レイ 想いの向こうに

第参話

せめて、私らしく

シンジが我に返ったとき、目の前に目を閉じている少女がいた。以前、エヴァのテストで零号機に乗ったときと同じ香りがシンジのを離そうとしない。
次の大きなゆれで二人の唇が離れた。二人共顔を赤くして改めてゲームをプレイする余裕などなかった。
結局、時間切れで終了し、レイは『ごめんなさい』と囁きボートから降りた。

「いやーおつかれさま・・・・・・二人とも、顔真っ赤!そんなに必死にやったの?」
アスカが二人をからかう。すると、
「ああ――――!!ごめん、急用思い出した!先に帰るね!」
アスカは大げさに叫びその場を去る。レイの前を過ぎるときにさりげなくウインクをした。
(レイ、後は任せるわ)
                            

「碇君、あれ、やらない?」
レイが見る方向にあったのは音楽ゲーム「パッペソミュージック」
「得意なんでしょ?碇君」
「え?何で綾波がそんなこと知ってるの?」
シンジは自分がこのゲームをやってから長い年月がたっていること、それなりの実力があることを知っているレイに疑問を抱いた。
「いいでしょ、知っていても。さ、やるわよ。」
レイは料金を入れようとしたが、それより速くシンジが料金を入れているのを見た。
「綾波は無理にお金を使うことないよ。」
シンジは微笑みながら言った。それを見たレイは顔を赤らめながら
「あ・・・・・ありがとう・・・・・」
と言った。
「綾波、一緒にやらない?ボタン5つずつでさ」
パッペソミュージックにはボタンが9つある。それにもかかわらず一人5つのボタンを使うと言うことはシンジがレイをフォローすると言うことなのか。
選曲するのはレイ。シンジは画面を動くカーソルを見てその後にレイを見る。レイの顔は真剣そのものだった。
「とりあえず2人なんだからもう少し難しいのにしない?」
そういったシンジは2つある黄色のボタンを同時に押した。すると「ハイパー」と言う文字が出てきて曲のレベルが上がった。
するとシンジは赤いボタンを押して曲を決定した。
「ちょっと、まだ選んでる最中なのに・・・・・・」
「ご、ごめん綾波、怒った?」
レイは静かに首を横に振った。
「あ、はじまるよ」
シンジは普段プレイするように、中央のボタンに右手を置いた。その後にレイが左手を中央のボタン、シンジの手の上に置いた。それを見たシンジはまたしても顔を赤くした。
(集中できるかな・・・・・・この状態で・・・・・・)
シンジの心配はあっという間になくなるものだった。曲が始まると、ものすごい勢いで赤、黄、青、白の色をつけたターゲットが上から降ってくる。それに連動しているボタンを叩く。
(・・・・・・噂には聞いていたけど、やっぱり碇君すごい・・・・・)
レイが一瞬ボタンを見るとシンジの手がものすごい速さで動いていた。その横でレイの手は、曲のスピードに遅れていた。
レイの焦っているような顔を見たシンジは、レイ側にものすごい量のターゲットが降ってきたとき、とっさに右半分のボタンに手を伸ばし、レイのサポートをした。
「綾波、大丈夫?いつもより焦っているように見えるけど・・・・・・」

(私、焦っているの?・・・・・・せめて、この場では私らしくしないと・・・・・)

10分後・・・・・・

「じゃぁ、僕はここで・・・・・・」

2人は外に出ていた。外は暗くなりかけていた。一人帰ろうとしたシンジをレイは呼び止めた。
「待って碇君・・・・・・話があるから私の部屋に来てくれる?」
「う、うん・・・・・・」
恥ずかしく返事をしたシンジ、2人は、レイのマンションに行った。


続く