レイ 想いの向こうに

第弐話

時期 襲来

その週の日曜日、アスカはまだ目を擦っているシンジを強引に引っ張り、レイとの待ち合わせ場所の学校に急いだ。

学校に着いて辺りを見渡すとすでにレイの姿があった。レイはアスカたちを見つけるが、シンジの姿を見つけた瞬間、恥ずかしそうに顔を下げた。
「おはようレイ!・・・・・ちょっとシンジ!『おはよう』くらい言えば?」
「あ・・・・・・・おはよう綾波・・・・・・」
レイは黙って頷いた。
(相変わらず無口だなぁ、綾波は)
シンジは心の奥底でひそかにそう思っていた。
「さて!みんなそろったところで行こ!」
アスカはそういうと一人走って行った。シンジとレイは前を走るアスカの背中を見て黙って走り出す。
(言われたままにきてみたけど何故か気まずいわ・・・・・・)
事は金曜日にさかのぼる・・・・・・

「・・・・・・ということなんだけど大丈夫?」
「な・・・・・・・何とかなると思うわ・・・・・・」
レイとアスカは「シンジと出かける」事について話していた。アスカの考えによると、
ある程度遊んで『急用ができた』と言って一人帰るアスカ。そうなるともちろんシンジとレイは二人っきりとなるからそこで告白の話を切り出す・・・・・・との事らしい。

(なんか不安だわ・・・・最低でも話くらいしないと・・・・・)
そう思ったレイは重い口を開いた。
「碇君・・・・・」
「え?何,綾波?」
レイの声に敏感なのかすぐに振り向いたシンジ。
「・・・・・・・いえ・・・・やっぱりなんでもないわ」
「ならいいけど・・・・・ねぇ、今日のアスカいつも以上に元気じゃない?」
(綾波なら何か知っているだろう)
そう思って今日のアスカの調子について聞いたのだが・・・・・・
「私にはいつもと変わらないように見えるけど・・・・・・」
「あ、あはは・・・・・・・ふぅ・・・・・・」
静かにため息をついたシンジ。そのシンジを気にせずどんどん進むアスカ。気付けばデパート街に来ていた。

ほぼアスカのペースでデパートで買い物を終えた一行。シンジは荷物もちをやらされていてヘトヘトだった。
「なんでこういうのだけ僕にやらせるんだよ・・・・・・」
静かに愚痴を言ったシンジだが、
「仕方ないわ。碇君、男だから。」
レイには聞こえたらしい。そういったレイの顔には微笑が見えた。

昼食後・・・・・・

「次、あそこいこ!」
アスカが指差した先にはゲームセンターの『スーパーモハ』があった。
入り口に近づくにつれレイは緊張が高まって来た。
(ゲームセンターで話を切り出せって・・・・・・難しいこと言うわ・・・・・)
ゲームセンター内部・・・・・・

「シンジ、レイ、あれやったら?」
目の前にはゴムボートを二人でこいでゴールを目指す「ダイレクト・リバー」があった。「う、うん・・・・・行こうか、綾波」
黙ってシンジについていくレイ。代金を入れ、ボタンを押す。しばらくするとゲームがスタートした。画面の指示に従ってオールをこぐ。しばらくすると分かれ道が見えた。あわてる前にシンジはレイに話しかけた。
「綾波、どっちにいく?」
「碇君に任せるわ」
そういわれたシンジは左ルート「秋の渓谷」に進んだ。
道は結構険しく、ボートも揺れていた。
「碇君、なんかすごく揺れているけど・・・・・・地震?」
状況に気付いてないレイがシンジに聞く。
「いや、地震じゃなくて、このボート自身が揺れているんだよ。多分・・・・・・」
その状況を見たアスカが
(シンジの奴、ボート自身がゆれているのを理由にしてレイにぶつかっているし・・・・・・)
揺れはどんどん激しくなっていった。
「碇君・・・」
「どうしたの綾・・・・・・」
左側に乗っていたシンジはレイのほうを見た。ボートが大きく揺れてシンジの方を見ているレイの顔がシンジの顔に近づく。
その瞬間、二人の唇が重なった。
続く