2人の天使と雷皇

◆其の伍


ただいまシンジ達は1号館に来ている。

1号館は、いわゆる玩具・書物などの商品がおいてあり、

おいてある本の数が15万冊とか、玩具は世界の人気商品が所狭しとならんでいる。

何度も言うが、とにかくでっかいのだ。

さてさて、シンジ達は本屋にて好きな本を見て回っている。

シンジ達がまずおとずれたのが、漫画が置いてある棚。

「やっぱりたくさん漫画が置いてあるな、どれ買おうか。」 

シンジの目の前には、長い棚の中に、連載漫画などがずら〜っと向こうの方まで並んでいて、見るだけでも時間がかかりそうだ。

漫画だけでも1万冊はあるんじゃないかと思えるほど置いてあるのだ。

なかには、かなり昔の漫画もおいてある。

この時代になってセカンドインパクト前の漫画が大ブームとなって、そこそこ人気があった漫画は、ほとんど再発行されている。

「そうねえ、わたしは『妖しのセレス』と『天使禁猟区』がほしいわ。」

ヒカリも大ブームで漫画に興味を持った一人らしい。

(作者が少女漫画を知らないので、名前だけっす。内容知りたい人は、本買ってください。)

「ヒカリは少女趣味ね、わたしは『神風怪盗ジャンヌ』かな?」

「あら?マナミ様の方が少女趣味ですわ。私は『レディス・コミック』の方がよく読みます。」

そ、そうだったのか。

サヤカさんって、結構そういうの好きだったんだ。

しかし、そういうのまで再発行するとは、なんちゅう時代だこの時代は。

「私はこれがいいの・・・・。」

レイが手に持っていた漫画、それは・・・・。

・・・・・『すごいよ!マサルさん』だった。

「レ・レイ、中見知ってて言ってるの?」

シンジはちょっと冷や汗を流して、本をさしだすレイに聞いてみる。

        レイのイメージに全然合ってない、中身も外見も。

      「いいえ、しらないわ。」

知らないでいってたのか?レイちゃん・・・・。

レイはシンジ達の話題に入りたくて、適当に選んで持ってきたらしかった。

むう〜〜、そういうところもまたかわいい。

そこでシンジの頭がひらめいた。

男系の漫画を知っているのはシンジしかいない。

だから、いまの内にレイを仲間に引き込もうと思ったのだ。

「レイ、おもしろい漫画を教えてあげるよ。」

そう言いながらてをひっぱって、レイを違う棚に連れて行く。

他の三人は、少女漫画とは一体なんたるかを話し合って動く気配はない。

レイはというと、シンジと手をつないでいる事が気になって、顔を真っ赤にして俯いている。

シンジが向かった先にある棚は・・・、『アダルトコーナー』。

ではなく、『アダルトコーナー』のその前の棚をクイッ曲がって、『サンデーコミックス』の棚にきた。

けど、シンジの眼がちょっと物欲しげに見ていたが・・・・・。

「えっと、ここが『サンデーコーナー』だから・・・・・・あった!」

シンジは並んでる本を順に見ていって、『らんま1/2』をとりだす。

「あのね、レイ。初めて漫画を読むんだったら、高橋留美子先生の漫画がいいと思うよ。

 中でも僕は『らんま1/2』をお勧めするよ。

 『らんま1/2』は内容もおもしろくてわかりやすいし、何より絵が見やすいからね。」

シンジはとりあえず、1〜20までの巻を一冊づつ籠に入れていく。

もちろんレイは拒否などできない、シンジが勧めてくれた漫画を断る事は、レイには無理なのだ。

本を入れ終わるのは結構早かった。

シンジはまたレイの手をつないで、もといた所に戻っていく。

「レイもマナミ達と一緒に、少女漫画でおもしろいのがないか、聞いてきなよ。僕は自分の漫画を買いに行くから。」

「わたしも一緒に行く。」

「だ・だめだよ。レ・レイはもっと、漫画の基本的な所から読まないと、僕が買いに行くのはちょっとレイにはあわないよ・・・・。」

(まあ、確かに合わないんだよね。画風とかも、男くさいし・・・・。

それより、あっちの方の本買いに行くから、レイと一緒に行くわけにはいかないよ・・・・。)

そう言って、シンジはそそくさと違うコーナーに入っていった。

まずおとずれたのが『ジャンプコミック』コーナー。

籠に入れたのは『魁!!男塾』、次は『北斗の拳』。

次は『チャンピオンコミックス』コーナーにいって、『グラップラー 刃牙』シリーズ。

『ヤングマガジンKC』コーナーで『3×3×3 EYES』。

こんなの、あんま女性は見ないだろうな・・・・。

そして最後に・・・・・やはり『アダルトコーナー』。

まあ、この時代はある程度までのアダルト漫画までなら買う事は許されている。

性教育ももっとするべきだとの声が強く、学校で教えるぐらいまでのある程度までの本・漫画は買ってもいい事になったのだ。

明らかに、シンジが籠に入れているのはその範囲を越えているように見えるのは気のせいだろうか???

それと、シンジの場合ジェノサイドの人間なので、何かいわれても見逃してくれるだろう。

うらやましいな・・・・はっ!?な・なにを・・・・・。

う、ま、まあ、男の子なんだから、OKでしょ。

そう言う事で先にレジをすませてマナミ達の元へやってくる。

「シンジ、何買ってきたの?」

「うん、まあいろいろ・・・・・。」

シンジはあいまいに答える。

「Hな本は没収だからね♪」

どうやら、しっかりとばれているようだ。

どう答えようと本の行き先は同じなので、シンジは何も答えず、ちょっとがっかりして肩を落としている。

次に向かうは、5号館。

身辺保安器具を置いてある館だ。 

シンジ達はナイフの見物にきた。

「レイとヒカリは自分達の警護のためにとりあえず持っておいて。

 僕がネルフにはいったからには、馬鹿がいっぱい集まってくるだろうからね。」

シンジが少し小さめだけど、かなり切れ味のありそうなナイフをレイとヒカリに手渡す。

「で、でも、わたしは・・・・」

「・・・・わたしもいい。」

レイとヒカリがシンジにナイフを返そうとするが、シンジの手が2人のナイフをまたにぎらせる。

「だめだよ、レイもヒカリも持っていた方が安全だし、・・・・・ね?」

そう言うとともに、シンジが2人にウィンクをする。

それを見て、ヒカリは笑顔でナイフを受け取り、レイは顔から湯気をだして真っ赤になっている。

(シンジ君・・・・わたしが普通のままでいる事を思って言ってくれてるのね。・・・・・ありがとう。)

ヒカリはシンジの意図に気付いて、シンジのやさしさを感じていた。

マナミとサヤカは・・・・・、あ、来た。

「シンジ様、これを一つずつ買って置いてください。」

「ください♪」

二人が持ってきたのは、刃渡り30センチぐらいのバタフライナイフだった。

こんなでっかい物を、サヤカとマナミが使うのか?

確かに殺傷能力の点ではかなり高いナイフだろう。

しかし、重みがある点素早さが下がってしまう。

シンジは普通のように接して籠に入れる。

やはり、ジェノサイドの中で生きた者は、そういう点では熟練しているので重みはあまり関係ないのだろうか?

「うん、いいよ。じゃ、僕はこのパチンコ玉を買っておこう。」

シンジが籠に入れたのは、ごく普通の鉄の球。

いわゆる、指弾につかうようなやつで、達人クラスになるとコンクリートにも穴を開ける。

覇王破神流は肉弾戦だけではなく、武器を使った殺し合いにもつながっていて、シンジも使う事ができるのだ。

指弾は遠い所からも使う事ができるし近くからでも十分殺傷力があるため、なかなか使いやすい。

もちろん、それだけのコントロールと指の力があっての話だ。

かごの中の物を持って、レジにいって清算する。

次の館4号館は、食品関係と飲食店がたくさん入っている。

シンジ達は食品を見ていく。

ヒカリは元より、シンジも主夫ばりばりだし、マナミとサヤカもだてに主婦をやっているわけではない。

そういう点では4人ともとても話が合って、どの食品がどういう風に質がいいとか、

野菜や果物を買う時にどこを気をつけなければならないかなど、とても14歳とは思えないような内容を話している。

レイは黙ってついてきて、シンジ達と住むようになってから食べるようになった果物などを、徐々にいっぱいになっていく籠に入れていく。

「リンゴ・みかん・ナタデココ・ヨーグルト、それはとてもおいしい物なの。」 

「レイ様、果物を買うのなら、私も一緒に回ります。」

そう言って、サヤカはレイに果物の選び方などをきめ細かに教えながら、2人で違う売り場に消えていった。

だてにシンジと一緒にいるわけじゃなく、めちゃくちゃ詳しい。

これぐらいできないと、シンジの嫁なんてできないだろうな。

シンジの料理は上手だから、女のプライド的に・・・・・・。

「シンジ君、このお肉はどうかしら?賞味期限もまだ大丈夫だし、半額処分にしてはとてもいいと思わない?」

ヒカリが牛肉を持ってきてシンジに見せる。

「ほんとだ。僕も見つけたんだけど、このサバ2割引で身に弾力性もあるし青みも落ちてないから得だと思うんだ。」

青みが落ちてないやつは本当らしい、なんかで見た。(多分、ためしてガッテンか思いっきりテレビ)

「シンジ、あっちでジュースの小さい缶が、10個で398円だったから買ってきたよ。」

マナミは缶が10個詰まった袋2つ、両手に持っていた。

中身はコーラやスプライトなど、ほとんどがジュースである。

「またたくさんかってきたね・・・・・(・・;)」

「うん、だってうちの家は結構人数多いから、すぐなくなっちゃうと思って。」

そう言いながら、カートの横にある袋を引っ掛ける所に袋をつける。

「あと、お茶も結構半額や割引商品があったから、買いましょ。」

ヒカリも近くにあった飲料商品の中から、いろいろととってきた。

「シンジ様、私たちも買い物は終わりました。」

サヤカとレイが三人の所に戻ってきた。

籠の中には、あふれんばかりの果物が入れてあって、一体どこにそれだけの果物を持つ力があるんだろう?

「じゃあ、レジにいって買ってくるね。」

ピッピッピッ、シンジはカードをだして、レジの人にお金を払う。

シンジはヒカリ達と買った物を袋に詰めて、飲食店に行く。
 
飲食店は最上階にあって、なかなか見晴らしがよく、とても人気があった。

シンジ達が入ったのは、ちょうど人数分空いていたうどんや『柳』という店だった。

店に入ると、まず袋を置いてメニューを見る。

「えっとねえ、わたしは天ぷらうどんかな。」

「わたしは狐にしておくわ。」

「僕は肉うどん。」

「私はシンジ様と同じ物で結構です。」

「・・・・・狸うどんがいい。」

5人ともすぐ決まったようで、ヒカリがテーブルの一番横にあるボタンを押して、それぞれの頼む物をいう。

「すみません、肉が二つ・たぬき・きつね・てんぷら一つずつおねがいします。」

ヒカリが言い終ると、ピッ、という機械音がして注文が完了する。

こういう大きい店になると、人の出入りが激しく忙しいため、人がわざわざ注文を聞きに行くわけではない。

それぞれのテーブルに機械がついていて、機械の前で注文する物を言うと、自動的に注文が完了するのだ。

注文された順に料理人が料理を作っていくため、多少の待ち時間はかかる。

シンジ達はさっき買った漫画を見て暇を潰している。

ただ、やっぱり少女漫画が多いのに対して、シンジだけが『魁!男塾』を読んでいるのはかなり目立つが・・・。

ちなみに、マナミは『神風怪盗ジャンヌ』、サヤカはさすがに人前で『レディ・コミ』を見るわけにはいかず、

マナミが買ってきた『赤ちゃんと僕』を読んでいる。

レイは『らんま1/2』を読んでいて、表情は見えないが内面では結構おもしろいようだ。

ヒカリが読んでいるのは『天使禁猟区』。

一冊読みおわるかおわらないかぐらいで注文していたうどんが運ばれて来た。

うどんからは湯気がほかほかと上がっていて、中の具や麺とに香りとともに、食欲をそそり立てる。

「ご注文の品でございます。きつね・たぬき・天ぷらが一つずつ、にくが二つです。

 会計はココに置いておきますので、出る時にレジで清算してください。それではごゆっくりお過ごしください。」

そこまで言うと、店員は店の中に戻っていく。

シンジ達は早速それぞれのうどんを食べ始める。

ふと、ヒカリが思い出したようにシンジに話す。

「あっ、そうそう。シンジ君、明日から学校言ってもらうからね。」

ヒカリうどんを飲み込んでから口を開く。

「んぐんぐ、ふん?んに?」

「うどん頬張らずに、ちゃんと飲み込んでから喋りなさい。」

ヒカリに言われて、それまで頬張っていたうどんを飲み込んで、またヒカリに聞く。

「で、なんの話だっけ?」

「シンジ様、明日から学校にいくという話をしてたんです。」

サヤカとマナミはちゃんと聞いてたようで、うどんはこの短時間で食べ終わっている。

レイはマイペースにつるつると麺を口にはこんでいるので、まだ食べ終わらないだろう。

「学校って、あのヒカリがいってる学校?」

「そうよ、シンジ。それ以外にどこがあるのよ。」

「私がちょっと偽造文章を作っておいたから、シンジ君だけじゃなくて、マナミやサヤカもいく事になってるわ。」

ヒカリが人差し指を立てて説明する。

「中学校ってやつでしょ?そういえば、私達もジェノサイドの中の小学校を卒業してから、学校なんて物行ってないわね。」
 
なつかしそうに、マナミがちょっと微笑む。

ココで説明だが、ジェノサイドの中にも学校ぐらいあるに決まっている。

人が住んでいるのに、学校がないなんて事はないのだ。

シンジ達のように結婚している者もいるので、子供がいる者も多数存在する。

そういう人のために、幼稚園から大学院まで設立されており、ほとんどの子供が学校に通っている。

もちろん、学校に通っている子供もかなり腕が立つ。

まあ、シンジ達がいるので、学校を襲う者など皆無に等しかったのだが。

「ふう、学校かあ。いってみるのも悪くないかもしれないね、サヤカ。」

「そうですね、シンジ様はよく女性にモテていらしたし、私も鼻が高いです。」

サヤカがちょっと嬉しそうに答える。

やはり、自分の夫がほかの女性にモテルという事は、妻として嬉しい所があるらしい。

「そうなの?全然知らなかったな。」

シンジは意外そうにサヤカを見る。

「まあ、シンジ君がモテてたといえばそうだったわね。」

ヒカリもうんうんとうなずく。

「それじゃあ、シンジ君達も学校に行くのね。家に制服が届いているから、明日から一緒に登校しましょ。」

ヒカリの顔が嬉しそうにあたたかく微笑んでいる。

こういうところが、ヒカリの一番の魅力なんだな、と思うシンジだった。

「・・・・・うどん食べ終わったの。」

うどんの中のだしまでたいらげ、満足そうな雰囲気がうかがえる。

もちろんレイだ。

「明日からシンジ君と一緒に学校に行くのね。」

レイの雰囲気が桜色に見えてきて、レイ自信胸に手を当てて、頬をピンクに染めている。

言い忘れていたが、レイは私服である。

マナミとサヤカの服を貸してもらったらしく、スカイブルーのワンピースを着ている。

レイの美しさと服のスカイブルーが、乙女らしいしぐさをするレイの可愛さを、いっそう引き上げている。

レイの唇は微妙に緩んでいて、幸せをめいっぱい感じているのだろう。

「ところで、ヒカリはまだ買う物はあるの?」

幸せそうな雰囲気を壊してはいけないと思い、シンジはレイをそっとしておいて、ヒカリに声をかける。

「もうないわ、大体のめぼしい物は買ってあるし。」

「2人はある?」

「私はありません。」

「わたしもないわよ。」

そう言って、サヤカもマナミも帰る準備をしていく。

「レイは?」

「・・・わたしもないわ。」

「それじゃあ、帰るとしようか。」

シンジ達は、店の出口にあるレジで会計を済まして、自分達の家に帰ってゆく。

背中だけならば、ごく普通の中学生と変わらない、14歳の少年・少女なのだ。

まだ14歳の背中には、この世の全てがかかっている。

この少年少女達に、安息の時がおとずれるのはいったい、いつになるのだろうか?

愚かな大人達の思惑に踊らされてしまう事がないように、願い続ける。

この、本当はごく普通の少年と少女達に。




あとがき


マーシーです、こんにちわ。

シンジ達の休息の時間を書きたかったんです。あんな風に見えても、心と体は14歳ですからね。

これが普通の中学生の姿なんではないでしょうか?(お金やナイフの事は別として)

シンジ達に、このまま安息の時が続く事を祈るばかりです。

作者が言うのもなんですが、やっぱり、シンジ達は普通に学校生活を送って、14歳らしい姿が一番似合ってると思いました。

次から、学校生活が始まります。

学校での生活と、使徒達との衝突を織り交ぜて書いていきたいです。

では其の六でお会いしましょう。