ネオエヴァ〜友を想う心〜

          02
       〜シンジ、開眼?〜
 


 シンジ達が、発令所にやってくると、凄い怒鳴り声が飛び交っていた。
(ちなみに、全員発令所に来たので、司令所には誰も居ない)

「三番、五番、出すぎです!」

 オペレーターの紅一点、【伊吹マヤ】が叫ぶ。

 冬月はシンジ達がやってきた事に気付いて、振り向く。

「遅かったな」

「・・・す、すまん」

 ゲンドウが冬月に素直に謝るが、シンジとミサト以外は気にもとめない。

「十九番、三十二番、もう良いさがれ!」

 そして、一応、作戦部長のミサト直属の部下らしい【日向マコト】が叫ぶ。

「うわ〜凄い」

 ミサトが呟く。(シンジでなくて、ミサトが・・・なんかなぁ〜)

「何、呑気な事を言ってるの?
 本当に人の命がかかってるんだから、これ位、静かなものよ。
 
 貴女が来る少し前に 行 (おこな)った、松代との演習の時は、
本部はもっと、凄かったんだからね・・・知らなかった?」

 シンはその時のデータ解析の為、出張していたのである。

 リツコがミサトに言う。

 ミサトはネルフ本部での演習を見た事がないらしい・・・

「いやぁ〜あの時は・・・」

「百五番、七十三番を回収後下がれ!」

 そして、シンと同じ副司令直属で、階級は下だが、
諜報部情報分析課に所属する【青葉シゲル】も叫ぶ。

 ちなみにシンやレイは、一応、戦闘指揮部パイロット課が、
(表向きの)正式な所属になっている。

「凄い・・・」

 シンジが呟く。

「お兄ちゃんも・・・・・・早く慣れてね」

 レイが少し赤くなりながら言う。

「え? どうして?」

 何も説明を聞いてないシンジは不思議そうに訊く。

「使徒、現在、交戦予測ポイントの1,200M先です」

 レイがその疑問に答える前に、シゲルが冬月の方を見て言う。

「パイロットの状況は!」

 冬月がマヤに問う。

「シンクロ率99.73% ハーモニクス異常なし、誤差±0.02以下です!」

 即座に答えるマヤ、物凄い数字のような気がするが・・・

 慣れているのであろう気にもとめてない。(なんだかなぁ〜)

「良し!・・・シン、準備はいいか?!」

 冬月はモニターのシンに尋ねる。(ほう・・・冬月は呼捨てか)

『いつでも』

 シンが答える。

「よし!」

 冬月が、シンジの方を向く。

「シンジ君!」

「ハ、ハイ!」

 シンジは緊張しながら、返事をする。

「号令を頼む!」

「へ? なぜ?」

 シンジの目が点になる。

「・・・い、碇、まだ説明してなかったのか?」

 呆れた顔で冬月がゲンドウの方を向く。

「・・・す、スマン」

 ゲンドウが手を合わせて謝ると、冬月はシンジの方を向く

「まぁ、今回は難しく考える事は無い・・・
 ただ、『エヴァ初号機、発進』と言いたまえ、
 後は、シンの奴や、発令所の皆がやってくれる」

 冬月がそう言った途端、ミサトがシンジを睨んでいる。

「で、でも」

 訳が分らないシンジは、後からのミサトの視線を感じて、戸惑う。

「説明は後でしっかりとしてあげるから、時間がないんだ!」

 冬月の切羽詰った声で言うと、シンジは慌てて叫ぶ。

「は、ハイ! エヴァ初号機、発進!」

『「「「了解!」」」』

 シンジの号令と、シン達の了承により、
エヴァンゲリオン初号機が、使徒の前に打ち出される。



 市街地の傍で、エヴァ初号機と第3使徒サキエルが対峙する。

『さぁ〜てと・・・って! おやっさん!
 逃げ遅れた娘が、使徒の足元に居る!』

 シンが気付いて慌てて叫ぶ。

「なに!」

 慌てる冬月。

「へ?」

 訳が分らず呆然とするミサト・・・

「え? じゃぁ、急いで助けて!」

 しかし、何故かシンの驚いた心が、解ったシンジが慌てて叫ぶ。

『了解!』

 シンジの声と共に、シンは初号機で使徒に体当たりをし、使徒を弾き飛ばす。

 そして、スグに少女を保護する。

 その間、少女が紅い膜で覆われていたが・・・誰も気にしていない。

 いや、そんなヒマはなかった。

『救助成功! 彼女は怪我をしている!』

「え? 誰か受け取りに行かないと、アレじゃ危険だ! 急いで!」

 シンジは、シンの言葉に反応して、色々と言っているが、
それが的確な指示になっていることには気付いていない。

 オペレーター達が即座に状況を調べ始める。

「近くにいる者は!」

 冬月が叫ぶ。

「エヴァの現在位置から、400m程、東に特別避難ルートがあります!
 そこの入り口辺りに警備の者が、まだ居るもようです!」

 同時にマヤが叫ぶ。

「スグ連絡を! シ」

 冬月がシンに言う前に、シンジが叫ぶ。

「急いで、あの使徒って奴が起きる前に!
 東400m! そこに警備の人が!」


 シンジが既にシンに指示を送っていた。

 人の命がかかっているのに、何故かシンジはドンドン冷静になりいき、
その頭の中にはその娘を助ける事、シンを戦いやすくする事だけしかなかった。

『了解! お嬢ちゃん、悪いけど、少し我慢して捕まっていてくれ』
(外部のスピーカーで話しているのだな)

 シンは初号機で指定された場所に、その娘を運んで行く。

『怪我をしているようだ・・・気を付けて、医者の所に・・・』

 無事、少女を警備の者に渡すと、発令所の面々はホッとする。

「シン君! 気を付けて!」

 レイが叫ぶ。

「使徒が起きた! 右後!」

 シンジも叫ぶ。

 この2人だけ、全く気を抜いていなかった。

「「「「「「「「な!!」」」」」」」」

 他は気を抜いてしまっていたので、使徒の動きに注意していなかった。

 初号機が振り向くと、使徒の目が光る。

『クッ』

 初号機の前に一瞬にして、紅い色の壁ができる。

 壁が使徒の放った光線を弾き、初号機と救助された少女、警備員を護る。

「そのまま、2人が避難するまで、護って!」

 シンジは、その紅い色の壁は初号機の作り出したものであることを、
その本能で理解したのか、咄嗟に叫ぶ。

『了解!・・・急いで避難しろ! なるだけ、奥に!』

「驚かない・・・シンジ君は・・・ATフィールドを・・・
 初号機があれを作り出しているって、わか・・・
 いえ、咄嗟に本能的に理解してしまったの?」

 リツコはシンジの行動を即座に分析する。(流石・・・)

 初号機は、ATフィールドで、使徒の光線を弾きつづける。

「救助者、警備員、無事に安全圏内に避難完了!」

 マコトが叫ぶ。

「もう大丈夫だよ! その場から移動して!」

 マコトの報告を聞いて、またシンジが指示を出す。

 冬月とゲンドウ、ミサトはその様子を驚いてみている。

『良し!』

 初号機がその場でジャンプし、使徒の背後に降り立つ。

『さっきは、よくもやってくれたな!』

 使徒が慌てて振り向く前に、足払いをかける。

 使徒が盛大に転ぶ。

『このヤロー!!』

 初号機が馬乗りになって、使徒を殴り始める。

「いけない! 離れて!」

 シンジは光線の事を思い出して叫ぶ。

『何!』

 初号機が飛び退くと、その場所に光のヤリのようなモノが空を切る。

 そのヤリは、使徒の腕から生えていた。

 シンジが危惧したのとは、チョッと違うが、シンジが出した指示は、
本当に的確だった為、発令所の一同は驚く。(おぉ!)

「ま、まさか、さ、先読みの才能・・・い、碇、お、お前、この事を」

 心底驚いたように、冬月がゲンドウを見る。

 シンジの為に、ワザワザこの役職をゲンドウが用意した事になって居るからだ。

 先読みの才能、他にも言い方はあるし、その種類も多いが、
戦い等において、相手の行動等が咄嗟にわかってしまう才能である。

 一般的に置いては、その道における熟練の者以外は、
普通持てないとされている。

 だが、場合、自分の経験で、相手の先を予測するのであり、
近いモノであっても、本当の先読みの才能ではないのであるが・・・

 だが、何事にも例外はあり、それを先天的に持っているような人間も、
極少数だが居ると言う。

 だが、持っていても、大抵の者は、その進んだ道がその才と違う場合が多く、
その開花する事無く、一生を終えることが多い。

 しかし、もし、それが開花した場合、その者は、どんな熟練の者よりも、
遥かに適切な行動が取れる。

 それは、予測ではなく、確実なる予知に近いモノであるのであるから・・・・

「し、知るわけないだろう・・・
             
(朋意君にシンジにも『何か役職(仕 事)を与えてあげた方が、
シンジに負い目を感じさせないで良い』とか、言われてたから、
用意してた地位だぞ)・・・しかし・・・」

 そして、冬月とゲンドウはシンジを驚いた目で見て居る。

「すいません!」

 そんな2人を全く目に入れていない(そんな余裕もない)シンジが、
マコトに声をかける。(丁度近くに居たから)

「な、なんだい!」

「何か、長い、剣かヤリみたいな武器はありませんか?!
 アレじゃ不利です!」

「な、長いのなら、確か、プロトタイプのソニックグレイブが!」

 マコトは即座に答える。

「初号機の傍にあるウエポンラックビルに出せるわ!」

 マヤが付け足す。

「急いで!」

「ハイ!」

 マヤがキーボードを操作する。

「しかし、アレはまだ不安定で、強度が・・・それに、少しの時間しか・・・」

 シゲルが言う。

「使徒に弱点はないんですか?!」

 シンジがリツコに、慌てて尋ねる。

「た、たしか、赤い所がコアだと思うわ!」

 リツコが即座に答える。

「そこを集中して狙って!」

『了解!』

 既にソニックグレイブを受け取っていた初号機が、グレイブを構える。

『ソラ! ソラ! ソラ!』

 使徒の攻撃を避けながら、ATフィールドを完全に中和しつつ、
初号機は使徒のコアに確実に当てていく。

「いける!」

 ミサトが叫ぶ。

 しかし、使徒のコアにヒビが入った途端、グレイブが壊れてしまう。

『クッ!』

「やっぱり試作品じゃぁねぇ・・・」

 ミサトが呟くように言うと、
シンジとマコト以外の周りの(特に技術部辺りの)人達から睨まれる。
(余計な事を言うから・・・)

「予備は!」

 シンジがすぐさま叫ぶ。

「ありません! 元々試作品だったので使用できるのは、さっきのだけです!」

 マコトがシンジに言う。(何故か丁寧語に・・・)

「他の武器は!」

「今は、近接攻撃用のプログレッシブナイフしか!」

 マヤが叫んだ時、初号機がプログレッシブナイフを装備する。

『後は任せろ!!』

 シンが叫ぶ。

 しかし、次の瞬間、使徒がイキナリ初号機に飛び掛り、
初号機の上半身を包み込んで光りだす。

 途端に初号機との通信が切れる。(使徒の身体で遮断されているらしい)

「まさか、初号機もろとも自爆する気?!」

 ミサトが叫ぶ。

「何てこと!」

 リツコや、発令所の面々も目を見開き焦る。

「「「「「シン(君、朋意君、さん)!!」」」」」×無数

 発令所の全員が叫ぶ。

 しかし、光は唐突に消え、
使徒の身体を、プログレッシブナイフを持った初号機の右腕が突き抜けた。

 初号機が右腕を横にすると、使徒はそのまま崩れ落ちるように初号機から離れる。

 ズズ〜ン!!

 使徒が地面に落ちた音が響いてきた。

「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」

 発令所の面々は黙って、モニターに映る初号機を見る。

 初号機がプログレッシブナイフを持つ右腕を振って、使徒の血を掃い、
それを元に戻すと、シンから通信が入る。

『ミッションオーバー・・・・・・で、何所から戻ったらいい?』

 シンの言葉で、発令所に歓声が上がる。





 戦闘後、少し経って・・・ネルフ本部内、どっかの休憩所

「父さん、結局、説明せずに行っちゃったよ・・・」

 シンジが呆れたように呟く。

「まぁ、仕方ないわ、イキナリ会議が入ったんですもの・・・はい、どうぞ」

 リツコが、シンジにジュースを渡す。

「あ、ありがとう御座います」

「・・・シン君は?」

 レイがリツコに訊く。

「大丈夫・・・今シャワーを浴びて、ココに来る手筈になってるから」

「そう言えば、さっきのミサトさんは?」

 シンジが先程まで一緒にいたミサトの事を訊く。

「あぁ・・・あの娘には、読んでなかった資料を、
もう一度、確り読ませているわ・・・徹底的にね」




 その頃、ミサトは・・・与えられていた作戦部長室で、書類の山に埋っていた。

「何でこんなに多いのよ〜」

「貴女が、全くしないで、貯めるからでしょう・・・
(赤木博士が増やしたな・・・罰で・・・とばっちりは僕にも来るのに・・・)
 一応、今回の作戦の反省レポートだけはやってあげますから、
せめて、このネルフ本部の通路配置とか、役職とか、それに関する権限とか、
必要最低限の事を覚えて下さいよぉ〜」

 マコトの泣き言は、外まで聞えてきそうだ。



 そんな事を話していると、休憩室に蒼いジャケット羽織ったシンがやって来た。

「よ! 待たせた」

「シン君! 大丈夫?」

 レイが即座に近付いていって訊く。

「アハハ、大丈夫だよ、レイちゃん・・・
 しかし、シンジ君が、あそこまで指揮が上手いとは思ってなかったよ・・・
 流石、レイちゃんのお兄ちゃんだ(ひょうたんからコマだね・・・しかも・・・)」

 シンは感心しながら言う。

 レイは少し頬を染める。(少し嬉しいらしい)

「そうね、まさに適確だったわ(戦いの場における先見の明・・・
 指揮官として、最高の才能を持って居たのね)」

 リツコも誉める。

「そんな、あの時は必死で・・・」

 シンジはテレている。

「じゃぁ、行こうか」

 シンが歩き出す。

 レイとリツコは後について行こうとする。

「え? 何所に?」

 シンジが不思議そうに言う。

「俺が、君をココに呼ばせた理由・・・
 そして、今まで、君が最も会いたかった人だと思うよ」

 シンジは不思議そうな顔をして、3人の後を追っていった。




 その頃、暗い部屋の別室。

 そこには、ゲンドウと五人の老人が居た。

「ふん、確かに、予想されていた被害より、遥かに少なかった事は認めよう」

「しかし、なぜ、ネルフの一部をワザワザ公開したのかね?」

「左様・・・本年度になってから、行き成りの半公開組織に変えた為、
かなりの支部が混乱していたよ」

 ゲンドウに老人が訊いて来る。

「その件に関しては、公開する前、前回の会議の時にも、
言ったと思いますが?」

 ゲンドウは表情を崩さずに、淡々と言う。

「あの時は、こちらに話を通さず、殆ど一方的だったではないかね!」

「しかも、既に後戻り出来ない状態で・・・」

 老人達が文句を次々に言う。

「もう一度説明をしてくれないか・・・碇」

 ゲンドウとは対面にいる老人、
人類補完委員長であるキールが静かに言う。

「良いでしょう・・・
 より多くの予算を手にする事と、戦自や国連軍と連携を取りやすくし、
被害などを減らして、効率よく、予算を運営させる事・・・
 そして、我々の計画、人類補完計画の隠れ蓑です」

 ゲンドウが一気に言う。

「なぜ、そうなるのかな?」

「情報をある程度、公開する事により、不信感を軽減し、予算を得易くさせ、
ネルフを動かしやすくする為ですが?」

 ゲンドウが答える。

「そうではない、何故、情報を公開することにより、
我々の計画の隠れ蓑になるのかと言う事を訊いているのだよ!」

 老人の1人が、机を叩きながら言う。

「これは異な事を、まさかゼーレの幹部の頂点、その十二使徒に、
籍を持たれているお方等が、このような簡単な事が分らないとは・・・」

 ゲンドウは本当に不思議そうに言う。

「そうではない・・・
 我々は君の真意を問いただす為に、訊いているのだよ」

 キールが言う。

「それなら、そうと初めから言って下されば宜しいのに・・・」

 ゲンドウは本当に意外そうに言う。

「回りくどく言われなくとも、ちゃんと答えますよ」

「ならばさっさと訊かれた事に答えよ!」

 横に居る老人が怒鳴る。

「良いでしょう・・・人間、隠されると、余計に知りたくなるものです。
 それならば、一部情報を自ら与えてやり、更に、その情報に、
               
『相手に都合の良い情報』を()り交ぜる事により、
『相手に都合の良い解釈』をしてもらった方が、何かと誘導し易いからですよ。
 それにより、真に隠さねばならない物には気付かれ難く出来ますし、
予算に関しても、浮いた一部を計画の一部に回す事が出来ますので、
そうしたのですが?・・・
 元々、使徒が本格的に現れた事により、計画を隠し通す為に、
表の行動である『使徒殲滅』をつつながく行なうには、
今までのやり方では、計画をスケジュール通りに進めて行く為の予算は、
最低限を下回り始める事は判っていましたから・・・
 発動までに補完計画が表に漏れると、
いくら貴方達も何かと拙いでしょうからな・・・」

「・・・そ、その為のマギではないのかね?」

 老人の1人が訊く。

 その為に、ゲヒルン時代には、潤沢な予算を与えて居たのである

「いくらなんでも、マギはただの機械、
もし外的要因で、その情報が漏れでもしたら大変です」

「666プロテクトがあるではないか!」

「いくら、666プロテクトでも、内部からの引出しには無意味ですよ・・・
 それに、制限時間もあります。
 ただでさえ、ネルフは対人設備を削ってまで、
計画の進行及び外部に対する計画の隠蔽工作に力を、注いでいるのです・・・
 まぁ、隠蔽工作には、対人設備が不十分な為、ゲヒルン時代ならいざ知らず、
今のネルフの状態では・・・かなり不安を残します」

 ゲンドウが、今までと違い、まるで全てを隠さず話すように言うので、
老人達は少し動揺する。

「もし、侵入者に、内部から、やられては、下手をすれば、貴方達の事も、
明るみに出てしまうかも知れないのです・・・
 勿論、そうならないように、かなりの労力を裂いては居たのですが、
それはソフト上の事であり、物理上等ではいささか不安が残ります・・・
 さらに、使徒殲滅まで、これから加わってくると、保安状態に不安が残ります・・・
 つまり、今までの予算では、計画の途中に必ず支障が出てしまう可能性が、
非常に高いのですよ・・・
 もし、私に反意があると思い、対陣させたいならば、どうぞ・・・
 私は貴方達の同志であり、忠実に計画を進めてはいますが、
十二使徒である貴方達が私を『信じられ無い』と仰られるのであれば、
私は誠意を見せる為にも、外から計画遂行を見守らせて頂きます・・・」

 つまり、ゲンドウは、補完計画を行なう為に不安要素を取り除く為なら、
『自分はこの地位に未練はない』とまで、言っているのだ・・・

 その態度に、老人達は、騒ぎ始める。

 なぜなら、ゲンドウが、本気でココまで自分達の計画に尽力を尽くして居るとは、
思ってもいなかったからだ。

 絶対に何かを隠しているとまで思った。

「しかし、今、私を対陣させ、別の者にやらせたとしても、
部下との関係を再構築するか、新しいスタッフを準備しなけれななりません・・・
 賭けても良いですが・・・どちらをするにしても、例え、
今の予算の数倍かけようとも、計画のスムーズな進行や隠蔽は不可能です・・・
 使徒が来る以上、それを行なうのは、計画を諦める事と同意であると思いますが?」

「「「「「ムゥ・・・」」」」」

 あくまでもゲンドウは姿勢を崩さない。

 確かに、ゲンドウの言う通り、今の時点でゲンドウを切ったとしたら、
彼の直属の部下である現在計画遂行の中枢の人間達は、
全て取り替えなければならない。

 行き成り、自分の上司を対陣させられた彼等が素直に従うとは考え難い・・・

 そうなると、補完計画は殆ど一からやり直しと同じになる。

 例え、何とか今までの半分の状態から進められるとしても、
約束の時までに準備は絶対に終わらないし、
下手をすれば、使徒殲滅出来ずに全てが終わる・・・

 老人達は、それを即座に理解していた・・・

 そして、元々、計画の最終段階で、全ての罪などを押付け、
信頼出来ないゲンドウごとネルフ本部を潰す為に、その予算を削って、
対人用の設備投資を最低限以下に落とすように、色々して居たが、
それが計画の遅れや、自分達の地位を脅かす原因になるとまでは、
ゲンドウに言われるまで、考えても居なかった。

「で、では、あの初号機のパイロットについては?」

「そ、そうだよ・・・元々あの機体は、君の息子に与えるのではなかったのかね?!」

 今まで、考えていなかった自分達の落ち度を誤魔化す為にも、老人達は焦って言うが、
それはある意味、計画の狂いに対する根本に近い所であった。

 しかし・・・

「これは、また異な事を・・・
 私は、この計画を道楽でやっているわけではないのですよ?
 アレは自分の息子に与えるには、過ぎた玩具になると思いますが?
 それに、元々、私の息子が動かせるとしたら零号機の方です。
(フン、息子に与えたら、与えたらで、それで嫌味を言ってくるクセに)」

 心でそんな事を考えながらも、更に、表にはださないで、
呆れたように、ゲンドウが言い返す。

 ざわつく老人達。

「・・・・・・は、初号機に・・・ではないのか?」

「確かに、そのような・・・・・・・」

「しかし・・・ではないのか?」

「あぁ・・・しかし・・・では?」

「確かに最初の・・・」

「それでは・・・」

 老人達は暫く話し合うと、ゲンドウの方を見る。

「では、あのサードチルドレンは何かね?」

 シンの事を聞いてくる。

「前回、提出した報告書にあった通り、
ドイツ支部が独自にセカンドチルドレンを、戦闘用の、
プロダクションモデルのエヴァンゲリオンのパイロットとして、育てているのなら、
本部でも、それ相応の人材を育てる義務があると思いますが?」

「本部にはファーストが居るではないか!」

「そうだ! なぜ、ファーストをそう育てなかった!」

 老人達は責めるように言う。

「簡単ですよ、セカンドは女、ならば、男でそのような教育をすれば、
どうなるかを出す為です・・・
 同じ性別では、比較が出来ませんよ、同じような結果が出るだけです」

 ゲンドウは、『何をあたり前の事を』と言わんばかりに答える。

「では、何故、最近になるまで、我々にも黙っていた!」

「訊かれませんでしたからな・・・
 それに、他の支部に余計な懸念をもたれるのはどうかと思いまして、
本部内で、教育していただけです・・・
 あの頃は完全な非公開組織でしたからな・・・」

 さも当然とばかりに、ゲンドウは言い返す。

「なるほど、貴様らしい言い分だな・・・
 では、大学もまともに出てない小僧が、なぜあそこまでの頭脳があるのだ!・・・
 更に、そんな小僧を何故あそこまで自由奔放にさせるのだ!!」

 そう、シンは十数年先、いや、それ以上の技術を使っている為、
誰もその技術を全然理解出来ない。

 更に、最近になって、かなりの特許(他人には原理が理解不能?)と、
博士号を一度にいくつか取っている。

 それなのに、ゲンドウが彼を自由させている事は、
ある意味ゼーレにとって恐怖であるからだ。
(敵に回られたら、対処のしようが無いからね)

「彼の頭脳こそ、我々の教育の賜物ですよ・・・
 大学以上の教育を施しましたからな・・・
 学歴など、真の実力に比べれば、役に立たない紙切れのようなもの・・・
 最も、去年の内に一つ大学を卒業させましたが・・・ご存知でなかったので?」

 ゲンドウは、そう言って、笑みを浮べる。

「そういえば・・・確か、一年足らずで、あそこを卒業していたな・・・
 しかし・・・ネルフとは全く関係無いルートで受けさせていたではないか・・・」

「ですから、あの時は、まだ、非公開であり、
サードの存在は極秘でした・・・」

「なぜ、我々にも、極秘としたのかね?」

「それについては、ネルフ本部の内情までもが悪かったからですよ・・・
 事実、何故か、外部には極秘であったファーストチルドレンは過去、幾度となく、
謎の組織に襲われましたからな・・・
 ネルフ本部施設内でも、襲撃は二度ほどありましたからな・・・
 勿論、何とか、ギリギリで、ガード出来ましたが・・・
 それ以来、対使徒戦の切札でもあるサードは、
完全にガードしなければならないと思ったのです・・・
 元々、私が不信がられるのは分ってましたが・・・
 話しても不信感のみで、疑ってばかりいる、
一部の考え無しの者達による暴走で、
計画そのモノを瓦解させる訳にはいきませんからな!

 その危険性は、ご理解いただけるでしょう!」

 それを聞いて、老人達は息を呑む・・・

 何人か冷や汗をかいている。

「そして、どうせ、疑われて居るなら、ギリギリまで、隠し通し、
実績を見せてから、認めさせる以外、方法がないと、冬月等と話しあって決めました。
 もし、そうしなかったら、『机上の空論、口だけで実際はわからないから』と考えた者達が、
試しにチョッカイをかけようとし、計画の重要なキーパーソンを、
失う事になり兼ねませんからな!」

 ゲンドウがもう一度念を押すように、ある老人達を細めで睨みながら、そう言った。

「「「・・・・・・・」」」

 冷や汗をかいている老人達が、目をそらす。

 彼等は、ゲンドウが自分達に隠れてやっている事を極秘裏に調べる為、
色々とちょっかいをかけていた。

 その試みは全て失敗して居るのだが、もしバレても、
『碇に自分が見張られて居ると言う事を理解させ、余計な事をしないようにする為』
等と言う言い訳で誤魔化す気であった。

 しかし、今、それがバレた場合、自分達が考え無しに行なった行動で、
ゲンドウが内部に対して、不信感を持ち、怪しい行動をとっていたとされ、
その為に、無駄な事をして、計画を遅延させたと言う事にされかねない。

 そうなってしまえば、何らかの処罰が委員長であるキールから、
下される可能性が大いにある。

 その為に、何とか、疑われないように行動する事を考えていた。

「しかし、サードは中々の頭脳の持ち主のようだが・・・大丈夫なのかね」

 キールは、そのまま話を進めていく・・・

 おそらく後で(ゲンドウの居ない所で)、政治的行動をとるのであろう・・・

「ご安心を、自由にさせているようで、手綱は我々がとっています・・・
 それに、大人の固まった思考より、子供の柔らかい思考の方が科学的に見ても、
優れた発想が出来ますからな・・・
 それに、大人より子供の方が御しやすいんですよ・・・
 好きなモノを与えてやれば、いくらでも協力的になりますし、
大人と違って、余計な詮索はしませんからな・・・」

 ゲンドウが、大袈裟に説明をした。

「なるほどな・・・(それでファーストをサードと・・・)それで成果は?」

「今回の報告書を読んで貰えれば分ると思いますが?」

 老人達は報告書に目を通す。

 どうせ、あまり変ってないだろうと思いつつ目を通すが・・・しかし・・・

「何!」

「これは本当かね!」

「イキナリ、遅れを取り戻した始めただけではないぞ!」

 報告書を片手に騒ぎ出す老人達。

 それを見ながら、ゲンドウはニヤリとする。

「発想の転換ですよ・・・
 大人の固まった思考と違い、子供の柔らかい思考によるね・・・
 彼は我々の計画にも十二分以上に役立つように育ちました・・・
 我々、大人は、ただそれを、制御してやれば良いんです・・・
 元々、『計画をより完璧に仕上げる為、スケジュールの遅延を取り戻す為、
機密を出来る限り守る為、予算を外部から引き寄せ易くする為、
ネルフを半公開組織とする』と言うアイデアは、彼のモノです・・・
 彼は我々、ネルフの上層部に信頼を置いています・・・所詮子供ですからな・・・」

 ゲンドウの説明と報告書で老人達はいい気になる。

「なるほど・・・君に叛意の無い事は分った!」

「確かに素晴らしい実績だ!」

「君が、サードをある程度、自由にしている事も認めよう!」

「いや、それでいて、キミが、しっかり手綱を握っているんだったな!」

「これで、われ等の望みに、一歩、いや、三歩は進んだね!」

「我々も準備を怠らないようにしよう!」

「左様、このままでは、碇君に蹴落とされるよ!」

 などと口々に言いつつ、計画が思った以上に進んでる事が嬉しいのか、
ニヤケている老人達。

「では、碇君、更なる特別予算の事も一考しておこう!」

「いや、是非、即座に送らせよう!!」

「いや、碇君、君ような男が同志でよかった!」

 そう言って居るのは、ネルフ本部に色々とチョッカイをかけていた者達である。

 自分達から予算を増額させる事により、疑いをそらそうと言う考えもあるので、
大袈裟に喜んだフリをしているのである。

 最も、自分達から、個人的にかなりの予算を投入する事によって、
ゲンドウから来るであろう不信の目を誤魔化すと言う事もするのだが・・・

「では、後は任せたよ、特別予算は期待したまえ!!」

 そう次々言いつつ、消えて行く老人達。

「全ては我々の手の内だな・・・碇」

「そうですな・・・キール議長」

 ゲンドウが答える。

 そして、最後にキールが消え、部屋が明るくなる。



 少ししてから、冬月がゲンドウの傍にやってくる。

「完璧に騙されてるな、ゼーレの老人達は・・・」

 冬月はニヤリとしながら、ゲンドウにそう言った。

「あぁ・・・老人はボケが早い・・・
 希望を持たせれば、スグにその前の疑問を忘れる」

 ゲンドウはいつものポーズを取りつつ答えた

「特別予算か・・・」

「あぁ、おかげで、彼の計画が一段と早くなるし・・・」

 冬月はゲンドウの方を見る。

「お前の償いも・・・な」

「あぁ・・・老人は、こちらに回す事によって、
余計に自分達の計画が遅れる事に気付いてないからな・・・
 その分こちらに余裕ができる・・・
 しかし、彼のシナリオは、本当に良く出来ている・・・
 このシナリオで行くと、最初の内は調子よく進むが、
結果的には、老人達の計画は途中で、矛盾が発生し、発動不可能になる・・・
 しかも、余程詳しくないと、いや、詳しいからこそ、土壇場にならない限り、
これは気付けない・・・
 まさに老人達のシナリオを潰す側にとっては、都合の良いシナリオだ」

「教育した者が良かったんだろう」

 冬月は嬉しそうに言う。

「自慢ですかな?・・・冬月先生」

 冬月の方を振り向きながら、ゲンドウが言う。

「あぁ、本当に誇らしいからな・・・
 例え違う未来の・・・別な自分の成果としても」

「・・・息子の、いえ、孫のような者・・・ではないのですかな?」

 ゲンドウが冬月に訊く。

「あぁ・・・しかし、シンジ君も中々の逸材じゃないか・・・
 ハッキリ言って、驚いたぞ」

「えぇ、私とユイの息子ですから・・・しかし、それにしても・・・」

 暫くの間、冬月とゲンドウは、お互いを誉めあったり、
自慢しあったりしていた。



 シンジ達が連れてこられたのはある集中治療室だった。

「ココに誰がいるの?」

「・・・お母さん」

 シンジの疑問にレイが答える。

「え?」

「入るよ、シンジ君」

 シンが中に入っていく。

「あ、うん」

 シンジが中に入ると、中央に一つだけあるベットに、1人の女性が寝ていた。

 その女性は、茶髪であったが、レイに良く似た顔立ちをしていた。

 しかし、肌にあまり生気が無い。

「シンジ君とレイちゃんのお母さん、ユイさんだよ」

「え?」

 シンジは目を疑う・・・そして記憶の中にある母の面影を思い出す。

「か・あ・さ・ん・?」

 シンジは呟くように言う。

「あぁ、今はまだ眠っているだけだけど、大丈夫・・・
 俺が必ず救い出してやる・・・
 でも、まだ触れてはいけないから、ココで待っていてくれ」

 そう言って、シンはユイに近付いて行く。

「第二の覚醒を・・・」

 シンはそう言って、赤い珠をユイの上に掲げる。

 赤い光が珠から発生し、ユイを包み込む。

 そして、赤い珠と光が消えた途端、今まで白かったユイの肌に赤みが、生気が出てくる。

「今のは?」

 シンジはリツコに訊く。

「私もよく分ってないんだけど・・・
 シン君が言うには、ユイさんの封印されている五感や意識を、
解放する為の呪術的な儀式ですって・・・(科学的に見ても、よく分らないけど)」

「じゃぁ、母さんは」

「えぇ、その内、完全に回復なされるわ・・・
(でも、取り込まれていた分、若いなんて・・・)」

 シンジはシンの方を見る。

 儀式は終わったのか、シンの手から、紅い珠は消えていて、
ユイの肌は、さっきとは違い、赤みをおびて来ている・・・

「朋意君・・・ありがとう」

 シンジは涙を浮べながらシンに礼を言う。

「ハハハ、できれば、名前の方で読んでくれるかい?・・・
 そっちはなれてないからね」

 入り口付近に戻ってきながらシンが言う。

「ゴ、ゴメン」

「謝る事は無いさ・・・
 それと、もしスグに謝る癖があるなら、直した方がいいよ」

「そ、そうかな?」

 シンジは恥かしそうに言う。

「あぁ、逆に変な勘違いをされて、結局、周りの人も迷惑するし、
君も自信を持って生きていかないとね・・・碇シンジ戦闘指揮部長殿」

 シンはそう言って微笑む。

「え?」

 シンジは良く分からないと言う顔をする。

「あれ?・・・聞いてなかったのかい?」

 その顔を見て、シンが不思議そうに言う。

「うん・・・」

「司令も説明しなかったし、葛城一尉もしなかったらしいわ」

 レイが付け加える。

「・・・や、役にタタねぇ〜な、あいつ等」

 頭を掻きながらシンが言う。

「で、でも、ミサトは(緊急時における)作戦立案能力は高いらしいのよ・・・
 司令だって、ゼーレの老人達でさえ、口先三寸で、丸め込めるんだから・・・
 最も、貴方は別みたいだけど・・・」

 リツコは少し焦りながら、親友のフォローをする。

「まぁ、司令がその手の手腕がかなり凄いのは、俺も認めるが・・・
 問題は、あの作戦部長だな・・・
 性格とか、彼女の目的とか考えると、彼女の対使徒戦関する指揮能力は、
限りなくゼロに近いと思うぞ・・・いや、下手をするとマイナスかもな・・・」

 シンは冷静にミサトを分析する。

「目的って・・・知ってるの?」

 リツコが意外そうに訊いて来る。

「ん?・・・そんなの、彼女の経歴と身の上調査結果を見れば一目瞭然だろ・・・
 それに会った感じでも、彼女は使徒に対して、
かなりの復讐心を抱いてると、俺はみたね・・・
 そんなのに振り回されては、マトモな指揮は出来んだろう・・・
 それにマギの記録から、彼女のシンジ君に対する対応を見ると・・・
 自分だけは、悪人に見られたくないらしいな・・・
 勘違いしてたとは言え、最初には、乗せる事に反対しているような事を言ってたくせに、
最後は、色々と理由をこじつけて結局シンジ君を初号機に載せようとしてた・・・
 さらに変な偽善主義の傾向がある・・・
 戦っている人の事を考えているフリをして、
結局、何も見てない自己満足主義者だろう・・・
 そう言えば、戦いの最中も、周りの士気を下げるような事を、
平気で言っていたしな・・・」

 シンがミサトの事をアッサリ(と言うか、結構酷く)看破する。

「しかも、俺なりに、松代にあったシュミレーション等の戦略や戦術における傾向、
それに、軍に隠されていた実際の資料で性格分析をしたが・・・
 気を付けないと、彼女は感情的になったら、その気は無くとも、
無用で、目先だけの正義感をだしたり、
自分の言う事のきかない部下や上司を、敵と見なしたり、
兵を使い捨ての道具と勘違いしてし、『作戦の為だ』と言って、無駄に殺すぞ」

 更に中々辛辣な事を言う。(あってる気もする・・・)

「あ、呆れた観察眼ね・・・
(確かに・・・ミサトにはそう言うとこが、よく見られるらしいけど)」(見られるの?)

 リツコは驚く。

「シンジ君も気を付けろよ、彼女が感情的になったら、後を見せないか、
信頼できる人に見張ってもらえ・・・」

 シンジに真顔で忠告するシン。

「う、うん・・・」

「い、いくらミサトでも、子供相手に・・・」

 リツコが庇うように言うが・・・(大学時代からの友人だから、信じたいんだろう)

「ストレスが溜まると、誰でも見境無くなって、巨大なミスをする・・・
 特にアレはそう言うタイプだ。
 さらに自分で自分を追い込んでいるようだからね・・・
 それに気付かず、又は、自分自身に言い訳をしつつ・・・
 結果、非人道的な事を平気でしてする可能性も高い・・・
 そして、後で、その事を後悔し、苦しんで、また重大なミスを犯しかねない・・・
 何か、近くで支えてくれるような人なんかが居ない限りな」

 シンは言い切った。

「そ、そこまで・・・(でも、この子の分析は確かなのよねぇ〜・・・
 今まで殆ど外した事ないし)」

 リツコは冷や汗をかく・・・

「そう、葛城一尉は怖いのね」

 レイは納得している。

「それで、朋「シン!」・・・シン君」

 シンジがまた、朋意と言いそうになったので、シンは自分の名前を強調する。

「母さんはどの位で元に戻れるの?」

「・・・今は詳しくは言えない」

「そう」

 シンジは残念そうに言う。

「でも、一年、いや、半年以内には、意識を取り戻して見せるよ・・・
 シンジ君やレイちゃんの為にもね」

 力強く断言するシン。

「「シン君・・・」」

 シンジとレイはシンの方を見て呟く。

「ところで、シンジ君の住む場所は?」

 シンはリツコに訊く。

「え?・・・私は聞いてないけど?」

 リツコは驚いて言う。

「・・・(まったく)・・・治療器具等の影響を考えると、
病院内では、携帯は使えないから、皆、外に行こう」
(皆も、病院内で携帯電話は使っちゃいけないよ)

 そして、全員は病室を出て、病院の中庭に行った。




 病院の中庭

 シンが電話をかけ始める。

「あぁ、俺だ・・・会議は終わったんだろう・・・用件?
 『シンジ君の住居』に決ってるだろ!・・・
 お前の息子の住む所だ・・・・・・はぁ?・・・なんだと!・・・
 馬鹿か貴様!・・・もういい!・・・
 チョッと、おやっさんと代われ!・・・・・・

 あ!おやっさん?・・・その馬鹿が、また勘違いしてるからさ・・・・・・
 シンジ君の住居等についての事だよ・・・
 あぁ、そんなとこに住まわせて、如何するんだってんだ!・・・
 お互いの為にもならんし、余計な衝突も出るし、特別な監視も居るぞ!・・・
 あぁ? 当然だろう、二人の役職の関係を考えろよ・・・
 おやっさんも、考えろよなぁ〜そんなんじゃ、ダメだろうが!・・・
 交流以前のもんだいだ!・・・何のために、作戦部長と指揮部長を分けたんだ?!・・・
 なんだったら、俺達の部屋に・・・それは、隣の俺達の部屋と繋げればいいんだから・・・
 いいじゃん、どうせ、あそこもネルフのモンなんだから、
大体、あそこじゃ、環境が悪すぎる!・・・
 あぁ、調べさせて、聞いて置いた、後でおやっさん達にも、それ回してやるよ・・・
 そうそう、どうせ、あそこは、俺等位しか住んでないんだから・・・
 アレを保護者代理にぃ〜?・・・チョッと馬鹿に代わってくれ・・・

 アホ! 何の為にお前がいるんだ!
 なに?・・・・・・ばぁ〜か、親の字をどう書くか言ってみろ!・・・漢字でだ!・・・
 分ったか、偶に必要な時に出てくれば良いんだ!・・・難しく考えるな!・・・・・・
 同居が出来ないからって、任せる相手をかんがえろよ・・・
 そうだ、それで良い・・・そん時に、初めて代理を出しゃいいんだよ!・・・
 ほう、その辺りは評価しといてやる・・・
 あぁ、勿論、第二段階は終った・・・・・・
 バ〜カ、そんな事してみろ!・・・お前は確実に暴走するだろう!
 そうなったら、復活どころか、彼女に、二度と触れられなくなるぞ!・・・
 俺が許可するまで、ダ・メ・だ!・・・お前の為でもあるんだぞ!・・・
 そうだ、分れば良い・・・そうだ、早速そうしとけよ・・・全く」

 シンの長い電話は終った。

 電話の途中から、リツコが頭を押えていたのと、
レイが面白そうに微笑んでいたは、お約束だろう。

「・・・と言う訳で、シンジ君の住居は俺達と同じ場所、隣の部屋だ・・・
 一応繋げるから、一緒の部屋って言ってもいいな」

 それを聞いて、レイが、今度は少し嬉しそうな顔をする。

「へ?・・・あの、シン君は、いったい、何所にかけてたんですか?」

 シンの言葉に、呆然としていたシンジが訊く。

「た、多分、司令と副司令の所ね・・・
 会議は終わっていたみたいだったから・・・」

 頭を押えていたリツコが答える。

「と、父さんって・・・」

 また父の威厳が無くなったかもしれないゲンドウ・・・チョッと哀れ・・・

「だ、大丈夫よ・・・司令達に、あそこまで言えるのは、世界中、何所を捜しても、
シン君しか居ないから(多分・・・)」

 リツコがフォローする。

「えぇ、大丈夫、司令は、シン君と副司令以外には、強いわ・・・・・・多分」

 レイも、一応フォロー?する。(多分って・・・)

「と、父さんって、肩書きはNo.1なのに、実はNo.3?」

「さぁ、それはどうかな?・・・一応は、No.わ・・・2だとは思うぞ・・・
(今の所はだが・・・)」(ユイも復活するしな)

 シンが悪戯っ子ぽく、チョッと言い直しながら、言う。

「とりあえず、ミサトにでも送らせましょうか?」

 リツコが訊く。

「そういや、シンジ君は、葛城一尉の車で来たんだっけ・・・どうだった?」

「じぇ、ジェットコースターより酷かった・・・」

 思い出したシンジは、顔を蒼くして、正直に答える。

「・・・なるほど、早いだけか・・・まぁ、安心しろ、リツコの運転は安全だから」

「み、ミサトと比べて欲しくないわね・・・って、私が送るの?」

 驚いたようにリツコが言う。

「まぁ、まぁ、夕飯奢るから」

「外食?」

 リツコが訊く。

「俺とレイちゃんの手作りだろう・・・勿論」

「のった!」

 そんな会話の後、リツコの車に乗って、
3人は【コンフォート16】と言うマンションに向かった。



 ちなみに、ミサトは『シンジ達を送る』と言う名目が無くなった為、
作戦部長室で、書類に埋もれて、サービス残業決定。(ペンペンは?)

「エビチュ〜〜〜!!」

「だったら、早く覚えてください!・・・
 こっちも付き合ってあげてるんだから!
(簡単に纏めてあげてるのに・・・)」

 マコトがミサトに怒鳴ると言うまた珍しいシーンがあったらしい・・・




「わぁ〜」

 部屋に着くなり、シンジが驚く。

「多分、荷物は直ぐに届くわよ・・・
(早速、ミサトのマンションの部屋の前から運ばせてるみたいだし)」

 リツコが言う。

「・・・随分、広い部屋ですね」

 部屋を見たシンジがリツコに感想を言う。

「元々、大きくなった子供が二人いる家族用に作られてるからね」

 リツコが説明する。

「この辺りだな」

「えぇ・・・造りから言って、この辺りがいいと思うわ」

「何をしているの?」

 リツコは、壁にチョークで、何かの印を書いているシンとレイに訊く。

「あぁ、俺達の部屋と繋げるドアか通路を作るからな・・・
 丁度いい場所に印を付けてるんだ」

「えぇ、ココなら、壁を取り払い、お互いのリビングを繋げるだけで済むの・・・」

「客が沢山来ても大丈夫だしな」

 そんな会話をしていると、ベランダを覗きに行っていたシンジが、驚きの声をあげる。

「うわぁ〜」

「如何した?」

「如何したの?」

 シンとレイがシンジの所に行く。

「あらあら」

 リツコはそう言いつつ後を付いていく。

 そこには、ビルが次々と第三新東京市の都心部に生えているシーンが見えていた。

「凄い・・・・・・」

「これが要塞都市、俺達が守った街さ」

「え?」

 驚いてシンジがシンの方を見る。

「君の指揮で、予想以上に被害が少なかったんだ、誇っていいことだよ」

「そう、お兄ちゃんも頑張ったんだから・・・」

 シンとレイはシンジに微笑む。

「それは良いんだけど・・・そろそろ、あなた達の部屋にでも行かない?」

 リツコが後から言う。

「そうだな、夕食の約束もあるしな・・・
 シンジ君、荷物を置いて、落ち着いたら隣の俺等の部屋にリツコと来な・・・
 リツコ、チョッとシンジ君を手伝ってくれよ・・・荷物が届くんだろうし・・・
 その間に夕飯を作っておくから」

「えぇ、腕によりをかけるわ」

 シンとレイが二人並んで部屋を出て行く。

「・・・リツコさん」

「何?・・・シンジ君」

「もしかして、シン君とレイって・・・」

「えぇ、同じ部屋に住んでるわ」(同棲ですか?)

「えぇ!!!」

 シンジはかなり驚いたらしい。

「一応、寝てる部屋は、(シン君の希望により)別だけどね・・・
 まぁ、シン君の倫理観は確りしている?から、まだプラトニックな関係よ。
(まぁ、時々、レイの方から潜り込んで行くらしいけど・・・
 もしかして、司令がココをシンジ君の住居の候補から、
削除してた理由って・・・(汗))」

 レイの方が積極的らしい・・・し、ゲンドウ達の暗躍も在りそうだ・・・

「そ、そうなんですか・・・」

 リツコが、一応説明をすると、一応シンジは落ち着く。

 そして、運ばれて来た荷物をリツコと一緒に片付け始める。



 シンとレイの部屋のリビング・・・

「どうだ?」

 可愛いひよこの絵柄のエプロン姿(笑)で、
シンがテーブルの上に並んだご馳走を見せて言う。

 因みに野菜中心である。(肉類も多少あるけど)

「ココから、ココまでは、私が作ったの・・・」

 レイもシンと御揃いのエプロンを着けて言う。

 レイが作ったのは、だいたい、三分の一・・・

 つまり、三分の二がシンの作った物であるらしい。

「凄い・・・」

 シンジはまた驚く。

「2人とも、また腕を上げてない?」

 2人の料理を、一口づつ食べたリツコが、少し呆れたように言う。

「まぁ、料理は俺の貴重な趣味だからな」

 シンが元々居た(未来の)世界は、食材などが滅多に手に入らなかった為、
料理はあまり出来なかった。(大抵は赤い水を飲んで暮らしていたらしい)

 よってこの(過去の)世界にきた時、あり余る食材を見た時のシンの感動は、
口では表せないものであった。

 その為、シンは料理をする事に一種の喜びを感じている。

 しかも、暮していた所が、あんなところだった所為もあり、
シンの食材の使い方は、無駄が無く、必ず材料を、一つ一つ使い切る為、
ゴミが少なく、量も若干多くなる。
(皮からヘタから何でも使う為、普通の1.2〜1.5倍の量らしい・・・資源は大切に)

 更に、全てに、こだわって、素材の持ち味を生かしきっている為、
非常に旨いのだ。

 現在シンの腕前は、三ツ星レストランのシェフでさえ、
裸足で逃げ出すほど、凄いらしい。

「シン君に教えてもらってるから・・・」

 レイも恥かしそうに答える。

 シンが教えた為、レイの料理の腕も、それに準ずるモノになっているらしい。

「じゃぁ、頂かせてもらいましょうか」

 リツコが言うと、シンとレイが席に座り、手を合わせる。

「「「「いただきま〜す」」」」

 こうして、四人の夕食が始った。

「これも美味しいよ、二人でレストランか、食堂が開けるんじゃないの?」

 シンジは食べながら、素直な感想を言う。

「ん〜どうだろ・・・
 全てが無事終ったら、それも良いかも知れないな・・・・・・」

 シンがそう言うとレイが嬉しそうな顔で、赤くなる。

「あらあら、(レイも本当に女の子らしくなって・・・シン君に感謝ね)」

 リツコは微笑ましそうに言う。

「そう言えば、リツコは、今日のおやっさん達の予定を知っているか?」

 シンが食べながら、リツコに言う。

「司令と副司令?・・・多分、今日も残業で、本部に寝泊りよ・・・
 私も食べ終わったら、マギで、今回の戦闘の情報を整理しないといけないから・・・
(所員の行動位、知ってるくせにね)」

「じゃぁ、後で詰めるから、届けてやってくれ・・・
 本部の食堂での夜食じゃぁ〜味気ないからな・・・
 沢山作りすぎたし、勿体無い・・・」

「えぇ、いいわよ♪
(ワザと作りすぎた癖に・・・本当に、口は悪くても優しいんだから)」

 いつもの事だが、リツコはシンの心遣いを微笑ましく感じた。

 シンは何だかんだいって、月に何度かは残業したり、
夜勤についている者に差し入れをする。(当然、ゲンドウや冬月にも)

 無論、シンとレイが包んだ物は、冷えても美味しい物ばかりで、
詰められた箱も、結構あり、残業している者達に、
夜食等のオカズの一品として振舞われている。

 当然、ゲンドウが泣きながら食べているのを、
冬月は横目で見ながら、呆れつつ、夜食をとったと言うのは、お約束。

 更に、ミサトが作戦部長室で、配られたそれを食べながら・・・

「エビチュ〜〜〜!!」

 と叫んでいたのもお約束である・・・

 無論、その隣で、マコトは呆れた顔で食べていたらしい。

 こんな事をしてたら、食堂は打撃を受け、文句を言いそうだが、
ネルフ本部の食堂の職員達は・・・

「まぁ、いいですけどね・・・
 おかずだけなんで、白いご飯とかパンとかは、チャンと売れますし、
そうそう全員のお腹を満たせるわけじゃないから・・・
 でも、今度、御二人のレシピが欲しいですね・・・
 て言うか、ココで働いてくれないかな?・・・
 もしくは、教師として、ウチのコックに・・・」

 と言っているとか・・・

 実は、差し入れがココにも来た事があるらしい・・・
(ゲンドウが、食堂のレベルを上げさせる為に回したと言う説あり)

 ココの所員達は、お返しに食材とかを沢山送ったらしい・・・
(当然、それは次回にまた配られる材料になるのだが・・・)



 それから、数日はシンジの転校の手続きをとったり、
部屋の改築をするので大忙しであった。

 無論、転校手続きを忘れて、ロクにしてなかったゲンドウが、
シンにまた怒鳴られたのも、シツコイ様だが、お約束である。

 しかし、シンジはその姿を見て、ゲンドウに対する恐怖は無くなった。

 そのおかげで、シンジは、少しの時間だが、忙しいゲンドウと、
確実に2人だけで話せる時間と度胸を、持つ事が出来るようになったそうである。


                                続く





後書き

 今回、ゲンドウ大活躍!

 おかげで、ネルフは、かなりの予算をゲットしました!

 これで、対人設備も充実しだします。

 で、確かに、大手柄だったんですが・・・

 チョッとしたポカをやって、シン君に怒鳴られてますね・・・

 しかし、そのおかげで、シンジとの溝は、確実に無くなって行ってます。
(実はゲンドウ狙っているとか?)

 更に、2人で会話をする事も出来てますね・・・
(ココのゲンドウ、かなり忙しいハズなんですが)

 また、バレバレでしたが、現在、シンとレイは同棲状態です。

 無論、前のボロボロのところから、ネルフの高級士官用のしっかりとしたマンションに、
引越しています。

 シンの命令で・・・

 ただし、同棲状態になったのは、
レイちゃんの希望(シンはお隣にする気だった)だったりするけど・・・

 その暗躍に・・・ゲンドウ&冬月&リツコの影が・・・

 あのマンションには、現在、シン、シンジ、レイ、リツコのみが住んでいます。

 まぁ、リツコは階が違うけど・・・

 ちなみに、シンジ、レイの保護者は一応ゲンドウ、シンは冬月、
そして有事の際の保護者代理は、全員リツコ又はマヤになってます。

 ミサトは、保護者代理にもなれず、コンフォート17に住んでます。
(シン達のは16ですよ)

 ただ、この設定で、とりもちが心配なのは、ペンペン・・・

 彼?は無事生き残れるのでしょうか?

 ミサトはどんな暴走するのだろうか?

 ミサトの部屋はゴミで抜けるのではなかろうか?(腐って)

 アスカは、ちゃんと出てくるのであろうか?
(どうしようか?・・・コメント係のアスカさん?)

 さて、これらは全て電波が握っているかも(って、おい!)

 電波を呼ぶためには皆さんの暖かいメールが必要です。(でも、ボムやウイルスは不可!)

 と言う事で、次回をお楽しみに・・・



シンジ「うわぁ〜、僕が戦闘を指揮してるよ」
レイ 「的確な指示、凄いわね」
シンジ「ありがとう」
レイ 「葛城3佐・・・いえ、当時1尉の指揮とは全然違うの」
シンジ「いや、それは、状況が状況だし・・・」
レイ 「それでも凄いわ」
シンジ「てへへ」(照れ)
シンジ「ま、まあ、僕の話はこのくらいにしておいて、
    ネルフは全体として僕達にとって良い方向に向かってるみたいだね」
レイ 「ええ、彼のおかげね」
シンジ「うん、そうだね、母さんも戻ってきたし、これからが楽しみだね」
レイ 「そうね」
アスカがやってきた。
アスカ「シンジ〜ファースト〜」
シンジ「あ、アスカ」
レイ 「何?」
アスカ「ん、ちょっと聞いて欲しいのよ」
シンジ「聞く?」
アスカ「今から読むから聞いてね」
アスカは封筒から便箋の束を取り出した。
アスカ「拝啓 とりもち様
    先ず、私の先の行為に関して謝罪いたします。
    私の愚かな行為によって、貴方様の御気分を大きく害し、
    又作品の執筆に関しても大きな影響を与えてしまい
    ・・・・・・・・・
    ・・・(中略)・・・
    ・・・・・・・・・
    今までのことは水に流していただけるのならば、
    嬉しく存じあげます。」
アスカ「こんなもんでどうかしら?」
シンジ「随分長かったね・・・」
レイ 「ええ、」
アスカ「内容については?」
シンジ「うん・・・立派なものだと思うけど・・・」
レイ 「・・内容は良かったわ、」
アスカ「でしょ、これ見たらとりもちの奴もLASを書くわね、じゃあ早速出してくるわね♪」
アスカは封筒を出しに出かけていった。
シンジ「・・・奴って言ってたね」
レイ 「そうね」
シンジ「あ、そろそろ御飯の用意するね」
レイ 「手伝うわ」
シンジ「ありがとう」
レイが椅子から立ち上がった時、何か物音がした。
シンジ「ん?」
レイ 「?・・・碇君、これ何かしら?」
レイは床に落ちた小さな機械をとってシンジに見せた。
シンジ「これって・・ひょっとして盗聴器じゃ無いのかな?」
レイ 「盗聴器?誰が仕掛けたのかしら?」
シンジ「う〜ん・・・だれなんだろ?」