狼精日記外伝
あるいはこれがほんとのレイの日記
狼なレイの徒然
褐赤の巻
赤褐 一の月
昨晩はレンのところのは行かなかったし、彼女も来なかった。
ちょっと寂しいの、悲しかったけど身体の状態を考えるとしょうがないの
とても残念だけど・・・・・・・・・(涙)
早くに目が覚めるのは相変わらず
結局やることはいつもの散歩
夜光カモメが夜空に飛び交う様子を眺めつつ
断崖の上でのんびり寝そべる
人の姿とは違った感慨が、やはり狼の姿にはある。
鋭い嗅覚、聴覚、そして犬科にしてはかなり良い、鷲の二十倍ぐらいはある視覚
ほんと、世に溢れる犬に近くなくて良かったと思えるのはそれ
感覚器官は遙かに優れてるもの、ワタシ
犬って色がわかんないしかなりのド近眼らしいから
世の中がぼやけて色が無かったら、つまらないでしょうね、ホント
ご飯はやっぱり視覚でも楽しまないと
なによりレンの綺麗な姿が見れないなんて、絶えられないわ
ところで最近ガラス細工にこっている
魔法の力で細心の注意を払って制御された炎と物質で作り上げるもの。溶かされ細長く複雑に絡み合い、色をつけていく
なかなか上手く行かない、工房のおじさんに良く笑われるの
でも絶対満足いくものを造って見せるわ
レンにあげるの
赤褐 二の月
多くのものが生まれるように
やがて多くのものは死に行くもの
生まれて来たときから、死ぬ定めを持つ定命の者達。私たちから見ればその時間は大抵短い
庭師のオルソンが死んだ。
気の良い御じいさんだった。
腕の良い職人だった。
後輩の面倒見の良い先達だった。
ワタシに花の名前をたくさん教えてくれ、春にともに種をまいた友人だった。
今、オルソンじいさんの大好きだった花々が、開いている。
百花繚乱、咲き誇る色とりどりのこんな光景
エニシアン島はほとんど気候が春から秋に移ろう程度で温度差も少なく、色々な花が年中咲いている。
それを見つつ、とても寂しく思う。
この花、この庭は、しばらくは彼の思い出に浸る場所にしよう。
この城に庭師はたくさんいれども、オルソンじいさんほど気の合ったのはいなかったから。
もうすぐ紅葉がみれる。
オルソンじいさん、アナタの最後の作品、庭の彩りをそのときしっかり見届けるの
今は安らかに
赤褐 四の月
最近ようやく冷え込むようになってきた。
狼の姿の時は、だから冬毛に変えるの
ちょっとふわふわっとしてて全体的に眺め、暖かい空気を捕まえやすくイイ感じ
ほんとは寒さなんて関係無いんだけど、知らないうちにこうやって毛変えしていた。
なぜ?
マナが
「あ〜あ、獣なんてこうやってすぐ毛が抜けて散らかして行くからいやなんだよね〜」
なんていやみたらしく箒まで持ち出して周りを掃くわ。
大変な侮辱なの
ワタシの体毛は一々そんなことで抜けたりしないわ。ただの動物無勢と一緒にしないでほしいの。抜け毛なんて無駄は起こらない。
だから
「定命の存在とかといっしょにしないで、ワタシの身体はそんな無駄多く出来てないわ、力無いからって変なところで揚げ足とろうなんて思わないで」
と、いいかえしてやった。
でも良く考えると、人の姿のとき一部体毛が増えた?
レンに剃ってもらうの♪
こんなときはやってもらうのが良い。
ちょっと恥ずかしいけど、レンがどんな反応を示すか楽しみ。
赤褐 五の月
今日も今日とて海賊狩り
最近のは少し生意気で雑魚レベルも魔法を使い始めた。
ソレぐらいならどうということはない
実際ホトンドの雑魚は警備船団で充分相手が出来てる。
ただ、レン達の登場、そして警備船団による航路の安全確保などで逆に仕事にあぶれた一部傭兵達や嘗ての私兵集団の一部等が海賊に加わったり、新しく組織しているらしく全体的にレベルアップされている。
やっかいなの、とっても
攻撃のタイミング、魔法一つも複合で幾つもの効果を掛け合わして使ってくるからけっこうオモシロイ(ちょっと不謹慎?)
問題なのは一緒に出てくる、あの趣味の悪いリヴァイアサンの眷属
どうもレンと敵対関係にあるみたいでしょっちゅう出てきては邪魔をする。
エイみたいな形だったり、鮫みたいだったり、蛸や烏賊みたいだったり、変わらないのはどれもいバランスはとれていてもひどく歪んだ生命だということ。
そもそも、生命の営みとは無関係の存在達だから違和感があるのは当たり前
なんか、どうにも美しくないし、虫唾が走るのも多分そのせい
ともかくそれが出てくるたびにレンの上級起動端末、"紅の堕天使"達と戦場に急行する。
そこまではレンが黒曜の間からゲートを開いてくれて一挙に移動する。魔法装置よりさらに速いし直接的なの。
敵は魔力もたいしたことないし、どんなに大きくてもワタシに傷一つつけられない。
でも絶対さわるのも噛むのもイヤだから、よく水の刃やカマイタチで切り刻んだり雷で焼き尽くす
あるいは凍らして粉々に砕くの
でも、やっぱり気持ち悪い
海賊いじめが面白くなくなりつつある、今日この頃
さっさとリヴァイアサンには出てきてやられて欲しいの
相手をするのは・・・・・・・・・・遠慮したいけど
ストラーシャの緑玉のトラインデットに貫かれて憤死すると良い感じ
赤褐 六の月
最近はホントウに涼しい
そよぐ風
体毛がなびくのも気持ちがいい
エニシアン島の北側
家などが余り無いところなどにいるとつくづくそう思う
狼の姿で(そういえばワタシこっちが本体なのに、人の姿でいるのに慣れたかしら?)顔の毛、特に鼻についたヒゲや眉毛がそよぐのは少しくすぐったい
野山の木々、虫達、海の魚、空行く鳥の声
囁き、ざわめき達
ああ、秋が近いのだとそう思う
ところで、先ほどから鼻腔を良い匂いが擽るの
この世界の山海珍味が集まるエニシアン島でも、こんな良い匂いをさせるのは城の厨房しかない。(たまに焼き芋なるものがあるのだけど・・・・・・)
早く行かなくては、もうすぐ十時のおやつなの
食欲の秋なのね
赤褐 八の月
櫻の世界でも戦争勃発
大きな国がいっぱい見方を付けて、小さな国を蛸殴りにしてるの。
小さな国が大悪人(らしい)をかくまっているからだけど。大きな国は威信をかけて戦っているわ。自分の国の中心都市でひどい損害をうけたから。
報復であるのだけど、結構最初は建前にこだわっていたわ。
最後のほうは余裕がなくなったのか、大きな国は強引にことを進めたみたい。
小さな国は気候のきびしい国だから、冬を待っていては攻めるに攻められなくなるから
大規模な戦争はその分無駄が多いわ
それに比べればワタシ達はとても効率的
なにせレンの力で強化された警備船団の隊員は一騎当千
指揮官もレンが皇太子時代から集めた有為な人材が沢山いて戦力はかなりのもの
そしてワタシがいれば向かうところ敵無しだわ。
レンが作り出すゲートで戦場に一挙に跳ぶことが出来るから時間も距離も関係なし
リヴァイアサンの眷属が気持ち悪くても問題無いわ
敵無しだもの、気味が悪くとも平気だわ
近づきたくなくとも大丈夫、倒すのは問題無いの
レンのためですもの
だから・・・・・・・・
最近見る度に帰りたくなるなんてことは無いわ
ちょっと見るのもイヤなくらいだという気持ちなんてどこにもないわ
気持ち悪くても倒すのは簡単だから・・・・・・・
だから大丈夫なの
ホントウよ
ホントウだから
そろそろ、リナかマナに変わって欲しいなんて想ってないわ
赤褐 十の月
櫻は日ノ本、京都の御所に行きたかったみたい
今日はどしても行けなかったから不満が溜まっているようで寂しげにテレビを見ていたの
やっぱり行きたいのね
良くわかるけど
さて、ワタシはレンと、ある閉鎖空間に向かった。
広い広い、しかしひどく縛られて、現実世界と隔離された空間だった。
封印された空間だった。
正直最初、怖かったの
一度入れば戻ってこれないような、
そんなことを感じさせる場所だったから
暗く闇に閉ざされた場所だったから
そこはひどく広くて、真っ暗だった。
ワタシの暗闇をよく見とおせる目も、光自身が無ければ移さない。
赤外線などを感じてみると、中心にとても大きな。そう、ちょうどエニシアン島ぐらいの大きさの建造物があった。
シルエットから、人工のものであることは確かだった。
それはとても大きく、繊細で見事だったの
ずっと昔の建築様式と、最新の技術
なにより失われて久しいはずの古代の術が使われた巨大な城
何故か懐かしい?
「これがボクの本来の城だよ」
レンはどこか悲しげに、懐かしげに見ていた。
「"万魔殿"(バンデモニウム)って名づけようと思うんだ。あそこには"武器"や"鎧"も眠ってる」
巨大な、少し青みが懸かった光源を十六生み出したレン
それぞれが万魔殿を囲むように、十六面体の頂点を位置取り、照らし出す。
「これが表に出れるようになったとき・・・・・・・・・・ホントウの戦いが始まる」
「そう・・・・・・・・」
真っ暗な空間の中
白と蒼を基調とした、きれいな城だった。
ホントウに、なんだか懐かしくて
レンとしばらくそれを見つめていた。
赤褐 十一の月
今日も京都御所に行けなかった櫻。
風邪なのか吐き気がしてたみたいね
一般公開があるうちに、なんとしても生きたいみたいだけど
でも、紅葉の季節もよいのかも
ワタシなら間違い無くそのタイミングでいくわ
比叡の御山に行くのも良いし、もう一度鞍馬に行ってみるのもイイかもしれないけど
そしてワタシ達のちょっとした冒険、そして追憶の旅は続いたわ
さて、閉鎖された空間の中心に閉じ込められた巨大な"城"
万魔殿(バンデモニウム)と皮肉に名づけたそれ
レンに案内されて、ワタシはとうとうその中に入ったの
それは部屋から通路から、非常に大きな宮殿だったわ
基本的に歩いての移動など考えて造ってないわね
美しく、レンらしくシンプルな造りだけど、すくなくとも廊下がこれでもかというほど大きい
ワタシが十二メートルの銀狼の姿になってさえ、余裕で体三つ並んで通れそうなほど広いのだから。その通路の壁に幾つか小さな、これは人間ようの通路が側面に走っていて、人間が普通に使うような部屋の入り口は、みんなこれに並んでいる。
移動には専用のカーゴといわれる魔法で動く乗り物で行くらしく、側面を走る人間サイズの通路には乗り場が設けられていたの
この城もまた、エニシアン島の城と同じく、魔力によって城が維持されているみたいで、どこも不自然なまでに清潔で、客間などはどこにも瑞々しい花まで活けてあった。
住む者がいないまでもけっして活気を失わない、ひとりでに動く生きた城
そんなところらしかったの
中は常に一定の明かりで照らされていて、どうやら現実世界の朝、昼、晩に合わせて照明の明度が調整されるみたい。
幾つかの部屋の窓からは青空が見えたり、山々やうみが見えたりと、幻影による工夫もなかなからしかった。
野山が実体験できる幻影の空間は素晴らしかったの
しっかりとくさいきれ、虫の音、鳥の声を感じ、草花が風に踊る音を感じれたわ
「ここが、この城の大事な部分の一つ。武器庫の一つだよ、レイ」
そうやって案内してくれたのは、これは大きな通路に、そのまま巨大な入り口。狼な姿のワタシが悠々通れるほどの入り口に、頑丈そうな、何で出来ているのかわからない金属みたいな扉がついた場所だった。
何故か音も立てず開いた扉の向こうには馬鹿らしく広い空間
そして、巨大な"鎧"が並んでいた。
それにしても、ホントはこんなところ、ひどく不気味なはずなのに
なぜ懐かしいのか
「ねぇ、ワタシはここにきたことがあるの?」
「いずれわかるよ」
レンに聞いてもはぐらかされてしまった。
いつかちゃんと答えて欲しい
赤褐 十二の月
もしかして、御所に行く機会などないのでは
櫻はだんだん悲観的になってるみたい
今日も今日とて忙しく、行機会が無かったから
すぐそこまで行ってるのに
結構近くまで寄ったのに、肝心要の御所には寄れなくて、かなりがっくりきてたみたい
ひたすら愚痴ってて鬱陶しかったの
ところでワタシは相変わらず封印されし万魔殿の御話
レンに案内された大きな、それは大きすぎる武器庫の中
これまた随分と大きな鎧が並んでいたの
兜から面簿おから胸当てから胴
篭手から脛当てから
そしてその一つ一つがそれに見合った大きな武器を持っていたわ
実に多くのものが揃っていたの
剣を掲げるもの、ルバートを片手に立つもの
弓を持ったもの
みんな高さ10メートル強はあったの
そしてなにより
「レン、どうしてあの鎧はすでに何かが着てるの?死んだ巨人でが着てるの?」
「あれは巨人ではないよ、レイ。あの肉体もまた、この"鎧"の一部なんだ」
「鎧の一部」
「そう」
レンは説明しながら一つの鎧の前に立つ
すると、鎧は静かに肩膝をつき、王に礼を示すがごとく頭を下げ
「へ?」
胸元の鎧がひらき、さらに中の肉が分かれて行くとそこには丁度人間が一人入れるスペースが出来た。
「ここに人が入って、これを動かすんだよ、もっともかなり魔力のあるものにしか使えないけどね」
「そうなの?」
ちょっとおぞましいようなそんな気もしたけど、ただこの鎧達
それが幾つも並んで戦いに赴いた情景
燃え立つ大地に立つ鎧達、そしてソレに向かう先の、白き・・・・・・・・・・・
「レイ、レイ?」
ボーとしていたみたい。気がつくとレンが心配そうにこちらを覗きこんでいた。
レンの身長は高いから、膝をついてワタシの前にいて、肩を揺さぶってる
「なんでもないの、大丈夫?」
「ホントウに?」
「うん」
間近にある、レンのとても美しい、それはもうまさに神々しいほど、魔的なほど整った美貌にいまさらながら見とれつつ、ワタシはなんとかうなづいた。
でも、あのビジョンは?
ここはホントウにおかしなことが多い
赤褐 十三の月
どうも櫻は御所に行くのをとりあえず、諦めてたみたい。
紅葉の季節まで待つつもりみたいね。今も暗くパソコンの前でなにか打ってるの
ワタシはようやくあの閉鎖空間から、万魔殿からもどったの
懐かしいような
寂しいような
嬉しいような
なんか、貴重で奇妙な体験だったの
ところで、通常空間に戻ってみるとまったく時が流れていなくて
あの空間に旅立った瞬間ぐらいに戻ってきて、またびっくりしたの
「あの空間は時の流れから取り残された、時の流れに埋もれた場所だからね」
レンはそう言う
なかなか開放は大変なようね
帰ったらおなかが空いたの
レンも同様
だから早速マナにねだったの
時間は十五時、ようするに午後三時
丁度おやつの時間だもの
庭の一つで紅茶とクッキーで御茶にしたのがなかなか良かった。
ところで、リナが見当たらない
「ああ、リナなら今朝から地下に降りてなにやらあのドームで作業してますよ」
あれ?
もしかすると万魔殿と関係あるのでは?
何故かそう思えたの
何故か
赤褐色 十四の月
10月22日の火祭り
京都は鞍馬の御寺のその前で勇壮な祭りが執り行われる。
楽しみ楽しみ
櫻はそんな気持ちらしいの
結構御祭り好きみたいだから
ところで、最近髪飾りに凝り始めたの
と、いっても別に自分の髪に飾るわけでは無いわ
レンの髪に飾るの
あの黒く塗れたように艶やかで、月も出ていない新月の夜の如き
ほんとうに美しい髪
レンの身体は、ホントウにどこもかしこも美しいけど
最近あの髪にはどんな飾りが似合うか?
それを考えるのが楽しいの
多分、この間、エニシアン島の街
あそこで色々と見たのがきっかけね
開かれていた市で、たまたまアクセサリー系統の出店が多かったから。それをゆっくり見て歩いたの。
ああいうところで見るのは、余り経験は無いのだけど宝石商人などに命じて、名工がが贅を凝らして造らせた品々とは違った趣があるの
むしろ、見て、選ぶのはこちらのほうがかなり楽しいわ。
銀と真鋳の細工、金と胴などの合金もの
質は良いとは言えないけど、奇抜なデザインが多くなかなかオモシロイ
店の人間と話し、交渉し、駆け引きをするのも楽しかった。
「そう、レイも色々、人間の楽しみも覚えたんだね」
そういえば、レンのこんなことを言われた。
たしかにそうかもしれない
赤褐 十五の月
この日
櫻はなにもなかったみたい
ただ、日常を過ごした。
そんな感じ
どうもバイオリズムが低下しているらしく、全てに対して鈍いようなの
さて、上のどうしようもない奴の話はこれで終わり
今度は肝心要のワタシ達の話題なの
レンが最近ようやく女性物の下着に慣れてきたの
この間、ちょっと牛乳(ウシチチと読む)女をからかいに行った時、リナと御風呂に入ってしっかり女性物、しかもなかなかセクシーなデザインのを着せられて以来、少し興味を持ち始めたみたい
ワタシは基本的に、無性別だし今はオスだから自分のことはいいのだけど
いや、オスだかららこそ、レンのあの神々しいまでに、そして麻薬のように人を捉えて離さない、その魅力的な肢体を包む服。とくに最後の飾りである下着を身につけたその姿には燃えるの
レンは基本的にあまり派手でもフリル突きでもない、黒や淡いブルー、パープルなどのレースなどで装飾された、シンプルですっきりしたのが似合うの
さすがにあの身長でベビードールを着られたら、すこし滑稽だったわ。レンの圧倒的な美しさには似合わないの
色々あって、見ごたえがある
レンもよりなれてきて大胆になってきているし
でも、やっぱりちょっとうらやましい気がする。
こんどメスになってみようかしら?
赤褐 十六の月
日本
櫻の住む国はちょっと季節はずれな気がする台風が接近中とのこと
櫻の実家は風が大変強いところ
どうも自分のほうより実家が心配みたい
ところで、この間は少し調子に乗りすぎたみたいなの
レンが、また女物の服を着てくれなくなったの
リナが暴走して意地になってフリルたっぷりのピンクのドレスなんて着せようとしたのが悪いの
おかげで全然着てくれないわ
まぁ、下着は・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・セクシーなの
でも浴衣とか着物、日ノ本かぶれなところがあるレンは歓んできていたのに今は絶対着てくれない、逆に袴なんてはき始めたわ
色気が無いの
無理は言わないから、せめて巫女装束などしてみて欲しい
当然正式な着方で
そして皇国に多いすらっとしたスーツ姿も見たい
活動的な女性が主な皇国では、服装も普段着からなにまで、大抵シンプルで機能美を追及しているものが多いの
ドレスとかはさすがに別だけど
だから結構女性もズボン姿が多くて、でもそんななかでもしっかりと美しさ、身体のラインを引きたてるよう色々と注意が払われてるの
今はしばらく撤退なの
なかなかレンが着てくれないから
レン意固地になってるもの
でも、少しずつそっちに進めて行くの
段階を踏んで、レンに女物の服の再び慣れさせるの
マナが協力してるからきっと上手く行くわ
いいえ、いかせるの
赤褐 十七の月
台風刻一刻と接近中
ちなみに、もしかすると櫻の実家は直撃は免れそうなの
予定では明日の明け方ぐらいがもっとも近くなる様子
これからどうなるかとても気にして、度々テレビやネットで天気図を確認してるわ
それにしても台風の予想進路って結構変わりやすいの
ところで今日はなんとなく散歩していたの
たまにはレンにべったりついているのではなく離れてみるのも良いことと考えたから
久しぶりにエニシアン島の丘を巡り森を駆け抜け、草原を走り回ったわ。そして人の姿にもどり、木の枝で休んだの
それは草原のなかの一本の大木
なんと言われても、ワタシは光る水玉
冷たい雫
透き通ったつたの雨粒を枝いっぱいにみてた
若い山ぐみのきなのである。
何故かそんなフレーズが頭をよぎったわ
多分、この間レンに借りた詩集が原因なの
でも雨上がりの森を抜けた
広い草原の一本木の枝のうえ
心地よいの
風かしっかり吹いていると、わずらわしい湿気も感じることなく
陽光が優しく感じられる。
舞い踊る木葉の向うに秋を感じるの
赤褐 十九の月
数日前
ちょっと買い物に出かけてたの
ところで目にとまったのがバナリバ花柄ホルダードレス
無地の品物は形がきれいだったけど、これはちょっとなの
そし、ある一角ではあまいものの店が多いことに気付いたの
一つの、戒律の厳しい宗教の人々が住む生活区
戒律で御酒が飲めないから甘い物が大人気らしいの
大変ね
虫歯にならないよう、歯は良く磨くべきだわ
ええ、ほんとうに
アレは辛いの
別にまだたいした力の無かった遙か昔に経験した訳ではないの
ホントウよ
赤褐 二十の月
光の波の向うのソレを
延々続く、海なのかと思ったら
実は朝日に光る山だった
ああ、風が吹けば 髪が神楽を舞う
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
なんか、櫻が久しぶりに山に登ったら
急にそんなこと呟いた。
宮沢賢治の『高原』に触発されたらしいの
暇してるみたい
暇ではないのに
今日もバイトが入ってるはずだわ
ところで最近マナの様子がおかしいの。レンの上級起動端末である赤羽の堕天使、それをよくじっと見ている。
彼女達は何時もワタシが商船団に襲いかかるリヴァイアサン眷属と海賊を蹴散らしに行くときにレンが呼び出すからだから黒曜の間でゲートを開くとき、そして帰ってきたときしか会えないんだけど、何故か必ずきてじっと見てる
なにかを思い出そうと
レンはなにも知らないみたい
「マナ、なにかあるのかな?」
少し心配そう
でもリナが言っていた。
「彼女が思い出せば済む事よ」
なんなのだろう?
あなたが納得してもワタシには解っていないの
なんか愉快だわ。
赤褐 二十一の月
京都でも朝晩はかなり冷え込んできて
夜、気晴らしにバイクで走ろうものなら、ちょっとキツイものがあるそう
だったら夜出なければいいのに
一昨年の冬、珍しく手が突然手が「しもやけ」になった櫻
しもやけは急激な温度差が原因だそうで
下手をすると夏の氷でなるかもしれない。
まぁ、凍傷とどう違うのかは知らないけど
原因は暖房もつけずに部屋でキーボードを打ったりしたから
夜の一走りの後、手を温めなかったら
ある日帰って手を見るとひどく紅く
指先が特にひどくて何がなんだかと思ってみたら暖めればッキリ
痒いこと痒いこと、すぐにしもやけと判明
ワタシはもともとヒトと違うし寒さも熱さも平気
でも気分を出すために狼の時は冬毛らしくフカフカにしたの
実は叢とか地面とか、寝転がるとき前より気持ちイイの
最近御昼ねがより楽しみになったわ
でも、いつのまにかいろんな動物が集まってきてる
小鳥からリスとか、猫から大き目の海鳥
海鷲まで来てる
ワタシが昼寝してると、毛皮に埋もれて一緒に寝てるの
争いは起さないけど
仲良くやってるみたいだけど
なんか違う気がするわ
とくに、小鳥、リス
アナタ達、生存本能あるわけ?
赤褐 二十二の月
「ちょっとおやつが出来たけど、食べる?」
今日は珍しく庭の叢でも芝生でも、大きな樫の木陰でもなく、城の南側、大屋根で昼寝をしていたら(当然、狼の姿で)マナが声をかけてきた。
マナは基本的に料理が得意だけどワタシの食事を何時も作るほどではないしそもそも、暇も無いみたい
だけど、よくおやつを作ってるわ
この日もそう。
今日のおやつは、「メレンゲのフルーツソース」
卵の白身を使ったデザートなの
これからのマナの説明の受け売りなの
材料は卵白4個分
砂糖小さじ4杯
ブルーベリージャム大さじ6杯
赤ワイン大さじ2杯
これで、ワタシとレンとリナとマナ、四人分
作り方は、まずブルーベリージャムと赤ワインを混ぜ合わせて、ソースをるの。
これはホントウに混ぜるだけ、なんの特別なことも必要無いわ
そして冷蔵庫で冷やしておく。
次に卵白に砂糖を加えて泡立て器で充分に攪拌し、ホイップ状にするの。ちょっと人数分作るのは腕が凝るから魔道器でかき混ぜるの
まぁ、ハンドミキサーね
ホイップ状の卵白を大さじ1杯分ずつ、静かに沸かせたお湯にくぐらせ、固いメレンゲを作って、冷ませるの。そして、冷ませたメレンゲにブルーベリーソースをかけて出来上がりね
簡単なの、根気は要るけど
だからワタシは、まぁ造ろうとは想わないわ
出来ないのではないの
ちょっとやる気が無いだけ
ホントウよ
ちなみに、注意点というか、ポイント
チョコシロップをかけても良いそう
でも暑い時にはチョコ分離したりして味が落ちるの
だから涼しくなってからの方が、良いわ。
以上、マナの解説を分かりやすく述べたレシピなの
あら?
マナがそれなら自分に説明させろといってるわ
ソレはダメ
ここはワタシの場所
「狼なレイの徒然」だもの
赤褐 二十三の月
櫻の奴
またサボったの
いい加減にして欲しいわ
「ちょっとごたごたがありまして、創作意欲が・・・・・・・」
そんなの言い訳にならないの
とにかく血を吐いてでも更新しなさい。
ところで、エニシアン島では昨晩も祭りがあったの
もともと多民族国家のネルフ皇国でももっとも大きな都市と港の一つがあってそしてさらに沢山の人々が交易でやってくる、まさに要衝ともいえるこの場所
だから定住している人達も様々なところから着ていて、そんな人達の風習
とくに祭りはホトンド二日と置かず催されているの
さすが国際都市ね
でも、目立つのは何時も花火
この島では職人さんがそろっていて、資金も豊富だから
いつも派手で規模が大きく、趣向を凝らしたものが見れる。
火曜日の夜
城の庭の一つからは四つの花火大会が見えたの
どれも色とりどりで、夜空を彩るわ
港より少し離れた船から次々と打ち上げられる様はなかなか見物なの
どうも四つの地区が競って挙げたようなのだけど
ヒトが減るどころか、相乗効果でよその島や大陸からもヒトがきて
大変ににぎわったみたい。
経済効果も抜群だったわ
あいかわらず日ノ本かぶれのレンの趣味で、レン、マナ、ワタシ、リナの四人はみんな浴衣姿。
レンは紺に白い睡蓮の花をあしらったもの
リナは濃い青紫に青の蝶が舞っている
マナは白地にサクラをあしらったもの
そした私は蒼に桔梗を描いたもの
日本庭園の一角
東屋で風鈴の音を聞きながら
内輪をもって見るのが通らしい
「でも、これって夏の見方ではないの?」
「だから、少し気温を上げて虫達に声をあげさせてるんだよ」
マナの疑問にレンはそ答えた。
どうも季節はずれみたい。
赤褐 二十五の月
「今年はもしかして暖冬?」
櫻がそんなこと言ってる
最近が十月下旬にしては随分と暖かいので気になってるみたい
櫻は寒いほうが好きだから
でも、大半の人は暖かいほうがいいのではなくて
もっともウィンター・スポーツを近場で楽しむには、気温も例年なみのほうがよいのか?やっぱり冬らしいほうが喜ぶのかしら
ところで
話は変わるのだけど、エニシアン島には一つの宿がある。
極めて安い料金で、一晩のベットと、夕食、朝食がつくそれは
皇国全土のみならず、アドリア海の主な島々
皇国の勢力の及ばない西大陸のいくつかの都市国家
そして東大陸のゼーレ連邦にまで、その主要都市には必ずあるから驚きなの
「皇国の安宿」
ひねりも何もも無い、そんな名前で呼ばれているそこは
主に皇国の商人達が好んで使う。
皇国の人間はよく四つの生き方と一つの性癖があるといわれるの
一つが軍人としての生活
四百年以上、征服と小競り合いを陸海ともに繰り返している皇国では軍人は極めてポピュラーな仕事。と、いうより誰もが一度は係わり合いをもつ職業
そして開拓者としての仕事
未だ未開の地が広がる西大陸
原住民などの反抗を退けたあとは、必ず開拓者が募集され、水路をめぐらし耕地を整理し、木々を植えて豊かな村を、町を築いて行くの
これは、凄く若い人か仕事を引退をしたような老人が入ることが多いの
最近は道具や器具、そして農耕用の家畜も行き渡り、発達したから、どうも退役後の生活の第一候補に上げられるようになったわ
または親として子供を育て、暮らすこと
男女とも似重婚が多かったり、結婚をしないまま子を産み育てる。
皇国では片親が大変おおいの
だから擁護施設などサポート、社会基盤も充実しているけど
それ以上に国民一人一人が、親として子になにを教えるか?
ホントウに真剣に考えている。
何を残し、なにを伝えるかが、その親の生き証とさえ考えられているの
だから、親としての生き方はとても大切
最後に商人として国を、世界を回ること
これは性癖にも関係あるの
放浪癖という性癖に
皇国の人は何故かあまり一つのところにじっとしていようとしないの
たとえば王都の民
そのもっとも貧しい者達さえ都の中とは別に、リベの大河を上ったカシティスの街に別の家を持っていたりする。
貴族になるとずっと離れた内陸の町、酔狂に未開区に開拓民の住居と共に屋敷を造ったり、さらにアドリア海の島々にも別荘を置いておき、暇ともなればそれらを転々としている。
王都の人間がカシティスの街との間を二月かそこらで行き来するのは日常的なこと
だから生活の場を二つ以上持っているのが皇国国民
多分それで放浪したい、旅に出たい自分を押さえてるの
そしてそんな性癖に支えられ、交易が極めて盛んなため
それでも、そんな各地に別荘など持てない、あまり宿にお金をかけたくない商人たちが金を出し合って協会を作り上げ、そして経営しているのが「皇国の安宿」
皇国国民ならだれでも利用できて、低価格で信用できるため、ずっと昔から商人の味方なの
商人だけでなく、あまり御金の無い旅人は必ず利用するし、高級な宿に泊まったものが皇国の者たちに会いたくて「皇国の安宿」の酒場に集まったりする。
ようは、一つの憩いの場なのだと思う。
ワタシは利用したこと無いけど
赤褐色 二十六の月
【I strove with none,for nonewasu worth my strife.】
I stove witnone,for none was worth my strife.
私は誰とも争わなかった、争う相手がいなかったからだ
Nature I love and,next to Nature,art:
私は自然を愛し、その次に芸術を愛した。
I warmed both hands before the fire of Life;
私は生命の火に両手をかざして暖めた
It sinks,and I am ready to depart.
その火も消えかかった、出かけるときが来たようだ
Landor(1775-1864)が誕生日に書いた詩
このウォルター・ザヴィンジ・ランダーと言う人
イマイチ分からない
芸術に極めて思い入れが深く、自然を愛する平和主義者
劇や散文でも優れた人だったそうだが詩から感じるイメージとは裏腹に性格はなかなか激しく、イタリアで客死している。
七十五歳の誕生日でこれ
自分の死ぬ場所を悟っていたから、出かけるときが来た、なのだろうか?
櫻が珍しく詩を呼んで見事裏目に出たみたい
理解出来ないですっきりしない様子
慣れないことをするものではないの
ところで、この間コシャリというのを食べたわ。
米とスパゲティー、マカロニを混ぜ、そこにオニオンフライや豆をまぶし最後にトマトソースをかけたもの。
香辛料は少なめだったわ
麺と米の組み合わせが凄いの
なにより
何とも炭水化物の塊という感じなの
味も悪くなくて、さすがにその満腹感が気持ちいい。
食事の後はデザートにアイスクリーム。
この料理の文化圏は甘い物の宝庫なの
お酒が飲めないからなのね
ちょっと
いいえ、だいぶ哀れ
と、いうよりお酒が好きなワタシやレンには耐えられないわ
若い女の子ばかりか、おじさんたちも甘さに走るらしいから
店頭に並ぶケーキやアイスなどの種類は数え切れないほどらしいわ
でも見た感じ不気味かも
髭を生やした中年男性の群れがケーキ屋の前に大挙して群がり並ぶ様子
考えるのやめるの
イヤだから
赤褐 二十七の月
最近、櫻はホントウに詩に惹かれているみたい
似合わないから止めればイイのに、いろんな詩を読んで感じ入ったりしている。
自分で出来ないか、なんて考えてるみたいだけど
ハッキリ言って無駄な努力なの
到底そんな力無いから
今回気になったのはこの詩みたい
【To Daffodils】
【水仙へ】
Fair Daffodils,we weep to see
美しい水仙よ!お前達が慌しく
You haste away so soon:
去って行こうとするのをみると涙が出てくる。
As yet the early-rising Sun
太陽もまだ昇ったばかりだし
Has not attain'd his noon.
真昼までにはまだ時間がある。
Stay,stay,
だから待ってくれ、たのむから
Until the hasting day
せめて忙しげな太陽が
Has run
大空を駆け抜けて行き
But to the even-song;
夕べの祈りのときがくるまで待っておくれ
And,having prey'd together,we willgo with you along.
すしたら、お前達と一緒に祈りをすませ、私たちも一緒に暗闇の中に消えて行こう
We have syort time to stay,as you
ワタシ達だってお前達と同じで
We have as short a Sprig;
この世にいる時間は少ない。春も短いんだ。
As quick a growth to meet decay s you, or any thig.
せいちょうするも早いが、しおれるのも早いというもの
We die
私達は死んでいく
As your hours do,and dray away
お前達が刻々と時と供に死んでいくのと同じように,そして、干上がり消えて行くのも
Like to the Summer's rein;
あの夏の通り雨と同じなんだ
Or as the pearls of moring's dew
真珠のような朝露がいったん消えたら
Ne'er to be found again.
二度と見られなくなるのとまったく同じなのだ
訳のほうは、少し(大分)正確ではないの、詩としての気分をだしたかったから
ロバート・ヘリックの詩集『ヘルペリデス』の中の一遍
聖職者である彼は、花の命の短さを嘆くと供に、その自然の中にある姿の美しさを知っていたの。だからこそ、惜しむのね。
花の命は短いもの
ヘリックの住んでいたイングランド南西部は夏に雨がさっとふり、さっと乾くの。真珠のような朝露と同じ、二度と見れなくなる。
ワタシ達だと、だからこそ美しいと思うのだけど
櫻なんてまさにそれに惹かれてる
永遠より儚い一瞬の美しさの方が、より人を惹きつけるの
まぁ、ワタシやレンはまさに永遠だから
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・ちょっと自爆気味かしら。
赤褐 二十八の月
たぶん、なんとか28日以内にできたの
まったく櫻の怠惰振りも目に余るわ。
もっとはやく仕上げるべき
どうも最近集中力が低下していて、ふとした切欠で意識が途切れてることがあるみたい。別に病気とかじゃなくて、たんにボーとしてるだけ
そんなになってる暇があるならとっとと作品を仕上げるべきなの
マナが今日も三時のおやつを作ってくれた。
相変わらず、こんなところは彼女の独壇場なの
ちなみに、今日のメニューは「チーズ蒸しパン」
櫻の世界では、少し前に、一世を風靡したチーズ蒸しパンを手作りで仕上げるの。何時も思うのだけど、よくこんな手間かけて作れるの。さすがにこれには感心するわ。
認めたくないけど
材料は今回は本来八人分、だけど食べるのはワタシとレンとリナとマナの四人だけ。きょうも御茶がついてきたの
イイ香りだったわ
それで、改めて材料なのだけど小麦粉は240gに、ベーキングパウダー小さじ4杯。牛乳200ccにグラニュー糖120g、そして卵一個。それからパルメザンチーズ大さじ8杯。サラダ油大さじ2杯
カマンベールチーズは多めにしたの
作り方は、まずボウルにグラニュー糖と卵をいれて、よく混ぜるの。
このとき擦るようにするのがポイントね。
しゃれじゃないの
次にボウルの中が白っぽくなったらサラだ油と牛乳をいれて、よく混ぜ合わせるの。でもよくサラダ油使って変な感じにならないと思うの。実際作っているのを見ていても、不思議だわ
そして小麦粉、ベーキングパウダーをふるいにかけて、これも加えるの。
ふるいにかけるのはなかなか手が疲れる作業だわ。
そしてパルメザンチーズも加えて練り混ぜるの。
もうこうなると抵抗が激しくて根気のいる作業になるの
それから、混ぜ合わせ、よく練ったものを紙カップに分けて入れ、中心部分にキューブ状にカットしたカマンベールチーズを埋める。別に星型でもート型でもいいわ。
蒸し器に並べて、15分から20分蒸し上げるとふっくらとふくらんで、出来あがりなの
美味しかったわ
それはとても美味しかったわ
でも足りないの
絶対に
これからはワタシに三人前は用意すべきなの
そう言ったら、
「犬は狩でもしてその肉でもむさぼりなさい」
なんてあのマナは言ったわ
久しぶりに大喧嘩したの
相手が準備がよく、身体の動きをサポートする強力な鎧と赤い光の刃をつけたルバードを使ってきたの。今回は、とても長引いたわ
決着がつかないままご飯の時が来て戦いを忘れたの
食欲に負けたわ
ちょっと
いえ、だいぶ、情けないかも
赤褐 三十の月
今日は御酒の紹介なの
とてもとても、美味しい御酒
でも、ちょっと女性へのプレゼント向けもしれないの
名前は『コノナサクヤ姫』
宮崎県西都市の正春酒造合資会社が製造しているの
アルコール度数は40%
原料は麦ベースで、麦・甘藷・米なの
すごく上品な味と香りがいいの
レンと一緒に(他にも一応マナとリナがいたけど)味わいながらのんだわ。商品名ぴったりの品の良さ、ほんのり微かに甘味もあってとてもおいしいわ。
まるで高級ウイスキー?カクテル?なんて思ってしまう味わいの麦ベースの御酒。原料に甘藷を、多分ほんの少し使って微妙なところで味を整えているみたい
グラスの水に、一滴ほど染物の藍を落としてみる、あのすっと広がるそんなかんじ
「コノナサクヤ姫」は一筋に愛を育み、しとやかで謙虚、しかも強い意志と信念をもった憧れの女性として、今も多くの方に愛されてるの
ワタシも地元では愛されていた・・・・・・・・かしら?
西大陸の山脈やよく駆け巡っていた高原では、たまに色々とワタシの祭りをしてくれるけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんであんなに生贄とかが多かったのかしら
女の子、匂いで分かるけど処女らしい子が、振るえながら祭壇に乗せられていたり、あるいは麻薬でトリップ状態で置いておかれたのは何故?
ワタシ食べないんですけど・・・・・・・・・別の意味では食べたけど(ぽっ)
どうも愛されるとは違うかしら?
むぅ、しとやかで謙虚
ワタシも自分を知ってるわ。これはあてはまる・・・・・・・・・・・・わけないの(汗)
強い意思と信念
ワタシの意思はレンと供にあること
『邪魔するや〜つは指先ひと〜つで、ダウンさ〜っ!』
的に、邪魔者は排除なの
ワタシの信念は楽しく生きること
どんなときも楽しみを忘れないの、おもいきり遊ぶのが一番、好きな人(レン)と。このあたりではリナととても意見があうわ
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ ・むぅ、かなり違う気がするわ
これ以上の比較はこの前の詩以上に自爆なの(汗)
ともかく、日ノ本の産地ではなかなか人気のある伝説の人物なの
ようやく日ノ本の国、その大地が姿をあらわしたばかり、神話の創世の時といってよいころのこと。天照大神の孫・ニニギノ尊が八百万の神々を従えて日向の高千穂峰に降り立ち南下され、今の宮崎県西都原を永住の地と定めたそうなの。
随分と御供を引き攣れるのね、しかも神様八百万とは恐れ入るわ
ごほん!
脱線したわ・・・・・・・・つ、続けるの
ある日、小川で水汲みをしていた美しい娘と出会ったの。大山祇命の末娘・今回のヒロイン・コノナサクヤ姫ね。やがて二人は結婚し、姫は妊娠したの。でもすぐにニニギは戦に出てしまって夫婦の営みは一夜だけだったみたい。
やがて戦場から帰ったニニギノ尊は一夜の契りだけで姫が身籠もったのを怪しみ、不義)と疑ったの。甲斐性無しの分際でえらそうね
コノナサクヤ姫は死を懸けて自分の潔白を証明するため、出産のために作られた小屋に入り、「身籠もった子が、本当の天つ神の子でなければ、私も子どもも焼け死ぬでしょう」と、小屋に火を放って三子を産んだの。
お話はこれ以降ないわ
でもこの後は容易に想像がつくの
ニニギノ尊は今後絶対コノナサクヤ姫に頭が上がらないわ
完全に尻にしかれたとおもうわ
身から出た錆びなの
レンも気をつけないと、もう少しワタシを構ってくれないと仕掛けてやるわ
もちろん冗談よ
ええ多分
忘れてたけど、今はワタシがメスでレンが雄なの
どうしよ
赤褐 三十一の月
ところで
最近レンと他の世界で活躍する夢を見るの
そこでは、レンは相変わらず美しいし、十六枚の翼をもっているのだけど。少し違うのは左右が黒と白の対になっていること
目がルビーのような赤ではなく、淡いアンバーとレッドであること等など
レンはある虐げられた者達、翼を持つ美しい『天使』『悪魔』達を助ける救世主になるの、でもこちらのレンより遥かにボケボケしてるわ。
と、いうより情緒が無いの
私は、どの対となって生まれる予定、本来の対であるものとは、心通い合うことが難しいくなているため、私が生まれるの。
私も翼を持つようになるのかしら?
他にもマナ、リナも出てくるみたい
相変わらず根拠地が島なのが面白いの
レンが圧倒的な力をどのように使うか?
夢の続きを見るのが楽しみね