初詣−紅薔薇姉妹の場合− 後編

黒塗りの車はいつも祐巳がバスで通っている途中の神社で止まった。
そこは以前、前白薔薇様である佐藤聖さまと一緒に初詣に行った神社だった。
祐巳は車からでると向かい側のドアからでた祥子さまに聞いた。
「お姉さまはここに来られたことがあるんですか?」
「いいえ。別の神社に行っていたの。
去年、あなたと聖さまがここに初詣に行ったと聞いたから行きたくなったの」
「えっ?!」
祐巳はそんなこと口にした覚えはない。
そんな顔がでていたのか祥子さまは祐巳がどうしてと聞く前に答えてくれた。
「去年、あなたと聖さまが2人で『合宿』に来たじゃない。そのときに聞いたのよ」
「そ、そうですか・・・」
それならば聞いていてもおかしくない。祐巳はそう思い納得した。
「ほら、祐巳。ぼーっとしていないで案内してちょうだい。私はここの神社は初めてなのだから」
「はっ、はい!」
祐巳は急いで神社の人の混んでいる本寺まで歩き始めた。
「祐巳。混んでいるから手をつなぎましょう」
「て、手をですか・・・?」
「手以外に何をつなぐというの?嫌だというのかしら?」
「わわわ、わかりましたっ」
祥子さまが残念そうな寂しそうな表情をしたので祐巳は慌てて祥子さまの手をつないだいだ。
その途端祥子さま顔はパァ、と明るくなった。
祐巳はそれを見て嬉しくなり遠慮がちにスキップしながら行った。
 
2人はお願いを終えておみくじの前を通りかかっていた。
「あ、祐巳。あそこにおみくじを引くところが」
「そうですね。ひいていきますか?お姉さま」
「えぇ、そうね。せっかくだからひいていくわ」
2人は長い列のできているおみくじの場所に祐巳が前で祥子さまが後ろで並んだ。
引き終わった2人は少し外れた場所に寄りおみくじを開いた。
最初に口を開いたのは祥子さまだった。
「大吉」
「・・・大吉・・・。大吉っ?!」
祐巳は大凶でも予想していたのか驚いていた。
よほど声が大きかったのか辺りの人が祐巳を振りかえて行った。
それを見て祥子さまは呆れていた。
「ご、ごめんなさい・・・。お姉さま」
「・・・いいのよ。二人とも大吉だったのね。よかったわ」
「はいっ」
「大吉だからと言って気を抜いてはいけなくてよ。祐巳」
「は、はいっ」
祥子さまは一瞬真顔になったかと思うと優雅に笑った。祐巳も祥子さまにつられて笑った。
「木につるして行く?」
「いいえ。せっかくの大吉ですし教えを忘れちゃいそうですから」
「・・・・そう。それじゃあ私もつるさないわ」
祥子さまはそう言うとすたすたと歩いて行く。言いたいことは言った、という感じだった。
祐巳は驚いたような顔をした後、微笑みながら祥子さまの後を追いかけて行った。
 
その後祥子さまと祐巳は屋台のはしごをしてから神社を後にした。


黄薔薇放送局 番外編
由乃 「な……なに、これ?」
乃梨子「江利子さまが今日のネタ用といってここに運び込ませていました」
由乃 「なになに……100円を投入すると巫女がおみくじを渡してくれます。へぇ……」
令  「お姉さまったらこんなものを持ち込ませて……(ため息)」
由乃 「おもしろそうじゃない。令ちゃん、やってみようよ」
令  「えー? あ、はい、やります、やりますともさ……」
(チャリン)
(巫女人形が奥から出てきておみくじをポトリと落とす)
令  「(取り出し口から拾って読もうとする)あっ」
由乃 「どれどれ……
	恋愛:年下の少年が良し
	縁談:出来る 幸せあり
	ちょっと! これどういうことよ、令ちゃん!」
令  「そ、そんな、おみくじの結果を私に当てられても……」
由乃 「いーや、病は気から。おみくじの結果は令ちゃんの願いから、よ!」
令  「由乃、それ無茶苦茶」
由乃 「無茶もヘチマもない! もう令ちゃんなんか知らない!」
令  「あ、由乃、待ちなさいってば!」


乃梨子「(おもむろに100円投入)
	恋愛:年下の少年が良し
	縁談:出来る 幸せあり
	(もう一回投入)
	恋愛:年下の少年が良し
	縁談:出来る 幸せあり
	……こんなことだろうと(ため息)」
江利子「ばれた?」
乃梨子「また裏から見てらしたのですね」
江利子「いつもながら予想通りの行動に出てくれて楽しいわぁ〜♪」
乃梨子「どうでも良いですけど……」
江利子「うん?」
乃梨子「私の入れた200円、返してくださいね」
江利子「うも〜 最近、乃梨子ちゃん、つれないわぁ〜」
乃梨子「(そりゃ、これだけ長いこと付き合ってればそうもなるでしょうよ)」