結局………私は学園祭が終わるまでに祐巳を妹にする事はできなかった。 あの夜、マリア様の前で祐巳にロザリオを手渡そうとしたけれど…返ってきた答えは、 『ご免なさい。もう少し考える時間をください』だった。 流石にショックだった。祐巳がロザリオを受け取ってくれなかったことは。 でも、祐巳が私のことを拒否したあのときに比べて…なぜだか受け入れられた自分自身に少し戸惑っていたのも事実。 祐巳の答えは、受け取らないという拒否ではなく,、あくまでも保留・妹にならないではない、もう少し時間が欲しいといった。 …それでもいい…例え時間がかかっても私の妹になってくれるのならばいつまでも待っている。 最初の約束どおり、私も紅薔薇さまにロザリオを返した。 ただ、このことを知っているのは山百合会の幹部と祐巳、そして写真部の武嶋蔦子さんだけ。ロザリオは紅薔薇さまが『代わりにこれをつけていなさい』といって、そっくりなものを渡してくれた。 蔦子さんには、絶対にこのことを口外しないようにお願いして快諾を貰っていた。彼女曰く『学園祭での写真の掲載を許可してくれたお礼です』とか。 つまり…他の生徒は紅薔薇との姉妹の解消を知らない。 私は、今までと何ら変わらず薔薇の館へと顔を出している。だれも『紅薔薇の蕾でなくなった』と思わないだろう。 …今はまだ、それでいい… 祐巳も、山百合会の仕事を手伝ってくれるようになった。 妹になれなかったのだから、山百合会の協力者いう点からすると、学園祭が終わった時点で関係は終了しているのに。 祐巳が言うには『近くにいた方が、本当の祥子さまや紅薔薇さまを見られますから。それともお邪魔でしたでしょうか?』 薔薇の館の住人は誰一人として邪魔だなんて思っていない。新しい住人が増えたようで喜んでいるくらいだ。 ………白薔薇さまのセクハラだけはちょっと勘弁して欲しいが…そのせいで祐巳がこなくなったら………例え薔薇さまだったとしても許しませんよ。 新聞部は祐巳のことを『紅薔薇の蕾の妹』と思っているらしく、必死に探りを入れてきているが、答えはNOである以上誰もそれを口にしない。 祐巳でさえこう答える。『御想像にお任せいたします』と………彼女も強くなった。 しかし、もし私が紅薔薇の妹を解消した・なんてことが新聞部の耳へはいったら、どんな事態になるのだろう? それはそれで面白い事になるかもしれない。と、不謹慎な事を考えている自分がいる。私自身も変わったのだろう…ううん、祐巳のおかげで変われたのだろう。 「お茶のおかわりはいかがですか?」 祐巳は既に薔薇の館の住人らしく、雑用を引き受けてくれている。 「ええ、頂くわ」 今は…紅薔薇さまも、祐巳を自分の妹に・紅薔薇の蕾にと考えている。いや、実際に行動も起こしている。 紅薔薇さまは『仕事の引継ぎの件があるから、もし私の妹になるのなら早い方がいいわよ♪』とも言っているくらいだ。 それに対して祐巳は『急がせてもだめですよ♪ でも、必ず答えは出します』と返している。紅薔薇さまに一歩もひいていない…彼女も本当に強くなったものだ。 それと『今の薔薇さまがご隠居なさるまでには、結論は出ていますよ』とも答えている。 現薔薇さまがいなくなるとき…それはつまり、薔薇の蕾が新しく薔薇さまになる・あの信任選挙の時だろう。 あと数ヶ月・でもそれは長い長い数ヶ月。多分それまでに祐巳は、薔薇さまとしての知識を現薔薇さまのお姉さまから受け継ぐことだろう。現に今での祐巳は、前回とは異なり、既に薔薇さまとしての片鱗を見せ始めている。 彼女が紅薔薇さまとして山百合会を支える事に何の文句もない。いや、心の中ではそれを望んでいる。 でも…それはそれ・これはこれ。 妹としての祐巳は絶対に渡しませんよ? ロサ・キネンシス♪
黄薔薇放送局 番外編 由乃 「今回のゲストは『哀れな仔羊』こと武嶋蔦子さまで〜す」 蔦子 「ちょ、ちょっと、由乃さん、その紹介はないんじゃ……」 由乃 「ふっふっふ、蔦子さん。あなたもいつも私がどういう扱いを受けているのか、 身にしみることでしょう。……フフフ、アハハ、アハハハハハハ!!(黒い笑い声が響く)」 蔦子 「よ、由乃さん?」 令 「(肩を叩く)……そっとしておいてあげて。 お姉さまにやられっぱなしなのが相当悔しかったのか最近は…… ……よ、よしのぉ〜。 オーイ、オイオイオイオイ(すすり泣き)」 蔦子 「ちょっと、令さままで……(汗) あぁ、もういつもならシャッターチャンスなのにぃ〜!!」 …… …… 乃梨子「……放っておいて良いのですか?」 江利子「いいのよ、せっかくkeyswitchさまの作品が完結するってのにあんなことして。 第一、私をなんだと思っているのかしら。三人揃ってあんな態度で。お仕置きしなきゃ」 乃梨子「(黄薔薇さまの一挙手一投足が原因だと思うけど……)」 江利子「……乃梨子ちゃんはあんなことしないわよねぇ?」 乃梨子「もちろんです、はい。 (あぁ、流されるだけの私を許して、志摩子さん!)」 江利子「まぁ、何はともあれ完結することは素晴らしいことよね」 乃梨子「ええ、未完のまま終わるものを見ると悲しいですから。 仏像の場合は未完なら未完で一体この後どれほどのものを作りたかったんだろうかと……」 江利子「はい、ストップ乃梨子ちゃん。 それはそれでおもしろそうな話だけど、今回は脱線はなし」 乃梨子「……そうですか。 しかし、このお話の世界では紅薔薇だけでなく黄薔薇も揉めていきそうですよね」 江利子「そうなのよねぇ〜♪ あぁ一体どうなってしまうのかしら♪」 乃梨子「(♪ですか……)作者さまはこの後の展開も考えていらしたとか」 江利子「ここの作者のことなんか放っておいて是非続きが見たいものね♪」 乃梨子「完結のお祝いも兼ねて作者さまにお願いしてみるのも良いかもしれませんね」 江利子「では、最後に。……乃梨子ちゃん」 乃梨子「はい」 二人 「完結おめでとうございます!」 二人 「そしてここまで毎度読んでくださった読者のみなさまにも感謝を。 最後に作者さまからのあとがきをどうぞ。ではみなさま、ごきげんよう」
あとがきという名のいい訳 最後までお読みいただきまして本当にありがとうございます。Keyswitchです。 コレを書き始めた頃は…ぢつは原作を一切読んでおらず、TVの第1クールの放送中だった・という、非常にいい加減な状態だったのです。 そんな時に………『他の小説で逆行ネタはたくさんあるけど、もしマリみてでやったらどうなるだろう?』とふと思い、勢いだけで書き始めたのがこれでした。 最初はスムーズに走り出して、これなら! と思ったのがいけませんでした。最後になるにつれて選択肢が狭まってゆく(というか、伏線を消化する)のに必死になってしまいました。 本来ならば第2クールが始まる前に終わる予定だったのですが…結果はご覧の通り…しっかりと間に合いませんでした。 でも、最初から『こうする』というものはありました。 1:文化祭の最終日に祐巳は祥子からロザリオを受け取らない!(ぢつは書き始めたときから決まっていた) 2:夢落ちにはしない の2つは死守しようとしました。特に2番は…いつでもどこでも簡単に終わらせることが出来るのですが、反則だろう・ということで、自分自身の戒めとして禁じ手にしたのです。 特に、ラスト『そして』に関しては、7〜8話目を書いた時点でほとんど出来上がっていました。(短いですし…) 逆に言えば、その辺りからラストを逆算しながら書いていたとも言います………ちーとも逆算できてませんが。 (特に蔦子なんてほとんどラストでいきなり登場させちゃいましたから…本当は桂さんが出るはずだった) そして書いてゆく最中にもう一つ追加しました。 3:ギンナン王子を登場させない ………憎めないキャラなんだけど、書きづらいんです……… ということで、一切登場させていません。代わりに祐麒君が出るはめになってしまいましたが… さて…一番気になっているかと思いますが。 「これから祐巳は祥子の妹になるのか? それとも蕾に?」 ですが… コレを書いている最中は、コレの続きとして『ロサ・カニーナ』編を書く気でいました。生徒会役員選挙ですね。 そこで、祐巳も立候補させて(もちろん、静さまと志摩子さんも立候補)5人で・と構想していました。 つまり、祥子が信認されれば祥子の妹に・祐巳が信認されれば紅薔薇さまに、と踏んでいたのです。 …ですが………執筆速度でYUKI様に負けました。 ………はい、ご想像の通り『僅差』もしくは『同数』で波乱を起こしたかったのです。もちろん白薔薇さまのほうも。 ということで、2番煎じになっちゃいそうなのでコレは封印と相成りました。 結果………皆様の御想像にお任せします♪ もう1点 「これは逆行なの?」 ですが………私自身もわざと決めていないんです。 『逆行』『平行世界』『実は小説版のほうは祥子の夢・という設定の2次創作』とか色々と考えましたが、それはあくまで読んでいただいた方々のそれぞれの考え方にお任せしよう・ということで、作中では一切触れませんでした。 (無責任とも言います) 執筆中には、沢山の方から励ましのメールを頂きまして、本当にありがとうございました。 1通1通しっかりと目を通させていただきました。本当ならばお礼のメールを送らせていただくのが常識なのですが……… 申し訳ありませんっ!!! 公私共に急に時間がなくなってしまい、まともにお返事を書く時間がなくなってしまいました。 筆不精なもの下記で本当に申し訳ありませんっ m(_ _)m また次回・投稿、発表の機会がありましたら、あきれずに見ていただければ幸いです。 それでは、管理者であるYUKI様、ピーナッツ様、遅筆で駄文なお話を快く掲載していただきまして本当にありがとうございました。 そして、これを読んでいただきました皆様方、最後までお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。 Keyswitch