第二話 「新型汎用機動兵器エヴァンゲリオン」




海王星・連合軍衛星基地「エルパレス」 



冥王星が死の星と化してから、太陽系の玄関口として開発された海王星。
その衛星軌道上を回るこの基地は騒然としていた。


「超大型の亜空間干渉を観測!!!大規模な艦隊が出現しました!!!」


オペレーターが叫ぶ。


「識別信号受信・・・ネルフ共和国です!!!」
「なにィ!!!」


オペレーターの口から放たれた「ネルフ共和国」の言葉に、上のほうに構えられてい
る大きないすに腰掛けていた司令官らしき人物が驚愕する。


「なぜあんな小国が・・・」
「戦力は、100km級の戦艦が一隻、1km級が約5000隻、500m級は数え切れませ
ん!!!」
「ネルフ艦隊、兵力の20%が亜空間へ突入・・・転移先はここです!!!」


上官の言葉をさえぎって情報を伝える。


「くっ!!!いきなりか・・・全軍、第一種警戒態勢!!!SITOシリーズは出撃許可!!!迎え撃つぞ!!!」
「はい!!!」


オペレーターはマイクを切り替え、基地内すべてにその声が響いた。


「全軍に通達、全軍に通達、第一種戦闘配置につけ!!!これは訓練ではない!繰
り返す、これは訓練ではない!!!」


基地内が騒然とする。
ここ300年間、訓練だけしか行っていなかったのだから当たり前だ。
情報系等は混乱を極め、兵士たちの士気も低い。
というより、何が起きているかも分かっていない兵士のほうが多い。
連合軍は、すでにこの時点で負けていた。 




ネルフ共和国・第39艦隊 旗艦・セルビオス




「戦闘開始まで後5分です」


この艦の司令室だろうか。
いろいろな装置が置いてあり、イヤホンをつけた兵士たちがいすに座ってその装置を操っている。
その部屋の中心には立体の海王星ホログラフが映っていた。
その海王星の周りを銀色の衛星が回っている。


「全く、連合は馬鹿か?なぜこんなに目立つ基地を作ったんだ?」
「我々、外宇宙国家に対しての圧力でしょう。まぁ、そのお陰でこっちはやりやすくなり
ますからね、感謝しないと」


その銀色の基地を眺めながら、帽子をかぶった軍人が言う。
敬語を使っているほうが若く、首から提げたドックタグにはこう刻まれている。 



認識番号   K9873 M392739 X57874
name: Kazuki Aoyama 青山 一樹
階級  少佐 



で、連合の基地・「エルパレス」をみて呆れているほうが白髪の老兵である。
その傷が入った顔には威厳のようなものが感じられる。
彼のドックタグには 



認識番号   K829  O8392081 L37902
name: Amar Ode  エイマー オード
階級  大将 



艦隊の司令官だろうか?とりあえず相当えらいことは確かである。


「ずいぶん慌てているようですね、連合は」


一樹が言う。


「まったく・・・ろくな訓練もしないからだ」


オードは、半ば呆れ気味に、そして少し嬉しそうに笑った。 




第39艦隊 E兵器突撃部隊 先発隊 


青い海王星をバックに黒い人型の影が浮かぶ。


「あれか・・・」


人型の影の中にいる少年の声が聞こえる。


「あと少しで戦闘開始だ・・・覚悟しろ、連合・・・」


その少年の目には殺気が満ちていた。
暗い宇宙に人型ロボットの赤い目が妖しく光る・・・ 




海王星・連合軍基地「エルパレス」 




「敵部隊、肉眼で確認できます!!!」


オペレーターは叫ぶ。


「く、早いな・・・」


司令官はその顔をしかめる。
しかし、そこは司令官。
すぐさま状況の再確認を行う。


「SITO部隊の出撃状況は!?」
「約50%未満です!!!」

司令官の横にいたオペレーターが、額から汗を流しながら言う。


「早くしろ!!!」


叫んでもどうにもならないとはわかっているが、それでも叫んでしまう。
同時にかなり離れたところにいた基地の護衛戦艦が、ネルフの人型兵器から放たれたマシンガンの弾の嵐を機関部に
喰らい、艦内で誘爆を起こして吹き飛ぶ。
真空状態で爆発音が聞こえず、妙に現実感を失わせる。


「ステイル級、撃沈されました!!!」
「敵、人型機動兵器を確認!!!拡大します!!!」


すると、司令室の天井につけられた画面に敵が映し出される。


「な、何だあれは!!!」


そこに映っていたのは、ライフルを持った青き巨人だった。
その赤い目には怪しい光が宿っている。


「SITOシリーズではありません!!!」
「ネ、ネルフの新兵器か!?」


すると、その巨人に一線の閃光が走る。
その閃光を放った500m艦、エンデバーの主砲が次弾のエネルギーをチャージしている。

「敵機動兵器に粒子砲が命中しました!!!」


オペレーターが、少し明るくなった。


「ふぅ・・・たいしたことは無いようだな」


報告を聞き、司令官も少し安著する。
が、ネルフの起動兵器はスラスターを噴射させ、また司令室に近づいてくる。
オペレーターの顔がまた青くなった。


「て、敵機動兵器健在です!!!」
「な、なんだと!!!」


巨人の前には赤い壁があった。
この壁によって先ほどの戦艦の主砲が無効化されたとでも言うのか。


「敵機動兵器のフィールド展開を確認!!!粒子砲を防いでいます!!!」
「敵さらに増援を確認!!!こちらに向かっています!!!」
「なんとしても防げ!!!」


が、その命令がオペレーターたちに伝わる前に、司令室は光に包まれた。 
こうして連合軍の海王星基地は壊滅した。
連合軍はネルフ側の機動兵器のバリアを破るすら出来ず、ついに一機も撃墜しないまま戦いは終わった。
これが後に人類史上最悪の戦争となることを知らずに・・・




いや、一部の人間以外は・・・ 




戦闘は数分で終わっていた。
あたりには連合軍のSITOシリーズの哀れな残骸が浮かんでいる。
その残骸の中に赤い光が見える。
ネルフ軍の新兵器。
その中のパイロットがスクリーンに向かってなにか報告している。 
パイロットはさっきの少年だった。 
その少年の顔は殺気に満ちた顔とは違い、落ち着いたような顔で、かなりの美形だった。
「・・・はい、わが軍の被害はゼロです。
このエヴァンゲリオン零式の性能には目を見張るものがあります。
・・・はい、では・・・分かりました。
補給を終えたらすぐに向かいます。
では」


そういって通信を切ると、少年はため息をついた。


「僕は・・・人を殺したんだ」


少年は上のほうを向く。
普段なら青い空が少年を癒すのだが、生憎ここは宇宙。
しかもコックピットの中だ。
上を向いても見えるのは機械が張り巡らされた天井だけ・・・


「多分・・・いや、確実にもっと殺す・・・それが戦争だから・・・」


少年は目を閉じた。
目じりがきらりと光る。
涙だろうか?


「怖いよ・・・」


静かにそう呟いた。
誰にも聞こえぬような小さな声で。 



少年は目をかっと開いた。 



「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ・・・碇シンジ!!!」


少年・・・シンジは、操縦桿らしきものを握ると、そのまま自分の船へと戻った。 




同時刻・SOE第一中学校中庭 




さわやかな風が流れるここ、「SOE中庭」は授業の合間の休憩などに、生徒の間で非
常に人気がある。
外から見ると(空間圧縮されているので、実際は見えないが)丸いドーム状になってい
る人口建造物なのだが、内部に3Dが展開されていて全天候を管理できるようになっている。
そのため、年中突き抜けるような青空に覆われている。
地面は一面の草原になっている。ただ、ドームなのでその直径である1km以上行くと
壁にぶつかる。
その草原のど真ん中にマナとマユミがねっころがっている。
周りを見ると誰もいない。授業中なのだから当然だが、二人とも天下のSOE中学校の
授業をサボって心苦しくないのだろうか?


「ふー、気持ちいいねー・・・」
「そうね、サボるのもたまには悪くはないわ」


無いようだ。
二人はそのまま少し目をつぶる。
人口の太陽光もあたっているので、日向ぼっこのような眠たさが二人を襲う。


「・・・私・・・眠くなってきた・・・ふあぁー・・・」


マナが欠伸をしながらマユミに言う。


「・・・そうね・・・私も・・・」


マユミはその言葉を言い終わる前に寝てしまった。スー、スーと寝息を立てている。


「・・・私も寝よっと・・・」


マナも目を閉じる。
すぐに寝息が聞こえてきた。




再び第39艦隊 E兵器突撃部隊・本隊 



青い海王星をバックに、オレンジ色の同型戦艦・・・ヴォーデンツィア級が数千隻浮かんでいる。
エルパレスを壊滅させたエヴァンゲリオン零式が、続々とヴォーデンツィア級に帰艦している。
その中の一隻にシンジの乗っているエヴァンゲリオン零式が着艦した。


『ご苦労様でした、碇中将』


シンジの目の前に人の顔が映る。
男性のオペレーターのようだ。


「ああ。次の任務があるから急いで補給を頼む」


シンジはそのオペレーターに少し微笑み、通信を切った。
エヴァンゲリオン零式は、そのまま壁に寄りかかりロックされた。
その衝撃に中が少しゆれる。
数秒後胸部が開き、シンジはシートベルトらしき物を外すと、壁をけって外に出た。
無重力なのでふわふわと体が浮く。
シンジの頭の中に、地球と同じぐらいの重力の自分の故郷が浮かんだが、すぐに忘れる。
シンジは反対側の壁まで着いた。
手すりを取って、床に足を付ける。
シンジが振り向くと、すでにエヴァンゲリオンの弾薬補給などが行われ、整備員が対反応エンジンの整備を始めた。
シンジは少し作業の様子を見た後、手すりをつたい奥のドアの中に入っていった。


「後二、三分かかるな・・・」


そういってシンジは通路の奥に消えていった。 




二、三分後・SOE第一中学校中庭




「・・・むにゃ・・・」
「・・・クー、クー、クー・・・」


マナとマユミはまだ眠っていた。
マナはただの寝すぎだが、マユミは昨日はほぼ徹夜で勉強していたのだから無理もない。
学校トップクラスと言えども努力はしているのである。 
そよ風が二人の髪を揺らす。  




一時の平和・・・ 




この二人がまたこの時間を取り戻すまで・・・ 



人類はおろかな戦争を続けることになる・・・ 








ドグォーーーーーーン!!!!! 






「ふえ!?」


「きゃ!!!」 



破られた平和は・・・ 




取り戻すことがどれだけ難しいか・・・ 




人類は思い知る・・・





後書き 
???:今回は短いわね。
作者:ま、今回だけですから・・・
???:こんな駄文、短くても問題無いわ。
作者:グッ・・・き、きっついですねぇ(ピクピク・・・)
???:そんなことよりも今回出てきた「エヴァンゲリオン零式」とか「SITOシリーズ」とか「反物質エンジン」と
か・・・わけわかんないことを言うのはやめてくれる?
作者:(っ・・・このアマーーーー!!!)・・・ちゃ、ちゃんと説明しますよ。
???:・・・ところで、いま「このアマ!!!」って思ってなかった?
作者:えっ!!!何で分かったんですか?・・・って、げっ!!!しまった!!!
???:・・・覚悟は出来てるんでしょうね?
作者:ひっ・・・た、助け・・・ぎゃあ〜〜〜〜〜〜!!!