レイ 想いの向こうに

「碇君・・・・話したいことがあるから聞いてくれる?」

「・・・・・・うん」

返事をしたシンジを見てレイは話し始めた。

「・・・・・・じゃぁ、話すわ・・・・」







第伍話 恋に至る行動、そして・・・・・・



「その前にひとつ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「い、いいわよ・・・・・」
話し始めようとしたレイをとめてレイに以前から思っていたことを聞いた。
「綾波・・・・・最近学校で僕のほうを見てるから・・・・どうしてかなって思っていたんだけど、もしかして、今から話すことを伝えたかったからなの?」
「ええ・・・そうよ・・・ちょっと待ってて。今お茶入れるから」
(あせってる・・・・何とかしないと・・・・・・)
レイはそう言うと慣れない手つきでやかんの中の水を沸かし始めた。またしても沈黙が流れる。

「綾波・・・・・・」
「何?」
シンジがガスコンロの前に立っているレイを呼んだ。
「今日の綾波、本当にかわいかったよ」
そういわれたレイは顔を真っ赤にして
「な・・・・・何を言うのよ・・・・・・きゃっ!」
すばやく振り向いたため、腕がやかんにぶつかり、こぼれたお湯がレイの右腕にかかってしまった。
「大変だ!すぐに冷やさないと!」
そう叫んだシンジはすぐにレイの近くに行き、流しの水を出し、レイの腕をしっかりとつかんで、冷やす。
水の冷たさよりもレイの手の体温を強く感じた。いつの間にか密接している互いの体に気付き、たまらない気持ちになるが、顎の下に位置するレイの髪の香りがシンジを離せずにいた。
「暖かいのね・・・・・・」
レイがはじめて見せる一面にシンジは戸惑った。それと同時にシンジの心臓の音が部屋全体に響くかのように大きな音を出す。
「しばらくこのままでいようか・・・・・・」
レイは黙って頷いた。静かな空気、水道を流れる水の音がただ時間のみを持ち去って行く。

「もう・・・・・大丈夫よ」
そういって水から腕を出すレイ。
「話の続きでもしようか?」
そういってシンジはレイの腕をつかんだまま、ベッドに座った。
「少し長くなるけど・・・・・いい?」
話が長くなりそうなことを改めてシンジに確認する。
「うん、いいよ」
シンジの了解も得たところで再び話し始める。
「碇君って、好きな人とかいる?誰とは聞かないけど・・・・・・」
いきなりの質問にシンジはあわてる。
「い、いるよ・・・・・・」
「あたしもいるわ。その人は、いつもおどおどしていて、自分勝手な行動で自らの命が危険にさらされることもあったけど・・・・・・あたしの前で、あたしのために泣いてくれた人・・・・・・」
「それって・・・・・・」
シンジはレイの言葉に不思議と疑問を抱かなかった。
「そう・・・・・・碇君、あなたよ」
(!!!)
言葉には出せない想い、今まで話せなかった想いを話す。
「あたしの雑巾の絞り方をみて、碇君が『お母さんみたい』って言ったとき、恥ずかしさがある反面、うれしさもあったの。碇君があたしのことをそこまで見ていてくれるなんて思えた・・・・・・」
こんなにしゃべるレイは見たことは無かった。シンジの顔はレイの話を聞くため、真剣だった。
「だから・・・・・碇君さえ良かったら、あたしと・・・・・・付き合ってくれる?」
言い終えたレイの顔には涙が浮かんでいた。
(綾波が・・・・・・泣いてる・・・・・・)
シンジは重い口を開いた。
「ふぅ・・・・・僕が言おうとしていた事を、先に言われたよ・・・・・・」
そういったシンジは黙ってレイに抱きついた。
「僕も・・・・・・綾波のことが好きだよ・・・・・・」
「碇君・・・・・・ありがとう・・・・・・」



綾波レイ、碇シンジ。おそらく、エヴァに乗らなければこのようになることは無かっただろう。
当初は、シンジを突き放したレイ。しかし、徐々に心を開き、シンジに自分の思いを伝えるようになるまで成長した。
そして、今、二人は晴れて恋人となった。アスカの提案がなければ、このようになることも無かった。


しかし、これはこれから起こる出来事の序章に過ぎなかった。


続く