「シンジ」

「ん？」

「思えば、結構長いようで短かったわね」

「そうかな？まぁ、これからの時間を思えば一瞬だけど」

「そういう問題ではないわ」

「まぁ、そうだけど」

「あんまりにも、色々なことがありすぎたの」

「そうかな？」

「シンジはそうでない、とでもいうの？」

「難しいね。ボクは、ここに来てから十ヶ月程度が、あんまりにも色々あったのは認めるけど」

「ワタシは生まれてから離れたことがなかったわ」

「これからは色々なところに行けるよ」

「そうね」

「結局、一年ちょっとしか使わなかったわ、この部屋」

「まぁ、ソレで充分だよ。それに」

「なに？」

「ここで学ぶものは無いよ、多分ね」

「そうね」

「これからは、様々な場所、人、物を見よう」

「ええ」

「もちろん、一緒にね」

「そうじゃなかったら許さないの」

「そう？」

「ええ」

「初号機と量産機はどう？」

「みんな移動させたわ、衛星軌道に、実際に人からは肉眼だろうが機械からだろうが捕らえれないから見つからないわ」

「ずっと巡りつづけるのかな？」

「そうなるわ」

「じゃ、行こうか」

「多分、永遠にサヨナラ。第三新東京市」

「そしてＮＥＲＶの皆さん、もう会わないことを祈るよ」

「これ以上は、付き合いきれないから」

　

嘗てシンジが降り立った駅

そこに今はシンジとレイの二人が

そのホームで電車を待つ

　

静かで、乗り降りが無い

それは、めぐり出した季節

春の柔らかな日差しの中

無地のＴシャツにジーンズ、簡単にリュックを背負っただけのシンジ

手提げのバック以外荷物の無い、白のワンピースに麦わら帽のレイ

　

シンジもレイもかなり背が高くなっていた。

レイは１７０弱

シンジなど、１８０近いのだ

　

やがてホームに電車の到来を告げるアナウンスが流れる。

相変わらずホームには人がいない

第三新東京市など、今は大変にぎわっているだろうに

　

かつてここから離れようとしたあのときのごとく

静かな静かな駅

　

電車がつき

搭乗口が開き

二人は乗る。

　

閉じた扉

そして次第に流れ出す景色を眺めつつ

新天地を目指して二人は去った。

　

あまりにも多くのことがあったこの地を