騎士と妖精と熾天使の幻像
第2章
第6話.人の力のできる事
薄暗い会議室のような部屋で10人ほどの人間がビデオを見ていた。
最初は渋々といった顔をしながらも静かだったが、映像が進むに連れ徐々に見る者達の表情が険しくなっていく
そして最後の部分、巨大な正八面体の物体から光が放たれた。
その光がロボットの胸部を直撃した。そしてその光が胸部を貫通した後機体の各部から爆発が起こり、大爆発したときには機体の上半身は無惨な姿になっていた。
その後はNERVのロボットがその物体“使徒”を刀で一刀両断にして記録映像は終わった。
その映像が終わったとき中央に座る軍服の男が言った。
「偵察兵からの連絡によると、この正体不明のロボットは我々の所から持ち出されたプロトタイプトライデント、JA1号機かもしれないと言うことだが、時田博士はどう思う。」
会議室の全員が右端に座る初老の男性に視線を集中させた。
「間違いない、アレは盗み出された一号機だ。外装や動力機関を交換してごまかしているようだが、駆動音までごまかすことは無理だ。」
「なんだと!ではアレはNERVが盗み出していたのか。」
「そうと解ればこの件の調査という形で、強制捜査に踏み切ろう。そうすればヤツらなど・・・・」
口々に騒ぎ出した人間を遮るように中央の男が発言した。
「無駄なことだ、ヤツらの事だ物的証拠など残すはずがあるまい、それに一号機の盗難からあまりにも日が開きすぎている、下手をするとこれ自体ヤツらの挑発なのかもしれん。第一、一号機とそのパイロットの事をどう説明するつもりだね諸君は!」
そう言われて会議室は静まりかえっていた。
だが先程の初老の男性、白衣を着ているところから科学者と思われるがその人物はこの事態を全く問題としていなかった。
「盗まれた一号機などどうでも良いでしょう。アレは所詮試作品、完成品たるトライデントには到底及ばぬ未完成品ですぞ。それよりも問題は2週間後に迫ったトライデントの発表会の方が大事でしょう。“あの方々”もごらんになるとか、我々にとっては絶好の機会ではありませんかNERVや国連に我らの力を見せつけてやりましょう。」
「うむ、時田博士の言うとおりだ。所詮は試作機、それもあそこまで大破しては修理するより新しく作った方が早いだろう。それに重要なパーツにはプロテクトが仕込まれている、いくらNERVと言えども解析することは出来まい、ならばヤツらもアレを破棄するに違いない気にすることはない。」
「たしかに、それにパイロットの方も薬が無くてはそう長くは生きられますまい。そう考えれば廃棄処分にはちょうどよかったですな。」
「左様、おまけに貴重な実戦データも取れましたし、我々の物を壊したのではNERVもこっちには文句を言ってはこんだろう。」
そう言って落ち着きだした部屋の雰囲気を引き締めるように中央の男が言った。
「そうだ、何も心配する必要はない。だが二週間後の発表会に失敗は赦されない、各員当日まで注意を怠らないように特にNERVの連中の動向には目を光らせておくように。以上だ。」
そう言って会議室からは人が出て行き最後には中央の席の男と時田博士だけが残っていた。
「時田博士、少し気になっていたのだがあそこまでJAを改修することなど可能なのか?」
「不可能とは言いません。何人か心当たりがあります。」
「誰だ?場合によってはこっちで確保しておく必要があるからな。」
「無理でしょうな。フィルモア社の会長やアトールの設計本部長を引き抜くなど不可能ですよ。それに・・・・」
「なんだ、他にもまだいるのか?」
「ええ、NERVにも何人か居ります。」
「NERVに!そうか碇ユイ博士に赤木リツコ博士、それにアメリカのモラード所長とマギー所長だったか。不味いな、向こうには厄介な人間が多いな。」
「それだけではありません!ヤツらは最近になってあのバランシェ夫妻を招き入れたとの噂もあります。油断は出来ませんよ。」
「なんだとあの二人をか!バカな我々以外にも国連やEU各国も断られたんだぞ。なぜNERVに?」
「解りません、彼らには不明な点が多すぎます。どうしましょうか、一応発表会には招待状を送った方がいいでしょう。」
「ああ、ひょっとすると我々のトライデントを見て気が変わるかもしれんな。よし、そのあたりは博士に一任する。」
「解りました。他にも金剛博士やフィルモア社の新社長も呼ぼうとおもいます。」
「頼むぞ、時田博士」
そう言って二人も会議室を後にした。
時は少し遡る
第5使徒“ラミエル”を倒した直後のお話
擱坐した初号機のすぐ近くでシンジはレイを助け起こしていた。
LCLはかなりの温度になっていたためシンジはすぐに肺の中のLCLを吐き出させていた。
綾波レイの幻のおかげかレイは特にひどい火傷を負うこともなくしばらくすると意識を取り戻した。
そのころには保安部を主とした救急隊が到着していた。
到着した救急隊やレイはシンジの手の火傷のひどさに驚いていた、シンジが普段通りにしていたため助け出されたレイですら気が付いていなかったが、レイのプラグスーツに付いた血糊を見た救急隊員が驚いた。
シンジの手のひらは皮膚が焼け落ち肉が見えているような重傷だった、にもかかわらず本人は至って涼しい顔をしていたのだった。
大至急手術をしなければと慌てる周りを余所にシンジはさっさと本部に戻っていった、既に綾もマナを救急隊に預けて自分達の研究室でシンジを待っていた。
レイからの報告を受けて、シンジのことを心配したユイやリツコが病院へ連れて行こうと研究所にたどり着いたが、そこにシンジの姿はなく端末機を操作する綾の姿しかなかった。
「綾ちゃん、シンジ君こっちに来ていないかしら?ひどい怪我なのに病院にも行かないでどっかにいったみたいなの。」
「あら、マスターならそこにいますよ。もう心配いりませんから、レイさんにもそう伝えてもらえませんか。」
そう言って綾の示した策には人間がすっぽりと入れるくらいのカプセルがあり、その中にはシンジが入っていた。
驚いたユイとリツコは綾に質問した。
「綾ちゃん、シンジは何をしているの?」
「コレは再生漕です。この中に居れば代謝能力が活性化され今夜にでも手の方は何とかなると思います。もっとも完治には2・3日かかると思いますが。」
「ちょっと待って。重度の火傷って聞いたんだけどそんなに簡単に直る物なの?」
「まあ、普通に皮膚移植が出来ないほど皮下組織が無くなってましたのでこちらの方が手っ取り早いと思いますが。」
「!皮下組織まで、それじゃああの子の手は・・・・綾ちゃん本当に直るの?」
「はい!もちろんです。腕や足を無くしたわけではないのでここでおとなしくしていれば一日二日で直ります。」
「この中の液体は何?」
「それは私たちが羊水と呼んでいる物です。こんな風に再生層に入らなくても手に塗るだけでも傷の治りが大分早くなります。そうだ、レイさんの方は大丈夫ですか?」
「ええ、奇跡的にあの子の方はLCLがそれほど高温にならなかったので大した怪我じゃ無いわ。」
そうは言ったもののレイの火傷は重傷ではないが簡単に治療できるような物でなく、自然治癒に任せるしかなかった。
という訳でレイは病院にそのまま入院する事になっていた。
「良ければマスターと一緒に今夜までここで休ませておいたらいかがですか?火傷にも良いですよ。」
「そうね、リッちゃんレイをここに呼んでもらえるかしら、もう検査の方も終わったと思うから。」
そう言ってリツコはレイを呼び出した。案の定病院の方の検査の結果は軽い火傷を負った程度だった。
もちろん肺や胃の中も少し火傷を負っていたのだが、レイは平気な振りをして我慢していた。
だが綾とユイの目はごまかせず、二人の手によってシンジの隣のカプセルに有無を言わせず放り込まれた。
「ちょっと、お母さん何するのよ!綾まで。出してよ〜〜。」
「レイ、夜迎えに来るまでそこでお昼寝でもしていなさい。綾ちゃん悪いけどあの子達のことお願いね。」
「はい、それでは責任を持ってお預かりします。」
綾の律儀さにユイもリツコも笑いながらシンジの研究室を後にした。
だがこの状況を全く理解できていないレイには全く納得がいかなく騒ぎ始めた。
「ちょっと、出してよー。ねえ、綾さーん、おーい、聞いてよねー」
「はいはい、なんですか?質問にはお答えしますよ。」
「なんで私がこんな目にあうの?コレLCLじゃないみたいだけど、だいじょうぶ?」
「はい、それは・・・・」
それから約2時間にも渡って綾の特別授業が始まった。
もちろん同年代の子供に比べて高い学力を持つレイだったが、シンジや綾クラスのオーバーテクノロジーを扱う人間相手ではあまりにも荷が重すぎた。
この内容、ユイやリツコなら喜ぶモノでもレイにとっては言ってる意味がさっぱり分からず、だんだんと眠くなってしまった。
レイはそのままぐっすりと眠ってしまった。
戦闘での疲れが溜まっていたのだろう、それに体の火傷も軽いとはいえ休息を必要としていたようだった。
綾はそんなシンジとレイを見守りながら先程ラミエルから採取したコアのチェックに入った。
そのころ司令室では
「碇、シンジ君達は無事だったそうだ。それにレイ君の方も軽い火傷程度ですんだそうだが・・・・・初号機の方はかなり酷いぞ。」
「そうか、ユイ達はなんと言ってる。」
「ああ、まず普通に修復していたのでは二ヶ月かかるそうだ。」
「さすがにそれは不味いな、上の年寄り共がまた騒ぎ出す。」
「そうだな碇・・・・そう言えば綾君からシンジ君の改良プランが上がってきているのだが目を通してくれ。」
ゲンドウは冬月から渡された分厚いファイルと書類の束に目を通した。
もちろんいつもの事ながら専門的な知識に乏しいゲンドウは主な使用や改良によって良くなる点だけをざっと流し見た。
「ふむ、コレならば・・・・冬月、コレはユイ達に見せたのか?」
「ああ、ユイ君とリツコ君も条件付きで賛成だ。」
「条件?」
「ああ、簡単なことだ。シンジ君達の参加だよ。」
冬月に言われてみて気が付いたがシンジは参号機が来るまで正式な役職に就いていないため初号機に直接関われなかった。
今回の様に緊急の場合は直接手伝ってくれているが、それ以外では初号機よりも参号機の受け入れに重点を置いているためあまり積極的には手伝ってはくれていなかったのだ。
しかし、さすがに今回の改修には手を借りないことには作業が難しい。そればかりか次の使徒が来るまでに初号機が直らなければそれこそ大変なことになる。
「解った、オレの方からシンジに頼んでおこう。どうせ参号機はもう少し後になるしな。」
「まだ遅れるのか?ドイツの弐号機も遅れるかもしれんと言っていたがどうしてだ?」
「くだらん事だがな、コレを見てくれ。」
ゲンドウから冬月に渡されたのは招待状だった。
宛名はユイのモノで送り主は時田シロウとなっていた。
その招待の内容とは・・・・
「!!!戦自の新型ロボットだと、と言うことは・・・・」
「ああ、マナ君のJAの完成型と言うことになるな、どうやらウチには嫌がらせのつもりで送ってきたようだな。」
「どうする気だ、まさかユイ君達を行かせるのか?ヤツらのことだ何を企んでいるのかわからんぞ。」
「ああ、だから返事はまだ保留しているが、どうもコレに年寄り共がかんでいるらしく上でも少しややこしい事態になっているようだ。」
「まったく、あの連中と来たら・・・・・わかった、もし行くのであればウチの保安部をガードにつけるように手配しておく。だから、必要とあればいつでも言ってくれ。」
「たのむ、それと西田さん達はどうした?」
「ああ、先程帰られたよ。ずいぶんと満足しておられたよ、エヴァの実力を見て貰うにはちょうど良かったな。」
「そうか、ではここからは我々の仕事だな。」
そう言ってゲンドウは自分の所に持ってこられた大量の書類の整理に取りかかった。
冬月も報告書のたぐいをゲンドウの机におくと発令所に戻っていった。
だがしばらくするとゲンドウの元にキール議長からの直通連絡があった。
ゲンドウは内心ひやりとした、先程の戦闘を見たのであればJAに関して何らかのクレームをつけられる事を懸念していたからだった。
だがキール議長はその事に全くふれず、別の件でゲンドウにある提案をしてきた。
「碇よ、使徒殲滅ご苦労だった。まあ、今回もかなりの被害が出たようだが見事だ。」
「ありがとうございます(何を言っている、戦闘になれば被害が出るのは当たり前だ。早速、嫌みを言ってくるか。)」
ゲンドウは覚悟していた。最悪嘘とシラを通してでも今回のことは容認させるつもりで居たのだが以外にもキール議長はそれ以上言って来なかった。
「碇、一つ謝りたいことがある。実は予算の件だがな・・・・・」
キール議長の目的とは先頃ゲンドウと約束した追加予算に関するモノだった。
「なんですと!」
「すまん、儂一人ではどうしようもなかった。」
なんとキール議長が本部に回す予定だった予算がそっくり余所に取られようとしていたのだった。
しかもその先は戦自だった。
なんと戦自を取り込んでいた委員会のメンバーが周りに働きかけ、NERVのエヴァから戦自のトライデントに乗り換えるように動いていたのだった。
キールもまさかエヴァを排除する事はあるまいとたかをくくっていたのだが、今回は見事に裏目に出た。
キールもあずかり知らぬ事だっただけあってその動きは素速かった。
2週間後の戦自の発表会に委員会の一部が見学に行くことまでが既に決定事項となっていた。
彼らはキールとは違った考え方をしていたのだった。彼らにしてみれば補完計画自体は無理に全てをエヴァで行う必要はなく最後の場面でのみ必要と判断していた。
もちろん経費的にもエヴァよりもトライデントは安いとは言えなかったが、ここで障害になっていたのがゲンドウの行動だった。
普段から委員会を相手に反抗しまくっているゲンドウを使うよりも、言いなりになる戦自を使おうと考えるのは当たり前だった。
そしてキールから一つの提案が出された。
「・・・・・・と言うことならばこの提案もつぶせるのだが、やってくれるか。」
「もちろんです、我々にお任せ下さい。(ここで予算を止められてたまるか!)」
キールからの頼み事とは簡単に言うと、発表会会場でトライデントの欠陥を暴き、ついでに恥をかかせることによってトライデント推進派をつぶせと言うことだった。
ゲンドウ自身、戦自にはナオコやマナの一件で悪いイメージしか抱いていない。それにユイやシンジもこう言ったことなら快く手伝ってくれるに違いない。
「では頼んだぞ。」
「我々にお任せ下さい。」
そう言ってキール議長との連絡は終わったが、途端にゲンドウの機嫌が悪くなる。
だが腹を立てたところでどうしようもなく、むしろせっかくのチャンスに便乗して戦自相手に嫌がらせでもして憂さ晴らしでも出来ないかと考えていた。
そうやって仕事を続けていくと今度はアメリカのモラード・マギー両所長から連絡が入った。
「やあ、碇司令。元気そうだな。」
「モラード所長どうした。こんな時間に珍しいな。それにマギー所長も一緒とは何かあったのか?」
「ああ、ちょっとふざけたモノが届いたんでね二人で相談してたんだ。」
「ふざけたモノ?どう言うことだ。」
「あたしら二人と、お前さん所のシンジと綾宛に招待状が来たんだよ。」
「招待状?・・・・まさか戦自か!」
「その通りだよ。全く何考えてんだか、あたしとモラードは忙しいから欠席するけどシンジ達はどうする?一応そっちに送るけど。」
「ちょうど良かった、実はな・・・・・・」
ゲンドウは二人にも先程のキール議長とのやりとりを知らせた。
「ハッ!年寄り共も遂に呆けたかね。本気でそんな事考えてんのかい。」
「マギー所長、コレはシンジ君達にがんばって貰うしかないな。碇司令、じつは参号機の方だがその発表会が終わった頃にそっちに運べそうなんだが、ちょうど弐号機の海上輸送の時期に重ねて便乗させて貰おうと思っているんだがどうだろうか?」
「!ちょうど良いな、実はウチでも今初号機が中破してな困っていたところなんだ。」
「それはいいな、この機に戦自の方はシンジ君達に叩いて貰って我々は参号機移送の準備をしておくとするか。」
「悪いね、ウチの四号機はまだテスト中で出せなくてね。後二ヶ月もらえないか、それまでには仕上げる。」
「わかった、参号機は発表会直後の弐号機移送に便乗、四号機は二ヶ月後に会わせてこっちで予定を調整しておこう。」
「すまないね。」
「解った、こっちも準備しておくよ。その頃になるとシンジ君達にまたこっちに来て貰うことになりそうだしな。」
「ではよろしく頼む。」
ゲンドウは二人との通信を終えると黙々と仕事に取り組んだ。
時間を気にすることなく仕事をしていたゲンドウだったが、ユイが迎えに来るとさすがに帰る用意を始めた。
そのままゲンドウはユイと一緒にシンジ達を迎えに行った。
既にシンジとレイはカプセルの中から出てきていて二人とも着替えもすませていた。
「シンジ、レイ、綾ちゃん、もういいかしら?そろそろ帰りましょう。」
「「「うん(はい)」」」
その夜、
「シンジ、少し話がある。私の部屋に来てくれ。」
珍しくシンジがゲンドウの部屋に呼ばれた。
シンジは普段よばれる事のないゲンドウの書斎に呼ばれた。
「どうしたの父さん?」
「ああ、少し頼みたいことがあってな。2週間後にある戦自のロボットの発表会に出て欲しいんだ。」
「戦自?まさかトライデント。父さん、僕がそこに行っても・・・」
「いや、コレはモラード所長やマギー所長からも頼まれていることなんだ。実は・・・」
ゲンドウは今日会ったキール議長とのやりとりやアメリカの各所長とのやりとりを全て教えた。
「解ったけど、どうして僕なの?母さんやリツコ姉さんじゃだめなの?」
「リツコ君は別に構わないがユイは・・・絶対だめだ!出来ることなら知られたくない!」
「どう言うこと?」
「シンジ、お前が生まれる前のことだが、ユイは大学時代にセクハラをしてきた教授の研究室のスパコンを暴走させたり、書類のミスで予算を出さなかった事務にクラッキングを仕掛けて予算をぶんどったりと昔からそう言った実力行使は得意でな、今でこそドイツの惣流博士が『魔女』と呼ばれているが大学時代にはユイがそう呼ばれていたんだ。」
ゲンドウは昔のことを懐かしそうに騙った、だがその表情は少し苦笑い気味だったが。
シンジにはとても信じられない内容だった、あのおとなしそうな母が教授や事務相手に実力行使とは人は見掛けによらないと思った。
「か、母さんが・・・・それ本当?」
「冬月に聞いてみると良い。ユイの大学時代の恩師だからなその辺の事は詳しいはずだ。」
「う、うん、解ったよ。まあ、アレは僕も気に入らなかったからね。・・・・そうだ!父さん良いアイデアがあるよ。じつは・・・」
「・・・・なるほど、それならヤツらのメンツも丸つぶれだな。」
シンジのアイデアはゲンドウもすぐに賛成できるモノだった。
シンジの正体も知らずにシンジ達に招待状を送ってきた戦自には思いっきり恥をかかせることになる。
二人は悪戯好きの子供達のように悪巧みを続けていった。
「ホントは初号機あたりと模擬戦をやらせてボコボコにしてみるのが良いんだけどね。まあ、コレでも結構いけると思うよ。」
「解った、明日からでもその準備を進めておいてくれ。それと初号機だがな明日からお前の改修プランを実行に移すことになった、だから明日からはユイと一緒に動いてくれ。」
「了解、綾にも伝えておくよ。父さんは母さんにこの事がばれないように気をつけておいて。」
「解った、すまんな遅くまで。もう休んで良いぞ」
だが部屋に戻ったシンジはベッドに腰掛けたまま窓の外を眺めていた。
そうやってしばらくするとシンジの部屋に綾がやってきた。
「マスター、まだ悩んでいるのですか?」
「綾か、すまないな。どうしても割り切れるものじゃなくてね、そう言えばコアの方はどうだった?」
「コアに異常はありません。切断された直後でしたのすぐに再生できました。ですが、マナさんの方は予想以上に良くありません。」
「そうか・・・明日、話をしてみよう。場合によってはマユミを呼ぼうと思う。」
「解りました。そちらの方の手配はこちらでやっておきます。」
「いつも面倒ばかりかけてしまうね。まったく我ながら情けない。」
「もっと私を頼ってください。私はそれだけで幸せなんですから。」
「ああ、ありがとう。見てご覧、月がきれいだよ。」
その夜二人は明け方近くまで眠らずに月を眺めていた。
翌日からは目の回るような忙しさだった。
初号機の修理に合わせて以前からまとめていた改修プランを実行することになりシンジと綾もそれぞれチーフとして参加していた。
レイは普通に学校に行っているが二人は家の都合と言うことで休んでいた。
さすがに今回はゲンドウとユイも了承した。EVAが行動不能の状態では正直言って学校どころではない。
先日のラミエル戦の被害は予想以上にひどく、外装は殆ど交換することになりそうだった。
おまけに最後にラミエルを倒した一撃はEVAの設計強度限界を超える数値が出ていたため各部の関節や骨格の歪みなども測定することになり、ケイジの中はいつもの倍以上の人があふれていた。
もちろん発令所もEVAの整備だけでなく、使徒やJAの残骸の処理や地上設備の点検などこちらも普段からは想像もつかないほど忙しかった。
シンジと綾は昼休みを取ったついでに少し時間を作りマナの見舞いにいった。
マナは目を覚ましていた。
「あ、シンジ、綾、いらっしゃーい。」
マナは昨日よりかなり疲れているようだった。実はシンジ達の元には既に連絡が来ていたのだが、マナは昨夜発作を起こして殆ど眠っていなかったのだ
それでもマナはいつも通り明るく接しようとしていた。
「マナ、昨日の話の続きなんだが。・・・・・生きたいか?」
「・・・うん、まだやりたいこといっぱいし、それに死んじゃった友達の分も・・・・だから諦めたくない。」
「そう・・・・・最後に一つだけ聞かせて欲しい。実は君を助ける方法が一つだけある、だけどそれは非常に危険が高く君が生き残れる確率は10%も無い・・・・」
「それでもいい!可能性はゼロじゃないんでしょ。」
「ああ、ゼロじゃない・・・・でも、それだけじゃないんだ!」
シンジの表情はどんどんと苦しそうになっていく。マナはその表情からシンジが本当に苦しんでいることがよくわかった。
「さっき言った事なんだけど。僕や綾は先天性だが、後天的にこういった体質になると高熱と激痛にさいなまれて成人してからでは致死率は90%を越える。今の状態でも70%を越えているんだ。
そして、もしこの方法で生き延びることが出来たとしても、その後・・・・・・普通の人間ではなくなる。・・・・・・超人的な反射神経、筋力、瞬発力等々人間以上の力を手に入れることになるだろう。
先天性、後天性に関わらずこういった力を持った者はだいたいが周囲から疎外され孤独感に苛まれることになる、そして度が過ぎると迫害の対象になってしまう。
でも、普通の人間にいわせてみれば、それはもう人間じゃないんだ“化け物”なんだよ。僕や綾も本当の力を発揮すればそう呼ばれるだろうね。そうすると今度は精神的に耐えられなく。」
シンジは自分自身苦しめるかのように言葉を続けていった。
マナはその苦しそうな表情、口調を前に何も言えなかった。
「そして耐えられなくなったとき、廃人となるか、狂人となるか、死を選ぶか・・・・それとも、それでもなお、生きることを望むか。」
シンジはどんどん自分を責めるようなことを語り続ける。
そして、
「マナ、もし君が“力”耐えられなくなった時には・・・・・僕が・・・・・責任を取る。・・・苦しまないように・・・・」
マナはシンジが口に出来なかった言葉を察した。
シンジが言えなかった言葉とは“殺す”と言うことだろう。
「いいよ。私はこんな理不尽な理由で死にたくないだけ・・・だからシンジが“私”が“壊れた”と判断したら・・・その時はお願い。」
「それで本当に良いのかい?」
マナは何も言わずににっこりと微笑んで首を縦に振った。
そう、自分は死にたくないんじゃない。
こんな理不尽な理由で死にたくないだけ。
何か納得できる理由、自分の生きてきた意味、死んでいく意味が欲しいだけ。
そう、例えば先の戦いのように誰かのために戦って死ぬのなら満足できる、でも大人達の駒にされて消耗品のように死んでいくのは嫌だ。
まだ自分は何も出来ていない、だからその時間を稼ぐ為ならどんなに惨めな思いをしても、どんなに苦しんでも最後まで足掻いてみようと思った。
「解ったよ、じゃあ今週末にでも治療に当たるとするよ。でも、覚悟していて欲しいんだ今までこの方法で存命なのは一人だけ、おまけにかなりマナに負担を掛けることになる。それと助かった子も一時期精神的に不安定になった危ない時期があったんだ、だから・・・」
「大丈夫、私どんなことしてでも生き延びてみせるから。心配しないで。」
「ああ、それじゃあゆっくりと休んでいて。母さん達には僕の方から説明しておくから。」
そう言ってシンジ達は部屋を後にした。
廊下を歩きながらシンジは綾に話しかけた。
「綾、すまないがアメリカからマユミを呼んでもらえないかな。後、“騎士の血”も準備を進めてくれ、足りないのならまた僕の血から生成するから。」
「はい、マスター。既に両方とも手配済みです、マユミさんの方にも今回のことは説明してありますから心配ありません。」
シンジは綾の対応の早さに驚いていた。綾は自分の迷いなど見透かした上で行動を先読みしていたのだった。
そして、こんな簡単なことに悩み続けた自分が情けなかった。
「ははは、ありがとう。本当に助かるよ、それと今週末までに僕達のシュペルターとアルスキュル、それにクリスのネプチューンとブラフォードさんのテロルをオーバーホールしておいて欲しいんだ。」
「?N型とテロルだけでなくあの2体もですか、解りました。でも何に遣う気ですか?」
「ああ、実は父さんからの頼まれ事なんだけど・・・・・・・・・」
二人は庭の木陰に入り辺りを見回して人気のないこと確認してから密談を始めた。
「なるほど、そう言うことですか面白そうですね。解りました、私はそちらを優先しておきます。」
「頼むよ、初号機の方は僕が何とかするよ。それと父さんからもう一つ、母さんには知られないようにとの事。こっちには特に気をつけてね。」
綾にはユイに知られない様にすることが理解できなかった。
だがシンジからその理由を聞くととても驚いた。それはシンジと同じ反応だった。
そしてシンジと密談を終えた二人はそれぞれ自分達の現場に向かった。
シンジはユイ達と一緒にケイジに向かい、綾は自分の研究室にこもって作業を行っていた。
シンジと綾が色々と暗躍していた頃、レイは
「あ〜〜〜〜、期末試験がぁ〜〜〜、やばいぃ〜〜〜〜〜」
「もう諦めればいいのに、往生際が悪いよレイ。」
「クリス〜〜〜助けて、お願い。」
出撃が重なってしまったためレイはシャムシエル戦以降殆ど学校に行っていない。
おかげでレイは殆ど勉強していなかった。今まではずっと学年トップ3の成績だったがさすがに今回は危なかった。
一方クリスの成績はクラスでも真ん中あたりなので気楽だった。
「私よりもシン兄達に教えてもらえればいいじゃない・・・・て、どうして二人ともいないの?」
「うぅぅ、ふたりとも初号機の修理にかかりっきりで学校に来れないって。」
「ありゃ、それはご愁傷様。壊した自分を恨みなさい。」
「誰か助けてぇ〜〜〜」
クラスメイトにしてみれば非常に珍しい光景だった。
普段ならクラスのみんなから教えて欲しいと言われているレイが期末テストを前にあわてている。
だが、みんな自分達がレイに教えられるほどの学力がないことが解っていたため何も言えなかった。
レイの普段の成績とは殆どが100点でいくつかの教科で1・2問間違えると言った程度だった。
ちなみにレイ以上の成績を出しているトップの二人とはもちろんシンジと綾で全教科満点だった。
「あぁ〜〜〜時間がないぃ〜〜〜」
レイの叫びが教室に響いていた。
それでもレイの期末試験の順位は全校で8位、クラスでも2位だった。
ちなみに思いっきり悔しがっているレイを見るクラスの視線はとても冷たかった。
期末試験の終わる頃
シンジ達の作業も佳境に入っていた。
既に素体の基礎改修は完了しており、以前よりもはるかに高い耐久力と運動性能を出していた。
おまけに前に使ったジェネレータを本格的に搭載できるように改良して、参号機用の予備の強化装甲まで装備できるようになっていた。
だがそれでも調整がまだ全然出来ていないため、実際に動かせるようになるのはまだしばらく先だった
そんな中シンジと綾は病院からマナを連れ出し自分達の研究室に運び込んでいた。
実はマナの治療に関することは結局ユイ達にはいっさい知らせず、NERV内部ではゲンドウと冬月しか知らないことだった。
最初にゲンドウ達の所に相談に行った時、その危険性の高さから難色を示されていた。
この時シンジは詳しい内容はいっさい説明しなかった、それは自分達が先天的に普通の人間と違うことを両親に知られたく無かったからである。
もちろんゲンドウ達も納得できなかったが、シンジ達はこの件に関しては頑として口を割らなかった。
その結果、極秘の内にシンジの研究室で全てが行う事にした。
そしてゲンドウと冬月はこの件に関してはいっさい知らぬ存ぜぬで通すつもりだった。あくまでシンジと綾の独断という形を取ったのだ。
そうしなければ十中八九ユイ達に止められてしまうからだった。
そしてマナの治療が極秘の内に行われた。
この治療に関してはシンジ達はいっさいの資料を残さず、外部に出張という形を取って本部内にいることすら隠していた。
そして一週間の間シンジ達は完全に姿をくらましていた。
一週間後、トライデントの発表会前日になってやっと二人は姿を現した。
「二人っきりで外出するのならせめて一言言ってからにして欲しかったわ。」
「二人ともお帰りなさい、でも連絡先ぐらいはっきりしておいて欲しかったわね。」
帰ってきた途端ユイとリツコから怒られていた
もちろんシンジ達が急にいなくなってしまったため仕事の負担が二人にかかってしまった。
おまけに、問題箇所などが出ても二人とも全くの音信不通で問い合わせることがまったく出来ないとあっては二人とも怒るのも無理はない。
さらに、翌日に控えた発表会に関しての打ち合わせもまったく出来ていなかった。
一応シンジは一週間前にゲンドウと相談し保安部をガードにつけると言うことで決定していた。
それも少数精鋭でスーツアーマーまで持ち出すという念の入りようだった。
ユイとリツコもまったく知らなかったわけでもなく、ある程度は知っていたのだが肝心の計画者本人がいないのでは予定の組みようがなかった。
「二人とも、明日はどうするの?」
「うん、僕たちは別口で招待状をもらったけど母さん達と一緒に行動するつもりだけど。」
「そうなの、じゃあ明日の朝一番に本部から専用機で行くのだけど良いかしら。」
「解ったよ、荷物は今夜の内に積み込んでおくから。」
「「荷物?」」
「はい、ゲンドウさんから持っていくように言われていた物です。詳しくは明日お見せしますので楽しみにしててくださいね。」
ユイとリツコは荷物に関しては何も聞いていなかった。
だがシンジと綾の笑いをこらえた様子を見て、また何か企んでいるのだと察した。
「解ったわ、それじゃあ楽しみにしているわ。今日の所はもう帰りましょうか。」
「うん」「はい」
そして一週間ぶりに家に帰ってみると今度はレイの機嫌が悪かった。
「お兄ちゃん達だけズルイ。私だけ期末試験受けたんだよ、おまけに成績落ちちゃったし・・・・・さあ、二人とも何処行ってたのか白状してもらいましょうか。」
シンジと綾はすっかりレイや学校のことを失念していた、そしてレイの追及が一番厳しかった。
やむを得ず二人は理由と結果だけを知らせることにした。もちろんそれはマナの事でゲンドウにだけは既に知らせている内容だった。
「・・・・と言うわけで、峠は越したんでもう心配はいらない。助かるよマナは。」
「ほんと!」
「シンジ、いったいいつの間に・・・それにどうやってあの状態から。」
「ごめん母さん、今回の件に関しては何も言えない。そしてマナにもこのことは聞かないで、彼女にも今回のことは口止めしてあるから。」
「シンジ・・・・良いわ、詳しくは聞かないけど、あの子は助かるのね。」
シンジは黙ってうなずいた。ユイはそれだけで全てを納得してくれていた。
「ところでシンジ、それならマナちゃんに着いていた方がいいんじゃないの?」
「ああ、その点は問題ないよ。アメリカで同じように治療した子がいるんだ。その子にマナの相手をしてもらおうと思って来てもらってるんで大丈夫だよ。」
「そう、大丈夫なの。それなら良いわ。」
こういった現場での判断に関してユイはシンジのことを全面的に信用されている。
だが、逆にこういった所でレイの勘は恐ろしく鋭い。
「お兄ちゃん、その子って女の子?それも同い年ぐらいの?」
「!何で知ってるんだ、まだ誰にも会わせていないはず何だけどな。」
「だっていくら何でも年頃の女の子の相手に男の子は選ばないと思ったし、それに親しそうだったからもしかしてと思ってね。で、ホントの所はどうなの?」
「ああ、その通りだよ。山岸マユミさんといって僕たちと同い年、それに僕らとも無関係じゃないんだ、アメリカ第二支部の四号機のテストパイロットなんだ。」
「「四号機の!」」
コレにはレイだけでなくユイも驚いた。四号機に関しては建造中としか報告を受けていなかったからである。もちろん本部で知っているのはシンジと綾、ゲンドウ、冬月の四人だけである。
「ああ、まだ正式にフォースチルドレンに決まった訳じゃないんで公にはなってないけど、ほぼ決定だと思うよ。」
「・・・・・また厄介な」
「レイ、何か言ったか?」
「何でもない!それじゃ私先にお風呂行ってるから。」
レイは不機嫌そうに部屋から出ていってしまった。
「シンジ、その事は本部で他に誰か知ってるの?」
「僕と綾以外では父さんと冬月さんだけのはず、なんせ向こうでもまだ決定前の先行段階だからあまりおっぴらにしたくなかったんだ。」
「まあ、そう言うことなら仕方がないわね。それじゃあシンジと綾ちゃんも今日は早めに休みなさい。」
「「はい」」
翌日
「トライデント発表会」会場
「・・・・・やっぱり・・・・」
そう、シンジの目の前の光景は依然と同じである。
「NERV様御一行」という一枚の札とコップに入った水だけ。
もはや何も言うまい・・・・
だがあきれているのはシンジだけでなく一緒に来ていたユイとリツコもあきれていた。
「この連中何を考えてるのかしら、」
「何て子供っぽい。」
綾だけはその事態を不思議がっていた。
「おかしいですね?どうして私たちの所だけ何もないんでしょうか?」
だがそうこうしている内に発表会が始まった。
「今日はみなさんお忙しい中、我々戦略自衛隊の新型ロボット「トライデント」の発表にお越し頂き・・・・・・・・」
『『『『ながい!』』』』
出席者一同の考えは一致していた。
中には長すぎる挨拶に居眠りをしたり、隣のテーブルに座っている余所のグループと話し込んでいる者まであらわれた。
そして挨拶をしている時田博士はそんな事は全く気にせず挨拶からトライデントの説明に入っていたが、会場に来ていた者の八割以上ははまともに聞いていなかった。
そして、その中にはNERVも含まれていた。
「やあ、シンジ君、綾さん久しぶりだね。」
「これは、フィルモアさん。社長就任おめでとうございます、挨拶が遅れてすいませんでした。」
「どうもご無沙汰してます。」
「シンジ君、いつも通りダイ・グで構わないよ、君とは長いつきあいじゃないか。それに、そちらの方達も紹介してくれないかな。」
「こっちが僕の母さんで碇ユイ、向こうがウチの技術二課の課長赤木リツコさん。母さん、リツコ姉さんこっちはフィルモア社の新社長でダイ・グ・フィルモアさん、現会長・慧茄博士のお孫さんです。」
「「シンジ(君)一体何処で知り合ったの?」」
「シンジ君とはお婆様の仕事の関係で少々、それ以来は個人的に色々と・・・・そうだ、また私のプロミネンスのオーバーホールをお願いできないかな?」
「ええ、構いませんよ。この間N型もやったばかりだから時期的にはちょうど良い頃ですね。」
「N型を?クリスは元気ですか」
「ええ、僕の妹と仲良くやっていますよ。」
シンジに話しかけてきていたのはヨーロッパをメインに活動している複合企業体の「フィルモア」の社長だった。
社長と言っても二十歳過ぎの綺麗な顔立ちをした若者だった。
さすがにコレには周囲のグループも驚いていた。
みんなNERVの扱いを見て接触するのを畏れていたのである。だがフィルモア社の社長が気さくに話しかけているところを見て周りも動き出した。
「おやおや、フィルモアさん、NERVにお知り合いがいたとは、ご紹介していただけませんか?」
徐々にNERVのテーブルに人が集まってくるようになり出した。さすがにここまで来ると時田博士も自分の説明に熱中しているわけにもいかなかった。
「さてみなさん、一通り説明をさせていただききましたが何かご説明などありませんか。」
真っ先にリツコが手を挙げて質問した。
「時田博士、お聞きしたいことがあるのですが。」
「コレはNERVの赤木博士なんでしょうか?」
「動力機関が原子力とありますが危険ではないのですか?」
「ご心配なく、このトライデントは万全の防御を施しています。それに原子力ならばそちらのエヴァですか、アレのように有線や電池切れにもなりませんので。」
『『ピクッ』』
さすがにこの一言にユイとリツコのこめかみに青筋が入った。
「時田博士どちらでそのような話を・・・・まあ良いでしょう。安全性が万全とのことですか敵“使徒”の能力ですがビルを貫通するほどの加粒子砲を持つのですよ。それに攻撃兵器は本体動力からのエネルギー供給とありますが、この方式では原子力といえども出力が足りないでしょう。」
「はっはっはっ、ご心配には及びませんよ。武器はこちらでも色々と開発中ですよ。」
「それでは敵“使徒”のもつATフィールドを・・・・」
「大丈夫ですよ、そんな物近い内に我々が解明して何とかして見せますよ・・・・」
時田博士はまるっきりこちらの言うことを聞いていなかった。リツコはどんどんムキになっていき、逆にユイは黙ったままどんどん機嫌を悪化させていった。
そして時田の最後の一言はシンジの逆鱗に触れた。
「おそい、」
その一言にリツコだけでなく会場全体の視線が注目した。
「ん、何か言ったかね。きみ?何で子供がここに。」
「遅いと言ったんですよ、聞こえませんでしたか?」
シンジの機嫌は既に最悪だった、間近にいる綾はなるべく時田博士が余計な事を言わないようにと祈っていたがそれも無駄に終わった。
「誰だね君は!部外者は黙っていたまえ。」
「僕の名前は碇シンジ、NERV総司令碇ゲンドウの息子で本部技術三課課長、アメリカ第一支部設計主任、参号機専属パイロット“サードチルドレン”等々、色々な肩書きを持っていますが、今日はこちらに科学者のシン・バランシェとしてご招待されていたのですが。」
「「「「「なっ!」」」」」
シンジの一言に会場全体がどよめいた。もちろん時田博士を初めとする戦自関係者も驚いていた。
驚いていないのはNERV関係者や先程まで話し込んでいたフィルモア社長など親しい人間を除いた殆どだった。
「なんと、彼がバランシェ博士だったのか・・・」
「あの少年が、そうか碇博士の息子だったのか。」
「あのNERVの碇の息子が・・・・ではバランシェ婦人とは一体。」
等々、会場内ではいろんな声が聞こえていた。
もちろんそれを信じようとしない人間も大勢いた。その中には時田博士も含まれていた。
「き、きみ、冗談を・・・・」
「彼は正真正銘バランシェ博士だ、私が保証しよう。」
「フィルモア社長・・・・あなたまで・・・・」
「さて、時田博士先程の件ですがそんな悠長なことを言っていられては困るんですよ。」
「な、何の事かね。」
「開発中だの、近い内に、では遅いんですよ。そんないい加減なモノ現場では全く役に立たないんですよ。」
「なっ!君は我々のトライデントが役立たずだというのかね、侮辱にも程があるぞ!」
さすがにシンジの発言には戦自関係者の顔色が変わった。もちろんシンジも自分が感情的になっていることも解っていたのだが、さすがに少しキレていた。
「ではお聞きします。戦闘中に『武器が通じないので関係者に連絡したら開発中と言われました』では役に立たずとしか言いようがないですね。時田博士、あなたならどうお答えしますか。」
「うっ、そ、それは・・・」
「では次ですが、原子力を動力にしている様でけれど、まさか最終手段が特攻・自爆なんて事はないでしょうね。そんな非人道的な兵器を使うぐらいならN2兵器の方がまだましですからね。」
「うぐぐぐ、そんな事はない!」
「では良いでしょう、次ですが・・・綾、コレは君からの質問だ。」
「はい、次の質問は私、綾・バランシェからさせて貰います。」
綾の自己紹介に再び会場がどよめく。
「バランシェ博士は夫婦ではなかったのか?」
「あんな可愛らしい娘が・・・・」
「なかなかお似合いの二人じゃないか。」
等々、こちらもいろんな意見が声が上がっていた。
綾はそんな事を気にもとめずに質問を始める。
「パイロットの搭乗スペースですがこちらで調べさせて貰いましたがかなり狭いですね。それにこの機体のコントロールですがかなり特殊な訓練を行わないといけないようですが、こちらのパイロットとはどう言った方達なのですか?」
「そ、それは・・・・」
時田博士ら戦自がコレに答えられるはずもなかった。
まさか自分達から国際法に反して少年兵を採用しているとは言えなかったからである。
「・・・実はまだ、パイロットは適任者が見つかっていないのだよ。大丈夫だ、パイロットなどいなくてもトライデントは遠隔操作が可能になっており外部から制御できるようになっているのだよ。」
「では、その反応速度はどの程度でしょうか?」
「は?」
「平たく言うとタイムラグです。どう言った方法の遠隔操作かは存じませんが行動指令を発して、受信して行動を起こすまでの時間です。0.1秒以上あるようでは格闘戦は難しいと思いますが。」
「なっ!」
「ほかにも・・・・」
「うっ、まだあるのかね。」
「はいっ!」
綾はこう言ったときシンジよりも質が悪かった。こういった行動でもシンジのように悪意があるわけでなく、ただ純粋に質問しているだけだった。
さすがにこのままでは不味いと判断した戦自の幹部職員が質問会を強制的に終わらせ、急遽トライデントの実働試験へと立ち会わせた。
だがここでもシンジの毒舌と綾の天然ぶりは戦自職員の機嫌を逆なでしていた。
「トライデント前進!」
「「「「おぉ」」」」
トライデントが起動してその一歩を踏み出した。見学者達からは歓声が上がるが・・・
「馬鹿馬鹿しい、今どき二足歩行が出来たぐらいで喜ぶとは。それぐらいなら10年以上前に本〇技研のAS〇MOがやっている。」
「「「プッ」」」「「「プチッ」」」
参加者からは笑いをこらえて吹き出す音が、戦自からは何かのきれる様な音が聞こえたような気がした。
そしてさらに綾が火に油を注ぐ。
「遅いですねぇ、コレじゃあ狙い撃ちされますよ。良い的ですね。」
最初のシンジには悪意があった、だが後の綾は全く悪意など無く純粋に思ったことを口にしていたのだが。
これに機嫌をさらに損ねた時田博士はトライデントを戦闘モードにさせる。
だがここで予期せぬ事態が発生した。
突如トライデントが向きを変えてこっちに突っ込んできた。
さすがにこれにはシンジと綾も驚いたが、見学者達の驚き用はその程度ではなかった。
「おい、何をしている止めんかバカモン!」
「だめです、トライデントが外部からの信号を受け付けません。暴走しています!」
「何だと!」
この声を聞いた会場はパニックとなった。誰もが我先にと逃げ出し始めた。
シンジは不審に思った、今回の発表会に関してゲンドウから教えて貰った筋書きではトライデントは模擬戦で破壊する予定であったはず。
まさかと過去と同じようにリツコがウイルスを仕掛けたのかと思いリツコの方を見ていたが、どうやら違う様だった。周りの様子にリツコ自身が慌てている。
ただの取り越し苦労と思ったが真犯人は意外な人物だった。
リツコの様子を見た後、振り返りながら見たユイの顔は・・・・
ニヤリ
まるでゲンドウの様なあの笑い顔を一瞬だけ浮かべていた。
『母さんなのか!しまった、忙しくてノーマークだった。』
そう、真犯人はユイだった。
シンジと綾がマナの治療にいなくなり暇になっていたので悪戯がてらに嫌がらせをしてみたのだった。
そしてそれはとてつもない効果を上げていた。
トライデントが会場に突っ込んできた。
そして振り回した腕が見学会場の屋根を吹き飛ばし、そのまま実験施設の外の方へと走り出してしまった。
会場の混乱は暫くの間だけ収まった。だが危険は過ぎ去っていない、トライデントのリアクターは暴走を始めており臨界点を突破するのは時間の問題だった。
招待客らは我先にと逃げる準備を始めていた。
もちろん戦自も黙ってみていたわけでなく、戦車や戦闘ヘリを出撃させトライデントの進行を阻止しようとしていたが全く効果がなかった。
その理由の一つ目は、戦自はデモンストレーションのために機銃やグレネード、ミサイルといった火器を搭載していた。しかもよりにもよって実弾をである。
その為戦車やヘリ等では全く歯が立たなかった事。
そして二つ目はトライデントの装甲の厚さであった、戦車砲ぐらいではびくともしない。
「なんとしても止めろ!最悪は破壊してもかまわん!」
戦自幹部はは時田博士らに任せておけないと判断してついに破壊命令を出した。
「何を考えているんです!アレは歩く原発なんですよ、こんな所で破壊するなんてここでチェルノブイリを再現するつもりですか!」
もちろん反発したのはシンジだった。
過去に比べて状況が悪すぎた、戦自も面子にこだわりすぎて冷静さを欠いている。
「時田博士、アレを止める方法はないんですか?」
「在るにはあるが、その為には機体の方でマニュアル操作しなければ・・・・」
その言葉に戦自だけでなく周囲にもあきらめの雰囲気が広がっていった。
だがシンジと綾、そしてフィルモア社長が行動を起こし始めた。
シンジは直ぐに護衛部隊のバーバリュースとブラフォードに連絡をとった。
「ブラフォードさん、クリスと二人で先行して足止めをお願いします。僕と綾も直ぐに追いかけます!」
「了解、テロルの準備は出来ているの直ぐに出る。」
「ブラフォードさん、光学迷彩を使用しても構いませんので暫くの間クリスと二人でお願いします。バーバリュースさんはクロス部隊の指揮と招待客の保護をお願いします。」
「バーバリュースだ、了解した。既に準備は出来ている。そちらにクロスを3機向かわせている、そろそろ到着する頃だ。」
「解りました、あと僕と綾の分を準備してもらえますか。」
「それも準備済みだ何時でも出られる。」
「ありがとうございます。」
同じようにダイ・グ社長も何処かに連絡を取っていた。
どうやらこっちもシンジと同じように警護の人間と話しているようだった。
「ヒートサイ、私のプロミネンスの準備をしてくれ。」
「若、まさか出撃されるおつもりですか?」
「当たり前だ、クリスがN型で出るのだ私も出るに決まっているだろう。」
「・・・・解りました。どうやらNERVの方からかなりの戦力が出るようですな、直ぐにこちらに来てください2分で準備します。」
シンジ・綾・フィルモア社長ダイ・グの三人はこの状況でトライデントに対して何かを仕掛けようとしていた。
シンジと綾はユイやリツコの制止を振り切って会場の外にある専用機に入っていった。
入れ違いに会場には三体のベージュ色の甲冑を纏った騎士が入ってきた。
会場内の人間にはそれがスーツアーマーだと解ったが、まるで見た事のない形だった。
スリムなシルエットをしているが動きの機敏さ、滑らかさ、そして外見からは想像できないほどのパワーにに驚いていた。はっきり言って一般に出回っている物とはまるで次元が違っていた。
そして三人の騎士はユイとリツコの元にやってきた。
「ユイ博士、赤木博士こちらです。早く避難してください。」
「でもシンジが・・・・・」
「大丈夫ですよ・・・・ご心配なら機内の方でモニター出来ます。さあ、こちらへどうぞ。」
「え、ええ、お願いします。」
そしてユイとリツコや出席者達はそれぞれ自分たちの乗ってきた専用機に乗り込もうとしていた。
だがNERVで用意してきた専用機の一つから二体の影が出てきた。それは美しい甲冑を纏った2体の騎士の姿だった。
「母さん、リツコ姉さん、危ないから機内にいてね。」
「「シンジ(君)!!」」
その二体の甲冑の騎士の内、銀の騎士:シュペルターから聞こえてきた声は間違いなくシンジのモノだった。
そしてもう一体の赤と白に飾られた騎士:アルスキュルから綾の声が聞こえてきた。
「マスター、テロル・ネプチューンともにトライデントに接触、先制攻撃を仕掛けました。」
「解った、行こう綾。それじゃバーバリュースさん後を頼みます。必要ならRタイプを使ってください。」
「了解した、一応そっちの事はクロスのビョンドシーカーでモニターしておく、データ収集は任せてくれ。」
そしてシンジと綾が出ていこうとすると、近くにある大型機から今度はオレンジ色をした甲冑の騎士が薄緑色をした重騎士を数人連れてやってきた。
そのオレンジ色の騎士:プロミネンスからは先ほどシンジと話していたダイ・グ社長の声が聞こえてきた。
「シンジ君、ウチの者も警護に当たらせるからそちらの指揮下に組み込んでくれないか?久しいなビィ殿。ケーニヒ、ニオ、二人ともビィ殿の指揮下に入れ。ビィ殿、ウチの連中を頼みます。」
「ダイ・グ殿ですか、お久しぶりです。解りました、そちらのD型サイレン6機の指揮権お預かりします。」
「ではシンジ君行こうか、」
そう言うと銀色の騎士は赤白とオレンジの騎士を伴ってトライデントの方に信じられない速度で移動していった。
後にはあっけにとられる参加者以外には、シンジと綾の身を案じているのはユイとリツコだけだった。
そしてNERVの護衛部隊はフィルモアの騎士と共に参加者の誘導を始めた。
そのころ、先制攻撃を仕掛けていたクリスとブラフォードだが、そこにはクリスと思わしき碧色の騎士の姿しか見えなかった。
「ちっ、何でデモ用の機体に実弾積んでるのよ!ブラフォードさん上のミサイルつぶしてください、機銃は私がやります。」
「気を付けろ、暴走していても照準は正確のようだ。」
そう言うと何もない空間が歪み、そこに漆黒の騎士が現れた。その騎士は背中にマウントされていた巨大なブーメランを投じた。
そのブーメランは目にも止まらないスピードで発射されていたミサイルをたたき落とし、漆黒の騎士の手に戻ってきた。
その一瞬の隙をついてクリスの碧色の騎士:ネプチューンが三角飛びの応用でトライデントの腰の所に搭載されていた機関銃を右手の長剣と左手のシールドに取り付けられたブレードで叩っ切った。
だがそれにも気にとめ無い様にトライデントは前進を続けながら全身に装備された火気でクリスとブラフォードの二人を牽制してきた。
「こいつ!一体どれだけ武器持ってるのよ。」
「文句を言うな、戦車砲や高角砲がないだけまだましだ。だが、もう時間がない基地の敷地外まで後少ししかない。」
こんな事を言っているが二人だけでトライデントの足止めをしているのである。
トライデントの進行速度は最初の半分ほどに落ちていた、おまけに破壊した武器の数もかなりあった。
二人はこれを銃火器を使わずブーメランと剣だけで行っていたのだ、その戦闘能力は計り知れない。
「ブラフォードさん、あいつのセンサーをつぶします。援護お願いします。」
「まて!直ぐにシンジ君達が到着する。無理をするな。」
だがクリスはブラフォードの制止を聞かず先ほどと同じようにトライデントに組み付き頭部と思われるあたりに斬りつけた。
左手のシールドソードを装甲に突き刺し正面に張り付いて正面装甲をどんどん切り裂いていった。
だがトライデントは自身の損傷を無視してクリスめがけてグレネードをたたき込んだ。
クリスは機体に張り付いていたため、その直撃を食らってしまった。
「しまった!」
その衝撃ではじき飛ばされたクリスめがけてトライデントの腕が襲いかかった。
この時ブラフォードは他のグレネードの迎撃をしていたためクリスの援護が遅れた。
トライデントの腕がクリスに直撃すると思われたその時、その腕が大きく弾かれた。そして落下していたクリスの身体をオレンジ色の騎士が抱きかかえていた。
「久しぶりだなクリス、少しはお淑やかになったかと思えば相変わらずのお転婆ぶりだな。」
「ひっ!そ、その声は・・・・ダイ・グさん・・・・・マジ・・・・」
「久しぶりにあったのに第一声がそれか、全く・・・・まあ良い、話は後でゆっくりとさせてもらおう。」
「あ、あうぅ・・・」
「!シンジ君達が仕掛ける、来るぞ!」
「は、はいっ」
そう言って二人は左右に散った。その途端トライデントの両足に向けて二つの凄まじい衝撃波が襲いかかった。
その衝撃波はトライデントの脚部装甲をズタズタに切り裂き、足首部分の間接を破壊した。
その為、トライデントはその場に跪いたがなおも先へ進もうとあがいていた。
そのトライデントの元に銀のシュペルター:シンジと赤白のアルスキュル:綾が現れた。
先ほどの衝撃波はこの二人が放ったモノだった、二人の得意とするソニックブレードをトライデントのアキレス腱めがけて叩きこんだったのだ、これを食らってはいかにトライデントの装甲といえども紙の様に切り裂かれた。
「綾!ハッチを破壊するから中へ。クリス、ダイ・グさんヤツの両手をつぶして!ブラフォードさんは援護をお願いします。」
シンジは各に指示を出しながら、綾と二人でトライデントの背部ハッチにとりついていた。
もちろんシンジの指示を受けて直ぐにクリスとダイ・グの二人はそれぞれ左右の肩に長剣をたたき込んだ。
ものすごいスピードで無数の太刀を繰り出すクリスとは対照的にダイ・グの攻撃は一撃必殺の威力があった。
二人はそれぞれ両腕を肩で切り落とした頃、ブラフォードは背骨の腰に相当する部分を刀で貫いていた。
ブラフォードは二人の援護の傍ら銃火器をつぶしていったり、間接に刀をたたき込んだりと少しずつトライデントの戦闘力を奪っていった。
シンジが破壊したハッチにとりついた綾は自らアーマーを除装してプラグスーツの様な服だけでトライデントのコックピットに乗り込んだ。
シンジはそんな綾とアルスキュルを護る様にハッチにとりついていた。
綾がコックピットに入り込んだ時には周りの表示は警告だらけだった。それも仕方がない、既に数々の武器だけでなく両手両足を破壊され腰部には刀を叩き込まれている、もう動かせる所など数えるほどしかない。
綾はそんな警告は無視して動力システム関係をチェックした。そこには来る途中シンジから言われた様にウイルスが寄生していた。
「はぁ・・・ユイさん、こんな質の悪いのを作りましたね・・・・困りました。時間がありませんから少し荒っぽくさせてもらいますよ。」
綾は動力炉制御の全てをマニュアルに切り替えた、本来自動制御になっている部分まで全てを。
これは普通の人間には自殺行為だった、炉心温度や反応棒・冷却水の制御、放射線量等々とても人間に制御しきれるモノではなかった。
だが綾は人間ではなくファティマだ、生体コンピュータと言っていい。これぐらいの制御は綾にとっては全く苦にならない。
あっという間にリアクターの停止シークエンスを進め、トライデントのリアクターは停止してその動きをとめた。
綾がコックピットから出てきた時にはシンジ達が既に戻る準備を進めていた。
「綾、ご苦労様。さあ帰ろう。」
「はい!」
綾が再びアルスキュルを身に纏うのを待ってから5人は自分たちを待つ人達の元に戻っていった。
「わ、わしのトライデントが・・・・・・・・・・・」
「そんなトライデントが・・・・・・・たったの五人に・・・・・」
時田博士以下、戦自の開発担当者達は呆然としていた。
トライデントの発表会は制作者達の思惑とは全く逆の形で幕を迎えることになった。
後書き
どうでしょうかね、今回の話の展開は
トライデント、壊されちゃいましたね。それもたった5人に
まあ、この話のために今まで伏線を色々と張ってきたんですが、ようやく色々と伏線が消化できてきました。
でもまだまだ伏線は残っています。特にこの話を読んだ後ではマナやマユミのことが疑問になると思いますがこっちの方は間章の3・4あたりで詳しく書こうと思います。
こっちの方は正直何時になるか解りませんがなるべく早めに書こうと思いますのでしばらくお待ち下さい。
それにしても今回はクリスの出番が多かったですね、おまけになんだか因縁のありそうなキャラまで登場してきました(笑)
まあ、これもFSSの方からの登場キャラですが原作に比べてかなり崩しています。
おかげでいい具合にクリスも崩れてくれそうです。そのうち今回の件がレイにばれてからかわれる事は決定済みです。
それにしてもこの五人無茶苦茶強いですが、実際シンジと綾はこんな事しなくても生身でトライデントを破壊することが出来るぐらい強いです。
そんな事したら化け物呼ばわりされること必定、だからまだ当分はそう言った力は隠しておく予定です。
さて次回に関してですが題名は「発表会」か「後日談」の予定です。
「後日談」はともかく何の「発表会」でしょうか・・・・・バレバレですね。
実は今回の話はあまりに長くなりすぎて最後の部分を切り離して加筆することにしました。
そして切り離した部分を6.5話と言う形で説明会にさせて貰います。
そんなわけで次回は7話ではなく6.5話にさせて貰います。
それではなるべく早めに続きを書きますので、みなさんしばらくお待ち下さい。
復活、FSSファンへのお詫びと説明
ごぶさたしてました。
第1章に比べて2章ではFSSがらみのネタが沢山出るのでこのコーナを復活させました。
さて、まずはクリスとダイ・グ・フィルモアの関係ですがどうでしたでしょうか?
原作読んでる限りでは二人とも立場上絶対にくっつきそうでないので、くっつけてみようと思いました。
実際にはクリスが原作とは違い程良く崩れているので以外とスムーズでした。
それと今回から本格的に登場してきたスーツアーマーですがデザインは基本的にはMH(モーターヘッド)そのままです。
ちなみに今まで登場してきたのは、
第1章、カルバリィC(後のクロス、第2章で正式登場)
第2章 シュペルター、アルスキュル、プロミネンス(O型サイレン)、ネプチューン(N型サイレン)、D型サイレン、テロル、クロス、ですがこれ以外にも文章の上では他にも色々と登場しています。
それに今回からいくつかのメーカーが出てきましたがこれもお気づきの方が多いと思いますがFSSの中に登場した国家をそのまま企業にしています。
ちなみにこれからも登場する予定なのがアメリカのアトールのA・トールシリーズと、ヨーロッパのフィルモアのサイレンシリーズです。
それぞれトップは原作を元にアトールはムグミカが会長で社長がコレット、SS(シークレットサービス)の隊長がバルンガ・ギラ・ヘアーデの三人の予定です。
フィルモア側は慧茄が会長、前社長で相談役がレーダー、現社長がダイ・グ、SS隊長がヒートサイ、他にも今回少しだけ出てきましたがトランプの4人も一応います。
まあ、トップクラス以外はあまり出す予定はありません。
逆を言うとクリスがらみでダイ・グと絡めてフィルモアを出してきたり、アメリカ第二支部のマギー所長がらみでアトールを絡ませてきたりする予定です。(マギー所長は元アトール設計本部長)
ちなみにEVA4号機に関してはその辺(アトールがらみ)からデザインを考えています。
次回は今回の補足になりますがそれが終わるといよいよ参号機を登場させます。
もちろん今まであっちこっちに書いていましたが参号機は原作とは似ても似つかない形にしてあります。
今まで感想を頂いた多くの人から「MHはまだでないんですか」と言われていましたのでエヴァにMH風の甲冑を着せることにしました。
ちなみに最初は参号機、次に四号機、初号機の順で行って、参号機はMHが登場するようになってからデザインを大幅に変更する予定です。
さて、どの機体がどのMHのデザインになるでしょうか解った方はメールでも送って下さい。
それではヒントをいくつか、参号機は本来のデザインの色とは全く逆で黒です。(つまり本来のカラーは白?)
4号機はマユミが乗ります、従って比較的大人しくて美しいデザインをしていて色は白です。
初号機は零号機のイメージカラー・ブルーからデザインを選びました(青騎士ではありません)少し色は違いますが結構デザイン的には派手です。
そして、デザイン変更後の参号機はグレーをメインカラーに考えています。
ちなみにスーツアーマはこれからも何種類か登場させる予定です、MHの代わりですので暫くはこれで我慢してください。
それではまた次回でお会いしましょう。