「一緒に御風呂に行こう」
アレ以来、一緒に入るのが癖になったようで
ワタシはことあるごとにシンジを誘っていた。
なんとなくそんな風に誘うのが恥ずかしくて、いつでも随分と顔が熱くなった。
それでも、どうにか動揺を隠そうとしたの
そしたら、随分とぶっきらぼうな口調になってしまうのもいつものこと
やはり今度は自己嫌悪に陥っていた。
すると、
「一緒に入ろうか」
と言って、シンジが赤くなりながらもワタシの肩を抱いて、混浴の風呂の方に向かった。
どうもシンジのほうが成長が早いのか
なかなか動揺しなくなったの
(なら、どうしてワタシを誘いに来てくれないのだろう)
何時もワタシから誘っているのだ
シンジと違って動揺しつつ
「う、うん」
このときの返事も、何故かこうなってしまう。
シンジに言わせると可愛いのだそうだが、しかし何故こうなるのかかなり疑問
「うん」なんて返事をして、ワタシはしたがった。
これも何時ものことだが、シンジの体に触れているのが嬉しくて、ワタシはその肩に頭を預ける。
そして、脱衣所では更なる試練が待っている。
こういう、一応普通の状態でお互いの存在を意識しながら、服を脱ぐのはやはり恥ずかしい。
おまけに、どうしてこんなに恥ずかしいのか未だに良く分からなかった。
ここでもシンジが慣れを見せてるのが悔しい
ワタシは、今まで実験や何かで色々なところで、裸で人前に出ることがあった。
そのときは、まるで意識しなかった。
そして、シンジの前でも、結構裸で出ることはあったはずだ。
シンジにしても、やはり実験で、ワタシの前に裸で出ることが、何度もあった。
ましてや、補完のときも、つい先ほども、最近は毎日
お互いを求めて、激しく抱き合っていたのに
シンジの前でこんなことを言うと、それこそ真っ赤になるのだが
しかし、ワタシは今の方が恥ずかしいのだけど
しかも、人前で二人そろって裸に近い格好で泳ぎ、睦み合ったのに
何度もお互いの裸を見たことあるのに、どうしてこんなに恥ずかしいの?
理由はいつまで経っても分からな無いのに、時間は確実に過ぎていく。
とうとうシンジは完全に裸になった。
未だにタオルで腰を隠すけど
ここでワタシは、お互いの目の前で裸になるのは、服を脱ぐのはやっていないのだと気付いた。
夜のときはすでに互いに脱いでいるから
ワタシも覚悟を決めて脱いだ。
シンジが、しばらくの間、時を忘れたかのように、ワタシをじっと見ていたので、余計恥ずかしかった。
そんなに見ないで
シンジの視線の中に自分がいることを意識しながら、心の中で、そんな風に思う
でも見て欲しくもありなかなか複雑
しかし行動に出しては何もできなかった。
やはり、シンジがワタシの体を見ていると言うのが、なんだか嬉しくさえあった。
ワタシは、矛盾した気持ちで心を掻きまわされた。
恥ずかしさも手伝って、何も考えることができなくなってきた。
そんなこんなでワタシがにっちもさっちも行かなくなっていると、
「あ、レイ。い、一緒に入ろうか?」
ここだけは何時も変わらずどもる。
シンジはそう言うと、ワタシの手をつかみ、引っ張っていった。
顔を見ると、見事なまでに真っ赤になっていた。
そして、声からもシンジが照れている様子が良く分かった。
かなり勇気を出しての事だというのがとても良く分かった。
大丈夫、シンジも恥ずかしい
だから、ワタシは何も言わずに付いていった。
もっとも、何か話そうにも、多分何も話せなかっただろうけど。
そんなわけで、ようやく風呂にはいった。
新世紀
第十話
あれから
シンジはとりあえず、体を洗ったりしていた。
とにかくこの場をやり過ごそうとしている。
「背中、流すわ」
ワタシは、シンジの背に回ると、タオルをとってシンジの背中をこすり始めた。
既に、いくらか覚悟ができていたので、ワタシは少し大胆になっていた。
「ありがとう」
シンジがつぶやくような声で、礼を言ってきた。
やはり相当恥ずかしいのか、体をほとんど硬直させている。
ワタシは、そんなシンジの様子を見て、ようやく余裕が出てきた。
この辺りになるとワタシのペースである。
良くボディーソープで泡立てて、優しくスポンジで洗って
シャワーを温めに設定して良く流す。
今度はワタシが洗ってもらう番
「シンジ、洗って」
いつもの調子が戻ったのか、抑揚の無い声で、それだけ言えた。
シンジはワタシの言葉に、明らかに面食らって硬直している。
何故こんなことは慣れないのだろう?
夜なんてとても大胆なのに
ここはもう一押しなの
そう思ったワタシは、不自然にならないよう、さりげなく笑った。
シンジがさらに真っ赤になる。
それでも、しどろもどろといった様子だったのがその笑顔が効いたようで
シンジはようやく硬直がとけ、ワタシの体を洗い始めた。
シンジは意外にも手際良く、ワタシの体を洗っていった。
シンジの手が、胸や太股、さらにその内側の付け根当たりに来たときは、今度はワタシが硬直する番だった。
ちょっと大胆になりすぎ
シンジはかなりHである。
そのうち、風呂にまだ浸かっても無いのに体が熱くなり、のぼせたようになったところ
ようやく終わって、ワタシは体についた泡を流された。
終わったとき、ワタシはすでに上気せてふらふらで、ろくに立っていることさえできない状態だった。
ついでに物足りない気がする。
思わず潤んだ瞳でシンジを見上げてしまう。
ちょっと物欲しげかも
「どうしたの?レイ」
いけしゃあしゃあと言ってのけるシンジがこんなとき小面憎く思う。
シンジはワタシの体を抱き上げると、おもむろに湯船に向かった。
御姫様抱っこね
ワタシのより少し背が低いくらいなのに
このシンジの意外なたくましさも最近知った。
湯船に浸かったときは、すでにワタシはろくに体を支えきれ無くなっていた。
気持ち良すぎて腰が抜けてるの
シンジにもたれかかり、ゆっくりと湯と互いのからだの暖かさ確かめ合った。
実は御風呂の前に、お互いの体を激しく執拗に求め合ったばかりのせいか、疲れ切っていた。
ただ、ゆったりとお互いの体温を確かめ合って、のんびりと湯に浸かっていた。
ぼんやりと煙る湯気の中、ワタシ達はくつろいだ。
たまに天井から落ちてくる露の音が、逆に静かな様子を際立たせた。
少しだけある湯の流れが、ワタシ達の体を意識させた。
そんな中、シンジとワタシはただ何を言う事も無く、お互い寄り添って湯に浸かっていた。
こんな静かな時間
御互いのぬくもりを感じ合えるのが心地よかった。
ようやく風呂から上がると、浴衣が置いてある。
最初の時は持ってくるのを忘れていたので慌てて伊吹一尉に用意してもらったものだった。
さすがにゆっくりしすぎ?
少し湯中り気味で、扇風機の前に編み込みのチェアーに座って涼むワタシ
シンジが髪の雫を丁寧にぬぐってくれるのが心地よい
扇風機を消して、ドライヤーとブラシで髪を整えてもらえると蕩けそうになる。
「レイは感じやすいんだね」
そんなことを言われたこともある。
あの恥ずかしがり屋のかわいいシンジはどこにいったのだろう
原因はワタシにもあるけど
そう思って、おもむろに浴衣を着ると、何時ものように医療ルームに戻ろうとした。
「レイ。ちょっとこっち来て」
脱衣所を出ようとしたとき、シンジがワタシを呼んだ。
何かなと思って、そっちに向かう
「今回もダメ?」
「う〜ん、前よりはまたましになったかな?」
「ホントウ?」
「ほんとう、さ、ちょっと腕挙げてて」
と、 いわれて、そのとおりする。
これも何時ものこと
シンジは、ワタシの浴衣を手早く脱がし、もう一度きちんと着せ替えた。
すそのあわせから帯の締め方までむちゃくちゃだったみたいなの
とても恥ずかしくて、俯いてしまう
これまで服の着方なんて全く意識もした事が無かったのに、どうしてか恥ずかししかった。
これも成長かしら?
「これで良し、キレイだよ、レイ」
そういわれて余計恥ずかしくなって戸惑っていると、シンジはワタシの手を取って、
「いこう」
と言った。
ワタシはこのときようやく顔を上げて、シンジの顔を見ることができる。
シンジが、少し照れくさそうで、でもとても優しそうに微笑んでいるのを見て、ワタシも微笑み返した。
これが何時もNERVの大浴場で起こること
ちなみに何時も他の人が入らないよう、締め出してるの
清掃中と微弱ATフィールドの壁は有効なの
とくにATフィールドの壁さえあれば、人々は理由もわからずそこに入ろうという気が起こらなくなるわ
ちょっとした心の反発なのね
ようやく医療ルームに帰ると、伊吹一尉が待ちくたびれていた。
これも何時ものこと
その手から、コーヒーを手渡される
一口すると、体に温かさが染み渡った。
ようやく落ち着きを取り戻す
伊吹一尉もいい加減なれていた。
そして検査も無事終わる。
恐らくワタシ達の体の様々なデータを取ることこそが、目的だろうけど
健康管理は半分以上建前だろうけど
こんなところで、もめたくも無いから黙っておく
これも世渡りというものなのかもしれない
そして二人の部屋に戻るの
ここまで来ると、御風呂の前のこともあるから疲れ切っている。
だから、携帯食料で簡単な食事を取ると、ゆっくりと眠った。
ワタシは、シンジのそばにいないと、どうにも落ち着かなくて、シンジと同じベットで眠った。