トウジと来て以来、レイの部屋に入ったシンジ、広く、無機質な部屋に緊張感が漂っていた。 質素な部屋に質素な空気、長い間沈黙が続いた。そして、シンジの一言で沈黙は破られた。 「とりあえず食事にしない？何か作るからさ・・・・・・」 そう言って冷蔵庫の中を見るシンジ、中を見ると卵数個と冷えたご飯しか入っていなかった。 「この間まで司令と食べてたからほとんど何も入っていないの・・・・・・」 （父さんと・・・・・・・） レイの言葉を聞いて今アメリカにいる父親のゲントウと事を一瞬思い出したが、今はそれどころではないと思い、事を進めた。 「炒飯くらいなら出来るから少し待っててよ」 そういったシンジは料理を進めた。しかし、完成後、食事中、食後も沈黙が流れた。 第四話 自室、逃げられない空間 自分を信じる心 「今日、ゲームセンターでやったボートのゲームのことなんだけど・・・・・・」 今度はレイが沈黙を破る。 「あれって、事故って言ったらいいの？」 レイは時の悪戯でやってしまった『キス』のことについてシンジに問う。 「事故・・・・・・なのかな？」 硬いことはあまり言いたくない、むしろ、もう少し明るい話題に変えたい。と言う思いがシンジにはあった。 「けど、あたしの不注意もあるかもしれないから・・・・・・ごめんなさい」 レイは戸惑うシンジに謝った。 「いいよ・・・・・・別に・・・・・」 そう言ったシンジは時計を見た。知らぬ間に１０時を過ぎていた。 「もう・・・・・・こんな時間だね」 「碇君、もし良かったら泊まっていかない？」 さりげなくシンジに泊まるように勧めるレイ。やはり、その顔は赤かった。 「うん・・・・・・」 （じゃぁ、ミサトさんに連絡しないと・・・・・・） ２２：３０ ミサト宅 「シンジ君遅いわねぇ・・・・・・」 ミサトはいまだに帰ってこないシンジのことを心配していた。 「ホント、あのバカシンジが何をやっているのだか」 （うまくやっていれば、おそらくファーストの部屋にいるはずね・・・・・・） アスカがそう思っているとミサトの携帯に一通のメールが届いた。 「シンジ君からだ！」 『ミサトさんへ 僕は今、綾波の部屋にいて、もう時間が遅いから泊まることにしたよ。 だから・・・・・・心配しないで。アスカにもよろしく言っておいて。 じゃ・・・・・』 「ふぅ・・・・・・」 ミサトはため息をついた。 「で、シンジはどこにいるの？」 状況を知っているアスカが聞く。 「レイの部屋で今日は泊まってくるって」 「そう・・・・・・」 （うまくやっているじゃない、ファースト） ミサトは、シンジに返事のメールを打った。 ２２：３８ レイの部屋 （綾波は風呂にいるし・・・・・・何もすることが無いや・・・・・・） そう思い黙って横になるシンジ、一人眠りにつこうとしたときだった。 ピロリーン （あれ？メールだ。ミサトさんかな？） 『シンちゃんへ オッケー、わかったわ。だけど連絡するのがチョッチ遅いわね（笑）心配してたのよ・・・・・ けどアスカはそんなに心配してなかったわね。こうなることをまるで知っていたように見えて・・・・・・ 明日も休みだし、ゆっくりしてきたら？ Ｐ．Ｓ 好きな子にはサービスサービス！』 「ミサトさん、またからかってる・・・・・・」 シンジはそのとき、あることを思い出した。 （そういえば、綾波の言ってた『話』ってなんだろう？さっき話したキスのことかな・・・・・・・・・・・・僕もここにいる以上、現実から逃げることができないんだね。僕も話したいことがあるけど・・・話しがたいなぁ・・・・・・けどやっぱり逃げちゃだめだ・・・） 頭の中でそう思った後、シンジはレイのベッドで眠りについた。 ５分後、レイが風呂から上がってきた。辺りを見回し、自分のベッドで寝ているシンジに近づいた。 「碇君・・・・・寝てるの？」 シンジは目をこすりながら起き上がった。 「お風呂・・・・・入ってきたら？」 「うん・・・・・」 シンジは風呂に向かった。広い部屋の中に、今度はレイ一人になった。 （逃げてるわ・・・・・自分から・・・・まだ、あのことを話せてないし・・・・・・） おそらく自分の想いだろう、シンジに話したいことはキスの事などではなかった。 （明日・・・・・・いや、今日話したほうがいいわ・・・・・・自分を信じて・・・・・・） そう思ったレイは、シンジが風呂から出てくるまで待った。 １０分後、シンジが出てきた。服を着て部屋に入ってくるとレイがすぐに話しかけた。 「碇君・・・・話したいことがあるから聞いてくれる？」 続く