第三話 「急展開?・・・」 ドグォーーーーーーン!!!!! 「ふえ!?」 「きゃ!!!」 そんな爆発音と共に、真っ青だった青空が割れた。 「な、何!!!」 マユミは叫ぶ。 「(ここは特殊な亜空間バリアが張ってるから外からは簡単には入ってこれない はず・・・)マナ!!!ここから逃げるわよ!!!早く・・・きゃあああ!!!」 マユミは冷静に思考しながらマナの手を引き、出口へと向かおうとするが、上から破 片が落ちてきてうまく進めない。 「な、なにあれ!?」 マユミが天井を見ると、そこには今の爆発であいたらしい黒い穴と、そこから中庭のほうに入ってこようとしている青い巨人があった。 「ひ、人型の機動兵器!?でも、SITOシリーズにあんなタイプは・・・」 マユミが次の言葉を言う前に、マナが次の言葉を繋ぐ。 「ま、まさか・・・エヴァンゲリオン!!?」 「な、なによ、それ?」 マユミは、突然大声を出したマナに驚きながら、マナの口にした単語に興味を示す。 「・・・でもあれは完成していなかったはず・・・まさか、誰か後任者が?」 マナはマユミの言葉など全く届いていないかの様に、なにやら思考にふけっているよ うだ。 普段の寝ぼけた顔とは違い、SOEの学生にふさわしい風囲気を漂わせている。 「ちょっとマナ!!!聞いてる? ・・・きゃ!!!・・・とりあえず、ここから逃げたほうがよさそうね・・・」 天井がどんどん崩れ始める。 どうやらこの建物を支えていた柱と圧縮空間が、無茶な干渉によりゆがんできたようだ。 「・・・でも、あのプロジェクトは・・・のはず・・・やっぱり・・・」 そんな状況の中、手をあごに当て考え込んでいるマナ。 なぜか彼女には埃ひとつかかっていない。 「考え込むのはここから出てからにしてよ!!!行くわよ!!!」 マユミはマナの襟をつかんで出口のほうに引っ張る。 ミシミシミシ・・・ドグオォォォォン!!! が、次の瞬間、出口の真上の天井が崩れ、出口が瓦礫の山に塞がれる。 もしマユミが一人で走っていったら今頃命はなかっただろう。 「で、出口が塞がれちゃった!!!どうしよ、どうしよ・・・」 「・・・でも・・・やはり・・・こうなって・・・」 慌てているマユミとは対照的にマナは自分の世界に入ってしまっている。 エヴァンゲリオン零式(シンジ専用)・コックピット 「ちっ・・・どうやら民間施設の中にきてしまったようだな・・・できればあまり被害は出し たくないが・・・REI、現在の位置を」 天井を破って入ってきたこのエヴァンゲリオンにはシンジが乗っているようだ。 予想外の場所に出てきてしまったことに少し動揺している。 シンジは現在位置を戦闘コンピューターREIに尋ねた。 『現在位置は・・・でました。連合大学のようです。予定位置と約100kmずれていますが予定範囲内です。問題ありません』 このREIと呼ばれた戦闘コンピューターは完全自立型の戦闘支援ユニットで、自己学 習機能付きの超高性能のAIでもある。 製作者はシンジ。 人格形成もある程度終了していて、おとなしい女の子といった性格をしている。 「しかしSOEはまずいな・・・ここには人類の未来を担う頭脳が集まっている」 『それはあなたも同じではないのですか?14歳にしてスタルチオス大学を首席で卒業 したあなたもこれからの時代に必要とされているはずです・・・』 「僕は良いんだ。外宇宙の今の状況を打開する為には僕の命ぐらい惜しくない」 シンジは少し微笑む。 『・・・あなたが死んだときに悲しむ人がたくさんさんいます。自分の命を軽く見てはいけません』 REIはシンジを励ます。 「REI・・・」 シンジは小さな声でREIに聞く。 『何でしょう?』 「君は・・・僕が死んだときに悲しんでくれるかい?」 『あなたが死ぬ時は私も死にます』 REIは答えた。 「ふふふ・・・ありがとう。 REI」 シンジは満面の笑みを浮かべた。 『空間湾曲を確認。 連合が来るようです』 シンジはその笑みを元の顔に戻すと、操縦桿を硬く握り締めた。 「あまり被害を出したくない。 一気に片付けるぞ、REI!!!」 『了解』 連合大学 中庭・西門 「あ、連合軍が来た!!!って、ちょっとマナ、いい加減に気づきなさいよ!!!」 マユミはいまだ自分の世界に入り続けているマナに平手を振りかざす。そして・・・ パーーン!!! 「あいたっ!!!何するのよ!!!・・・あれ、ここどこ!?」 マナはその張り手を喰らい、やっとこっちの世界に戻ってきた。 今度はマユミ以上に慌てる。 「敵が攻めてきたんでしょーが!!!」 マユミは多少呆れながらマナに怒鳴る。 「あっ、そういえばエヴァンゲリオンはどうなったの!?」 マナはエヴァンゲリオン零式のほうを向く。 「もう大丈夫よ。 連合軍が来たわ」 空を見ると黒い亜空間から白のSITOシリーズが続々と出てきていた。 マナもSITOシリーズの方を向く。 しかし、マナは喜びもせず、逆に悲しそうな顔をしながらマユミに言った。 「だめよ・・・私の記憶が正しければ・・・SITOシリーズではいくら束になってかかっても勝てない・・・」 「え!!?」 マユミはその言葉に耳を疑う。 連合軍・SITOシリーズ一個小隊 SITOシリーズは弱い順に、エンジェル、アークエンジェル、プリシンパリティの三種類がある。 シンジにまわされたのは、プリシンパリティが70機。 少ない。 連合大学の価値を考えると、これでは少なすぎる。 何か考えがあっての事なのか? だが、所詮最前線にそんなことが伝わるわけもなく、この一個小隊はただ 『敵機撃墜』 の指令のみを頭に思い浮かべ、エヴァに迫っていた。 『敵機を発見。距離1900。予想接触時間・後40秒です』 戦闘コンピューターが先頭を飛ぶプリシンパリティに状況を告げる。 その後ろには数十m感覚で後続の機体が飛んでいる。 装備はミサイルとマシンガンらしき物が握られている。 「だそうだ。皆、気を抜くなよ。一機とは言っても敵の新型だからな」 位置からしてこの先頭を飛ぶ機体がリーダー格のようだ。 『距離1300。後30秒です。戦闘準備に入ってください』 戦闘コンピューターは変わらない口調で淡々と状況を告げる。 「一気に片付けるぞ。長引けばそれだけ被害が大きくなる」 『『『『『了解!!!』』』』』 隊員全員、70人が同時に言った。 『距離1000。後20秒です・・・情報修正。敵後方に小型圧縮空間を感知』 「何?」 同時刻・エヴァンゲリオン零式(シンジ専用) 『CTフィールドカタパルト、準備完了です』 エヴァンゲリオンは、赤い壁にその足を置いていた。 「突撃!!!」 エヴァンゲリオンは、その赤い壁をけった。 瞬間、エヴァンゲリオンは物凄い速度で加速する。 「うおおおおおおおおお!!!」 ある程度のGは、衝撃吸収システムでカットしていた。 シンジはSITOシリーズの小隊に突っ込む。 連合軍・SITOシリーズ一個小隊 『敵、突撃してきました。予想接触時間修正・後0.・・・』 「なっ・・・!」 ズドグォーーーーン!!! シンジの動きに反応する暇もなく一機のプリシンパリティが地に落ち、土ぼこりを上げ た。 「な・・・!?」 あまりの速さに言葉を失う隊長。 言葉には表さなかったが、驚いていたのはほかの隊員も同じだった。 「ぐはぁ・・・!?」 いきなり地面に叩き付けられたこの機体は、当たり所が悪かったのか右足と左手がち ぎれ、純白だったその機体は黒く汚れ、見るも無残な姿となっていた。 「まだだっ!!!」 シンジは叫びながらその機体の頭部をひざでつぶす。 そのまま肩から出したナイフを相手の胸部・・・コックピットにつきたてた。 「うわ・・・!!!」 「次っ!!!」 今度は地面をけり、そのまま上空に円形に浮かんでいる残りの機体に向かう。 「くっ!!!各自緊急離脱!!!直撃を喰らうぞ!!!」 隊長の指示に今まで止まっていた機体たちが一気にその場を離れる。 が、逃げ遅れた機体3機が吹き飛んだ。 「よしっ!!!囲んだ形になったぞ!!!全機、目標に撃て!!!」 中心に浮く形となったエヴァンゲリオンに、ライフルの集中攻撃を浴びせる。 が、全ての弾が赤い壁に阻まれエヴァンゲリオンには傷ひとつ付けられない。 「そっ、そんな・・・!?」 驚く隊員。 その瞬間、シンジはその隊員が乗っていたプリシンパリティのブースターにけりを入れる。 「うわああああ!!!」 「それ、貸してもらうよ」 シンジはその機体の持っていたマシンガンを奪い取る。ついでにナイフをジェネレータ 部分に突き立て、その機体を足場に天井まで飛ぶ。 その機体はそのまま地に落ち、見えなくなった。 「くっ!!!飛び道具を奪われた!!!注意しろ・・・」 その言葉を遮るようにシンジがライフルを乱射する。 実弾のようだ。 発熱して光る弾が、的確に、プリシンパリティを貫いていく。 シンジが弾切れになったそのライフルを捨てた頃には、すでに残りは5機。 「な、なんてことだ・・・たった一機に・・・」 隊長がそういっているうちも、シンジは次の機体を墜としていた。 「ちっくしょ・・・」 「・・・ごめん」 シンジは地面で煙を上げているプリシンパリティ・・・だったものに呟く。 『仕方がありません。早急に片付けていなければもっとひどい被害が・・・』 「悲しいね・・・戦争って」 『・・・はい』 一方・マナ達 「ぜ、全部やられちゃった・・・」 マユミが呆然と呟く。 「だから言ったでしょ。 CTフィールドがある限り、絶対に傷ひとつ付かないわ。エヴァンゲリオンには」 マナはさっきの慌てようとは一転して、冷静に状況をマユミに説明する。 「何でマナはそんなこと知ってるの?」 マユミは聞く。 「それは・・・・・・エヴァンゲリオンの試作機を作ったのが私だからよ」 エヴァンゲリオン零式(シンジ専用) 「ん?ゲート付近に生命反応が・・・REI、拡大してくれ」 するとシンジの前の画面に、話しているマナとマユミの二人が映る。 「女の子?僕と同い年くらいか・・・(かわいいな・・・)」 シンジは二人の顔を見るなり少し赤くなる。 『心拍数が上昇していますよ』 「う・・・そ、そんなことどうでもいいじゃないか。 あはははは・・・」 エヴァンゲリオンの中にシンジの乾いた笑いが響く。 『どうしますか?このままだと亜空間に飲み込まれる可能性がありますよ』 「うーん・・・連合の後続隊は?」 『不明です。 少なくとも転送準備に数分はかかるでしょう』 「空間が崩れるまでの時間は?」 『今から1分以上経ったら安全の保障は出来ません』 「そうか・・・」 シンジは少し考え込む。 「良し。 二人を救出してくれ」 『敵軍ですよ?救出するメリットは?』 「あの年で死ぬのはかわいそうだろ?」 『・・・そういう事にしときましょう』 REIの言い方が妙に引っかかりながら、シンジは二人のほうに向かった。 「私はもともとネルフ協和国出身なのよ。」 「えっ!!!そうだったんだ・・・」 マユミはマナの過去をあまり聞いたことがなく、マナの出身は分からなかったため、少 し驚いた。 「私がこっちにスカウトされたのは今から4年前。10才まではネルフの兵器研究所で 働いてたんだ」 マナは少し間をおいてから話を続ける。 「私が7歳のとき・・・働き始めてから2年目だったかな?・・・SITOシリーズに対抗す るための新型人型兵器の開発が持ち上がったの。 勿論、連合には極秘でね。 私は最初の頃、地位が低かったからその開発にかかわれなかったんだけど、すぐに地位が上がって、8歳になった頃には、いつの間にか開発メンバーに入れられてた。 9歳になった時に兵器研究所の所長になっていて、その頃にはエヴァンゲリオンの設計はほとんど終わっていたの。 確かに最強の兵器だった・・・。 でも性能が高すぎたの・・・ (特に、私が殆ど単独で作った"アレ"は) ・・・最初の頃は言われたとおりに仕事をしていたんだけど、連合大学に行く事が決まったときに設計図を全て残さず抹消したのよ。 それで所長の任を解かれたけどね」 「えっ、なんで?2年もかけて設計したんでしょ?」 マユミがもっともな疑問をあげる。マナが何も考えずにそんなことをするはずが・・・いや、普通の人だってそんなことはしないだろう。 その疑問にマナが答えた。 「簡単に言うと、他人に任せたくなかったのよ。エヴァンゲリオンは下手をすれば数で 勝る連合に勝ちかねない・・・ネルフ上層部は戦争を始めるつもりだったのよ。エヴァンゲリオンを使ってね」 「で、でも・・・確かネルフ共和国って宇宙間平和条約に加盟してなかったっけ?戦争なんかしたら全宇宙を敵に回すことになるのよ?支援なしで大して大きくもないネルフ共和国が連合に勝てるとは・・・」 マユミはなかなか納得できない。 そんなマユミにさらに説明を続ける。 「それが勝てるのよ。 支援なんか無しでもね。 生産するためにかかる資金もSITOシリーズ一機にかかる二倍しかかからない。 それにCTフィールドって言うバリアみたいなものがあるから、一度作ってしまえばめったなことでは破壊されないわ」 「・・・殆どインチキね」 マユミは正直な感想を言った。 ビシッ!!! 「え?」 嫌な音を立てて壁にひびが入る。 「空間が崩れ始めてる!?」 マユミが壁から離れる。 「きゃー!!!きゃー!!!きゃー!!!死んじゃうー!!!?」 マナはさっきの人とは別人かのように慌てる。 (マナって二重人格なんじゃないのかしら・・・) マユミは本気でそう思った。 「ちょっとー!!!マユミ!!!私こんなところで死にたくない〜〜〜!!!」 マナは何故かマユミに掴み掛かる。 「私に言われてもどうしようもないわよ!!!・・・きゃー!!!」 二人に大きめの壁の破片が落ちようとする。 覚悟を決めて二人は目をつぶった。 が、いつまで経っても何も起きない。 「あ、あれ?もう死んじゃったのかな?」 マナが少し目を開けるが暗くて何も見えない。 マナは自分のほっぺたをつねる。 「いふぁい・・・(痛い)私、まだ死んでないのかな?でも、何で暗いんだろ・・・あ っ!!!」 急に周りが明るくなる。そこには、あの青い巨人の顔が自分を見ていた。 『生きてるかい?』 「エ、エヴァンゲリオン?」 『大丈夫なようだね。だったら、その隣で気絶している女の子と一緒にこの手に乗って くれないかな?(ん?今、エヴァンゲリオンって言ったような・・・気のせいか?)』 エヴァンゲリオンは、その巨大な腕をマナたちの前に向ける。 「え、あっ!!!ちょっとマユミ大丈夫!?」 マナは隣で気絶しているマナに気づく。血も出ていないし、呼吸もしている。おそらく大 丈夫だろう。 マナはマユミを抱き上げる。 「うっ・・・マユミ・・・少しダイエットしたほうがいいよ・・・」 マナがこう呟いたことは、マユミには一生の内緒だ。 『早く乗らないと危ないよ』 周りを見ると、もう崩壊寸前といった感じだ。マナは慌てて手の上に乗る 『今、コックピットを開けるから、そこに入って。ちょっと窮屈かもしれないけど』 プシュウー 人間でいう、みぞおちの部分が開き、手はそこに近づく。 そこには少年が座っていた。 「早く入って」 「は、はい!!!」 マナはそのコックピットに入る。 「REI、閉じて」 『了解』 コックピットが閉じた。 「・・・もうちょっとはじのほうによってくれないかな?」 案の定、コックピットは狭かった。マナの胸が腕に当たって、気になって仕方がない。 「ご、ごめんなさい・・・あわわわ!!!」 「むご!!!」 マナは慌ててシンジから離れようとするマナだったが、どうバランスを崩したのかシンジの顔面をお尻で塞ぐ。 シンジはうれしさと苦しさを同時に味わい顔を真っ赤にする。 「ご、ごめんなさい!!!い、今どきま・・・ひゃ!?」 「むが!!!」 またもバランスを崩し、胸で顔を塞ぐ。 「す、すいません!!!あいたっ・・・んん〜〜!!!」 「だ、大丈夫?・・・むぐ!!!」 狭いコックピットと言うことも忘れて急に立ち上がったマナは、天井にもろに頭をぶつ け、心配して顔を上げたシンジの唇に自分の唇を重ねる。 人これをキスと言う。