レイ 想いの向こうに



朝を迎える。見慣れた天井が僕の視界に入る。寒さで体が動かない。
すると、突然布団が動いた。横を見るとレイが僕のほうを向いて眠っていた。

そうか・・・僕はレイと一緒に寝ていたんだっけ・・・・・
それに、今この家には、僕とレイしかいない。
しかし、いくら冬休みとはいえ、いつまでも寝ているわけにも行かない。

「レイ、朝だよ」
僕はレイの頬に軽く口付けをしてレイを起こす。
「ん・・・・シンジ、おはよう」

ふぅ、落ち着くと言うかなんと言うか・・・・・なんだろう?この気持ち・・・・・

僕は立ち上がって、部屋のカーテンを開ける。窓から見える青空、まるでレイの髪の色のような色をしている。

ふと思ったのだが、ここはもともとミサトさんの家なのに、どうしてミサトさんが僕達を残して引っ越したのか全く分からない。

それはともかく、僕達はいつも通り朝食を・・・・・と思ったのだが、晴れていてすがすがしいので朝の散歩に行くことにした。



第拾七話  散歩道  過去を秘めて 守るべき者


まるで昨日の初詣に行くような風景だった。レイは僕に密着して、それで寒さを紛らわす。
さすがに早朝ということもあって人は全くいない。

「初めてだよね?朝にレイと一緒に散歩に行くのって」
「うん、けど、どうしていきなり散歩に行こうと思ったの?」

「え?・・・・そ、それは・・・・その・・・・」
『何となくレイと一緒に歩きたくなったから』なんて言葉は出来れば言いたくなかった。
それに代わるような言葉を必死に考えた挙句だした言葉が、

「何となくレイと一緒に歩きたくなったから・・・・・かな?」
結局思いつかなかった。それを聞いたレイは微笑みながら、

「ふふっ、そんな事言わなくても、あたしはずっとシンジのそばにいるからね」
なんだか、うれしい気持ちになった。当然だけどね。

レイの言葉一つ一つに、大きな意味があって僕の心に入り込む。自然と、優しい気持ちになる。


5分間歩いて、僕達は近くの公園にたどり着いた。近くにあるベンチに座る。

時間もあることだし、過去について話すことにした。

「ねぇ、レイ」
「何?」
「覚えてる?僕が記憶を取り戻した日のこと・・・」
僕はふと、去年の夏、レイに頬をビンタされ、改めて告白された日のことを思い出した。
「わ、忘れるはず無いじゃない・・・・」

そう、これは、去年、僕がレイの家にいるとき、まだお互いの名前を苗字で呼んでいたときのこと・・・・

本当のところ、この話がしたくて今日散歩に連れてきたんだけどね



半年前・・・・レイの家


「綾波、ごめん・・・」
ふがいない自分を改めてレイに謝る。今となっては苦い思い出だ。
「どうして謝るの?」

今思えば半年前のレイの性格は今と全く違っていた。
「・・・・・ぼくが、綾波を悲しませるようなことを言ったから・・・・」
「そのことはもう終わっているのに・・・・まだ気にしているの?」
「あまり気にしていないけど・・・・綾波が悲しんでいたから、謝らないといけないと思って・・・・・」


僕の目から、涙が零れ落ちてくる。もう少し・・・もう少し僕がしっかりしていれば、こんなことにはならなかったと思うと、さらに涙があふれてくる。
泣き顔をレイに見せたくないと言う理由から、僕は顔を下に向けた。
しかし、涙が床に落ちる。

「碇君、泣いてるの?」
「・・・・・」
うまく言葉が出ない。しばらく沈黙が続いた。今になってはありえない光景だ。

「碇君、こんなとき、どういう顔をすればいいの?」
「・・・・笑えばいいと思うよ」
僕はレイの顔を見ていった。しかし、レイは笑顔を見せない。

「ダメ・・・・愛する人が泣いている目の前で、笑うことなんて出来ない・・・・」
「あーあ、せっかく綾波の笑った顔が見れると思ったのに・・・・」

いかにも今までの行動が芝居だったかのように僕は元気な声で言った。
「え・・・・碇君、もしかしてお芝居だったの?」
「うん!」
「もう・・・・・碇君の意地悪・・・・・・」
最後のほうはささやくような声、顔を赤らめ、微笑みながら言う。レイの小さな握りこぶしが僕に『コツン』と当たる。

「綾波、ひとつ聞いてもいい?」
「うん・・・・・」
「綾波って、僕のどこが好きになったの?」
半分「悪戯」な質問をする。レイは顔を真っ赤にした。

「・・・・・・・・・・碇君も言うなら言ってもいいわよ・・・」
「わかったよ」
「・・・・・・恥ずかしいから、ほかの人に言わないでね・・・・その・・・・・やさしい・・・性格が、好きになったの・・・・・碇君は?」
「そのうち言うよ。誰も今言うなんていってないからね」
「もう・・・・けど、絶対言って・・・約束よ・・・・」


そして現在

「で、シンジはあたしのどこが好きになったの?」
「そのやさしいところ!つまり同じってわけ」
吹っ切れた(?)様に僕は言った。
「シンジ、ありがとう・・・・・」
レイは耳まで赤くしていった。やっぱりレイはこうでなくちゃね!


再び半年前


僕とレイは、二人身を寄せ合い、テレビを見ていた。時折顔を見合わせると自然と笑いがこみ上げて来る。
面白いテレビの放送が終わり、テレビを消すと、静かな空気が部屋の中に流れる。

「碇君、今度はあたしから聞くわよ?」
「うん・・・」

「碇君が、これから守って行きたいと思っている人って誰?」
「そんなの・・・・僕の目の前にいるじゃないか」
「目の前って・・・・・あたし?」
『それ以外誰がいるの?』と言わんばかりの笑顔をレイに向けた。

「碇君・・・・・」
その瞬間、レイが僕に抱きついてきた。僕は戸惑った。あまりにもいきなりの事だったから。
そして、互いに抱き合った。僕は、レイの泣き声を聞いた。

「綾波・・・・泣いてるの?」
僕はどうする事も出来なかった。なんて声をかければいいのか、どんな顔をすればいいのか、全く分からなかった。

「ごめんなさい・・・・あたし、なんか心配で・・・・」
「大丈夫だよ。たとえどんな事があっても、僕は綾波を守るよ。約束する」

そのまま、時が流れる・・・・・この事は、一生の宝でもある。だから、忘れられない・・・・・



「なんか、信じられないね。つい半年前までシンジの事『碇君』って呼んでいた事が」
「それなら、今日一日だけ、苗字で呼ぶ?」
「・・・・・そうね・・・・・・じゃ、寒くなったからそろそろ帰らない?シン・・・・碇君」
「分かったよ、綾波」

そして、レ・・・・・綾波と一緒に家に戻る。けど苗字で呼ぶのは本当に今日だけで、明日から普通の呼び方に戻すんだけど・・・・・
戻れるかなぁ?
僕はいきなり立ち止まる。綾波はすでに先に行っていたが立ち止まって、
「碇君!早く!」
と、僕を呼ぶ。
「待ってよ綾波!」

僕も走り出す。その僕の表情に迷いはなかった。




続く・・・・




あとがき

作者です。

まずはお詫び、

拾六話のあとがきで行った事を見事に裏切りました!すいません!


では、本題

最後の閉め方から最終回と思われる方も少なくは無いはずです。
久々の過去を題材にしたお話です。いかがだったでしょう?
なにせ『綾波』『碇君』と呼んでいた時代の事ですから。

それにしてもこうなるとややこしい事がひとつ。

『レイ』『シンジ』と打つのになれた作者は逆のパターンとなった今回で、レ・・・・と打つ事が多かったです。はい。

悲惨な事にこのお話で、アスカのセリフどころか名前すら出ていませんね。

本当、いやな予感がします。はい。

「い〜の〜う〜え〜・・・」

あ、出てきましたね。厄介な事になりそう・・・・・
「どうしてレイがたくさん出てアタシが全くでないのよ!」

それはもう、レイが主役なわけで、アスカさんは脇役なわけですよ、はい。
「じゃぁ、この小説を早く終わりにしてアタシが主役の小説を作りなさいよ!」

それは出来ませんね〜なにせこの後も・・・・ねぇ?シンジ君?

「え?まぁ・・・」
「何が『え?まぁ・・・』よ!アンタにはそういうところ・・・・」


二人は放っておいて、鋼鉄の話でもしますか・・・・えーと今回は・・・


「あの・・・・井上さん?」
おや、レイちゃん、何か用?・・・・それに「なっさん」でいいからね
「では、なっさん、そろそろあの二人を止めないと、とんでもない事になりますよ・・・・」

まじで?・・では、あとがきにメインキャスト陣が出てきたところで・・・あと、やばくなってきたので今日のところはここまでにします。

ではまた〜