長が、何とかしないと、彼等は暫くアメリカの刑務所の中だネ・・・
 アレがまともに出来るかなぁ〜・・・無理か・・・多分、忘れてるか、ホッたらかしだな・・・
 もしかして、だから、私を身元の保証人として、呼んだのかな?
 まぁ、今回の事件(部下をあっさり切り捨て?)で、アレの言う事をマトモにきく奴は・・・
居なくなるかな?」

 デビ・トリはそう言いつつ、厳重な警戒態勢にある空港を出て行った。





レイ 「葛城1尉・・・」
アスカ「う〜ん、ゼーレめとんでもないことしたわね」
シンジ「うん・・そうだね、まさかミサトさんにあんな事をするだなんて・・・」
アスカ「本当に、手の上で踊らされていたってわけね」
シンジ「悪いのはゼーレ・・仕方ないっていてっも・・・
    流石に直接命を狙われちゃうと言うのは流石に・・複雑かな・・・」
レイ 「そう・・」
アスカ「ま、この感じなら、いずれミサトもいい感じになりそうだし良いんじゃない?」
シンジ「う〜ん・・・でも、加持さんのこともあるから・・」
アスカ「そっか・・・加持さんはどうなってるんだろ?」
レイ 「とりもちに聞いてみれば良いと思うわ」
アスカ「そね、奴の事だからどっかで聞いてんでしょ、回答待ってるからね」
シンジ(苦笑)
アスカ「とに、ひどい奴よねぇ〜人の家を勝手に盗聴するような奴よ」
シンジ「まあまあ、それは置いておいて、母さんがついに目を覚ましたね。」
レイ 「ええ、良かったわね」
シンジ「うん」
アスカ「まあ、これでネルフもフルメンバー・・・って、アタシがいないジャン!!」
レイ 「未だ来ていないわね」
アスカ「さっさと来なきゃだめよ!このままじゃ・・・ぶつぶつぶつ・・・」
シンジ「はは・・ところで、朋意くんって、何者なんだろうね」
レイ 「確かに、未だ謎のままね」
アスカ「そうねぇ〜アタシはシンジとあたしの子供だと思ってるんだけど、」
レイ 「それは予想ではなく願望と言うものだと思うわ」
アスカ「なによ〜、なんか文句あるわけ?」
レイ 「とりもちが、プロローグのあとがきで碇君の子供である事は否定しているわ」
アスカ「前言撤回させないさいよ」
シンジ「それはちょっと・・・」
アスカ「むっ・・・じゃあ、その子供、アタシとシンジの孫よ」
レイ 「それはいくらなんでも無理があると思うわ」
シンジ「ははは」(苦笑)
アスカ「じゃあ、何だって言うのよ!?」
シンジ「まあまあ、まだまだ話は長いんだしさ」
アスカ「うむ・・まあ、確かにそうね・・とりもち、アタシを怒らせないような答えを待ってるわよ」


某所、
ミサト「くっ・・・失敗か・・・」
男  「申し訳ありません。」
ミサト「次の手は?」
男  「これまでは、捕獲を第1目的に置いていました。ですので、次からは捕獲を第2目的とします。」
ミサト「で?準備は?」
男  「これを、」
ミサト「ふむ・・・随分用意したわね」
男  「はい、」
ミサト「では、目標が郊外に出たら先ず、自走砲部隊の長距離砲撃で威嚇攻撃、降伏を促す。
    失敗した場合は、MLRSで周囲一体を焼き尽くし、
    攻撃ヘリ編隊と戦車部隊等を突撃させ目標を完全に殲滅すると」
男  「万が一を考え燃料気化爆弾とNN爆弾を1つずつ確保しました。」
ミサト「捕獲・・・できる?」
男  「可能性は3割程度かと」
ミサト「そう・・・問題ないわ、実行して」
男  「わかりました。」