騎士と妖精と熾天使の幻像
 
第2章
第5話.護る者、護られる者
 
 
「あのっ、それなら私が何とかします!」
 
意外な所からあがった意見に全員の注目が集まった。
それは・・・・・
 
 
 
マナだった。
 
時田博士に連れられてこの場に来ていた、もちろん西田も来ている。
ゲンドウは発令所のメンバーと一緒にここに来たため西田達も一緒にここに連れてきてしまっていた。
マナは周りに圧倒されながら連れられるままにここまで来ていた。
周りで話されている内容など全く解らなかったが、発令所で見たエヴァというロボットがもう一機欲しいと言っているのなら自分とJAがあれば何とかなると判断して答えた。
 
だがこれには反対意見が多かった。
まず危険すぎるといって時田博士以下殆どが反対し、諜報部・保安部からはJAの性能を疑問視していた。
だが特に反対していたのはシンジだった。
 
「危険なんてモンじゃない!エヴァはかろうじてATフィールドがあるから何とかなるが、JAなんかじゃ使徒の加粒子砲の一撃で大破してしまう。それに核を搭載しているような機体を戦闘に使用する気はない!」
 
シンジはJAに関して問題点をついてきたが実際にはマナを戦わせたくなかったのである。
その事に気が付いている者は殆どいなかったがレイと綾は気が付いていた。
 
「お兄ちゃん、そんな事言っても今のままじゃどうしようもないじゃない。」
「そうですよマスター、それにJAに問題があるのでしたら改修すればいいのではないですか?リアクターは初号機用の追加ジェネレータの予備を使えば何とかなります。
それに我々も堂々とJAを使用するわけには行きませんし、ましてや手元に置いているのが戦自に知られた時の問題もあります。
でしたら今回の戦闘でJAを破棄するつもりで使い捨てにした方がいいのではありませんか?
例えばJAを大幅に形状変更させて移動可能な砲台として使用して頃合いを見てわざと使徒の砲撃を受けて大破したようにすればいいのではありませんか?」
 
さすがにこの綾の意見にはシンジも黙らざるを得なかったが、逆にこの意見には会議の参加者の殆どが賛成した。
以外にも時田までもが賛成していた、時田は内心ではこの機会にマナをJAから遠ざけてしまおうと考えていた。JAがある限りマナは戦闘に参加しようとするし、JAがある限りマナは戦自から狙われ続けるだろう。
しかし、JAが大破してしまえば戦自も追跡の手をゆるめるだろうし、マナも戦闘に参加しなくて良くなると踏んでいた。
 
「綾さん、それは今から間に合うのかしら?それに初号機用のジェネレータを簡単に転用出来るの?」
 
リツコの疑念は賛成した他の者も同じ心配をしていた。
 
「はい、今からなら間に合います。それに初号機用のシーザスベイルや電磁バリアラインシステムを移植すれば搭乗者の危険も軽減出来ます。マスターどうでしょうか?」
「わかった、もういい。そうまで言うのなら賛成するしかないな、だがJAには僕と綾が搭乗しよう。シーザスベイルも電磁バリアラインシステムには細かい調整が必要だし何かあった時には結局は僕たちが見なければいけないしな。」
 
綾に説得されさすがにシンジも折れた、だがこれには意外な所から反対が起きた。それはレイとマナだった。
 
「だめ!さっき危ないって言ったのはお兄ちゃんだよ。」
「だめ!JAには搭乗者の認証システムがあるから私以外には動かせないの。」
 
さすがにこれにはシンジと綾も頭を抱えた。
 
「仕方があるまい、それしか手がないのならそれに万全を期すしかあるまい。マナ君すまないが君を危険な目に遭わせてしまう事になるが、是非力を貸してもらいたい。もちろん我々も出来る限りの手を尽くさせてもらうのでどうか頼む。」
 
珍しくゲンドウが頭を下げていた、それも自分の子供と同じ年頃の少女にだ。
 
「あ、はい、私に出来る事なら何でもします。だから頭を上げてください。」
「ありがとう、シンジ、綾、マナ君のJAの改良を任せる。彼女が無事に戻ってこれるように全力を尽くしてくれ。」
「・・・・・それしかないのか・・・・・・・・解ったよ父さん。マナ、君の身の安全は僕が保証するよ。綾、準備を急いでくれ。」
「はい。」
 
ゲンドウの作戦承認により各部署は準備に入った。
作戦自体はJAにリニアレールキャノンを搭載させ移動砲台として使徒に牽制を仕掛け、その間に使徒に最も近いゲートから初号機を射出し接近戦で勝負を仕掛けるといったものになった。
早速リツコとユイはエヴァの再調整に奔走していた、シンジから渡されたエネルギーソードと追加ジェネレータの仕様書を元にその調整が忙しかった。
シンジと綾はJAの改修を手がける事になった。マナにJAを隠し場所へ取りに行ってもらいエヴァの回収用ゲートを使用してケイジに持ち込まれた。
早速シンジと綾はJAを調べる事にした。案の定マナの言った認証システムがネックになっていた、この認証システムは操縦用OSと一体になっており取り外すためにはOSそのものを取り替えなければいけない。だが今更新しくOSを作り直す時間がないためシンジはこれに手を付けるのを断念した。
代わりにシンジと綾が砲手とオペレータとして乗り込むように改造する事にした。もちろん平行してリアクターをエヴァ用のジェネレータに載せ替え、リニアレールキャノン・シーザスベイル・電磁バリアラインシステムを取り付けた。
シーザスベイルとはエヴァ用の巨大な方形の盾(ヒーターシールド)だが、もちろん只の盾でなくルータベイルと同様に武器が仕組まれていた。名前の通り盾の先に大きな蟹の鋏のような物が仕組まれていて接近戦ではそれで相手を挟み込むといった使い方をするのだが、今回は内部の武器を取り外し只の装甲板として使用される事になった。
ルーターベイルと同様にこの盾も恐ろしいほどの強度を持っていてサキエルの光のパイルやシャムシエルの鞭でも簡単には壊れる事はなかったが、さすがに今度の加粒子砲はこの盾があっても十分ではなかった。
その為シンジと綾はJAの防御力を高めるためにもう一つの装備を取り付ける事にしていた。
それが電磁バリアラインシステムだった。
それはシンジと綾が自分達専用に開発したSA(スーツ・アーマー)に取り付けていた物をエヴァ用に大型化した物だった、このシステムは装甲に特殊な電磁波を張り巡らせる事により装甲の周囲にバリアのような物を展開するための物だった。
だがこれでも加粒子砲の前ではあまり効果が無く、せいぜい直撃時に弾道をゆがめる程度であったがこれをシーザスベイルと組み合わせる事により万が一直撃を受けても当たり所が良ければ受け流す事が出来、もし受け流せなくても30秒は直撃に耐えられると計算されていた。
更にシンジと綾は初号機用にアメリカから送られていた初号機用の装甲を使ってJAの外観をまるっきり別物に変えていた。
胴体はエヴァ用のジェネレータのおかげでほっそりとした物になり、手足もシンジ達の持つSA技術により軽量化に成功したが被弾計数を低くするために全身を小さくする事にした。結果として全長は18メートル程まで小さくなり、外観は普及型のSAデヴォンシャによく似た姿になっていた。
これなら万が一戦自に見つかったとしても出所が解らないはずだった、デヴォンシャ型のSAは世界中に出回っていて、それをまねしたロボットも世界中で作られていた。
これらの作業に一通りの目処が立ちシンジ達は一度レイと初号機の様子を見に行っていた
 
だがここではひと騒動が起きていた、まず一つ目は初号機の調整であった。
原因はシンジ達の持ち込んだ追加ジェネレーターだった。それは出力が大きすぎるためエネルギーバイパスを通ってパワーが逆流してしまいエヴァ本体の方に負荷がかかってしまうことだった。
幸いシンジ達が到着する頃にはリミッターを設ける事で逆流を押さえる事に成功していたが、今度は逆にエネルギーソードが必要とするパワーがあまりにも多すぎるため瞬間的にパワーが足りなくなりエヴァ本体から供給しようとしてリミッターが誤作動するという問題に突き当たっていた。
既にユイとリツコも行き詰まっていたが既にジェネレータとリミッターは取り付けてしまい今更変更など出来ない状態であった
 
もう二つ目の問題とはレイの方だった。
レイは作戦で使用するエネルギーソードの使い方を練習するためクリスと一緒に訓練室に来ていたのだが、その練習に全く集中出来ないでいた。
その為に訓練中に怪我をしてしまい今は医務室で休んでいた。
 
そして三つ目の問題は使徒の問題だった。
使徒がついに本部に向けて攻撃を加えだした事だった。
攻撃といっても本部の直上から地下に向かってボーリングを行うという非常に時間のかかる物だったが問題は新たに解った加粒子砲の性能だった。
なぜならこの加粒子砲の初段発射から次弾発射までの時間であった。なんと最短で15秒、最長でも22秒というデータが出てきたため作戦部ではJAの攻撃と初号機の発進タイミングについて論議が繰り返されていた。
 
シンジ達はこれらの問題のウチ、三つ目は作戦部に諜報、保安部にも意見を求める様に意見するだけにとどめ、二人は一つ目と二つ目に集中する事にした。
 
「母さん、リツコ姉さん、どうなの?何かトラブッてるみたいだけど。」
「ちょうど良い所だったわシンジ」
「ええ、ちょうど行き詰まっていた所なのよ、良い所に来てくれたわ。」
 
シンジの姿を見てユイとリツコはほっとしていた。
正直自分たちの手に余る問題と判断していた。二人にはこのジェネレータを調べれば調べるほど異質な物である事が解ったからである。
表向きはブラックボックスの固まりであるのだが、二人の目にはどう見てもこれがS2機関に似ているように思えた。
実際にはS2機関そのものではないがその理論を応用した簡易版S2機関とでもいったものと判断していた。
そう、二人の判断は間違っていなかった。実はこれはシンジが参号機用の小型試作器として開発していたS2機関のサンプルだった物を改修して初号機に取り付けられるようにした物であった。
だが実際には搭載するつもりもなく、安定性を重視の試作機であってもその出力は初号機にはあまりにも大きすぎたのである。
 
おまけにクリスからレイの怪我の話を聞いて二人は落ち着かないでいたが、それはシンジにとっても同じ事だった。
少しずつ落ち着きを取り戻してきたシンジ達だが具体的にどうするかという事を決めかねていた。
そんな中、混乱しているシンジやユイ達を後目に綾だけは一人落ち着いていた。
 
「マスター、ここは私に任せてください。ユイさん、リツコさんエヴァの方は私が手伝います。マスターはレイさんの方へ行ってもらえますか?レイさん、さっき怒られた事を気にしていましてからその辺の事をきちんと教えてあげないと可哀想ですよ。」
 
シンジは綾に怒られているような気になった。もちろん綾は怒っているわけでなくシンジにレイにもう少し説明して欲しかっただけなのであるがシンジは大人しく従う事にした。
そしてシンジはその場を綾に任せてレイのいる医務室に向かった。
そこにはレイを心配してクリスも一緒にいた。
 
「レイ、どうしたの?訓練は集中してないと危ないんだよ。ひょっとして体調が悪いの?そう言えば今日は何か・・・・・」
「・・・ごめん・・・・何でもないの・・・・」
 
クリスにはどうしても何でもないようには見えなかった。だが、今のレイはそれを追求出来るような状態ではなかった。
そんな所にシンジはやってきた。
 
「あ、シン兄!どうしたの?」
「すまないクリス、暫くレイと二人だけにしてくれないか?」
「・・・・うん、わかった。レイまた後でね。」
 
そう言うとクリスは後をシンジに任せて医務室を出ていった。
後に残されたレイは相変わらず怯えたようにうつむいたままだった。
 
「レイ、どうしたんだ?訓練中に怪我をしたって聞いたけど大丈夫か?」
「う、うん・・・たいしたこと無いから・・・」
 
だがレイの様子はとても大丈夫そうには見えなかった。
 
「本当か?どうしたんだ訓練中に怪我だなんて、調子でも悪いのか?」
「なんでも無いよ・・・只ちょっと・・・・」
「そうか・・・そうだ、さっきはすまなかったな少し言い過ぎた。こっちも少し気が立っていたんだ本当にすまない。」
「ううん、その事はもういいのさっき綾さんに色々と教えてもらったから・・・・・・ねえ、お兄ちゃん・・・」
「そうか、綾が・・・・・どうした?何か他にもあるのか」
「うん・・・・」
 
レイは真剣な顔になってシンジを見つめてきた。
シンジはレイが何か思い悩んでいる事を打ち明けてくれると思い少しほっとしていた。
だがその内容とは・・・・
 
「お兄ちゃん、あのマナって子知ってるの?それに私の気のせいかもしれないけど・・・・・・・・・・どうしてあの子を庇おうとするの?教えて、お兄ちゃんには綾さんがいるんでしょう。女の子に優しいのは解るけど私にはどうしてもそれだけには思えないの・・・・・・お願い。」
「そうか、そんな風に見えたのか・・・・」
 
シンジは以外と鋭いレイの目に驚いていた。もちろんレイに過去の全てを教えるわけには行かないので今の世界でのマナの事を教える事にした。
 
「レイ、今から話す事は誰にも言わないと約束出来るか?」
「うん!」
「レイ、僕はあの子、マナの事は暫く前から知っていた。だが個人的な意味じゃなくて戦自がらみでの事なんだ。これを見てくれ。」
 
そう言ってシンジは自分の携帯端末にマナの情報を表示した。
それはシンジが独自にそろえた情報だけでは無く時田から提出されたマナのカルテもあった。
しかし、そんなものを見ただけではレイには意味がわからなかった。かろうじてマナが戦自に集められた少年兵らしいという事だけが解った。
 
「お兄ちゃんこれってどういう事?あの子が戦自の少年兵って事ぐらいしか解らないけど・・・・・」
「レイ、こっちのカルテの方が問題なんだ。あの子の身体はそう長くは持たないんだ・・・・・」
「えっ、嘘でしょう。だってあんなに元気そうなのに・・・・・」
 
レイはシンジが何かの冗談を言っているのかと思っていたがシンジの辛そうな表情を見るとそれが嘘でない事が解った。
 
「何か病気なの?でもそれならお兄ちゃんやお母さんもいるんだし・・・・」
「違うんだレイ。彼女の身体はもうボロボロなんだ。小さい頃から薬物を投与され続けて・・・・・・恐らく数年後には身体の各所に障害が出てくる。それに既に禁断症状や発作も出ているはずだ、彼女の身体はもう・・・・・・・」
「う、うそ、だって私と同い年なんだよどうして、ねえ、お兄ちゃん」
 
だが信じられないでいるレイ以上にシンジの表情は苦悩に満ちていた。
シンジもこれほどまでに酷いとは知らなかった、だからこそこのカルテを手に入れて直ぐに綾と何度も相談していたが治療の方法は思いつかなかった。
それほどまでにマナの身体はぼろぼろだった。たった一つだけ延命の方法があったがシンジはそれを選びたくなかった、なぜならそれはマナを死ぬよりも辛い目にあわせる事になる。
だからシンジはこの事を誰にも言っていなかった。もちろんマナ本人にも。
 
「だから僕はあの子を戦場に出したくなかったんだ。それは時田さんも同じだと思う、だからレイも協力してくれ、頼む!」
「うん、そうだったの、だからお兄ちゃんはあの子を・・・・・解った、私も手伝う。だから、お兄ちゃんもがんばってね。」
「ああ、だけどレイ、今はおまえの方が心配だ。本当に大丈夫か?」
「うん、もう大丈夫。」
「そうか・・・そうだレイ、エネルギーソードの事だけど、良かったら一緒に練習しないか?僕もしばらくは手が空いてるんで手伝ってやるよ。」
「えっ、ホントに良いの?お願い、長剣なんて使った事無いから良くわかんなくて・・・・」
「よし、それじゃあ後で・・・・」
「ううん、もう大丈夫だよ、直ぐにやろう。」
 
そう言ってレイはシンジを連れて訓練室に向かっていった。
さっきまで落ち込んでいたレイだが元気になってくれてシンジは嬉しかったが、どうしてレイが落ち込んでいたかがいまいちよく解っていなかった。
 
 
そのころケイジではユイとリツコの手によってエヴァの調整が進んでいた。綾は一度JAの改修に戻っていたが今は再びエヴァの調整に戻ってきていた。
既にJAの改修は綾の手を放れており後は作業員に組付けを行ってもらい最終調整を待つだけである。
初号機の方も既に調整は殆ど終わっており後はレイの準備を待つだけである。
そんな中ユイとリツコは綾にいくつかの質問をしていた。
 
「綾ちゃん、ちょっと聞きたい事があるんだけど良いかしら?」
「はい、何ですかユイさん?」
「実はエヴァに取り付けたジェネレーターなんだけど、あれって・・・・」
「ええ、おそらくご想像の通りです。“アレ”の初期実験用の小型テスト機を初号機用に改修した物ですが安定性を重視して出力を押さえてありますから。」
「綾ちゃん、アレで出力を押さえてあるの?じゃあ参号機って一体どれくらいの出力が出ているの?」
「モノが違いますのではっきりと言えませんが標準出力で今使っている物の15倍強ぐらいですね。実際にはブースト時には瞬間的にはその2倍近いパワーが引き出せます。」
「・・・・そう、聞かない方がよかったようね・・・・・・なんだか、自分がとってもバカなことを聞いたような気がしてきたわ。」
「・・・そうですねユイさん。まあ、シンジ君が作る物だから普通じゃないとは思ってましたけど・・・・・・・さすがにコレは・・・・・・」
 
ユイとリツコは綾の言葉に虚ろな返事を返すだけだった。
実はこのジェネレータの出力は初号機を全開状態で30分間連続稼働できるほどの電力を発電できるのだった。
もちろん、コレを搭載したからと言って即エヴァの能力が上がるわけでもないが、このジェネレータさえあれば基本的にアンビリカルケーブルの心配をしなくて良いのである。
ユイとリツコも今まで色々な方法でエヴァの動作時間を増やそうと燃料電池の改良や人工筋肉の燃費向上など、色々と研究してきたがハッキリ言ってコレの前にはそう言った努力も霞んでしまう。
 
「でもコレは本来エヴァの電力を供給するためではなく、追加兵装の為にオプションとして考えた物なので実際にこれを直接エヴァをに付けて動かすことは考えていませんから。だって、これ結構重たいですから。」
 
確かに綾の言うとおり、このジェネレーターはエネルギーソードなど大電力を必要とする追加兵装に電力を供給するため、腰の後ろに付けたジェネレータから右手まで有線で電力を供給している。
コレはレイが右利きだったから右手に武器を付けるといった考えからで、右手には小手のような物が取り付けられていた。コレが武器に追加電力を供給するためのエネルギーバイパスになっていて、もちろんその外見の通り装甲も取り付けられており小手としても役に立つようになっている。
だが、追加ジェネレータ一機では片手分だけで精一杯なため左手には右手と同じ小手が取り付けられていた。もちろん素材は同じだが電力供給はされていない。
ちなみにこれらの総重量は結構重く、コレを付けたままでのエヴァの動作時間は通常状態3分の所が2分半で限界になる。もちろん重量があるのだけではなく、体のバランスなども崩れることからそうなっているのである。
 
「そうね、こんな重たいモノ付けていたんじゃしょうがないわ。でも、一つ気になるんだけどこの小手ずいぶんと都合のいいサイズしてるわね。ひょっとして・・・・」 
「ええ、リツコさんの仰るとおりこれも参号機用の予備の小手なんです。参号機は全身をエヴァ用のスーツアーマを装備しているんです、だから大型のジェネレーターが必要になるんです。」
「ちょっと待って!エヴァの全身をあんなモノで覆っているの?そんな事したら・・・」
「ええ、解っています。でも、全てはマスターが必要と判断した事ですから、私はそれに従うだけです。」
 
綾の真剣な様子にユイもリツコも何も言えなかった。そしてシンジが以前からこれほどの戦力を用意してまで使徒に危機感を抱いていた事に驚いた。
そしてユイとリツコの見上げる中、初号機はその凄まじい破壊力を秘めた武器を武装されていった。
 
 
訓練室
 
カァン
 
木刀が宙を舞い離れた所へ飛んでいく。
そこにはレイが手首を押さえてうずくまっていた。
 
「大丈夫かレイ?」
「う、うん、少し打っただけ。大丈夫。」
「少し休むか?そんながむしゃらになっても所詮は一夜漬けだ、連撃やフェイントに頼った所でボロが出るだけだ・・・・・」
「でも、今のままじゃとてもあの剣を使いこなせないよ。」
「・・・・・そうだな、それならいっそのこと示現流の方が簡単かもしれないな。」
「示現流?どっかで聞いたような・・・」
「ああ、戦国時代の薩摩、鹿児島県で起こった剣の流派だ、これには難しい技術や駆け引きは必要はない。みてるんだ。」
 
そう言ってシンジは木刀の柄が自分の顔の右側にくる様に振りかぶると呼吸を整え、凄まじいかけ声とともに目の前の打ち込みようの人形に気合いの乗った一撃を打ち込んだ。
その途端木刀は柄を残して砕け散ったが、人形の方は真っ二つに割れていた。
これでも力を押さえていたのだが、只の木刀ごときではシンジの力に耐えきれなかったのである
シンジは柄だけになった木刀をゴミ箱に捨てレイの所にやってきたがそこではレイが目を見開いて驚いていた。
 
「どうしたレイ?これなら何とかなりそうだろ?」
「ちょっと、お兄ちゃんどうやったの?木刀があんな風にバラバラになるなんて、それに人形の方も真っ二つになっちゃたよ・・・」
「ああ、ちょっと強度が持たなかったな。真剣だったら鋼鉄の甲冑でも切れるぞ。」
「う、うそ・・・・いくら何でも私には無理だよ。」
「そこまでしろとは言わないさ、だけど今の方法ならレイでも何とか出来るだろう。」
「うん、アレなら何とかなりそう。でも、もしかわされたり止められたらどうしよう。」
「レイ、ATフィールドは心の障壁だ。だからそれ以上の精神力の籠もった攻撃ならその障壁を突破出来る、だから後がないと思って一撃に全てを賭けるんだ。」
「でも・・・・」
「安心しろ、最悪初太刀を外してもその時はこっちで何とかして時間を稼ぐ、だからその間にもう一度仕掛けるんだ。だがそれでもチャンスは二回、多くても三回が限界だと思うそのつもりでいてくれ。」
「わかった・・・・」
 
シンジはレイの思い詰めた様子に少し不安を抱いていた。少しプレッシャーを掛けすぎたのではと少し後悔していた。
 
「レイ、納得がいくまで打ち込んでいると良い。まだ時間はあるさ。」
「うん・・・」
 
だがそこに意外な人物が入ってきた。なんとマナだった。
 
「あ、あの、整備の人に機体の事を聞いたら、こっちに行けばいいって教えてくれたんですけど・・・・・あの・・・・」
「ああ、そうかごめん。ずっとこっちに来てたからJA放り出したままになってたんだ。それで聞きたい事って何かな?」
 
そう言ってシンジがマナを見ると顔を赤らめてうつむいてしまった。
シンジはそのマナの様子を見て不思議がっていたがレイにはもちろん解っていた。
 
『お兄ちゃん・・・・天然だったのね。自覚して無い分たちが悪いわね。』
 
レイには学校での一件以来シンジが周りの女性に無頓着なのは、側に綾がいるせいだと思っていたがどうやら実際には自覚がないだけのようだ。
さすがにマナが気の毒になりレイは助け船を出す事にした。
 
「ねえ、どうしたの?」
「えっ、あ、あの実は・・・・」
「落ち着いてよ、何か聞きたい事があったんじゃないの?」
「あ、あの、JAの操縦なんですけどシートが三つもあるし、計器類や操縦桿がすっかり変わってしまって・・・・」
「ああ、その件かそれは・・・・」
 
シンジはマナにJAに自分と綾の二人も同乗することを知らせた。理由はジェネレータ・リニアレールキャノンの制御、それに初号機との情報リンクなど本来のJAの仕様に含まれていないモノが増えすぎたためそれを二人でカバーするという名目だったが、実際の所最悪の事態には二人がマナの身を守るのが目的であった。
もちろん最初に言った機体制御に関しても本来JAに積む予定ではなかったモノを搭載しているため万が一の時には設計者である二人の力が必要となるからでもあった。
だがマナはこれに難色を示した。JAは本来自分たちのような強化処置を受けた人間でなければ乗れるような代物ではない。ましてや自分と同年代の少年では失神するぐらいならまだいい方で、最悪怪我をする可能性もあった。
そしていくらシンジが大丈夫だと言ってもマナは納得しなかった。
仕方がないのでシンジはマナに勝負を申し込んだ。もちろん使用するのは今までレイと訓練していた木刀である。
渋々ながら承諾したマナだったがレイから聞かされた人形の惨状を見て気を引き締めていた。
 
『木刀であんなふうに人形を破壊するなんて一体どんな事をやったのかな?まあ、当たらなきゃ大丈夫だよね。』
 
そう思ってシンジと勝負をしてみて驚いた。力任せの攻撃を仕掛けてくるのかと思っていたらものすごいスピードで連続攻撃を仕掛けてきた。
既にレイにはその木刀の切っ先は霞んで見えていなかった。マナの目にもかろうじて追っていけるほどの凄まじいスピードだった、そしてマナはかろうじてそれらを捌けていたが一太刀受けるごとに自分の腕にダメージが蓄積していくのが解った、それほどに早く重い剣だった。
すると途端に連撃がやみ、シンジは少し距離を取った。
 
「どうかな?これでもまだ納得してもらえないかな。」
「まだまだ・・・・」
 
そう答えていてもマナの息は上がっていた。既に余力など無いのだった。
だがそんなマナの様子を見てシンジは少し寂しそうな、嬉しそうな表情を浮かべた後初めて構えを取った。
 
「霧島さん、この太刀を受け止められるかな?行くよっ」
 
そう言ってシンジは自分の得意とする剣技をつかった。
マナ達の目にはシンジの太刀筋が全く見えず、腕すらも霞んで無数の剣だけ見えた。
 
「天位剣技、飛燕剣」
 
マナがかろうじてその内の一太刀を防ごうとしたがその太刀に実体はなく、気が付くと自分の喉元にシンジの木刀が突きつけられてた。
 
「勝負ありだね、これで納得してくれた?」
 
そう聞いてみたシンジだがマナだけでなくレイも呆然としていて返事は帰ってこなかった。
仕方がないので暫く黙って見ていたがいつまで経っても元に戻らない。そうしている内に綾がやってきた。
 
「どうしました?もう初号機、JAともに機体の方は最終調整も終了して準備が出来ていますよ。」
「ああ、ちょっとね。飛燕剣を見せたら二人とも固まっちゃってね。」
「あらまあ、それは大変ですね。」
 
などと綾も綾でシンジ並みの天然ぶりを発揮してぼけていた。
そんな事をしている内に二人ともやっと我に返った。
 
「「い、今の何?」」
 
我に返った二人だが二人ともさっきのシンジの剣技の事を聞いてきた。
 
「今のは天位剣技の一つ飛燕剣、綾の兄さんマキシマム師匠に教えてもらった技の一つさ。」
「綾さんのお兄さんが!それじゃあ綾さんも使えるの?」
「はい、だいたいはマスターと同じ技が一通り使えます。いくつかは私では修得が無理だったモノがありますが大体は使えます。」
「う、うそ、あんな事出来る人間が他にもいるなんて・・・・・」
 
まだマナには信じられかった、自分たちのように強化処置を施されていない普通の人間にあっさりと負けただけでなく、目の前の少女も同じ事が出来ることに。
 
「まあ、僕たちの事はあんまり気にしない方がいいよ霧島さん。一般人の範疇に収まらないからね。」
「・・・・そうね、お兄ちゃん達が普通の人じゃない事はよく解ってるし。」
「レイそれはあんまりじゃないか。」
「良いのよ、ねえ霧島さん。ウチのお兄ちゃんみたいなのが普通な訳ないでしょ。」
「あ・・・そうね、まあ普通じゃないわね。そうだ、さっきから私の事名字で呼んでくれているけどマナで良いですよ。」
「じゃあ私はレイでいいよ、マナ」
「よろしくレイ、えーとお兄さんの方とそっちのレイに似た人なんだけど・・・・・」
「アレ、さっきの会議の時・・・・・・そう言えばお兄ちゃん達の事説明してなかったかな?」
「いや、その前に一応自己紹介をしたはずだけど、まあ良いか改めて自己紹介させてもらうよ。レイの兄の碇シンジです。こっちはパートナーの綾。」
「綾・バランシェといいます。よろしくお願いしますマナさん。」
「それじゃあシンジと綾で良いのかな?」
「ああ、いいよ。」「ええ、構いませんよ」
 
シンジは少し驚いていたが少し照れくさそうにそれを了承した。内心ではとても嬉しかった、形は違っているが以前と同じようにマナと接する事が出来そうだったからである。もちろんその時間が長くない事は自覚していたが。
それからは暫く4人で休息を楽しんでいた、もちろんレイの訓練やマナのレクチャーなどもしながら出撃までの時間を有意義に過ごしていた。
そしてついに出撃の時がやってきた。
 
 
初号機 エントリープラグ内
 
「レイ、どうだエネルギーソ−ドは。少し重たいかもしれないがその重さも武器の威力を高めるのに必要なんだ。」
「うん、これぐらいなら大丈夫。それよりお兄ちゃんそっちの方こそ大丈夫なの?」
「ああ、こっちで使徒に隙を作るからその間に仕留めてくれ、頼む。」
「まかせて、それよりもマナの事お願いね。」
「ああ、それじゃあ先に行くぞ。」
 
そう言ってシンジからの通信はとぎれた。
そしてレイの初号機も発進準備に入っていた。
 
 
 
 
 
「JA、発進します。」
 
JAは市街から離れた山間部に出撃した。
もちろん使徒の攻撃範囲外からまず様子を見るためである。
 
「それじゃあマナ、射程距離外だけどまず攻撃を仕掛けてみて。試射だから練習のつもりでうってみて。」
「了解、それじゃあいくよ。」
 
そしてシンジ達は攻撃を仕掛けた、ちなみにこの距離からではリニアレールキャノンも命中率が著しく落ちるし威力もかなり減衰してしまう。
案の定、使徒のATフィールドに阻まれてしまった。
 
「やっぱりね、あと500メートルは接近しないとATフィールドに止められるな。綾、そっちはどうかな?」
「そうですね、使徒に直撃させるのなら720メートルですが致命傷を与えるとなると更に300メートルは接近しないとだめですね。」
 
綾は試射データを元に射撃ポジションや行動予測を繰り返していた。
結果はあまりいい物ではなかったが、それでも事前の予測データよりもいい結果が出ていた。
綾はシミュレートされたデータの内の一つをマナのディスプレイに表示した。
 
「マナさん、この行動パターンでいけますか?もし、だめなようでしたら代わりを出しますので。」
「うーん、結構厳しいけど出来ない事はないよ。でも、この子壊しちゃうのか・・・・・・・」
「すみません、でもそうしないとマナさんの身の安全が確保出来ませんので。すみません。」
「良いのよ、解ってるから。でも少し寂しくなるんだ、つき合いが長かったからね。」
「すまない、でもこれはマナ、君のためでもあるんだよ。君の身体はもう・・・」
「お願い、それ以上言わないで。解ってるの、でも、簡単にあきらめきれないの、ごめんねわがまま言ってね。」
 
マナの表情はあまり変わらなかったが、二人はそれ以上この会話をする事をやめた。
シンジはやりきれない思いに駆られ、つい口を滑らせてしまった。
 
「マナ、身体の事なんだけど実は・・・・・・・・すまない、忘れてくれ。」
「?なに、どうかしたのはっきり言ってよ。」
「いや、何でもない。余計な心配事を増やすだけになりそうだから・・・・もし無事に戦闘が終わったら・・・・少し相談したい事がある。」
「うん、いいよ。楽しみにしとくから。これで負けられなくなったね。」
 
シンジの真剣な口調にも軽く答えているが内心ではとても楽しみにしていた。
だが、綾の方はシンジの発言に驚いていた。
 
『マスター、どうされたのですか?さっきの口振りからすると、マナさんにアレを・・・・』
『解ってる、自分が何を口走ったのか。でも、マナが生きる希望を捨てていないのだったら僕は・・・・たとえ恨まれても良い、もしもの時には僕自身の手で片を付ける。だから・・・・すまないな、迷惑ばかりかけて。』
『いいえ、私もご一緒します。だから一人で苦しまないでください、私は常にあなたの側にいますから。』
『ありがとう。よし、まずはこいつを片づけるとしよう』
 
「マナ、攻撃ポイントへの移動をお願い。綾はやつの動きに関してチェックしてくれ、動きがあった時には行動予定の変更を頼む。リニアレールキャノンはこっちで操作する。マナは綾からの指示に従って動いてくれ。」
「了解、よろしく綾。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「じゃあ、行こう!」
「「了解!」」
 
JAが疾走する。以前までの倍以上の速度で駆けだしていく、そして長銃身のキャノン砲を持っているとは思えないほどの速度で使徒までの距離を一気に詰めていく。
 
 
だがその姿を見ているのはNERVの人間達だけではなかった。
 
「なんやあれ!NERVはエヴァ以外にもあんなロボットも持っとるんかい?」
 
それはシャムシエル戦と同様に偵察に来ていたトウジ達だった。
今回はシンジ達がバタバタしていた関係でトウジ達のマークが手薄になり結果として野放しにしてしまった。
そんなトウジ達が偵察していた直ぐ近くにシンジ達は出撃してしまった。
もちろんシンジと綾は出撃した直後にトウジ達の存在には気が付いていたがマナには黙っておき、逆にトウジ達を使ってJAやマナの状況を戦自に報告させようとしていた。
そんな事もつゆ知らず、トウジ達は目の前の巨大なロボットのデータの収集にいそしんでいた。
 
「すごい!かなりの高出力エンジンを積んでるみたいだ。あの運動性もJA以上だ・・・・・・でも、」
「どうした、ケイタ?何かおかしな所でもあったのか?」
 
偵察をしていたムサシ達の中で異常に気が付いたのはケイタだけだった。
 
「うん、ムサシ。あのロボットの駆動音、どっかで聞いた事無い?」
「駆動音?・・・・・!まさか、マナのJA!」
「うん、マナの機体は軽量型だったからかなり音が小さかったし、それに僕たちの機体とはまったく違っていたから覚えてたんだ。」
「なんやと!アレにマナが乗っ取るちゅうんかい。あんなん全然形が違うやないか。ええ加減な事言うな!」
「まてよトウジ。機体に関する事ならケイタが俺たちの中で一番だ。それにもしかしたらマナの脱走にNERVが噛んでいたのかもしれないぞ。」
 
顔を真っ赤にして怒っていたトウジだったがムサシの言葉を聞いて少しずつ冷静になっていった。
トウジ達は脱走したマナを追ってきたが見事なまでに足取りがつかめなかった。それもJAの様な巨大なモノを持っているにもかかわらずだ。
だがそれもNERVが関わってくるとそう難しくは無くなる。第一エヴァのような巨大ロボットを持っているのなら隠す所に困らない。
 
「ケイタ、このロボットの記録ぜんぶ残しとけ。エヴァなんかよりも重要かもしれん。」
「わかったよムサシ、こっちを最優先にするよ。」
「どうやら始まるみたいだな、ケイタ頼むぞ。トウジ、何時までも考えてないでおまえも仕事しろよ。」
「ああ、すまんすまん。・・・・・・・・あいつ、この事を隠しとったんかい。今度会ったら・・・・・・・・」
 
 
 
シンジ達の乗るJAはエヴァ並みのスピードで使徒に接近していく。
もちろん使徒も黙ってみているわけでなく次々と砲撃を加えてくるが、綾の攻撃予測は全てその先手を打っていた為どれも当たらなかった。
だが接近すればするほど、その余裕が無くなってきた。こちらから攻撃する際のタイムラグを狙って攻撃してくるようになってきたからだった。
 
「ちっ、向こうもなれてきたな。」
「シンジ、だめだよ。攻撃する暇がないよ。」
「マナさん、50メートル後退してください攻撃は打つふりだけでいいです、マスター、電磁バリアラインシステム起動します。レールキャノンの出力調整をお願いします。」
「解った、ダメージコントロールは全部そっちに任せる。マナは回避と移動に専念して。・・・・来るっ!」
 
使徒から再び加粒子砲が放たれ今度はJAの左肩を直撃したが、直撃したはずの加粒子砲だが当たった瞬間装甲の上を流れるようにそれてしまった。
装甲表面には青白いスパークが生じ加粒子砲のなぞった後には黒く焼けこげた痕があった。
 
「装甲表面炭化、内部機構の損傷軽微、武装関係異常無し、バリアラインシステム正常動作を確認、マスター何とかなりそうですね。」
「ああ、だけどこれ以上は迂闊に手が出せないな。後はレイとのタイミングが勝負だ、後は任せるよマナ。」
「まかせて、此処まで来たら負けられないもん。」
 
だが、戦況は膠着していた。予想以上に使徒の攻撃が早く間合いが詰められないでいた。
もちろん作戦本来の目標からは無理にJAで攻撃をしなくても良いのだが、シンジ達としては出来る限りダメージを与えておきたかったのだ。
しかし、こちらの攻撃タイミングに会わせて攻撃をしかけてくる使徒に対して、手詰まりになっていた。
そんな現状を打破すべくマナは思い切った手に出た。
 
「綾!思い切って間合いを詰めるから、防御お願い!」
「無茶をするな!」
「確かに、その手しかありませんが少し危険すぎます。シールドへの直撃なら後1・2発は持ちますが、胴部や脚部なら耐えられて一回です。それにその衝撃で故障する可能性が極めて高いです。」
「それで十分!シンジ、この子に最後まで戦わせてあげて。コレが最後なんだから、お願い!」
「・・・・わかった。綾、バリアシステムへ出力を廻せ、リニアキャノンの方はうまくこっちで調整する。マナ、好きなようにするといいよ、だから悔いの無いようにね。」
「ありがとう、シンジ。・・・・・いくよっ」
 
マナはJAを一気に突っ込ませた。もちろんコレ幸いと使徒からの砲撃が来る、初弾はシールドで弾いたが二発目で左腕に不調が発生し、3発目はまるで狙ったかのような左肩への攻撃、この一撃でJAは左腕を失ってしまった。
だがマナはそんな事も気にせずさらに間合いを詰めていく。もちろん同じコックピット内ではシンジと綾がバランサーや歩行システムの書き換えに忙しかった。
JAは左腕を失っている上、右腕には長大なレールキャノンを持っている。そのままではまっすぐ歩くことすら不可能だ、だからシンジと綾はJAを動かしながらそのプログラムを書き換えていた。
その甲斐もあってマナはどんどんと間合いを詰めていった。そして遂に最高のポジションに到達した。
そしてマナは狙い澄ました一撃を放ったが、それは奇しくも相打ちとなった。マナの攻撃と同時に使徒が攻撃に入り同じタイミングでの攻撃となった。
使徒のコア近くを貫通したものの致命傷ではないようでまだ動いていたが、JAは逆に右膝に直撃を喰らってしまった。
しかも距離が近すぎたためか右膝の関節部を破壊され身動きのとれない状況になってしまった。
まさに絶体絶命の状態であったが、そこへレイの初号機が現れる。
初号機の出現ポイントはJAの現れた方向とは全く逆の位置、ちょうどJAと初号機で使徒を挟むような配置になった。
レイは一機に初号機を突っ込ませた。右手に持った長剣を振りかぶり凄まじいスピードで突進していった。
 
「てやぁぁぁー」
 
完全に隙をついていたはずだったレイの攻撃だったが踏み込みが一歩浅かった。そのため威力の不足した一撃は剣を使徒に食い込ませてしまった。
もちろん使徒もこの隙を逃すはずがなく、必死になって剣を引き抜こうとする初号機に加粒子砲を浴びせようとした。
だが・・・・
 
「やらせるもんかぁーー」
 
身動きのとれないJAが使徒に組み付いた、シンジと綾は破損した右膝の関節をロックさせ右手に持ったリニアキャノンを杖にして捨て身の体当たりを仕掛けた。
もちろんシンジと綾はここまでするつもりはなかったが、マナはとっさの思いつきを実行した。
レイはマナにとっては初めての普通の友達だった。戦自では今まで同年代の少年少女はいたがそれは能力を競う相手でしかなく、マナは成績がよかったため同年代でうち解け会った友達と呼べる者はトウジ達男子ばかりであった。
会ったばかりのレイだがマナにとってはかけがえのない友達だった。
 
そのレイを守るためにマナは文字通り捨て身の攻撃を仕掛けた、そしてそれは功を奏した。
JAの体当たりの衝撃で初号機の剣は抜け距離を取ることに成功した、だが今度はJAが窮地に立たされた。
JAは使徒に組み付いて離れようとしなかった、もうJAには回避するほどの力は残って居らずマナはとっさの判断でシンジと綾を脱出させ自分一人で使徒を押さえ込んでおこうとした。
 
「二人とも今のうちに逃げて!今ならまだ間に合うから早く!」
「悪いけどもう少し一緒にいさせて貰うよ。」
「はい、まだやることがありますので。」
「!何言ってるのよ!だめ、何時までも・・・・・」
「マナ!離れてもうそいつが撃ってくるよ!逃げて!」
「レイ、構わないからコイツをしとめろ。マナは僕たちが助けるから、次で決めろ!」
『綾、どうやら都合よく事が運びそうだな。』
『ええ、ちょうど良いですね、マギにはジャミングを仕掛けておきます。マスターはフィールドと虚数空間の展開を。』
『解った、システムをオートに切り替えて予定通りのラストを演じさせるんだ。こっちの方はいつでも良い、後は向こう次第だ。』
 
シンジと綾はこの機会を利用してJA大破を演じようとしていた。もちろん逃走経路もばっちりで、攻撃の瞬間マギにジャミングを仕掛け局部的に張ったATフィールドで防ぎつつ虚数空間「ディラックの海」に逃げ込む、そして直撃を受けたJAは大破、しかもコックピットも跡形もなく吹き飛ぶ様に細工しておいた。
遂に使徒がJAに向けて加粒子砲を放った。密着して身動きのとれないJAに回避するすべはない。しかもコックピットを直撃した。
その途端、機体の各部で散発的な爆発が起こり、胸部で大爆発が起こった。
その様子を見ていた発令所では悲鳴が上がっていた。職員もJAを大破させることに同意はしていたがこの惨状ではマナやシンジ達も無事であるとは思えなかった。
ユイとリツコは取り乱していたがゲンドウはいち早く保安部による救出部隊を出動させた。
だがゲンドウにもシンジ達が無事とは到底思えなかった、それほどの惨状であった。既にJAの上半身はわずかな骨格を残すのみとなっており、胸部中央には大きな穴があいていた。そこはコックピットのあった場所だった。
しかも脱出した形跡も確認できていなかったため発令所は大騒ぎになっていた。
だが、混乱していたのは発令所だけではなかった。
 
「う、うそ、嘘でしょ・・・・お兄ちゃん・・・・綾さん・・・・・・・・・・マナ・・・・・・・」
 
初号機内部でレイは呆然とJAの爆発を眺めていた。
シンジからの連絡の直後、使徒のはなった一撃によりシンジ達との交信は途絶えていた。しかも目の前の惨状を見る限りとても無事とは思えない。
初号機の動きは止まっていた。
発令所もその事に気が付き急いでレイに動くように指示を出したが、今のレイにはその言葉も届かなかった。
 
『いや!お兄ちゃんが、綾さんが!どうして、ねえ、マナ返事をしてよ!・・・・・ねえ・・・・お願い、』
 
痛手を被っているとはいえ使徒がそんな初号機を見逃すはずが無く、JAを大破させた加粒子砲の的を今度は初号機に絞った。
しかし未だに初号機に動きは無くただ立ちすくんでいた。発令所からの声も今のレイには届いていなかった。
だが、そんなレイの耳に聞こえるはずのない声が聞こえた。
それはレイの頭の中に直接響く声、音にならない声
 
『大丈夫、碇君は無事。だから今は戦いなさい。』
 
何処かで聞いた声、とても良く知っている、懐かしい声、だが思い出せない。
 
『あなたは誰!』
『今は目の前の敵に集中して。私も力を貸す・・・・・行きなさい!』
『・・・・・うん!解った!』
 
再び動き出した初号機だったが遅かった。既に使徒は次の砲撃を発射しようとしていた。
そして使徒から光が放たれた。発令所の人間は絶望的打と思った。
だが、初号機はその光を剣を振るって一刀両断した。その時レイのもつエネルギーソードは本来の輝きとは違う真紅の光をまとっていた。
発令所は一気にわきかえった。レイはとっさにエネルギーソードにATフィールドを纏わせ、その力で加粒子砲を切ったのだった。
もちろんたたき落としたわけでなく眼前で、真っ二つにしたわけだから二つに切られた光は初号機の両肩を焼いた。
だが今のレイにはそんな事は関係なかった。痛みも全く感じなかったし、右手に持つエネルギーソードの異常も、発令所の様子も全く気にならなかった。
ただ、目の前の使徒を倒すことだけを冷静に考えていた。
そしてレイは初号機を使徒に向けて突進させた。
再び使徒が加粒子砲を放った、だがそれよりもレイの渾身の一撃の方が早かった。
 
「はっ!」
 
振りかぶった剣を思いっきり振り下ろした。技術的には何の変哲もない袈裟切りだがスピード・パワーの十分に乗った最高の一撃だった。
そしてその一撃は発射されようとしていた加粒子砲ごと使徒を真っ二つに切り裂いた。
ここで一つ予想外の事態が発生した。レイが切った加粒子砲のエネルギーが暴発して初号機は加粒子砲のエネルギーをもろに浴びてしまった。
初号機は使徒を切り裂いた姿勢のまま停止してしまい。エントリープラグは高熱にさらされたパイロットを脱出させようとイジェクトされたがハッチが開かなかった。
しかも使徒のエネルギー暴発の際にレイは意識を失っており、LCLはかなりの高温になっていた。
 
 
シンジはその様子を見て驚いた、まさか以前の世界と同じ様な展開になろうとは思ってもいなかった。
実はシンジと綾は攻撃を受けたときの衝撃で気を失ったマナを連れてJAからディラックの海を渡って脱出してきた、もちろん戦闘が終了したのを確認してから通常空間へ戻ってきたのだ。
 
「今度も!仕方ない綾、マナの方を頼む。僕はレイの方へ行って来るから。」
 
そう言ってシンジは射出されたエントリープラグの元に向かったが、これまた以前の世界と同じようにハッチの開閉装置が射出のショックで故障してしまい手動で開けなければならなかった。
シンジは焼けたハッチの開閉装置を無造作に回していく、もちろんあたりには肉の焼けこげた匂いが広がる。
シンジの両手の平は焼けたハッチに張り付いてしまい手を離す際に皮は剥がれたしまった。だがその痛みを全く無視して中にいるはずのレイの姿を探した。
内部のLCLはかなりの温度になっていてハッチの開いた瞬間中から凄まじい蒸気と一緒に沸騰したLCLが流れ出した。
シンジはレイの身を案じた、これほどに高温になってしまうと肺の中に入っているLCLで肺が火傷を負ってしまう。
そうなると手遅れになってしまう。だがシンジはプラグ内で信じられないものを目にした。
 
「あ、綾波・・・・・」
 
立ちこめる蒸気の中に横たわるレイを護るように淡い光に包まれた綾波レイの姿がそこにあった。
だがその体は薄く透けていて、まるで幽霊のようだった。
 
『碇君、この子は無事よ安心して。』
 
シンジの頭の中に綾波の声が直接響く、シンジと綾の使う心話(テレパシー)と同じもののようだった。
 
『綾波どうしてここに?それにその姿は?』
『この子は私が護るわ、だから碇君もがんばってね。』
 
そう言うと綾波の姿はかき消すように消えていってしまった。
 
『綾波!何処へ行ったんだ!戻ってきてくれ!』
『私は何時もあなたの近くにいるの、私はあなたの一部、あの子の護り手、だから心配しないで、ずっと、ずっと一緒だから。』
 
声だけがシンジの心に響いていた。
だがシンジの呼びかけ無駄に終わり保安部がレイの救出にやってきた。
そしてそこで両手を火傷したシンジを見て驚いたが、すぐにレイと同様に応急処置を施していった。
そしてNERVへと戻っていく間もシンジの頭の中では綾波のことだけを考えていた。
 
同じ頃意識の戻らないマナを近くに寝かせると綾は自分の仕事をすることにした。
使徒の残骸に近寄っていくと真っ二つに両断されたコアに手を向けるとATフィールドを展開した。
そしてコアを包みこむとフィールドは徐々に収束していき最後には殆ど見えないぐらいに小さくなってしまった。
そして綾の手には小指の爪ほどの小さな紅い宝石があった。
 
そして作業の終了した綾は再びマナをかかえて本部に戻っていった。
後にはコアが崩壊した様に見える使徒の残骸だけが残されていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後書き
 
どうも遅くなってすいませんでした。
以前書いていたように仕事が忙しかった事と、この5話は4話と二つで一つになっているため両方を同時に完成させるように動いていた為かなり時間がかかってしまいました。
おまけにサイズも滅茶苦茶大きくなってしまいました。二つ合わせると今までで最長になったし・・・
 
さて今回は初めてレイが一人で使徒を退治しました、しかし今回は何故か居るはずのない彼女が登場しました。
実は彼女は本編では初登場ですが外伝の間章シリーズではもう既に登場していました。
まあ、こっちの方はまだ数人にしか配っていないため殆どの人が気が付いていないと思いますし、暫くはまた登場する予定がありません。
さて、次回ですが原作どおりJAのお話ですが、こっちでは完成版JAトライデントのお披露目になります。
まあ、原作と同じように暴走しますがそれを実行したのは意外な人物です。おまけにそのトライデントを破壊するのはエヴァではありません。
次ではNERV勢が思いっきり意地悪になっています。もちろんシンジと綾も例外なく悪戯や嫌がらせをしますのでお楽しみに。
 
上に書きましたように外伝ですが既に2話まで完成してそろそろ3話に着手しようと思っています。
しかし本編の方がかなり遅れていますのでしばらく間章の方を止めて本編の方に集中しようと思います。
 
 
それでは次回第6話「人の力で出来ること(仮称)」をお待ち下さい遅くても三月の中旬までには完成させようとがんばっていますのでそれまでしばらくお待ち下さい。