罪と罰と償い
プロローグ
西暦2000年。
それは人の脳裏に離れることのない悪夢を作り出した日。
突然の大爆発が起こり、直後に発生した津波と溶けだした氷による海面上昇により多くの土地は水没し、南半球諸島あわせて20億以上の人々が死亡した。
また爆発のエネルギーで地軸がくるい、日本は常夏の国になってしまう。
人々はこれをセカンドインパクトと名付けた。
この爆発は人類にとって大きな痛手を残すこととなる。
だが、人は強く再興の兆しをみせ始めていた。
国を立て直し、余裕がある国々は爆発の原因を探るため、人々は危険を覚悟に調査隊を結成。
その者たちの手により爆発は謎の生命体によるものだと判明した。
南極大陸があった場所に到達した調査隊たちの目に映ったものは、背中に翼のようなものを生やした光の巨人。
一瞬その神々しさに目を奪われる。
同時に触れてはならないような禁忌も同時に感じていた。
だが自分たちが来た訳をすぐに思い出し調査へと取り掛かる。
また爆発が起こるのではないかと言う不安に駈られながらも、着々と調査は進んでいった。
そんな調査隊の思いとはよそに光の巨人に動きはまったく見られず、それが皆の安心を誘う。
計器は完全に活動を停止していることを指し示し、この時完全に安息が訪れたのだろう、調査隊がため息を漏らす。
しかし、落ち着きた雰囲気にはなったが緊張感は未だに拭いきれない。
そんな中、突然計器がある一点で反応を示す。
以上ともいえる数値をだ。
その場所とは、光の巨人の体の中心部分にある紅い光球。
何かと思いそこを中心的に調べるようになると、驚くような事実があらわになった。
―――永久機関。
人類がいまだ成し得ていない無限のエネルギーをもたらすもの。
この発見はすぐに各国へと伝わることになった。
当然ともいえるだろう。
復興の兆しをみせたとはいえまだまだ元のようになるのには程遠い今、このエネルギーは魅力的過ぎる。
各国が協力してこれの完全な解明へと乗り出した。
人類が一致してと言えば聞こえがいいが、実際は私利私欲に走ったものでしかない。
最初に解明し、手にいれさえすれば後はその技術が不動のものとなるのだから。
しかし、中には本当に人類の繁栄を願って参加したものも多い。
国の移行の事など露知らず。
それは幸か不幸か。
だが、そう簡単に物事は運ばない。
あまりにも難解すぎて作業が進まないのだ。
研究に対し誰もが諦めの気持ちをはじめた頃、三人の男が新たに調査員として派遣されてきた。
今更来たところで、と誰もが同じ思いを胸に抱く。
しかし、それは間違いであった。
来てほんの数日でその男たちは研究員が超えられなかった壁をどんどん越えていく。
天才という言葉がこれほど似合う者はいないだろう。
この男たちによりこの後、僅か一ヶ月でほとんどのことが解明されていく。
これで人類に新しい未来が・・・と思われた時それは起きた。
光の巨人がさらに淡い発光をみせ、突然収縮を始め形を変えていく。
そのスピードはあまりにも速すぎた。
このまま消えてしまうのではと、ただ呆然と見ることしかできない。
光が収まり人々が慌てて巨人がいた場所へと駆け寄ると、さらに驚愕の事実が目に飛び込んだ。
そこには一人の女性が倒れこんでいる。
衣服を纏わない素肌は透き通るように美しく、先ほどまでいた巨人とは思えない。
戸惑うばかりの研究員だったが、そこに適切な指示を与えたのは新たに来た男のうちの一人。
名は碇ゲンドウと言った。
彼の指示によりゼーレへと彼女を運ぶことになる。
この時代ゼーレという組織は巨大な力をもち、表向きの顔もいい組織だった。
調査隊の大半もここから送られてきている。
どうせ研究するなら一番設備のいいところでということだろう。
他の人々に影響を与えずに、この機密を守るということもあるが。
保護という瞑目の元、彼女はゼーレへと送られた。
この時、ゲンドウが笑っていたことなど誰も気づいていないだろう。
気づいていたとしたらそれは、同じ時に来た二人の男のうち葛城ユウヤだけだ。
もう一人の人物、惣流・アレク・ラングレーは気づいていなかった。
彼女が送られた後、このことは完全な秘密となる。
当然その行方は誰も知ることはなかった。
セカンドインパクトから5年。
人類は新たな危機を迎えることとなる。
光の巨人・・・自らをリリスと呼ぶ存在から、自分と同じ様な存在がこの地球に攻め込んでくると言う情報がもたらされた。
人と同じようになってしまったリリスからは永久機関が消え、研究は続行できなくなってしまう。
だが、彼女の持つ高度な知識はさまざまな分野に生かされ、たちまち世界を復興させていった。
そんな折に『自分と同じ様な存在が攻めてくる』という発言だ。
ため息をつくしかないだろう。
彼女の言うことが事実ならば、人類に打つ手はない。
その存在はATFと呼ばれる壁をもち、それはなんぴたりとも犯すことができないものらしい。
核も当然のことながら効かない。
人類最高の威力を持つ兵器が効かないのではどうしようもない。
諦めの気持ちに覆い尽くされようとした時、リリスの口から一筋の光がもたらされた。
対抗するものがないならば作り出せばいいと。
未知の敵を想定した巨大な人造人間の開発がこの時始まる。
開発には莫大な費用を要した。
ゼーレの資本だけでは足らず、各国から資金を調達。
それはあまりにも負担が大きいものだったが、これからのことを考えれば出し惜しみはできない。
ここで計画が止まってしまえば人類の未来はなくなってしまうのだから。
ゼーレからの説得もあり、国々はこれに従うこととなった。
必要な資金も集まりE−計画―――人造人間『エヴァンゲリオン』の開発は順調に進む。
当初一機だけの開発だったが、それだけでは心許無いともう一機が開発された。
予算的には厳しいものだったがこれも何とかクリア。
だが、ここで新たな問題とぶつかることとなる。
それを使いこなすためにはある適性を持った人物が必要だとリリスに宣告された。
膨大な数の人類からこれを探し当てるのは困難・・・かと思われたが意外なことにその人物は見つかる。
開発に携わっていた碇ゲンドウの息子である碇シンジと、その遠縁の親戚の子供の綾波レイ。
手はじめに開発者に関わるものからはじめたことが功を奏したようだ。
見事適正に合い、エヴァを操るものとして選抜される。
しかし、シンジの両親であるゲンドウ、ユイ、レイの両親であるリョウト、シズクは反対した。
訓練された大人ならともかく、まだ5歳にも満たない自分たちの子供を戦場となるだろう所に送るなど承服しかねる。
他の手段があるはず、または他の人物でもいいのでは必死で探すがその願いも空しく叶うことはなかった。
涙を流しながら両親たちはシンジとレイに説得をするしかない。
二人の子供は黙って話を聞いていた。
そしてにっこり笑うと快く引き受けたのだ。
「おかあさんたちがいなくなるのがいやだから、ぼくがんばるよ。」
「わたしも・・・がんばるの。」
僅か4歳の子供たちのその言葉に大人たちは全力を尽くすことを誓った。
少しでもこの子達の負担を減らそうと。
この日から大人には開発を、子供には訓練を強いるようになる。
子供には辛い訓練の数々だったが、それでも弱音を吐くことなく黙々と続けてくれた。
学校へ通うになってもそれは変わらず、僅かな休日を除いてほとんどが訓練へと費やされる。
大の大人でさえも逃げ出したいスケジュールだったが、シンジとレイは互いを支えあい、励ましあい辛さに耐える。
そんな日々を繰り返し・・・10年の月日が流れた。
2015年。
リリスが予告したとおり、謎の生物が出現する。
場所は日本。
なぜこの場所かといえばリリス曰く、自分を・・・そして脅威となるだろうエヴァンゲリオンを先に潰すためらしい。
それならば準備は容易にできる。
来る場所が分かっていれば万全を期すことができるのだから。
ゼーレは謎の生物―――リリスの最初の姿から連想されたもの『使徒』と名付け、それに対抗すべく特務機関ネルフを設立。
元々あったゼーレの本部の一部をネルフとして提供した。
過酷な戦いを想定して、能力が優れた人材も選抜。
全ての準備は終わった。
その甲斐あってか人造人間「エヴァ」を用いての戦闘で互角以上の戦果を示す。
苦労はしたものの撃退に成功。
被害もゼーレ、ネルフ周辺の戦闘ブロックだけにとどまる。
これには開発に関わったものも、人類も歓声に包まれた。
ただ滅ぼされるべきだった事実が覆されたのだから。
その後次々と襲来してくる使徒たちだがエヴァにより撃退されていった。
当然どれもがすんなりといったわけではない。
時には巧みな戦法を用い、それでも多大な被害を受けながら勝利を勝ち取ってきた。
エヴァを駈る子供たちと、サポートする大人たち。
互いの思いは使徒を凌駕していったのだから。
そして、14体目の使徒を最後に次の敵が襲来することはなくなった。
人類は二人の子供たちを英雄として向かえ、使徒の対抗組織であるネルフに惜しみない歓声で出迎える。
スポンサーであるゼーレも当然人々に快く思われ、さらに名声をあげていった。
誰もが平和に喜び、安息の時を迎えたのだ。
しかし、一つの事件が世間をにぎわすこととなる。
英雄たる一人の碇シンジの突然の失踪。
使徒を撃退して僅か一ヶ月後のことだった。
マスコミはこぞってこれを書き立て、勝手な憶測を飛び起こす。
だが、真相が分からない以上どれも効果的な理由とはならなかった。
それよりも心配なのはもう一人の英雄である綾波レイの存在。
あまりにも突然の失踪は彼女に大きなショックをもたらした。
今までずっと傍にいただけに、彼女はシンジが自分のもとを離れるなど考えたこともない。
涙に暮れ、悲しみに押しつぶされる日々が続く。
それでも残酷に時は流れていった。
碇シンジが戻ることがないまま・・・・
シンジが失踪して2年。
彼が戻ってくることも、その痕跡さえもなかった。
立ち直ったもののレイの表情には笑顔がない。
いつも寂しげにしているだけだ。
この2年間に彼女の立場も随分変わった。
今後再び使徒が来るかは分からないが、対策のためにエヴァのパイロットを育成している。
リリスにも今後来ないと言い切れる自信はないようだ。
特別な意味もこめて選抜された者たちは『チルドレン』と呼ばれていた。
子供ばかりが選ばれていると言う点からその名がついている。
まるで何かを忘れるようにレイは必死に自分の仕事を取り組んでいた。
そうしていれば深き思いに囚われることはないのだから。
解き放たれぬ思いを胸に彼女は時を刻み続ける。
そして・・・・・・再び思い人との出会いを迎えた。
最悪の形で。
あとがきというなの戯言
こんにちは、みなさま。omiです。
会話ねぇ〜
プロローグだからまぁいいか。
簡単な世界観を見せただけだし。
次はいよいよシンジが登場・・・
あえて属性は指定しないです。
最初の頃はLRSにはちょっと痛いものになるので我慢してね。
っていうか大目に見てくださいm(_ _)m
Indexに戻る。
第1話に進む。