04
                                雨、逃げ出したモノ、
                                 そして、放たれたモノ



 前回の敵(第四使徒)との戦いが終わって、数日後・・・・・・  

 とあるマンションの一室で、弱々しくも動くものがあった・・・

 外では雨が降っていた。

 ただ、降っていた。

 それを見ながら、私は決心した・・・この場から離れる事を・・・

 彼女は帰って来ない・・・もう、どのくらい会ってないだろうか?
                    処分
 確かに彼女には、恩がある・・・殺される所を助けて貰ったと言う。

 しかし、その分、数年にわたって、愚痴を聞かされ、腐界の中に放り込まれ、
               生  魚    調   理  し
時々、食事といっては、食べ物を、毒に変えられて、食べ続けさせられれば・・・

 これは、拷問とかわらない・・・生き地獄だ。

 私は、まがりなりにも、生きているのだ・・・

 しかし、このままココに居れば、確実に死を迎えるだろう。

 既にココに引越し、最初に食事を与えられた途端、絶食が開始されて、数十日・・・

 幾ら、私の元になった種族が、絶食に慣れているとは言え・・・

 もうダメだ・・・限界だ・・・このままでは、死んでしまう。

 外に出れば、おそらく私は恐ろしい野獣達に襲われることになるだろう・・・

 しかし、このままココに居ても、確実に死を迎えることになる。

 ならば、限りなく無いに等しい希望にでも、すがり付いて行くのが、
生きるって事だと私は考えている。

 そして、私は外に出た。

 案の定・・・多くの野獣に襲われることになったが・・・

         あがな
 私は運命に 贖 い・・・戦った・・・

 しかし・・・それも無駄に終る・・・多勢に無勢だから・・・

 だが、それもいいだろう・・・

 今の私にとって、この苦しみにまみれ、地獄同然の生と、 この苦しみから解放される死は、
等価値なのだから・・・

 そして、私は意識を失った・・・




 シンとレイが一緒に歩いていると、目の前に野良が集って、何かを襲っていた。

「?・・・アレは・・・あんな所に何故?・・・は!いけない!

 レイがイキナリ走り出して、今にも、それに止めを刺そうとしている野良猫や、
野良犬を追い払らおうとする。

 野良猫の方はレイが近付いて来ただけで逃げたが、野良犬達は反撃しようとする。

 しかし、レイの元に追いついて来たシンが数匹蹴り飛ばし、睨みつける事で逃げ出した。

ツツ・・・レイちゃん、大丈夫?!

 シンは少しお腹を押えるが、それをレイには気付かれないように、
顔は逃げ去った野良犬達の方に向けて尋ねる。

「そ、それより、この子が・・・」

 大怪我をしているそれを抱き上げ、泣きそうな顔で、レイがシンに言う。

 それは、かなりの大怪我を負っている。

 死にかけているのが目に見えていた。

「これは・・・いけない! 危険な状態だ!!
 すぐに家に連れて帰らないと、今日はリツコが部屋で待機しているはずだから!」

 2人は謎?のそれを抱えて、慌てて帰路についた。





 コンフォート16の【朋意・綾波・碇】と表札に書いてある部屋

「・・・もう、大丈夫よ。
 一応、暴れないように麻酔はしておいたから、今日は眠ったままだと思うわ・・・」

 リツコが治療し終ると、心配そうに見ているレイに言う。

「・・・ありがとう」

 レイはそれを心配そうに見ながら、リツコにお礼を言う。

「いいのよ、それよりも、この子、どうしたの?」

「帰り道で・・・野良犬とかに、襲われてたの・・・」

「道で?・・・この子が?・・・何故?・・・どうして?・・・え?」

 リツコは少し混乱する。

「・・・知っているの?」

 レイがリツコの方に顔を向ける。

「えぇ、確か、この子は、知合いが飼っていたんだと思ったけど・・・
 名前はペンペンと言うの・・・でもどうして?」(ぺ、ペンペン・・・(滝汗))

「分らない・・・」

 レイが首を振りながら言う。

「そう・・・でも、かなり弱っているみたいだし・・・
(ミサト・・・チャンと餌をやっているの?
 貴女が自分で『責任を持って引取る』って言い出したから、
半ば騙すように、あの研究所から奪うのを手伝ったのよ。
 まぁ、処分される可能性が高かったし)
 兎も角、マヤに頼んで、栄養剤とかの点滴を持って来て貰うから・・・」

 2人がペンペンを見ていると、シンとシンジがやってくる。

「どうですか? そのペンギン」

 シンが訊く。

「あ、シン君、もうこの子は峠を越したと思うわ・・・
 って、それは兎も角として、いくら退院したからって、
その日に、即行で、暴れないように!・・・全く」

 リツコが怒ったように言う。

「すいません、レイちゃんの事になると、身体が勝手に動くんですよ」

 シンが頭を掻きながら言う。

「だから、私が自宅待機になったのね・・・
 今からでも、チャンと検査を受けて貰いますからね!
 早速、病院に電話をしましょう! 今から、連れて行きますからね!」

「お、俺はそんなにやわじゃ・・・」

 シンは慌てて断ろうとするが・・・

「(ったく・・・レイに心配させたくないから、無理して退院してきたくせに・・・)
  レイ・・・」

 リツコが言うと、レイが手を胸元で組んで、シンをウルウルとした目で見る。
(ぬぉ! 何と言う高等テクニックを!・・・いつの間に!!)

「ウッ・・・(しまった!)」

「心配するの・・・とっても・・・ウルウル」

 レイがそう言ったので、シンは、病院じゃなく、
自宅でリツコに精密検査を受けると言う事で、折れた。




 シンがリツコの検査を受け、暫くして・・・

 色々必要なモノを持って来てくれたマヤを加えて、シン達は5人で夕飯を食べていた。

 勿論、ペンペンは麻酔が効いて、寝ている為、食べれないが、
リツコがマヤに持って来させた点滴を受けさせている。

 最も、あの状態では起きていてもマトモに食べれたかどうかわからないが・・・

「ところで、このペンギンは誰が飼ってたんです?・・・知り合いって、言ってましたが」

 シンジがリツコに訊く。

「あぁ、ミサトが飼っていたハズなんだけど・・・因みに名前はペンペンよ」

「か、飼っていたって、この子、かなり弱ってましたよ。
 まるで数十日も絶食していたみたいに・・・」

 栄養剤と点滴を持って来たので、夕飯をご相伴できるようになったマヤが驚いて、リツコにそうに訊く。

 まぁ、書類を見直したり、バカやった罰で投獄されたりして、
一、二ヶ月程、全く帰ってないものな・・・ミサト・・・

「か、飼主失格だな・・・しかし、命を何だと思っているんだ!

 シンがどことなく怒ったように言う。

「まぁ、それは・・・」

 リツコは一応ミサトのフォローをしようとするが、シンジも呆れたように言う。

「確かに・・・飼っておいて、これじゃぁ・・・」

「・・・・・・・・・」

 レイは、あまり食べずに、ペンペンを心配そうに見ている。

「なぁ、コイツ、ココで飼えないかな?」

 シンがリツコに訊く。

「え?・・・まぁ、一応、鳥類だし、犬猫や、大型動物じゃないから、 規定には反してないけど・・・
 一応、このコは、ミサトのよ」

「でも、返したとしても、またこうなるんじゃぁ〜・・・可哀想ですよ」

 シンジも言う。

「そうですよ・・・幾らなんでも、あの様子では・・・
 私も、この子を返しても、葛城一尉に殺させるようなモノだと思いますし・・・」

 マヤもペンペンを見ながら言う。

「・・・・・・」

 レイは目を潤ませながらリツコを見る。

「で、でも、あのミサトが譲ってくれるかしら?
(ただでさえ、シン君やシンジ君に反発しているみたいなのに・・・)」

 リツコが言うと、シンがニヤリとしながら言う。

「別にアイツの許可は、要らないんじゃないか?」

「え?・・・なぜ?」

 リツコが訊く。

「だってさぁ、俺達はコイツを『道で拾った』んだぜ・・・
 まぁ、野良に襲われてたのを保護したんだけどな・・・」

 レイも頷く。

「それで?」

 リツコが訊く。

「つまり、コイツは自分の意志で野良になったと言う事・・・
 って事は、このペンペンとやらは、ミサトとやらのトコには居たくないと言う事だ・・・
 野良になったから、誰のモノでもないし・・・」

 シンが答える。(まぁ、確かに、ペンペンも、ミサトの家はもう嫌だろう)

「つまり・・・黙って自分のモノにする気?・・・後で、もめない?」

 少し心配そうにリツコが言う。
                   野   良
「なに、逃げ出したんだから、そう言う状態になっていたんだろうし、
俺達は持主に関係なく、保護したんだ・・・
 後は、コイツがココで暮す事を望めば良いだろう・・・
 嫌なら、自分で同じようにココを出て行くはずさ」

 平気な顔でシンが言う。

「つまり、あのミサトさんには、言わないって、事かな?」

 シンジが訊く。

「必要無いだろう・・・まぁ、俺達に訊いて来れば、俺が言ってやるよ・・・
 それに、こいつも、その方が良いだろう・・・」

 シンが慈しむようにペンペンを見る。

「生きている・・・それだけで素晴らしい事だ・・・
 生き物を飼うんなら、それなりの責任が必要だ・・・
 忙しいなら、一時的にでも、誰かに頼むとかな・・・
 頼めそうな相手として、リツコも近くに居たんだし・・・
 今まで、何度もリツコが独房に会いに行った事があるにも拘わらず、
リツコがコイツがこう言う状態になっているって全く知らなかった・・・
 って事は、アイツはこいつの事を、リツコにも、頼むどころか、全く話さなかったんだろう?
 いくら忙しかったとは言え、人に預ける事も出来ない、しない者に、生き物を飼う資格は無いさ」

 シンが呟くように言う。

「そうね・・・(確かに、シン君やシンジ君に対しての身勝手な愚痴を言うだけで、
ペンペンの事は何も言わなかったわね・・・気付かなかったけど・・・
 まぁ、今日、独房から、出て来れるんだし、もし何も言ってこなかったら、私もホッとくか・・・)
 じゃぁ、この子は頭も良いし、一応雑食性だから、飼うのは楽だろうけど、
そろえないといけないモノがあるわ」(ミサト・・・自分の事だけなの?)
                       メシ
 リツコが言う。(ペンペンはマトモな御飯を約束された・・・(爆))
     おへや
「・・・冷蔵庫?」

 レイが訊く。

「それなら、こっちのを改造してやれば良い・・・
 あっちに、大きいのも置いているから、それで、十二分に事足りているし」

 シンが言う。(ペンペンは前より大きな部屋を手に入れた・・・(笑))

 元々、二部屋を一つにした為、結構広いこの部屋には、二つの台所がついている。

 つまり、台所も冷蔵庫も二つはあると言うことである。(片方は使ってないが)

「そうね・・・それと、チャンとお風呂にも入れてあげなくちゃ・・・」

「水風呂?・・・氷が必要?」

 レイが即座に訊いた。

「いいえ、熱ぅ〜いお風呂で良いわ・・・このコは、温泉ペンギンだから」

「「「「へぇ(ほぉ)〜〜〜」」」」

 それから、四人はリツコに簡単なペンペンの飼い方のレクチャーを聞いた。

 ペンペンがシン達に無事保護された次の日・・・

「あぁ! やっと出られたわ・・・
 まったく、独房にまで、書類を持ってこなくても良いでしょうが!・・・ブツブツ
(ミサトにとっては巨大な罰だな)

 ミサトはブツブツ文句を言いながら、 マンション【コンフォート17】の通路を歩いていた。

「でも、本当に久しぶりの我が家ね・・・う〜ん、どのくらいぶりかしら?」 (なんか忘れてないか?)

 部屋のドアの前で、ミサトは腕を上にあげて伸びをしながら、気持ち良さそうにする。

「さてと・・・」

 ミサトがドアを開ける、カードキーを使ってないのに、ドアはアンロックの状態だったが、
ミサトは全く気にせずに中に入る。

 部屋の中は・・・かなり散かっているが、まだTV版ほどじゃない。
(まぁ、作戦部長室で書類に埋れたり、独房にいた時間の方が長かったし・・・)

 ミサトは早速大きな冷蔵庫(エビチュとお摘みしか入ってない)を開けて、 エビチュを取り出して飲む。

「プハァ〜〜!! 久々のエビチュは旨い!」

 そう言いながらミサトは二本目を取り出して飲む。

「だいたい何よ! (ングング・・・パハァ〜・・・カチャ・・・プシュ〜)
 チョッとした事で、独房に入れてさぁ〜・・・大体、司令も副司令もリツコも何んなのよ!
(ングング・・・パハァ〜・・・カチャ・・・プシュ〜)
 いい年して、ガキの言いなりになっちゃってさ!」(チョッとした事ではない気がするし、当然のような気も・・・)

 ミサトはドンドン飲みながら、自分勝手な愚痴を言い始めている。

 勿論、缶はその辺に捨てている。(良い子はマネしないように・・・空き缶はクズカゴヘ)

 ココが腐界になるのも、結構早いのかもしれない・・・

 その内、ミサトは眠くなって、そのままリビングで寝てしまった。
(ペンペンの事はスッカリ忘れているらしい)

 もしミサトが、もう少し冷静だったら、気付いたかもしれないが・・・

 ドアにカギが掛ってなかったと言う事態と、
何時もは、帰ってきたら、出迎えてくれるはずの存在が居なかった事に・・・







 また次の日

「へ〜・・・アイツラ、シンジに謝ってきたのか」

 登校している途中、シンは自分が学校に行ってなかった間の事をシンジに聞いた。

「うん、教室で、行き成り土下座まで始めたから、驚いたよ・・・」

 シンジは呆れながら言った。

「それはまた、極端な奴等だな・・・」

 シンも呆れていった。

「そう言えば、洞木さんの方はドウだった?・・・
 三日前位に、トウジ達とお見舞いに行ったんだけど・・・
 何故か、面会謝絶になってて、入れなかったんだ・・・(トウジ達、青くなってたし)
 まぁ、シン君の方はネルフ関係で、一般の人と一緒では、入れないと言う事は分かってたけどさ・・・」

 シンジが訊く。

「あぁ、本人は戦闘中、気絶していて、何がどうなったか、何も知らないのに、気が付いたら、
強面の奴が、やってきて、何も信用せずに、行き成り、彼女に根掘り葉掘りしつこく訊くもんだから・・・
 そのまま、彼女は、心労で倒れて(気絶して)しまったので、
それ以上負担をかけないで済むように面会謝絶になったんだよ・・・
                           な ぐ
   まぁ、俺が、その事を知って、やった奴を怒鳴ってやったのもあるけどね・・・
               部     長
 全く・・・あの諜報部の石頭ヤローにも、ほとほと困るな・・・
 一応、彼女も、土曜、一応、俺より先に退院したから、今日あたり、学校に来るんじゃ・・・」

 シンがそう言ってると、前方から、おさげの女の子がやって来る。

 ヒカリであった。

「あ・・・朋意君、碇君、綾波さん、おはよう・・・
 あのそれと、朋意君、あの戦いの時、助けてくれたそうで・・・その、ありがとう・・・」

 ヒカリは恥かしそうに、御辞儀をする。(因みに諜報部の件は知らないらしい)

「気にするな・・・それに、そう言う指示を即座に出してくれたのは、こっちにいるシンジだ。
 礼を言うなら、彼に言ってくれ」

 シンはシンジの肩を叩きながら言った。

「「え?」」

 シンジとヒカリは驚いて、声を上げる。

「ど、どう言う事なの?」

 ヒカリが訊いてくる。

「いや、その・・・」

「お兄ちゃんが、戦闘指揮をしてるの・・・」

 シンジが答え難そうにしていると、代わりにレイが答えた。

「それって・・・でも、普通、大人の人が・・・」

 レイの言葉に、ヒカリは驚く。

「あぁ、普通ならばね・・・
 でも、俺達が戦っているのは、常識を疑うようなバケモノなんだ・・・
 あいつ等には常識は通じない。
 それならば、常識とか、色々なシガラミに捕われて、堅い思考しか持てない大人よりも、
柔軟な思考を持つ子供の方が良いと言う事になっててね・・・(俺の屁理屈だったんだが・・・)
 一応、大人のアドバイザーとして、
作戦を考える作戦部長って言う軍属経験のある人がいるんだけど・・・
 これが、変なプライドを持っていて、足を引張ったりするクセに、
咄嗟の判断とかが、必要な大事な時にオロオロしたりするんだよ。
 そのクセ、何かと言うと、人の命を助ける為の指示の邪魔までするんだ・・・
 全く、今回も、ろくな作戦も立てられなかったくせにさ・・・
(本当に役の立たないな・・・本当に緊急時の作戦はピカイチなのか?・・・
 一度も作戦らしい作戦を立てないが)
 あの時も、君等をエントリープラグ・・・コックピットみたいなものだけど、
そこにキミ達を保護するのを、突然反対したりして、たまったモンじゃ無かったよ」

 シンが驚いているヒカリに説明する・・・

 ミサトが酷く聞えるが・・・実際そうだったし・・・

「ひ、酷いわね・・・」

 ヒカリは顔を顰める。

「でも、お兄ちゃんは、それに逆らって、シン君に指示を出したの」

 レイがどことなく誇らしげに語る。

「え?!・・・そ、そうだったの・・・ありがとう、碇君」

 ヒカリは慌てて、シンジの方に御辞儀をしながら、礼を言う。

「あ、そんなに気にしないで・・・僕は、当り前の事をしたんだから・・・」

 シンジは恥かしそうに言う。

「まぁ、頭の固い頭の固い大人だと、思いついても、色々な事が頭をよぎり、
その当り前の事が咄嗟に出来ないから、比較的パイロットに年齢の近い、人材が選ばれたんだ・・・
 そして、あの司令が思いついた子供は、シンジしか居なかったからね・・・
(本当はシンジにどんな役職を与えるかで、指揮部長が出来たんだが・・・)
 でも、彼の咄嗟の判断力は、かなり凄いよ」

 シンも誇らしげに言う。

「そうなの・・・」

 ヒカリはシンジを尊敬の眼差しで見ている。

「あ・・・早く行かないと、遅刻・・・」

 レイが、腕時計を見て、呟くように言った。

「げ! やば!・・・走るぞ!・・・皆!!」

 シンがレイやシンジとおそろいの腕時計を見て、慌てて言う。

「「「うん(えぇ)!」」」

 皆走り出した。

 学校には何とか遅刻しなかったが・・・

 教室では、シンとヒカリに、 行き成りのトウジとケンスケの土下座が待っていて、
2人を困らせたのはお約束であろう。





 ある日の夜・・・
                う め
 シンジとレイは、突然の 呻 き声で、目が覚めた。

 慌ててその部屋に行くと、悪夢を見ているのか、シンが思いっきり汗をかいて呻いていた。

 レイが慌てて、シンの頭を自分の胸に抱きとめた。

「レイ、これはいった・・・」

 そう言いながら、シンジも慌ててシンの手を握った。

 シンジの頭に行き成り、何かのイメージが流れ込んでくる。

 広大な紅い海・・・

 一欠けらの食料を、殺し合いをしてまでも、奪い合う醜い大人達・・・

 力尽きて死んでいく者達・・・弱い子供たち・・・

 赤子が産まれても、何故か必ず死産で、嘆く大人達・・・

 全てにおいて、・・・・・・

 それから、一変して、突然、目の前に現れた、青いクリスタルのような八角形の巨大なものから、
何かレーザーのようなものが自分に放たれ、胸を貫かれかけた・・・

 シンジはそのまま意識を失って倒れた。




シンジ!・・・大丈夫か?!

「・・・お兄ちゃん、大丈夫?!
 次に、気付くと、自分の顔を、シンとレイが心配そうに覗き込んでいた。

「え・・・」

 シンジが頭を振りながら、周りを見る。

「お兄ちゃん、シン君の手を握ったら、突然、倒れたの・・・大丈夫?」

 レイが言った。

「いや、大丈夫だよ・・・多分、立ちくらみだと思う・・・でも、シンの方こそ、どうしたの」

「いや・・・俺は・・・時々、悪夢を見るようなんだ・・・
 よく覚えてないが・・・(昔の記憶なんだろうが)」

 シンが、バツの悪そうに答える。

「それで、抱きとめてあげて、私の心音を聞かせてあげると、落ち着くみたいなの・・・
 だから、『悪夢を見ないで済むように、私と一緒に寝ましょう』って言ってるのに・・・」

 レイが少し不満そうに言う。

「い、いや、だからね・・・そう言うのは、大人になってからて、言ってるでしょ・・・
 俺達は、まだ中学生なんだしさ・・・中学生らしく・・・それに、そう言うのは、色々と問題がね」

 シンが真っ赤になりながら言う。

「じゃぁ・・・き、キスして・・・」

 レイが顔を赤くしながら、そんな事を言い、シンに抱きついた。
(リツコやゲンドウ辺りだな・・・コンナ悪知恵?を、レイちゃんに吹き込んだのは)

「で、でも、ほ、ほら、シンジが見てるしさ・・・」

 シンは顔を赤くし、しどろもどろになりながら言う。

「あぁ、気にしないで・・・僕は部屋に戻るから・・・ (本当に、プラトニックなんだな・・・)」

 シンジはニヤリと笑うと、シンの部屋を出て行った。

「お、おい、シンジ!」

「シン君・・・早く・・・」

 そんな声が聞えてきたが、シンジはクスリと笑うと自分の部屋に戻っていった。





 数日後の昼過ぎ・・・ネルフ本部

 零号機の改装も装甲以外、ほぼ終わった為、今回はテストプラグではなく、
直接、零号機でシンクロテストをすることになった。

「・・・問題なし、シンジ君も、チャンと零号機にシンクロ出来るわね・・・
(アレが入っているだけでなく・・・この新しいシステムのおかげね)」

 リツコはシンクロテストの結果を見ながら言った。

「流石・・・双子ですね・・・凄いです」

「まぁ、やっぱり、レイの方が長い分、シンクロ率、ハーモニクス共に上のようね・・・
(普通だったら・・・・・・やはり、オーバーテクノロジーね・・・
 何で、それだけの頭脳を持つ人が、三賢者より・・・無名のまま)」

 シンが帰還者である事は、ゲンドウと冬月しか知らない事になっていた。

 何故か、シンが口止めをしたのである。

「先輩?・・・どうしました?・・・シンジ君のシンクロデータ採取は終わりましたけど・・・」

 考え込んでいるリツコにマヤが声をかける。

「あ、ごめんなさい、シンジ君、次はレイだから、交代してもらえる?」

 リツコは、零号機の中のシンジに言う。

『はい』

 そう答えて、シンジはエントリープラグから出る。

「連動試験の方は良いんですか?」

 技術部員の1人が訊く。

「彼はパイロットではなく、指揮官よ・・・それに、零号機はレイの専用機よ・・・
 アレで、そこまで、やっても、あまり意味が無いでしょ・・・
 まぁ、そこまでの試験は、彼の専用機が出来てからでしょうね・・・
(でも・・・一から作れるのかしら?・・・まぁ、あのシン君のあの理論が完成すれば充分可能だけど・・・)」

 リツコはそう答えた。

 しかし、その後ろではミサトが不満そうに見ていた。

「(何よ・・・エヴァに乗れるんなら、指揮官なんかやらずにパイロットでもやってりゃいいのよ)」

 ミサトは、モニターに映っているシンジを憎々しい目で睨んでいる。

「じゃぁ、実験後は零号機の装甲の換装を済ませるだけですね・・・
 でも、頭部がモノアイ(一つ目)から、ワザワザ二つになっているのは、どうしてなんですか?」

 確かに、マヤの言う通り、零号機の頭部は目が二つになっており、
換装の途中だが、装甲(拘束具)の色もメタリックブルーに変っている。

「あぁ、シン君の話だと、その方が色々と都合が良いからって・・・
 実際、目が一つじゃ、遠距離間を掴むのが、人間だと辛いからとか、
シンクロした時のイメージの問題らしいわ・・・まぁ、色はレイの希望だったけど・・・」

「へぇ〜・・・(あ、それで、朋意君がいつも着ているジャンバーの色なのね)」

 リツコの説明にマヤはそんなモンかなと納得したらしい。

「・・・(そうよ・・・あのガキ共の所為で、私は指揮が取れないのよ・・・)」
            おちい
 何か危ない思考に陥 っているミサト・・・その目は狂気に近いモノをはらんでいる。

 だが、一番後ろの壁によりかかって、このテストを見ている為、 誰もミサトの方を見ていない。

 よって、この後起きる事件を予測出来た者は誰も居なかった。

「さて、次はレイの定期シンクロテストよ! こっちが本番、準備、準備!」

「は、はい!」

 リツコに促されて、マヤは大急ぎで準備にかかった。

「サテと・・・怪我が完治してから、テストプラグでは良い成績だったけど・・・
 実際の零号機ではどの位、向上しているのかしら?・・・(改良もされてるし)」

 リツコはシンジと交代して、エントリープラグに入ってきたレイを、 モニターで見ながら呟いた。

 因みに、リツコは、家に帰っているハズのミサトから、まだペンペンの事(居なくなった事)を、
何も言われてないので、その件に関しては、完全に無視することにしていた。




 男子ロッカールーム

「おめでとう、チャンとシンクロ出来たな(これで、アレの七割が完成か)」

 プラグスーツ姿のシンが、シャワーから出て来たシンジの肩を叩きながら言う。

「うん・・・でも、やっぱり、レイの方が高いみたいだったよ」

 しかし、シンジは少し残念そうな顔をしている。

「当然じゃないか、レイちゃんは幼い頃から、訓練をやってきたんだぞ・・・
 そうそう超えられるものじゃいさ・・・それに、零号機は彼女の専用機だ・・・
 しかし、それでも、君は、チャンと起動指数に達しているんだから、良いじゃないか」

 シンが慰めるように言う。

「うん、でもさ・・・もっと高ければ・・・」

「おいおい、シンジの仕事は、元々戦闘指揮がメインなんだしさ・・・気にすることないって」

「そ、そうだね・・・」

 しかし、シンジは何所となく寂しそうであった。

「ま、もしもの時は乗れるんだからさ」

 シンはシンジにそう言って慰める。

「そうだけどさ・・・やっぱり、見ているだけは・・・辛いよ」

 身体を拭いて、着替えているシンジが言う。

「こら!」

 シンがシンジの頭にヘッドロックをかける。

「わわ!」

「いいか、シンジ、人には、向き不向きがある・・・
 人は自分が出来る事を、精一杯やる事が大事なんだぞ!
 シンジは、俺達よりも、確かにエヴァに乗り、操る力は低いかもしれない・・・
 でも、君の咄嗟の判断力、指揮能力は凄いものがあるんだぜ・・・」

「そ、そうだけどさ・・・妹や、君にだけ戦わせるのは・・・」

 シンジはそんな事を言う。

「気にするなよ、君の判断力で俺達は助かっているんだ・・・
 それに、あのオロオロするばかりの作戦部長に任せたら、
指示が中々来ないで、逆に、俺達は判断に迷って、本当に危なくなるんだぜ・・・
 それに、君の妹のレイちゃんはどんな事があっても、
チャンと俺が守るからさ、安心しなよ・・・」

「うん・・・(それは・・・分かっているけどね)」

「あ!・・・未だ気にしているな!・・・このこの」

 シンはヘッドロックに少し力をこめた。

「ワワワ! イタイイタイ・・・シン君、止してってばぁ〜!」
     ジャレあって
 2人がそんな事をしていると、警報がなった。

「まさか・・・」

「使徒が?!」

 シン達は慌ててスピーカーの方を見た。

「シンジは急いで着替えて発令所に、俺はケージに向かう!

「分かった!」

 シンはロッカールームを出て行き、シンジは慌てて着替え始めた。




 少し戻って、シンクロテスト・官制室

 レイによる零号機の起動は上手くいった。

「・・・いい感じね・・・」

「えぇ、テストプラグの時より、若干低いですが、問題ありません・・・
 むしろ、ドイツのセカンドに迫っていますね・・・」

「じゃぁ、次に、連動実験に・・・」

 その時、警報が鳴る。

「え?・・・使徒?」

 リツコが驚いて言う。

このまま、零号機を出して迎撃しましょう!
                        指揮部長
(そうすれば、まだ着替えている最中の アレ は来れないわ・・・
 そうすれば、少しの間だけでも私が指揮をとれる・・・
 そして、実績を示せば、アイツをお払い箱に・・・)」

 ミサトが暗い思考の元、他の事は何も考えず、そんな事を言う。

「何、バカな事言っているの!・・・
 零号機はまだ装甲の換装を半分しか終えてないのよ!・・・
 貴女、レイを殺す気!!

 リツコが怒鳴る。

「で、でも・・・(今から初号機の準備を始めたら、アレの着替えが・・・)」

 しどろもどろになるミサト・・・

「バカな事を言っているヒマがあるのなら、
発令所に行って、敵の情報でも集め、作戦でも考えてなさい!!

 リツコは、ドアを指差して怒鳴った。

「(な、何よ!・・・皆で私の邪魔をして!!)」

 ミサトは心の中で、皆に悪態をつけ、慌てて飛び出していった。

「マヤ、初号機は?」

 ミサトが出て行ったのを見て、リツコがマヤに言う。

「シン君が既にエントリーを開始しました・・・直ぐに準備は出来ます」

 ここでも、発進準備はできる為、マヤは既に準備を開始していた。

 まぁ、シンがエントリーした時に、気付いて開始したのだが・・・

「そう・・・」

 リツコは何所と無くホッとした顔付きで言った。

『赤木博士・・・』

 モニターから、レイが強張った顔で言う。

 普段、レイはリツコの事を『リツコさん』とか、
『リツコお姉さん』(リツコの希望)とか言う風に呼ぶ。

 形式ばったところでも『リツコ博士』と名前で呼ぶが・・・

 赤木の名で呼ぶ時は、何か切羽詰った事がある場合である。

「どうしたの?」

 リツコがレイを真剣な目で見る。

『使徒が来たのであれば、実験が中止し、 私は急いで発令所に行きたいのですが・・・
(嫌な予感がするの)』

 レイの顔は真剣だ。

「(何か・・・あるのかしら?)・・・分かったわ、実験中止します・・・
 ただし、レイはシャワーをあびて、LCLを流しておかないと・・・
 後で臭いが残って大変よ・・・」

『分かりました・・・』

 レイはそう答えて、零号機から下りて行く。

「じゃぁ、発進準備が整い次第、私達も発令所に行くわよ・・・マヤ。
 ここじゃぁ〜充分にサポート出来ないから」

「はい!」

「残りの皆は、データを解析し、纏めていて」

「「「「「はい!」」」」」

 リツコが指示を出すと、その場にいた技術歩の面々も仕事を開始する。





 その頃発令所では・・・

「よっしゃ!(アイツは居ない!)今は、作戦部の管轄よ!・・・
 日向君!・・・エヴァ初号機をすぐさま出して!」

 もし、ゲンドウや冬月が居たら、反論しただろうが・・・

 現在2人は、ゼーレには極秘裏に日本政府と戦自に、色々な居り合いをつける為、出張中で居ない。
(ゼーレには、新たな予算獲得の為と言っている)

「え?・・・ですが、まだ伊吹三尉もシンジ君もココに来てないので、それに、まだ回線が・・・」

 しかし、マコトは戸惑いながらも、ミサトにそう言って、射出をしない。

「出した後で、繋げば良いのよ!・・・今は緊急を要します!!」

 ミサトは、少しでもシンジから指揮権を奪おうと思い、サッサと発進させようとするが・・・

 プシュー

「何勝手にやってるんですか!・・・まだ、相手の能力も分かってないんでしょ!・・・
 エヴァを出すよりも、作戦を立てる為に調べるか、UN辺りに連絡をいれて!」

 シンジが間一髪で走りこんで来た。

ちぃ・・・相手の能力をUNが出し渋っているから、わかんないんでしょうが!・・・
 だから、作戦を考える為にも、こっちで調べるのよ!!・・・
 それなら、今、エヴァは作戦部の管轄よ!!」

 実際には、UNには連絡を入れて居ないが、 ミサトはシンジを憎々しげに見ながらそう言った。

「出せば戦いになります! そうなっるなら、管轄は指揮部の方です!・・・
 それに、行き成りエヴァを使って、もしもの時があったらどうする気ですか!!
 調べるんなら、無人の自走砲とか、ダミーバルーンとかあるでしょう!
 先ずそっちで調べるのがセオリーでしょうが!!」

 シンジは、ミサトに言い返す。

 シンジは友人の命がかかっているので、『圧されてなるモノ』かと言う気概が感じられる。

 既に、少年の顔ではなく、1人の男の顔である。

「あそこまで離れているんのよ!・・・大丈夫よ!!」

 さほど離れていないが、ミサトはシンジに反発する為にそんな事を言う。

「エヴァの力を過信しないでください!・・・
 それにあの形状を見る限り、攻撃方法が限定される気がしませんか!!・・・
 あれはどう見ても、遠隔攻撃タイプですよ!!・・・しかも、強力な奴を!!
(アレは・・・何故、あの時の・・・デジャビュって奴か?・・・)」

 シンジはモニターの青いクリスタルのような八面体の形をした使徒を、指しながら言う。

「使徒に常識は通用しないわ!」

 ミサトはシンジとぶつかる時は、常識等を殆ど忘れてる気が・・・

 ミサトにとって、シンジとは、『自分の復讐の邪魔をする敵だ』とでも思っているのであろうか?

そう言う非常識じゃないでしょう!
 それ以前に、何の備えも無く、未知数の相手の前に出すのは、危険だと言ってるんです!!」

「エヴァなら、ATフィールドがあるから、大丈夫よ!・・・
 それに、アンタは、威力偵察ってぇ〜のを知らないの?!
(中学生のガキが知るわけ無いわね・・・本当の意味を)」

 ミサトは、シンジを見下し、それっぽい事を言うが・・・

「アレは『威力あるモノで強行に調べる』と言う意味ではなく、
相手の力、武器などの威力、戦闘能力等を調べるって意味です!
 それに、さっきも言ったでしょう!・・・エヴァの力を当てにして、過信しないでください!!
 かかっているのは貴女の命じゃなく、シン君の命なんですよ!!」

 だが、シンジの方が上手だった・・・(バッチリ知っているし)

 シンジは、色々と進んで自分でも、戦術等に関しての沢山の本(ゲンドウからのプレゼントらしい)を、
読んで勉強していたのだ。 (ミサトと違うね)

「クッ!・・・ガキにかまってられないわ!・・・日向君!・・・出しなさい!
 直の上官命令よ!!

 ミサトが強硬手段に出る。

「し、しかし」

 ミサトと同じく、軍務経験のあるマコトは、上官命令の重みと、
自分の考えの重みの板ばさみで、躊躇している。

「えぇ〜い、さっさと、出せばいいのよ!!

 ミサトが無理矢理、エヴァを発進させる為に、マコトのコンソールを叩いた。

「な、何をするんですか!!

 マコトが悲鳴を上げるように叫ぶ。

「クッ!・・・青葉さん!!ロック緊急解除!!・・・急いで!
 管轄外でも出来るでしょう!!」

 シンジが叫ぶように言う。

「はい!!」

 疑問より先に、シゲルは射出中の初号機のロックを外す。

「なにを「次、日向さん!
 エヴァとの緊急回線を急いで繋いで!!」


 ミサトが口を挟むのを無視して、マコトに指示を出すシンジ。

『ぐぅ〜〜〜!!』

 行き成り射出を開始され、更にはロックまで外されたので、
シンはうめきながら、行き成り感じる圧力に戸惑っていた。

「シン君!
 射出と同時にジャンプ、その場を離れて!!
 返事はいいから!!」


 シンジが怒鳴るように言う。

「アンタ! 一体、何を考えているのよ!

 ミサトにかまっているヒマのないシンジは無視する。(って言うか、ミサトに言われたくないだろう)

 無視されて、怒ったミサトがシンジの肩を掴もうとするが、
シンジはそれを避けるように動いた為、ミサトの手は空を切る。

「こ、この」

 ミサトは拳を振上げ、後からシンジを殴ろうとする。

ミサト!・・・いえ、葛城一尉!何をしているの!!

 何時の間にか来たリツコが、シンジに向って拳を振り上げているミサトに怒鳴る。

 マヤは大急ぎで自分の席につき、初号機の状態を調べる。

「こ、これは・・・その」

 ミサトは驚き、戸惑いながらも、リツコの方を見る。

「敵内部に高エネルギー反応を確認!・・・現在、N32方面に向けて、収束中です!!」

 下の官制員の1人が慌てて報告する。

「な、何ですって!」

 報告を聞いて、ミサトが叫ぶ。

 丁度、初号機が出て来る方面である。

「まさか!!」

 リツコも驚いてモニターを見る。

「し、シンく「そのまま、飛び上がって!・・・
 できれば使徒に肉弾戦を!!」

 ミサトの叫びを再び遮って、シンジが叫ぶ。





 道路が割れて、初号機が出てくるが、ロックを外されていた為、その勢いで、空中に射出される。

 同時に、使徒が放った加粒子砲が前のビルを融かし、
初号機の射出された辺りの武装ビルを融かしながら貫通する。

 初号機は、ギリギリで空に打ち上げられ、その場に居なかった為、その難を逃れた。

 ただし、アンビリカルケーブルと間に合わなかった左足首が焼き切られたが・・・
(まぁ、引張られる事がなくて、丁度良かったようだ)

痛っつ!!・・・そこか!!」

 シンはATフィールドを使い、無事な右足でそれを蹴り、空中で初号機の向きを変え、
まだ、加粒子砲を放っている使徒に上から強襲する。

 落下等のスピードを利用して、初号機の左手を、使徒の側面に突き刺した。

このヤロー!!・・・痛いじゃないか!!」

 加粒子砲を撃っている最中に初号機が上に取り付いた為、使徒はATフィールドを展開できなかった。

 使徒は慌てて加粒子砲を止めて、振りほどくように動く。

『シン君、振り落とされないで!』

 シンジがそのまま指示を出す。

「分ってる!!」

 シンは、そのまま、攻撃を加えていった。





 使徒は、初号機が肉迫している為に、加粒子砲で撃つどころか、
ロクにATフィールドを展開することも出来ない。

「青葉さん!・・・使徒のデータは?」

「収集中です!!」

 シゲルは、マヤが来たと同時に、本来の自分の仕事についていた。

「一旦情報収集は中止して、
初号機とは逆側の武装ビルから、援護して下さい!
 マヤさん!・・・残りの稼働時間は?!」


「後、3分27秒です!」

 マヤが答える。

「シン君!・・・
 後3分しても、倒せないようだったら、
近くのゲートを開ける!
 そこから一旦脱出して!
 無理に倒そうと考えなくていい!!・・・
 日向さん!」


「C−12、C−26、D−03、D−05が回りにあります!!

 咄嗟にマコトが答える。

「後、2分45秒で、一斉に開けてください!!・・・
 そして、初号機がどれかに飛び込んだら、
一斉に閉じてください!!・・・
 その後、途中の初号機が通過したところは、
シャッターを閉じて、間を何かで埋めちゃってください!!
 それと、青葉さんと一緒に初号機がへばりついているのと、
逆側を狙って、ミサイルを・・・
 数は少なくても良いですから、初号機に当たらないように、
細心の注意を払って下さい!!」


「了解!!」

「リツコさん、青葉さんが集めていた相手のデータ収集の続きと、解析を始めてください!」

「分かったわ!・・・マヤ、隣のコンソール借りるわ」

 適確に指示を出していくシンジを、ミサトは焦点の合ってない目で見ていた。

「(何で、私はココに居るの・・・使徒を倒す為のハズ・・・
 でも、アレには乗れないし、指揮もとれない・・・
 何故?・・・何故?・・・アレが居るから?・・・
 居なければ、私が指揮を取れるのに・・・何で居るの?・・・
 邪魔よ・・・ガキの癖に・・・そう、邪魔は排除・・・排除していいのね・・・
 いえ、そうすべきなのよ・・・私の邪魔をするモノは排除・・・)」

 ミサトは、自分が、状況判断が出来ないのも、指揮を取れないのも、
目の前に居る少年、シンジの所為だと言う考えに捕われていた・・・

 自分は悪くない・・・悪いのは周り、邪魔をする人間・・・

 ミサトはそんな考えの持ち主になっていた。

 それは、まだドイツ支部に所属していた時、軍で指揮や作戦立案の基本などを、習っては居たが、
その頃は、まだ、ネルフと軍の折り合い等が悪く(今もドイツ支部だけは悪いようだが)、
ロクな基本を教えて貰ってなく、人命を無視したり、効率が悪い、成功率の悪い変な作戦を立てても、
誰も注意してくれず、 ネルフ的特権階級的なモノがあった所為ででもあり、
我侭にやっても、誰も止めれず、更に、部下が黙って言う事をきいてくれてた為に
出来た欠点でもあったかも知れなかった。

 本当の意味でのエリートではないのに、エリートに祭り上げられ、
エリート意識の強い状態になった者の悲劇・・・

 自分より弱く、立場の低く、自分に従う者には優しく出来ても、
その力は未知数で、立場も同格に近いが、自分に逆らう、邪魔すると思った者は、
それが手の届かないようなトップあたりでも無い限り、敵視するそんな状態になっていた・・・

 そして、今まで、シンジのように、表立って、ミサトに反抗したり、邪魔をした者が居なかった為、
その事に気付いた者は、ここ発令所には居なかった。

 唯一、それを危険視していた者は、現在、使徒と命をかけて戦っている為、ココには居ない。

 そして、それを聞いていて、気付くべき位置にいたリツコは、
ミサトが昔からの親友であった為、『まさか』と言う考えもあり、そこまで強く考えて居なかったので、
さほど、彼女に注意をはらって居なかった・・・

 ミサトは、焦点の合わない目のまま、懐に手を入れて銃を取り出す。

 そして、照準をシンジに合わせる。

 発令所の面々は、初号機と使徒の戦いに集中して、誰もミサトに注意を払ってなかった。

 そして、ミサトの人差し指が、トリガーにかかる。

 バァーン!!

                                                続く




あとがき

 さぁ・・・トンでもないとこで切れたぞ・・・(無責任?)

 シンジ君、超ピーンチ!

 どうなるんでしょう?(オイオイオイ)

 そして、どうやら、この調子でいくと・・・ヒカリさんも、アスカのライヴァルになりそうですねぇ〜
[壁]`∀´)Ψヶヶヶ

 やばいですねぇ〜・・・最大の味方になる予定だった彼女が・・・
フフフ ( ̄+― ̄)キラーン

 まぁ、強敵とかいてトモですね・・・(萌える?)

 私には、LRS、LAS、LMSなファン以外にも、LHSなファンの方もいるんですねぇ〜
(あの後、一番最初に来た、メールが希望メールで、何故か彼女のファンだったもので・・・)

 メールが色々きましたからねぇ〜(皆さん、ありがとうございます)

 これも全て、あの(激甘LAS)企画書がヤキイモの燃料になった原因なんですかねぇ〜

 それとも、シンジ君が、行き成りフリーになった影響なんでしょうかねぇ〜

 他の方も、希望するシチュエーションがありましたら、どうぞ遠慮なく♪
(コレで採用するかどうかはわかんないけど・・・)

 だいたい、最大のライヴァルのレイちゃんがシンジ君の妹になった時点で、
かなぁ〜りアスカがシンジ君の彼女筆頭の可能性が超高ったのにねぇ〜・・・
(当初の予定では、ドイツからアスカだけが、先に来る予定だったのにねぇ〜
 色々と理由つけて・・・まぁ、シン君の影響でだけど)

 まぁ、それでも、Mさんと言うライヴァルは居るだろうけど・・・

 アスカもみなさんと同じスタートラインですね・・・(いや、後方からかな?)

 ん?って事は、今の所、ヒカリさんが一歩リードか・・・
フフフ ( ̄+― ̄)キラーン

 これも、アスカの自業自得ですが、まだ(LASになる)チャンスは(テンコ盛)あると言う事で・・・

 後は、アスカの努力次第・・・フフフ ( ̄+ー ̄)キラーン

 ではでは!(ん? 何故か前回までとアスカに対するとりもちの態度が違うぞ?)



P.S『別名・デビルな舘』(何故か在ると何時も主のような・・・)

   ふっ・・・フフフフフフフ・・・ヤってくれたな葛城作戦(だけ)部長!
   この私に狙撃班を使うたぁ〜良い度胸だ・・・
   殺す気だな、殺す気だったんだな!!(弾が麻酔とは知らないらしい)
   電波使いの私に、そんな手を使ってくるとは・・・カスッタじゃないか・・・ククククク・・・
   (どうも、ピピッときて、避けたらしい・・・流石、銃社会に身を置くモノ・・・最近テロがあったし)
   ばっちり、今回のに影響させてもらったぞ・・・[壁]`∀´)Ψゥヶヶヶ ・・・
   (かすり所が悪かった可能性大・・・)
   どうやら・・・チミはマジで地獄に落ちたいらしいからね・・・
   そろそろ、チミには幸福へ道の用意が整いかけていたのに・・・(ヤシマ作戦で)
   どうやら・・・要らないらしいね・・・[壁]`∀´)Ψゥヶ、ゥヶヶヶ!!

    半ば?狂ったように笑っているとりもち・・・外だったら、ポリスに捕まってるな・・・(^^;)

近くで見ているナレーターMさんの解説?

   ウィルス(FF大量消失)&某ヤキイモ事件以来、とりもちは、半ば?悪魔化しているらしい・・・
   もしかしたら・・・悪魔のターゲットがアスカから、ミサトに変わったのか?
   ん?・・・とりもちの机に手紙?・・・アスカから?

   何々・・・【デビ・トリへ、・・・(中略)・・・てなわけで、やられたら、十倍にして返せば良いわよ。
          P.S そう言う訳で、チャンスくらい、ちょうだいよ!】
   直筆・・・ドイツ語が少し混じってるけど丁寧・・・でも、タチ悪いな(汗)




シンジ「う・・・ん・・・なんていうか・・・」
レイ 「葛城3・・1尉のが相当に酷いわね」
アスカ「まさか、シンジを殺したんじゃないでしょうねぇ!?」
シンジ「い、嫌だよ!ミサトさんに殺されるなんて!」
アスカ「そんな事したらいくらミサトでもこのアタシが只じゃ置かないわよ!」
レイ 「それはないだろうから大丈夫・・・、それにしても、とりもちの私怨は恐ろしいわね・・・」
アスカ「た、確かに恐ろしいわね・・」(汗汗)
シンジ「ペンペンにまで逃げられちゃうし・・ミサトさんどうなるんだろう・・」
レイ 「心配なの?」
シンジ「うん・・まあ」
レイ 「でも・・・悪循環で泥沼に陥りそうで怖いわね・・」
シンジ「・・・なんとか、上手く行くと良いんだけど・・・」
アスカ(アタシは、あれでよかったのよね・・あれでいいのよね)(不安)


某所、
男  「申し訳ありません!」
ミサト「言い訳は良いわ・・・次は?」
男  「はい、目標の行動パターンを新たに解析しました。」
ミサト「ふむ、」
男  「どうしますか?」
ミサト「そうね、今度は直接ね」
男  「直接ですか?」
ミサト「屈強な男3人もいれば大丈夫でしょう、大きな建物の視覚になり、
    更に人通りも少ないこの地点を狙えば、時間次第では誰にも見られるにいけるはずよ」
男  「分かりました。機会を見て実行するようにします。」
ミサト「スタンガンまでなら使っても問題ないわ」
男  「分かりました。」
ミサト「なんで、私が・・・ぶつぶつぶつ・・・・・・ぶつぶつぶつ・・・」
男  「どうしました?」
ミサト「必ず制裁してやるわ!」


総司令執務室、
モニターを見ている二人、
冬月 「碇どう見る?」
碇  「悪循環だな」
冬月 「しかし、悪魔化し始めているあれに3人程度できくのか?」
碇  「難しいな、まあ、3人を簡単に惨殺するようならば、現地の警察が何とかするだろう」
冬月 「そうだな、あれはいるところがいるところだからな」
冬月 「・・・捨て置くか?」
碇  「いや、あまり騒ぎ立てるのも拙い、老人達の小言はうんざりだ」
冬月 「まあな・・で、どうする?」
碇  「そうだな・・・軽く釘をさして・・いや、今回は書簡を回しておくことにする。」
冬月 「では、任せたぞ」
碇  「問題ない」