若き恋の物語

ここは...どこだろう...?

何なんだこれは?見た事があるような...人間?それにしては大きすぎる。

光っている...とても眩しい。およそ100メートルはあるだろう。

僕は...何を見たんだろう?


第壱話  転校生 


結局それが夢だと気付いたシンジは目が覚めた。

「夢か...」

シンジは再び寝ようとした。

「バカシンジ!いつまで寝てるのよ!遅刻しちゃうでしょ!?」
「もう少し寝させてよ...アスカ...」
「バカ!さっさと起きる!」

アスカに強引に布団を剥ぎ取られたシンジは機嫌が悪そうだったとか何とか。

「シンジ〜母さん、先に出るわね。戸締り、よろしく」
「行ってらっしゃいおばさん!シンジは任せておいて!」
「お願いねアスカちゃん」

そういってユイは出て行った。

「任せなくていいのに...」

そのシンジの呟きを聞いた者ははいたとかいなかったとか。



5分後


「「行ってきます!」」

誰もいない玄関に挨拶をしたシンジとアスカは勢い良く駆け出して行った。

「あんたがグズだからこんな時間になったじゃないの!」
「だったら置いていけば良かったじゃないか!」
「あんたバカぁ!?あたしがいながらみすみすあんたを遅刻させられないでしょ!」
「お節介...」

よく疲れないものか...全力で走りながら二人は会話していた。

「見てシンジ!あのビルまた大きくなってる!」
「うん。こっちに移り住んでくる人が増えてきたんだよ」
建設途中のビルを見てシンジとアスカは立ち止まった。

「いかん!遅刻やがな!」
「ビュゥウウウ!!」

「はぁ...朝っぱらから五月蝿い奴らね...」
走ってきたトウジとケンスケを見てアスカが呟く。ただ、周りの人間には聞こえないように...

「おー!おはよ、シンジ!」
「オッス!」
「トウジ!ケンスケ!」
「なんやセンセ。朝から同伴でっか。アツイでんなー!」
アスカとシンジが二人でいるのを見てトウジがからかう。

「バッ...あんたバカぁ!?デリカシー欠落してるのよねあんたって!!それだから彼女とうまくいかないのよ」
「なっ、何を言い出すやお前は!」
「洞木さんからいろいろ聞いちゃってるもんね」
「洞木さん?」
どんな話か全くわからないシンジは首をかしげる。

「やだ、あんた知らないの?」
「うん」
「がぁあああ!!」
その様子を見たトウジはただ叫ぶしかなかった。

「あかん!こんなやつ相手にしとったらホンマに遅刻や!」
「な、何ですってー!!」
「じゃあ、学校で会おうぜ」

トウジとケンスケは再び走って行った。

「シンジ!追いかけるわよ!」
「ま、待ってよ〜」



その頃...



「あ〜ん遅刻遅刻〜初日から遅刻したらとんでもないわ!」
シンジたちが通う中学校の方面に一人の少女が走っていた。焼いた食パンを口の中に入れながら...
少女は角に差し掛かった。少女の目の前ににシンジが走っていた。

「あっ!」
「え?」
当然、避ける事は無く...

「うわあ!」
「きゃあ!」

衝突。負傷者男子1名(擦り傷)

「シンジ!?」
その状況に気付いたアスカが立ち止まる。シンジはぶつかった少女をただ見ているだけだった。
(違う制服だ...どこの生徒だろう...)
そのシンジの目は自然と少女の下半身に向かった。
(白...)

「ああ!私の朝ゴハン!」
地面に落ちた食パンを見つめる二人。あわててめくれ上がったスカートを戻す少女。

「....見た?」
「へ?」
「見たでしょ?」
「何を!?」
「パンツ!」
「見てない!」
シンジは否定した。本当は見たのだが。

「嘘!」
「見てないってば!」
アスカに次第に怒りが込みあがってくる。
「あんたね!そっちからぶつかっておいてさっきから何!?」
「ああ!8時16分?じゃ、私急いでるから!」

少女は走っていった。

「何だったんだろう...?」
「大丈夫?立てる?」



5分後...



「はぁ、何とか間に合ったよ...」
「あんたがドンくさいからよ...あっ、襟曲がってる」

アスカがシンジのワイシャツの襟を直す。
「あんたってあたしがいないと本当に駄目ね」
「そ...そうかな...」


教室にて...


「おはよう、二人共」
「おはようヒカリ」
「おっす、委員長」

平和な日常が繰り広げられる。

「おはよう、シンジ君」
「おはよう、カヲル君」
「出た。耽美男」
「今日は欠席かと思ったよ...」
カヲルがシンジの肩に触れる。

「ちょっと!あまりシンジに近寄らないでくれる?変なのが伝染(うつ)ったらたまらないわ」
「心外だね、そんな風に言われるのは」
「あんた、自分が変って言う自覚は無いの?」
「大衆と言うものはいつの時代も理解できないものを異端とみなして迫害するものだ」
「またそうやって難しいことを言う!」
「ちょっとアスカ!」
ヒカリが二人を止めようとする。

「少しは自分で考えることをしてみたらどうだい?」
「何それ!?私のことを馬鹿にしてるの!?」
横を見たらシンジが欠伸をしていた。

「やっだ、ぎりぎりまで寝といて何欠伸なんてしてるのよ」
「ちょっと...変な夢を見ちゃったもんで...」
「わかった!えっちぃな夢やろ!」
「鈴原!!」
ヒカリが再びとめる。

「何か...どこだかわからないんだけど僕の目の前に大きな光の「何か」がいるんだ。人の形をしていて...僕には何なのかわからないんだけど...そいつはじっと僕を見詰めているみたいで僕は目が離せないんだ。なんだか...何かを探しているようにも―――」

ガタンッ!!

ドア付近でトウジがおびえているように見えた。
「トウジ?」
「なッ、何でもないわいっ!コラシンジ!朝からけったいな話すな!」
「ごめん...」
「...ははん、さてはあんた、今の話ビビッタね?」
「んんんんんなわけあるかい!」
アスカが仕返しと言わんばかりにトウジをからかう。

「光の巨人...「アダム」...」
カヲルが何かつぶやいていた。

「カヲル君?」
「なんでもないよシンジ君」
シンジが問いかけたが特に何も答えずに軽く微笑んだ。

「っあーー!!間に合ったー!」
やたらと大きな声で教室に一人の少年が駆け込んできた。
「マサト!遅い!」
「悪い悪い!信号に何回もつかまったからよ」
沖マサト。中学校入学時からのシンジ達の友達である少年。
教室内にチャイムが鳴り響いた。

「皆さん、席についてください!」
クラス委員長のヒカリが生徒たちをまとめる。

「おっはよーみんな!」
担任の葛城ミサトが入ってきた。
「さーて、今日は遅刻も無し、欠席も無し、パーペキね」

シンジは一人でさっきぶつかった少女のことを考えていた。
(さっきの子...知らない制服だったな...何処のなんだろう...)
「ミサトセンセぇー!!」
「どうしたの鈴原君?」
「転校生来てるって聞いたんですけど」
その言葉にクラス内でざわめきが起こる。

「葛城先生、転校生を連れてきました」
「お手数かけます、根府川先生」
(知らない子...知らない制服...まさか...!!)


シンジの予感は当たるのだった。教室に入ってきたのはさっきシンジがぶつかった少女と全く同じだった。
唖然とするシンジ、不信感を持つアスカ。
「げ!あの子さっきの...」
「最近来たばっかりだからいろいろと教えてあげてね!」
「綾波レイです!はじめまして!よろしく...」
レイはシンジを見つけるなり笑顔から一気に表情を変えた。

「けっ、今朝の覗き魔!」
「覗き魔?」
いきなり叫んだレイを見てミサトが尋ねる。
「そうなんです。さっき私のパン...」
「ちっ...違うよ!!本当に見てないって!!」
言いかけたレイを何とか止めるシンジ。
「だって私のスカートの中見たもの!」
「本当かよシンジ、お前も良くやるようになった...っ、何をするんだよ惣流!」
アスカから放たれたペンケースを受け止めたマサトが言う。

「バッかじゃないの!?あんたね!シンジにぶつかって置いて謝りもせずに先に行っちゃうなんて酷過ぎるわよ!」
「なっ、何よ!被害者はこっちよ?」
「あんたね!あんたとぶつかったからシンジは肘を怪我したのよ!?」
「...保護者と庇護者、保護者に問題があるみたいだけど?」
「カヲルは黙ってな!」
アスカに止められやれやれと言った表情を見せるカヲル。

「ご、ごめんなさい...あの...大丈夫?」
レイが心配そうな表情をとる。
「大丈夫だよ。そんなに大した事はないから...」
「何かってに和解してるのよ!あたしは絶対に許さないからね!」
「どうしてあなたがそんなに熱くなるの?変!」
「へっ、変って何よ!」
アスカVSレイの口論が勝手に始まる。

「シンジとアスカは二人でひとつなんだ。すばやいボケと突っ込みで離れられない間柄」
「「ケンスケ!何言ってるんだよ!(のよ!)」」
シンジとアスカの声が同時に教室に響き渡る。
「うっそ、本当に?」
その様子を見たレイは驚く。
「「違います!!」」
頑固否定するシンジとアスカ。

「あーもう、ケンカはしない!ホームルーム終わっちゃったじゃないの」
ようやくミサトが口を開いた。
「兎に角、綾波さんと仲良くしてあげてね〜じゃ、委員長!」
「起立!礼!」
(疲れた...)
シンジは朝からお疲れムードとなった。
ほとんど会話に入ってこなかったマサトがなぜか浮かない顔をしていた。
(俺の正体がわかるのも時間の問題か...あいつだけには本当の事を言って置いた方がいいかな...)


2時間目終了後の休憩中...


「シンジ、赤木先生が保健室に来いってさ」
「保健室に?」
「次の授業には遅れるって先生に入ってあるから早く来いってさ」
「わかったよ」

マサトに呼ばれたシンジは保健室へと向かった。



保健室...

「失礼します...赤木先生...いますか?」
「あらシンジ君、早かったわね」
(早かった?)
その言葉の意味が理解できずにいた。

「そこに座ってくれる?」
「わかりました...けど、いったい何をするんですか?」
「ちょっとした適性検査よ。NERVの申請でね」

(NERV...?)

そこから、平和だった日常に大きな変化が訪れることを知る物は誰もいなかった。



続く



予告

その日の放課後にNERVの研究所に行くことになったシンジたち。
シンジと共に研究所に行く約束を強引につけたアスカ、道がわからないから道案内をかねてシンジと共に研究所に行くことを望むレイ。
それぞれの想いが次第に深まっていく中、レイに起こった出来事とは?

次回 変わる心 変わらぬ心