「碇君、ちょっと立ち上がって・・・・・」 シンジは立ち上がった。その時だった。 パンッ! 「レイ!」 その光景を見たアスカが叫ぶ。 「・・・・・何・・・・・するんだよ・・・・・」 シンジは左の頬を押さえ、レイの顔を睨んで言った。 「どうして・・・・・そんな悲しい事言うのよ・・・・・・」 第八話 2回目の告白 「え?」 シンジは涙を浮かべながら話したレイの顔を見る。 「そんな事言ったら・・・・・今まで一生懸命生きてきた人のことはどうなるのよ・・・・・守ってくれる人なんていないなんて・・・・・あなたのことを守ってくれる人なんて今ここに二人もいるじゃない・・・・」 シンジは、アスカとレイの顔を改めてみた。真剣な顔つきでシンジの顔を見ていた。 「シンジ・・・・」 今度はアスカが口を開いた。 「レイの言う通りよ・・・・・あたし達がシンジを守るから・・・・・だから、そんな事言わないで・・・・・・ね・・・・・レイ・・・・・」 レイもアスカも、目には涙が浮かんでいた。 (・・・・・・僕の頭の中で、何かが渦巻いている・・・・・・) シンジがそう思ったとき、レイがシンジを強く、強く抱きしめた。 「だから・・・・・・心配しなくていいから・・・・・・無茶に記憶を戻そうとしなくていいから、けど、あまり悲しいことは言わないで・・・・・」 ようやく、シンジの目にも涙が浮かぶ。 (この感覚・・・・・3年前に同じことが・・・・・・もしかして、あれは綾波なのか・・・・・) 時間が過ぎる、ただひたすらと・・・・・・沈黙が長い間続いた。 一際泣いていたのは以外にもレイだった。普段泣かない分、今になって自分が特別な思いを抱く人に対する涙だった。 「碇君・・・・・大好き・・・」 「僕もだよ・・・・ようやく・・・3年前のあのときの記憶がよみがえったよ・・・・・綾波、ありがとう・・・・」 シンジはどんなことがあってもレイに告白されたことを絶対忘れないようにしていた。しかし、アメリカでの交通事故で記憶を失ってしまうが、あのときの光景のみ残っていた。 「アスカも・・・・・・僕のことそこまで心配してくれて、本当にありがとう・・・・」 (本当に、生きているっていいことなんだね・・・・・母さん・・・・・・) シンジは吹っ切れたように口を開いた。 「じゃ、もう昼過ぎてるし・・・・・ご飯、食べようか?」 そういったシンジは以前のように冷蔵庫の少ない食料を取り出し、チャーハンを作り始めた。以前とは違う、明るい空気がはじめてレイの家に流れ込む。 食事中、話が耐えることは一度もなかった。 午後5時 「じゃあ、あたしは帰るから・・・・・・シンジ、泊まっていけば?3年前のように」 アスカはそういって帰った。レイはそのアスカに手を振って答えた。 午後11時48分 「たたいたりして・・・・・ごめんなさい」 レイがシンジに謝る。根に思っていないかどうか心配していたのだろう。 「ううん・・・逆に僕がお礼を言いたいところだよ。綾波がたたいてくれたから、あのときの記憶を取り戻せたんだから」 「碇君、いきなりで悪いとは思うけど・・・・・・記憶が戻った記念に・・・・・・キスしない?」 レイが誘う、シンジは顔を真っ赤にして頷いた。 「じゃぁ、行くわよ」 そう言って二人は、3年ぶりに互いの唇を重ねた。シンジがゆっくりと目を開く。レイも目を開いていた。 レイの髪の香りがシンジを離さなかった。 午後12時03分 「そろそろ寝ようか?」 「ええ・・・・」 そういったシンジとレイは眠りについた。 2時間後、目が覚めたレイはすぐ横で眠っているシンジの頭をなで 「かわいい」 とつぶやき、再び静かな寝息を立てて眠る。 記憶喪失で始まったシンジの転入、2日目にレイに叩かれたことが苦い記憶として、残るであろう。 しかし、これを境にして、記憶を取り戻すことに成功した。 アスカも、レイも、シンジの事を必死で守る。シンジはその逆で、レイとアスカの事を必死で守る。 すべては、このときのためだったのだ。 続く