レイ 想いの向こうに

「どう?3年ぶりに会った恋人の感想は?」
アスカはレイにシンジのことについて聞いた。
「知ってたの?碇君のこと・・・・・・」
レイは逆に聞き返す。
「うん・・・・・・で、どうする?記憶を呼び戻す?」
「無茶はしないわ。忘れたのならもう一度やるまでよ・・・・・・だから・・・・明日・・・碇君を、あたしの部屋につれてきてほしいの」


第七話 記憶喪失者の休日

「それしか・・・・無いんだね・・・・よし、協力するわ!」
アスカはレイに右手を差し出した。
「ありがとう・・・・内心、これで思い出してくれれば一番うれしいんだけど・・・・・・」
レイはアスカと握手を交わした。


17:47  ミサトの部屋前

「ふぅ、今日はやることがたくさんありましたね」
「けどこれであなたは正式に日本で過ごせるのだから良かったじゃない。・・・・・着いたわ、今日からあなたの家はここよ、一応保護者はあたしなんだけど・・・・・・口うるさいのもいるから・・・・ね?」
そういってミサトはドアを開けた。シンジもその後に部屋に入る。

「ただいま〜」
「おかえり〜」
(え?どこかで聞き覚えがある声だ・・・・・)
廊下にはアスカが立っていた。まるでシンジの帰りを待っていたかのように。
「あ、アスカ!」
「ちょっと待って!あんた、何で普通にあたしの名前を呼び捨てにしているのよ・・・・・」
いきなり呼び捨てにされて戸惑うアスカにシンジは理由を説明した。
「トウジが言ったんだよ『惣流のことはアスカってよぶんや』って」
「あのバカ・・・・・なら、鈴原達に言っていたこと、あたしにも言ってよね!」
シンジは一瞬考えていった。
「じゃぁ、僕のこともシンジって呼んでよ・・・・」
ほっとしたアスカ、そこでさっきレイと話したことを言う。
「それで・・・・明日レイの家に行くんだけど、あんたも来てくれる?」
「綾波の家?・・・・・いいけど・・・・・」

3年前に告白されたシンジ、告白したレイ、二人の運命を握る日が間もなく始まろうとしていた。






翌日、午前10時34分 レイの部屋前

「シンジ、アンタがベルを押すのよ」
「うん・・・・・・」
アスカに言われ部屋のチャイムを押す。
カチッ・・・・・
(この感覚どこかで・・・・・)
チャイムが鳴らない部屋は以前どこかで体感したような想いがシンジの頭の中を廻っていた。
「ふぅ、相変わらずね・・・・・そういえば、アンタ3年前に始めてレイの部屋に来たときレイと同時に転んだ拍子にアンタの左手でレイのここをつかんだんだからね!」
アスカは自分の胸を指差していった。
「なっ!そんなことがあったの?」
シンジは戸惑いながら自分の左手を見る。
「なんかさ・・・・・・綾波とアスカのこと少しだけ思い出せてきたような気がする」
「そう・・・・・・じゃ、行くわよ」
アスカがそういった瞬間、ドアが開いてレイが出てきた。
「いらっしゃい」

「おはようレイ!・・・・・ちょっとシンジ!『おはよう』くらい言えば?」
「あ・・・・・・・おはよう綾波・・・・・・」
レイは黙って頷いた。
(この光景・・・・・どこかで・・・・・)
シンジの心中にはこの思いがあった。
「入って」
そういったレイはシンジとアスカを部屋に入れた。



実際を言えばエヴァのパイロット3人がレイの部屋に同時にいることなど今まで無かった。
(今こうしているのも、シンジが記憶喪失になったからかな・・・・・・)
アスカはそう思えたレイの部屋にはじめて入ったからだろうか。

「ねぇ、僕って、記憶を取り戻す必要があるのかな?」
シンジの衝撃的な一言で沈黙は破られた。
「どうして?」
レイが質問する。
「だって、記憶を取り戻したら、つらい過去も思い出してしまうし・・・・そんなのは・・・いやだ・・・もう・・・・僕はどうなってもいいんだ、誰も僕のことを守る人なんていないんだ・・・・だから・・・・・」
レイは立ち上がってシンジに言った
「碇君、ちょっと立ち上がって・・・・・」
シンジは立ち上がった。その時だった。

パンッ!


レイの右手がシンジの頬の左側に当たる。頬は赤くなった。



続く