それから3年、シンジとレイは別々の高校に通っている。 シンジはアメリカの高校に通っている。 レイは、アスカ同じ高校で、クラスの担任はミサト。 平穏な毎日を送っていたレイ達にある出来事が起こる。 これは、高校2年の夏のことである。 第六話 記憶を失った転入生 レイとアスカは親友となり、学校生活をほぼ一緒にすごすほどの仲となっていた。 「ファースト」「セカンド」といった以前の呼び方はやめ、名前を呼び捨てで呼ぶようにもなった。 ある日の放課後、話はシンジのことになる。 「そういえば、最近シンジと関係はどうなっているの?」 「日常を写真でとってそれをメールで送って、たまに電話で話をするくらい・・・・・かな」 ふーんとアスカは頷いた。そのあと、思いついたように聞いた。 「ねぇ、もしあのシンジが帰ってきたらどうする?」 「帰ってくるってここに?・・・・・・・真っ先に抱きしめてあげたいわ・・・・・」 曲がり角で二人は別れた。 ミサトの部屋 シンジがいなくなって3年、女二人で過ごすようになったアスカとミサト。 旧シンジの部屋は段ボールでいっぱいだ。 「アスカ・・・・・チョッチ話聞いてくれる?」 「なによ!今いいところなのに!」 ドラマを真剣に見ていたアスカは機嫌を悪くしながらもテレビを消して起き上がった。 「で、何?」 「驚かないで聞いてよ・・・・・・シンジ君が帰ってくるの・・・・・」 アスカは驚いて立ち上がった。 「シンジが帰ってくる・・・・・」 「話はまだ終わってないわ。実は・・・・・シンジ君の記憶が無いの・・・・・・」 アスカはミサトから、アメリカに行ってすぐに交通事故にあって昏睡状態に陥り、それで記憶がなくなってしまったことを聞いた。 「ちょっと!と言うことは、レイと付き合っていることも忘れているって事?」 「少なくともそういうことになるわね。けど、あなたとレイのことは碇司令から聞いているらしいから・・・・・・で、シンジ君は以前のようにここで生活させるわ」 さらに、アスカの通っている学校の同じクラスに転入させることになっている。 すべては、シンジの父、ゲンドウの提案である。 翌日・・・・・ ある空港でシンジを乗せた飛行機が来るのを待っていたミサト。午前11時、そのときを迎えた。 「葛城一佐、碇シンジ君を連れてきました」 ミサトは書類にサインして 「ご苦労様、司令によろしくね」 と言って男を帰した。 「こ・・・・こんにちは・・・・・・」 懐かしい声がミサトの耳に入る。ミサトはシンジを強く抱きしめた。 「ごめん・・・・・こういさせて・・・・・・」 しばらくの時がたって、シンジをつれて学校に行くミサト。その車の中で以前のシンジを知っていて同じ学校に通っている二人の少女の写真を見せた。 その写真に写っている少女の上にフルネームで名前が書いてあった。 その写真を見たシンジは手を止めた。 惣流 アスカ ラングレー 綾波レイ 二人の写真を目を凝らしてみている。まるで何かを思い出そうとしているように・・・・・・ 二人を乗せた車は学校敷地内に入っていった。 教室内部 「昨日はどう?シンジとメールした?」 「何故か・・・・・する気が出なかったの・・・・・」 シンジがくることがわからないレイにアスカは事情を説明しようとした。 「ねぇ、落ち着いて聞いてねレイ、実は・・・・・・」 ガラガラガラ 話そうとした瞬間に、ミサトが教室に入ってきた。 「はーいみんな座ってね〜・・・・・・いきなりだけど喜べ女子!転入生を紹介するわ!・・・・・・入って・・・・・・」 教室に入ってきたスラリとした少年を見てレイははっとした。 (碇君・・・・・) 「自己紹介して」 ミサトが促す 「碇シンジです。2年間アメリカに住んでいたので日本のことはあまりわからないですがよろしくお願いします」 以前とは明らかに違っていたことはアスカにもはっきりわかった。 「みんな聞いて。実はシンジ君は・・・・・」 「ミサトさんいいですよ。自分で話します」 自らのことは自分で説明すると言わんばかりにミサトをとめた。 「えーと・・・・実は僕・・・記憶喪失なんです。このクラスに以前の僕のことを知っている人がいるようなのですが、あまり覚えていません」 (ミサトの言っていた事、本当だったんだ・・・・・) 「綾波さんの隣ね・・・」 「はい」 シンジは、レイの席の隣に座ることになった。席に移動したシンジは、 「よろしく、綾波さん」 と言った。以前のようにレイは黙っていなずいた。 (やっぱり、あたしが告白したことも忘れているのかしら・・・・) 決心したようにレイはシンジに話しかけた。 「ねぇ・・・・・本当に何も覚えてないの?」 「うん・・・・・けど、3年前に誰かに『好き』っていわれた記憶が少しだけあるんだ・・・・・」 (あのときのこと覚えている・・・・・それが誰かわからないのね・・・・・・) レイはそう思い、話を進めた。 「あたしは以前のあなたのことを知っているわ。改めてよろしくね・・・・・・それと、呼び方は『綾波』だけで『さん』はつけないで・・・・」 「うん・・・・・よろしく綾波さ・・・じゃなかった綾波・・・・」 シンジは静かに言った。 「じゃ、今日の授業はここまで!」 ミサトの言葉で生徒たちはいっせいにシンジに近寄る。その中でもひときわ目立っていたのは鈴原トウジと相田ケンスケだった。 「ようシンジ!久しぶりやな。ワイは鈴原トウジで、こっちは相田ケンスケや数少ない以前のお前を知っている奴や。よろしくな」 トウジが言い終わるとケンスケが付け足しで言う。 「それと、オレたちのことは呼び捨てでいいよ」 「じゃあ僕のこともシンジって呼んでよ」 トウジの一言で3人は握手をした。それを見ていたアスカがからかってこういった。 「よっ!めでたく3バカトリオ復活ね」 「なんや惣流、せっかくの再会を邪魔するなや」 シンジはその向こうで笑っていた。 放課後・・・・・・ いろいろな手続きがあるため、ミサトと一緒に帰ったシンジ。 「レイ、一緒に帰らない?」 「いいわよ」 レイはその日アスカと帰ることになった。おそらく、話題は記憶を失ったシンジのことになるだろう。 続く