騎士と妖精と熾天使の幻像
 
第2章
第4話.忘れられない彼女(ひと)、再び
 
 
EVAの一撃がシャムシエルのコアを貫き消滅させた。
そしてゆっくりと崩れ落ちていくシャムシエル。
 
その光景を漆黒の空間の中の人間達は忌々しげに見ていた。
 
「なんだ!この初号機の性能は!これでは予定と違いすぎるではないか。」
「そうだ!このままでは予言の成就に問題が出てくる。なんとか手を打たねば。」
「本部の碇は何を考えている!ヤツはなぜ我々のシナリオを無視しているんだ。」
「仕方があるまい、反抗的なヤツにこれ以上情報を与える必要がないと言ってシナリオは教えていないのだ。だが、なぜヤツはここまで我々のシナリオに反して動けるのだ?」
「そんな事はどうでもいい!問題はヤツをどうするかだ。早く処分しないと厄介だ。」
「だが代わりがいないぞ。ヤツほどの能力を持った人間などそうはいない。それにそんな事をしたら本部内に火種を作る事になる、現に初号機のパイロットはヤツの娘だろう。」
「我々にはドイツの弐号機がある。いざとなればアメリカの参号機・四号機もある。」
「バカなことを言うな!アメリカの二機はヤツの息子の関わった機体だぞ。そんな物が使えるか!それにドイツの弐号機はあの惣流博士の作った機体だぞ、安心して使えるわけが無かろう。」
「だったら、どうしろというのだ・・・・・・」
 
 
口々に不満をぶつけてくるが具体的な意見は一つもない。
 
ここはゼーレの人類補完委員会
だが委員達の会議の内容はとても委員会で話されるような内容ではなかった。
なぜならこの委員達は自分から積極的に会議を進めようとはしていないからだった。
委員のメンバーの殆どが以前行われたキール議長の粛正により欠員の穴埋めとして採用された者達であり、それ以前からのメンバーは全体の3割にも満たなかった。
そして新規のメンバーはキールに追従する事は出来ても自分から行動を起こそうとはしなかった。古参の者達は逆にキールに刃向かうことが恐ろしく何も言えないでいた。
そして会議は何時も同じ様な展開になっていた。
 
「わかった、では儂の方から碇と話をしておこう。」
 
キールが話をまとめないと何時まで経っても会議は終わらない。そして結局最後はキールが纏めなくてはならなくなってしまう。
これは、ゲンドウが招かれていない時の恒例となっていた。
ゲンドウが来たときには委員達がゲンドウに不満をぶつけ、そして逆にやり返されて全員が黙り込む、最後にはキールがゲンドウと直接話を付けて解決といったパターンが確立していた。
キールにしてもゲンドウが来たときの方がまだ会議らしい物になっているのだが、いない時のこの手の会議にはいい加減うんざりしていた。
 
『全く、ここまで使えぬヤツらばかりとは。なぜ、このような者を委員のメンバーにしなければならんのだ。』
キールも内心では不満が溜まっていた、委員のメンバーの選定にはキールの思惑以上に組織や企業のしがらみが関わっており、結局キールにしても折れざるを得ず組織や企業のトップをメンバーに加えることになった。
だがそのトップ達が以外にも使えない人間ばかりだったのだ。もちろんこれは企業などでは通用してもこの人類補完委員会では通用しないと言うことである
 
『これならまだ、性格に問題のあるキョウコや反抗的な本部の碇の方がまだましではないか?』等と最近悩むようになってきていた。
 
「シナリオに関しても未だに修正範囲内で大した問題はない。それにこの時期にEVAが使徒に敗れるようなことがあればそれこそ大問題だ。気にすることはない全てはシナリオの内に抑えられる。」
 
「さすがは議長」「おお、たしかに議長の仰る通り。」
 
委員達は次々にキールを褒め称えるがキール自身は内心で怒っていた。
 
『貴様らはこんな事にも気がつかんのか!まったく近い内にもう一度メンバーの入れ替えを考えなくてはならんな。これでは計画の遂行が危ぶまれる。』
 
「では本部の方は儂が直接話を付けておこう。それでは以上だ。」
 
そういってキールはさっさと帰ってしまった。
キールが居なくなるとそれに続いて古参のメンバー達もいなくなり、取り残された新しいメンバーも一人ずつ姿を消していった。
 
 
人類補完委員会。どうやらかなりの人材不足のようだった。
 
 
 
同時刻、日本国内某所
 
薄暗い廃工場の中で少女と青年がいた。
 
「すみません、雄士さんご迷惑をおかけして。」
「気にする事は無いよ、元をただせば私たちのせいなんだから。せめて他の子達も何とか出来れば良かったんだがね。」
「そんな!私一人でもかなり無理をしてたんでしょ、これ以上危ない事はしないでください。雄士さんに何かあったら美佳さんをどうするつもりなんですか!」
 
少女は青年に感謝していた。追われる身の自分を匿ってくれているだけでなく、自分以外の友人達の事まで心配してくれているのである。そればかりかその事で自分を責めていたのだ。
少女は申し訳がなかった、自分たちのせいで目の前の青年はずっと自責の念に駆られているのだせめて何か恩返しをしたかったが今の自分には何も出来そうになかった、そればかりか自分を匿っているために青年に迷惑をかけ続けていた。
 
「雄士さん、そろそろ私ここを出ていこうと思うんです。」
「!!何を言ってるんだ、そんな事をしたらすぐに見つかってしまう。見つかったら只ではすまないんだよ。」
「でも!このままじゃあ雄士さんの所にいるわけにも行かないし・・・・」
「そんな事は気にしなくていいんだよ。君が居てくれると美佳も喜ぶしね・・・・そうだ!良い所がある、あの人達なら君を匿ってくれかもしれない。」
「本当ですか!でも、その人達にもご迷惑をかけてしまうんじゃないですか?」
「大丈夫、何とかしてみせるさ。それにあの人達も父さん達とは対立してるからね大丈夫だよ。」
 
青年は自分の恩師達に相談を持ちかけてみようと思っていた。恩師達の元ならこの少女を匿ってくれるかもしれない。
だが向こうも立場がある、ひょっとすると少女の身元に関して不審を抱かれるかもしれない。だがそうしないと目の前の少女はいずれ奴らに見つかってしまう、それだけはなんとしても阻止したかった。
 
そして青年は少女を連れてある場所へ向かう事を決めていた。
 
 
 
NERV本部
 
「母さん、リツコ姉さん、どう?作業ははかどってる?」 
「失礼します。」
 
シンジと綾が技術本部町室にやってきていた。
使徒シャムシエルを撃退してから既に二日が経っていた。サキエルと同様にその死体をNERV本部は徹底的に調査していた。
しかし、ユイ・リツコ・シンジ・綾が参加していなかったため調査は遅々として進んでいなかった。
ユイとリツコはシャムシエル戦で損傷した初号機の右腕の修復だけでなく、レイの治療にもかかっていた。
戦闘中は綾がレイに痛み止めを使っていたが、戦闘終了後にレイが痛み訴えたので検査をしてみるとなんと右手の骨にひびが入っていた。
ユイはその治療にかかりっきりになり、翌日からリツコと協力してエヴァの整備をしていたが作業は捗っていなかった。
その為、使徒の調査は技術部でも新人ばかりがやっていた、その為作業はかなり遅れていた。
もちろんシンジと綾も遊んでいたわけではなく、シャムシエル戦で得たデータを元にルーターベイル以外の参号機用武装を初号機で使用出来るように改良案の作成を急いでいた。
この改良案の内容自体は既に完成していたが、その内容を全て実行しているとエヴァを使用出来ないと言う状況になるためシンジ達は改良案を全部で三つに分けて順次作業を進めていく方向でその改良要項書を作成していた。
二人ともユイ達と同じようにこの三日間本部内で寝泊まりしていた。そしてレイも病院に入院していたうえに、ゲンドウも事後処理に忙殺されており碇家は誰一人として家に戻っていなかった。
 
シンジと綾は改良要項書が完成したので真っ先に上司である母のユイに持ってきたのである。
もちろんリツコにも見せるつもりでこの場に直接持ってきた、だが部長室では二人ともそれぞれ休憩用のソファーで眠り込んでいた。
二人ともとても疲れているようだった、するとそこへゲンドウもやって来た。
 
「シンジ、綾、二人とも来ていたのか、どうしたユイ達はいないのか?」
 
部屋に入ってきたゲンドウが不思議そうに問いかけてきていた。
 
「父さん静かにして、二人とも疲れて寝てるみたいなんだ。」
 
シンジはそう言ってゲンドウをつれて部屋から出ていった。綾は一人で部屋に残り眠っている二人に毛布を掛けてから部屋から出てきた。
シンジとゲンドウは綾が出てくるのを待ってから三人でレストルームへ向かった。
シンジと綾はゲンドウの奢りで食事を取っていた。
 
「そう言えば父さん、何かあったの?」
 
シンジはゲンドウがわざわざ出向いてまでユイに会いに来た理由が気になっていた。
 
「ああ、たいした用事ではないんだがな、実はユイの教え子が連絡をよこしてきてどうしてもユイや私に会いたいと言って来たのだ。それで相談ついでに様子を見に来ただけだ。」
「???母さんの教え子?母さん教師なんかしてたっけ?」
「ああ、実際に教師をしていたのではなくて直接仕事を教えていた事のある若者のことだ。以前訳があって暫くNERVで預かって仕事を手伝ってもらっていた若者達の一人で時田雄士といってな・・・・」
「時田!」
 
その名前を聞いてシンジの顔色が変わった。
シンジの様子を不審に思いゲンドウが聞いてみる事にした。
 
「シンジ、時田君を知っているのか?」
「時田って、日重の時田博士の関係者なの?どうしてそんな人がNERVに来ていたの?」
 
シンジは既に時田シロウ博士が日重離反者とともに戦自内部でそれなりの地位を確保している事を知っていた。
そればかりではなく時田博士達がJAのデータを元に戦自の資金でJAの発展型であるトライデントと呼ばれるロボットの開発に着手している事もつかんでいた。
そんな時田博士の関係者が何故NERVに居たかが解らなかった。
 
「ああ、彼は日重の時田博士の一人息子だよ。大丈夫だ、彼は父親とは違って我々の協力者だ。」
「どういうこと?」
「ああ、以前にある人の紹介で幾つかの企業に協力を求めた際に日重は分裂してしまったんだ。その時分裂してまで我々に賛同してくれた時の代表の一人なんだよ彼は。」
「そう?ホントに大丈夫なの?」
「ああ、私だけでなくユイや冬月も彼を信用している。それに彼らを紹介してくれた方達も目を光らせているしな。そうだ!シンジおまえ達も一度会わせておいた方がいいな。」
「??誰なのその人?めずらしいね父さんが他の人の事をそんな風に褒めるなんて。」
 
シンジは驚いていた。ユイ以外には殆ど心を許さない父がここまで信用している人がいったい誰なのかとても興味があった。
 
「そうか?まあ良い、私とユイもとてもお世話になっている方だ。楽しみにしておくと良い近い内に何とかあえるように都合を付けておこう。・・・・・そう言えばおまえ達もユイに何か用があったんじゃないのか?」
「うん、この間のデータを元に初号機の改良案が出来たんで、早速母さん達に目を通してもらおうと思ってね。何だったら父さんも見る?」
「ああ、見せてもらおう。・・・・・・・・・・・・・シンジ、ここまでやる必要があるのか?」
 
シンジから渡された書類に目を通して行くにつれてゲンドウの表情が厳しくなっていった。
その改良案の中身はとても大がかりなもので最低でも半年近くかかるものであったし、何よりその内容も凄まじいものだった。
詳しい内容は専門用語が多くゲンドウには理解できないことが多かったが、大まかな概要だけに関してもとてもそこまで必要があるとは思えなかった。
シンジも真剣な顔になり黙ってうなずいた。
 
「そうか・・・解った、私の方でも準備を進めておこう。後でユイに見せて起きなさい。」
「うん。」
 
そうして食後のお茶を楽しんでいる三人の所にユイとリツコがやってきた。
そして二人も同じ席に着き簡単な食事を取っていた。
 
「おはよう母さん、リツコ姉さん。」「おはよう、二人とも」「おはようございます」
 
三人がそれぞれの挨拶をしてきた。その挨拶を聞いて二人はゲンドウ達が眠っている自分たちに気を利かしてくれていた事に気が付いた。
 
「おはようございます」
「おはよう、ところで私とリツコちゃんに毛布を掛けてくれたの誰?」
「あの、わたしです。」
「ありがとう、綾ちゃん。」
 
そうして二人の食事が終わると全員で場所を変え今度は司令室で相談を始めた。
何故ここに来たかというと、シンジの持ってきた改良案だけでなくユイに連絡をよこしてきた時田雄士のことに関しても詳しい内容はあまり他の人間に聞かれたくなかったからである。
 
まずユイとリツコがシンジ達の持ってきた改良案に目を通した。そしてその内容に関して詳しく質問していった。
 
「シンジ君、ここまでやらないとだめかしら?素体強度の向上は解るけど、追加ジェネレータの搭載やエネルギーバイパスの追加まで必要かしら?」
「うん、今の初号機じゃ参号機用の武装を使おうとすると明らかにバッテリーじゃ保たないし、かといって今の所使えるのはルーターベイルぐらいしか無いんだ。」
「シンジ、ジェネレータの候補を見てみたんだけど本当にコレを使うつもりなの?」
「どうしたユイ、何か問題でもあるのか?」
「ええ、あなた、実はシンジがあげてる候補はあのS2機関なのよ。」
 
さすがにこの一言にはゲンドウだけでなくリツコの顔色まで変わった。
S2機関、それは故葛城博士の提唱した無限機関であるがそれはあくまで理論だけであった。なぜなら葛城博士はその実験に失敗し死亡している。
しかもその時に暴走したモノが何なのか詳しく知る者にとって見ればS2機関は忌まわしいモノ以外の何物でもなかった。
もちろんシンジもその詳しい内容を知っている、それどころか世界中の誰よりもS2機関に詳しかったが誰にもその事を知らせようとはしなかった。
そんな中にも例外が只一人だけいた、もちろん綾である。
その二人の打ち出したプランは確かに安全なモノだったがゲンドウ達は心配だった。
だがシンジの次の一言はそんな心配を粉々に吹っ飛ばした。
 
「大丈夫だよ、参号機はすでに小型S2機関を2機搭載して起動成功している四号機にも同じ物を搭載する予定だよ。」
「何だって!」「「何ですって!!」」
 
そんな三人に提示された参号機と四号機の詳細仕様書に目を通して行く内にその中に信じられない記述を目にした。
 
参号機・四号機 詳細仕様書(極秘)
主機関:小型S2機関×2(ツイスターS2ジェネレーションシステム)
 
三人は目を白黒させながらもシンジと綾に視線を集めた。
なぜならそこにある仕様書は本部や各支部に出回っている物とは全く違っていた、だがこの仕様書を見ていればNERVだけではなくゼーレや委員会が黙っているはずがなかっただろう。
シンジ達の判断が正しい事はよく解っていたが納得出来ないでいた。
 
「シンジ、何故一言言ってくれなかった。確かにコレは他には一言も知られるわけにいかんが、せめて私たちには教えてほしかったぞ。」
「そうよシンジ、コレを開発していたのなら解っているとは思うけどとても危険な物なのよ。」
 
ゲンドウとユイは口々にシンジを責めたり文句を言っていたがリツコだけはまだ衝撃から立ち直っていなかった。
やがて一通りゲンドウとユイの小言が終わる頃にはリツコも立ち直っていた。
 
「マスター、やっぱり黙っておかない方が良かったですね。」
「綾ちゃん、もちろんあなたも知っていたのね。」
「はい、でもマスターに口止めされてましたから。申し訳ありません。」
「シンジ、後で少し聞きたい事があるから私の部屋に来なさい。」
「う、うん、解ったよ母さん。」
「私にも聞かせてもらいたいわね。」
「は、はい・・・・」
 
シンジは珍しく気弱に返事をしていた。
さすがに今回の事はユイの機嫌を完全に損ねていた。もちろんユイだけでなくリツコまでも怒らせていた。
ゲンドウだけはシンジが無事であり、その判断が間違ってはいない事からあまり怒ってはいなかった。
むしろ珍しく本気で怒っているユイの機嫌が早く直らないかと心配していた。
 
ピーピーピー
 
そんな中ゲンドウの机の電話に呼び出しがかかり、その音に全員が静かになった。
 
「わたしだ、」
「碇、部屋に戻っていたのか?ユイ君達までいないのでどこに行ったのか心配していたぞ。」
「ユイ達はこの部屋いる。それにシンジ達もいるぞ。」
「!なんだ、みんなそこにいるのか。実はいくつか連絡が入っているんだがちょうど良かった。」
「そうか?まあいい、どこからだ?」
「ああ、まず・・・・・」
 
電話の相手は冬月だった。
そして冬月から告げられた相手の名前を聞くとさすがに少し考え込む事になった。
まず最初の相手は先ほどシンジと話していた時田雄士と西田啓だった。それも二人が一緒に面会を求めてきている事だった。
またそれ以外にもシンジ宛にアメリカのモラード・マギー両所長からの物があり、それらは只の報告書だったが問題は最後の相手だった。
なんとそれは委員会の議長キール・ローレンツからだった。それもゲンドウに二人だけの会談を求めてきているとの事だった。
さすがに、コレを聞いていたユイやシンジ達の顔色も変わっていた、だがゲンドウはこれにも冷静に応対していた。
 
「解った、それで議長は何時を指定してきた?」
「ああ、今夜いつもの方法だそうだ。」
「解った、それでは西田さんや時田君の方は明日以降になるな、返事は私の方からしておこう。」
「ああ、その方がいいだろう。そう言えばシンジ君には報告書以外にも荷物が届いていたぞ。それもまたかなり大きな物だぞ、またエヴァの部品かね?」
「シンジ、アメリカからおまえに荷物が届いているらしいが心当たりはあるか?」
「あ、うん、前に頼んでいたはずの物だよ、ホントはルーターベイルと一緒に送ってもらう予定だったんだけど直前になって手直しが入って発送が遅れたんだ。」
「そうか、中身は何なのだ?」
「ああ、初号機用の補助ジェネレータと大型ベイルとエネルギーソードを送ってもらってたんだ。」
「なんだそれは?まあいい、冬月どうやらシンジに心当たりがあるそうだ後で確認に行かせる。」
「それでは、ケイジの方に運び込んでおくぞ。」
「たのむ、」
 
そうして冬月との通話は終わった。
そしてゲンドウはユイに時田雄士から連絡が入ってきていた事を伝えた。
もちろん先ほどの冬月の知らせ以前にも連絡が入っていた事を告げた。
 
「時田君から?何かしらね。リツコちゃん何か心当たりある?」
「さあ、一昨年の結婚式以来特に連絡を取っていませんから、でも少しおかしいですね。」
「リツコ君もそう思ったか、実は私も少し気になっていた。」
「?どういう事なのあなた。」「父さん、何かおかしな事があるの」
 
ゲンドウとリツコは今回の知らせに少し気になっている事があった。
 
「ああ、最初はそれほど気になっていなかったのだがな、さっきの連絡でそれを確信したよ。」
「あなた、なにがおかしいの?」
「何故、時田君がユイにではなく私に連絡してきたんだ?それに、さっきの連絡では西田さんにも連絡を取っているようだ。つまり少なからず日重か戦自がらみだろうと私は睨んでいる。そしてかなりやっかいな事だろうと言う事もな。」
「父さん、西田さんって誰?かなり親しい人みたいだけど。戦自の関係者?」
 
シンジは少し不審に思っていた。ゲンドウの台詞からはその西田という人は少なからず戦自に関係しているようだった。
ゲンドウやユイ、リツコが戦自を嫌っている事を知っているだけにどういった関係者か計りかねていた。
 
「ああ、私と母さんがとてもお世話になっている人でな、さっき言っていたおまえに会わせたいというのはその人の事だ。ちょうど良い機会だおまえも一緒に来ると良い、心配するな西田さんは戦自の関係者ではなく自衛隊の関係者だ。」
「自衛隊?戦自じゃなかったの、それなら良いけど。でもいいの?時田さんって言う人も一緒に来るみたいだよ。」
「かまわんさ、彼の方もおまえ達にあえるのなら特に反対はせん。綾君も良ければ出席してくれんかね」
「???私は構いませんけど。よろしいんですか?私は全くの部外者ですが。」
「とうさん、僕だけじゃなくて綾も?どうして?」
「詳しくはその時に話す、まあ楽しみにしておけ。」
「わかった。」
 
その後、全員が解散していったがもちろんシンジはユイとリツコに連れて行かれていった。
綾は仕方なくそんなシンジに付いていった。
ゲンドウは一人その場に残って西田やキールに返事を返していた。
 
そしてシンジはその後2時間近く二人に絞られていた。
だがシンジにしてみればそれはそれなりに有意義な時間だった。なぜならシンジはこの時代に生まれ変わって以来両親に怒られたという記憶がなかった、だからここまで叱られてもシンジはそれなりに嬉しかった。
 
ただ、シンジは気が付いていない内に別の所の機嫌を損ねていた。
それはレイだった。実は毎日少しずつではあるがお見舞いに行っていたのだが今日に限って忙しく、おまけにユイ達に絞られていたため予定の時間をつぶしてしまい結局お見舞いにはいけなかった。
翌日朝一番でレイに会いに行ったがその機嫌はかなり悪かった。
 
「お・に・い・ちゃん。昨日はどうしたの?約束したんじゃないのかなぁ〜〜〜〜」
「ご、ごめん、昨日はちょっと・・・・・・」
 
 
 
 
夜、司令室にて
 
 
「ひさしぶりだな碇。」
「お久しぶりです、議長。お元気そうで何よりです。」
 
ゲンドウは司令室の一室からキールとの通信を行っていた。
もちろん委員会の席である。
だが今は他の委員達はおらずキールとゲンドウだけの二人だけであった。
 
「碇、委員会ではおまえを追求する物が増えてきておる。少しは大人しくできんのか。」
「議長、そう言われても我々は自分たちに与えられた使命を果たしているだけですが、それが何か気に入りませんか?」
「とぼけるな、初号機の戦果だがいささかやりすぎているぞ。それにおまえの息子シンジだったな、それに関しても委員どもはかなり神経質になっておる。アメリカの参号機四号機は既に本部の息がかかっていると騒いでいるぞ。」
「仕方がありませんな、シンジが手を貸していなければ参号機は予定に間に合いませんでしたし、何より予算難に四号機は建造自体が危なかったはずです、問題はないと思いますが。」
 
キールの追求をゲンドウはかわしていく、もちろんキールもそう言った反応は予想していた。ゲンドウの言っている事は全て正論であり、全く文句の付けようがなかった。
もちろんシンジの助力とは技術だけでなく資金援助が大きかった。その資金難と言う事も元をただせば委員会が本部に対しての嫌がらせのために本部よりだったアメリカ支部の予算を出しいぶった事に原因があった。
それを独自で解決していたシンジに対して文句を付ける事自体、委員会の言っている事は本末転倒であった。
 
「そのとおりだ、だがもう少し大人しくやれんものか。委員共を黙らせるのもいい加減にしたいのでな。」
「では予算の方を一考していただけませんか。先日からまた予算配分が偏っているように思われるのですが、特にドイツですがいったい何をやっているのですか?本部以上の予算が通るなど普通では考えられない事ですが。」
「解っておる、本部の予算は馬鹿共の焦りから出た事だ気にするな、予算の方は儂が近い内に何とかしておこう。」
「ありがとうございます。」
 
ゲンドウは慇懃に頭を下げた。もちろん感謝などしているわけでなく、内心では当たり前の事をしてもらうのに何故いちいち頭を下げなければならないのか不満に思っていた。
 
「それに議長、ドイツの弐号機の移送に合わせてアメリカの参号機を取り寄せようと思っているのいるのですが、いかがでしょうか。」
「なんだと!参号機を本部に移すというのか、まだ早すぎる。」
「しかし、本部にエヴァは何機あっても困る事はありません。それにドイツからの返事ですが弐号機と一緒にドイツ支部のスタッフまで入ってくるとの事ですがこういった事をされては本部としても彼らを信用する気にはなれませんので。」
「何故だ!常々本部は人手不足を訴えていたではないか。何が不服だ。」
「確かに人手を送ってくれる事は嬉しいのですが、何故技術者ばかりなのですか?我々は保安部や一般職員も募集していたはずですが。」
「仕方があるまい弐号機はあの娘が作った機体だ、勝手を良く知るドイツのスタッフでもなければ後で怒鳴り込んでくるぞ。」
「確かに、彼女のわがままには議長も御苦労なさっているようですし。」
「解っているのなら少しはその心配を減らせ、碇。委員共だけでも頭が痛いのにおまえやキョウコまで儂の悩ませるような事はするな。」
「解りました、善処致します。」
 
これまたキールの苦労をあざ笑うかのように慇懃な態度に出る。
最近ではキールもこういったゲンドウの行動を無視していた。悩めば悩むほどゲンドウは図に乗るようになってきており。むしろ放っておいた方がまだ大人しかったからだ。
 
「碇よ、暫くは大人しくしていろ。その間にこちらの方は儂が何とかしておく。」
「解りました。よろしくお願いします。」
「では、くれぐれも言っておくが問題を起こすな、以上だ。」
 
そういってキールは一方的に通信を切ってしまった。その途端先程まで神妙だったゲンドウの表情が様子が変わる。
 
「全く、問題を起こしているのがどっちか解っていないようだなあのご老体は、それにしてもあの様子だとキール議長も委員会ではずいぶんと頭が痛いようだな。まあ良い、我々の邪魔さえしなければヤツらがどうなろうと知ったことではない、だがあの時のようなことになると不味いな、なにか手を打っておこうか。」
 
そういってゲンドウは電話を取り何処かに連絡しているようだった。
 
「ああ、私だ。久しぶりだな・・・・・・・・・・ああ、貴様も相変わらずの様だな。・・・・・・そうだ、仕事を頼みたい・・・・・いや、バイトの方でかまわん、近い内にまた委員会で騒ぎが起きそうなのだ、もし何らかの動きがあったときに連絡をいれて欲しい。・・・・・・ああそうだ、長期にはならんはずだし報酬も何時も通りだ、・・・・・・・なに?・・・・・そうかわかった、ではその時に纏めて渡すとしよう。・・・・・・・・・ふむ、良いだろうそれではこっちでも何らかのポストを用意しておこう。・・・・・・・ん?サービス情報だと?何を企んでいる、・・・・・・・・そうか、それで彼女はこんな事を言いだしたのか、スマンな礼を言おう。・・・・・・何、お互い様だ。それでは連絡の方を頼む。」
 
電話を終えたゲンドウが一息ついているとそこへ冬月がシンジを連れてやってきた。
 
「どうだ碇、議長との会談は?」
「全く話しにならん、ヤツらときたら今度はアメリカの参号機・四号機にまで文句を付けてきたぞ、おまけに予算の件もやはりバカ共の独断専行らしい。あいつらの頭の中はどうなっているか見てみたい物だな。」
「ならキョウコ君の所へでも連れて行ってみると良いかもしれんな。」
「・・・・・冬月、それはそれは笑えんぞ。」
 
冬月の意外な冗談にゲンドウも顔を引きつらせていた。
NERVの誇る狂科学者・魔女と渾名される惣流キョウコ博士、彼女の実験室に連れて行かれて無事に帰ってきた者はいないと言われている。
もちろん冬月も冗談のつもりで言ったのだが、ゲンドウは一瞬だけ本気でそれを連想してしまった。
 
「大丈夫?父さん。大分疲れているみたいだけど。」
 
シンジはそんなゲンドウを心配していた。冬月の笑えない冗談に疲れ果てていたがそれ以前にもかなり疲れているようだった。
それもそのはず、ここ数日ゲンドウもユイ達と比較しても劣らないほど働いていた。もちろん司令としての仕事である。
中には司令としての仕事以外の物もあったが殆どはNERVやEVAに関する事ばかりだった。
ゲンドウは個人的なコネなどを使ってまで資金を調達していた。中にはユイの実家の碇家などからの借金などもあったし、それ以外にも色々と表に出せない金なども調達していた。
委員会から資金提供を受けている建前そういった資金のことは表面上は全く出ていないが、ゲンドウは冬月と相談して委員会と手を切った後の本部の運営資金としてこれらの資金を保管していた。
これらのことはゲンドウもユイ達に余り知らせたくなかったため、知っているのは本部内でもゲンドウと冬月の二人だけだった
そういった裏工作などここ数日ゲンドウは文字通り不眠不休で働いていた。それも冬月以上に。
 
「ああ、今一段落付いた所だ、明日は午前中は休ませて貰うつもりだ。」
「かまわんよ、たしかにここ数日のお前は忙しかったからな、明日はゆっくりと休んでくれ。」
「ああ、しかし昼からは西田さん達も来るからな、そのころにはここに出てくる。シンジすまないがお前もその時間あけて置いてくれ。」
「解ったよ、じゃあ父さんももう休んでね。今日は僕はこっちで母さんはレイの所に泊まるから。」
「ああ、それじゃあシンジももう休みなさい。」
「うん、父さんも早く休んでね。それじゃあ冬月さん失礼します。」
「ああ、おやすみ」
 
そういってシンジは部屋から出ていった。
そんなシンジを見て冬月がぽつりとつぶやいた。
 
「あの子を見ていると、とても子供とは思えんな。むしろ西田さんに近い雰囲気を感じるのは気のせいかな?」
「いや、オレも時々シンジの表情を見て思うことがある。とても子供の表情じゃ無い、むしろ西田さんに近い物がある。そうだな、ある種の決意を秘めた顔だとな。」
「そうか碇、お前もそう思ったか。ユイ君はただ大人びているとしか感じていないようだったが気が付いていたか。」
「当たり前だ、これでもあの子の父親だぞ。それにシンジだけじゃない綾君も時々シンジと同じ様な表情(かお)をする。」
「そうか、どうやらあの子達はまだ我々にも言えない何かを秘めているようだな。」
「ああ、いつか話してくれると良いのだがな。さてと冬月オレはこれで上がるとする、後は頼む。」
「ああ、ゆっくりと休んでくれ。」
 
そういってゲンドウも司令室を出ていった。
冬月はゲンドウの机にあった書類を持って自分の部屋へと引き上げていった。
 
 
そうしてNERVの夜は更けていった。
 
 
 
翌日の碇一家
今日は碇家は全員が午前中休暇を楽しんでいるはずだったが・・・
 
シンジは綾を連れて朝一番でレイの所にお見舞いに行った。
しかし昨日来なかったことで機嫌を損ねていた、ためその機嫌を取るために結局午前中一杯かかってしまった。
 
ユイはこの三日間の洗濯物をかたづけて家から全員の着替えなどを持ってきたり等、家事に追われている内に午前中は過ぎていってしまった。
 
ゲンドウはここ数日の激務がたたりずっと眠っていた。おかげで起きたときにはもう正午であった。
 
レイは入院中であり退屈をもてあましていたが、昨日シンジが来なかったことに腹を立ててずっと拗ねていた。
 
綾だけは半日だけの休日を使ってお菓子を作っていた。
もちろんシンジのためでもあるが、実際にはレイのご機嫌取りに使ってしまった。
 
 
ある意味ではとても有意義に全員が過ごしていた。
そしてレイを除く碇家の全員が司令室に集まっていると冬月から西田と時田博士の来訪が告げられた。
だが司令室に入って来たのは二人だけではなかった。
時田は二十歳過ぎの温厚そうな顔をした若者でその後ろには一人の少女を連れてきていた。
年はシンジと同じくらいで動きやすそうな服装をした活発そうな少女であった。
ゲンドウとユイは不審に思っていたがシンジの反応は違っていた。
表情はいつもと変わらなかったが、内心では驚愕していた。
 
『なっ、なんで、彼女がここに?』
 
なぜならその少女の顔をよく知っていたからである。
そうしている内にゲンドウとユイからの方からシンジ達の紹介を始めていた。
 
「西田さん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
「西田さん、どうもご無沙汰しております。時田君も元気そうで何よりだわ。」
「いえいえ、こちらこそ。今日は無理を言ってお時間を作っていただき申し訳ありませんね。」
「ユイ先生、お久しぶりです。申し訳ありません急に押し掛けてしまって。」
「かまわんよ時田君。そうだ紹介しておきましょう、これが息子のシンジです。そしてこの子が綾君です。二人ともこちらが西田さんと時田君だ。」
「初めまして、碇シンジです。」
「初めまして、綾・バランシェと申します。」
「こちらこそ、私は西田啓というものです。」
「どうも始めまして、私は時田ユウジです。シンジ君の噂は色々と伺っていますよ、それにそちらの綾さんのこともね。」
 
時田博士も科学者であるからアメリカのバランシェ博士のことは聞き及んでいたし、シンジのこともかつてユイやリツコ、NERV職員達から聞いていたこともあった為すんなりと受け入れられた。
もちろん、西田もゲンドウから色々と聞いていたため余り驚いてはいなかった。むしろ目の見えない西田には目の前の二人の姿などよりもその雰囲気に驚いていた。
 
『これが子供の気だというのか。ここまで見事にその気配を隠しているとはこの子達の実力は相当な物だな。ひょっとすると憂四郎くんやミハルくん以上の素質を持っているのではないのか?』
だがそんな西田の関心を余所に挨拶は続けられていった。
 
「所で時田君、今日の用事というのはひょっと後ろのお嬢さんのことなのかね。」
「はい、すみませんご迷惑をおかけすることを覚悟で今日ここにこの子を連れてきました。実はこの子は霧島マナと言いまして・・・・・」
『やはりマナか!でもどうして?JAのお披露目すらまだ始まっていこの時期に何故?』
 
だがそんなシンジの思惑を余所に時田からマナの紹介が続けられていった。
時田から告げられた内容はマナが戦自から脱走してきた少年兵であり、戦自には他にも40人近い少年兵が現在も諜報活動などの任務に就いていると言う事。
また、マナやごく一部の優れた能力を持つ少年達は戦自で開発中の新型兵器のテストパイロットとして厳しい訓練を受けていると言う事だった。
もちろんこの新型兵器とはトライデントで今のところはプロトタイプ(JA)と呼ばれているような状態だった。
 
この事を聞いたゲンドウとユイは激怒した。普段は滅多な事では怒らないユイまでがとても怒っていた。
もちろんシンジと綾はこれらの事を調査していた為ある程度の事は知っていたが、マナの口から告げられた実際の状況はそれらの情報以上に酷い物だった。
子供達には小さい頃から薬物が投与されており、マナもそう言った薬無しでは普通の生活をする事すら危ういと言う事を聞きユイなどはすぐにリツコに連絡してそう言った薬品の調査を指示していた。
ゲンドウは事の詳細を知るために諜報部にすぐに調査を命令した。
 
「霧島さん、安心して。鈴原ミユキちゃんもここにいるよ。」
「えっ!どうしてミユキの事を知ってるの?」
「シンジ(君)!どういう事なんだ?」
「父さん、この前のサキエル戦の最中に保護した女の子、あの子の素性をブラフォードさんに調べてもらっていたんだ。結果として戦自の少年兵の可能性があったんだけど確証が無くてね。それに、この件に関しては未だに調査中でまだ何か裏がありそうだったんでねまだ報告してないんだ。」
「せめて中間報告ぐらいはしてほしかったぞ。」
「ごめん、父さん。でも下手な事を言ってミユキちゃんに変な先入観を保ってほしくなかったんだよ。」
 
ゲンドウもユイは不服そうにしていたが、時田と西田は驚いていた。シンジのつかんでいた調査内容とは殆どが関係者で無ければまず掴みようのない情報ばかりであった。これが一介の中学生に出来る事だろうか?確かにシンジは噂から天才科学者として有名であったがこういった『裏側の世界』に詳しいようには思えなかった。
もちろんここにいる誰よりも驚いていたのはマナであった。
自分たちの存在に気が付いている人間がいても不思議はないが、まさかここまで詳しく知っているのが自分と同じ年の少年とは思わなかった。
 
「父さん、どうするの彼女の事?父さんの事だからきっとこっちで匿うと思うんだけど・・・・」
「あなた、私からもお願いします。こんな年の娘が戦争の道具にされるなんてあんまりです。」
 
もちろんこんな事を言われなくてもゲンドウの腹は決まっていた。
 
「時田君、西田さん、この子は我々NERVで預からせてもらいます。そうですね理由はエヴァのパイロットの適正があるとでもしておきましょうか。」
 
ゲンドウはぬけぬけと嘘をでっち上げて戦自からマナを切り離そうとした。
もちろん全員が呆れながらもそれが最良である事を認めていたが、組織のトップがこうも簡単に重要な事を決めても良いのだろうかと悩んでいた。
 
「碇さん、ユイ先生、この子の事をよろしくをお願いします。」
「わざわざすいません、私の方でも戦自の行動は追っておきましょう。何かあったらすぐに連絡させてもらいますよ。」
「ありがとうございます西田さん。それと時田君、君の方も気を付けなさい、出来る事なら奥さんと一緒に内にこないかね?ちょうどシンジの参号機がアメリカから移送されるのに合わせて技術課を増設する予定なのだよ。その為に優秀な科学者や技術者を捜しているのだよ。」
「!ユイ先生本当ですか?それは願ってもない事ですが構わないのですか、私の父は・・・・」
「時田君そんな事心配しなくて良いのよ。それにマナちゃんも近くに知っている人が居た方がいいと思うのよ、住む所はこっちで手配しておくわ。」
「本当に構わないんですか?ありがとうございます!」
「さてとそれじゃあ・・・・・」
 
その途端司令室に警報が鳴り響いた。
 
「なにごとだ!冬月、何があった。」
 
ゲンドウはすぐに発令所にいる冬月に連絡を取った。
 
「碇か、使徒だそれも既に上陸されているだけじゃなく既に塔根沢方面に突然出現した。」
「なんだと!」
 
ゲンドウは冬月の報告を受けて驚いた。
なんと今度の使徒はいつもの様に海から進行してきたではなく内陸に突然現れたのである。
 
「冬月さん、敵はどういったやつですか?それにレイは今どこですか?」
「シンジ君か、敵は正八面体形状の水晶のようなやつだ、それ以外はまだ解っていない。レイ君は今初号機に搭乗している所だ。」
「!!!だめだ、すぐにレイを止めてください。僕が行くまで出撃は待ってください!行くぞ綾。」
「はい!」
 
そう言うとシンジと綾はすごい勢いで部屋を出てケイジに向かった。
後に残されたゲンドウ達だがここにいても何もする事はない。西田達は自分たちは邪魔になると思い退席する旨を告げたがゲンドウからは意外な答えが返ってきた。
 
「今からではここから出ていくのも危険です。どうですか西田さん発令所に言ってみませんか?」
 
さすがに西田だけでなくユイも驚いた。関係者でもない者を発令所に立ち入らせるのは違反行為である。
だがゲンドウは西田をスポンサー、時田は技術者、そしてマナをパイロット候補生として発令所に連れて行った。
困惑する面々を無視してゲンドウは全員を発令所に連れて行った。もちろん発令所の人間達も驚いていた。
 
「西田さん、それに時田君まで。碇、なぜ連れてきたんだこんな事が上にばれたら・・・」
「大丈夫だ、時田君はウチに来る事になっている。それに西田さんにはスポンサーの代表としてきてもらっている。これなら文句はあるまい。」
「・・・・碇、相変わらずむちゃくちゃだな。」
 
だがそんな発令所のひと騒動とは別にケイジでも騒動が起きていた。
 
「お兄ちゃん、何で出撃しちゃいけないの?」
「レイ、本気でそう言っているのか?敵の正体も解っていないのに出撃するつもりなのか!」
「そんなの、戦ってみれば・・・・・」
「ふざけるなっ!」
 
シンジの怒声にケイジの全員が注目した。
レイやリツコだけでなく整備をしていた作業員までも驚いた、普段から理知的で落ち着いている姿とはうってかわった激高ぶりである。
その雰囲気に飲まれ周囲は静まりかえった。
 
「レイ、今までの使徒と今回の使徒の違いが解るか?」
「えっ、えーと・・・・」
「リツコ姉さん、何かおかしいと思いませんか今回の使徒の形状。」
「え、使徒の形状?正八面体の・・・・そう言えば、変ね」
「気がつきましたか。おかしいんですよあの形状は。」
 
リツコはシンジの言う事の意味がわかってきたが、レイはまだ悩んでいた。
 
「リツコ姉さん、何がおかしいの?」
「レイ、今までの使徒の姿を思い出してみて。今回の使徒は前の二体に比べて生物らしく無いのよ。」
「そりゃ、あんな姿の生き物はいないけど・・・・」
「違うわ、レイ考えてみなさい。最初の使徒は人型だから格闘戦になるのが解ったの、そして二体目の使徒は武器が鞭だと言う事が見ただけで解ったわ。
でも今回の使徒はどう?あんな姿じゃどんな攻撃手段をしてくるのか、どこが弱点なのか解らないのよ。」
「使徒の弱点って・・・・・あっ、無い、いつもある赤い所がない。」
 
レイはこの時になって初めて気が付いた。今回の使徒は今までの二体と比べてあまりにも異質すぎた。
おまけに弱点だった赤い所、コアがない。その時になってシンジが何を言おうとしていたのか解った気がした。
シンジはその間にも発令所に連絡を取り無人戦車などの出撃を要請していた。
発令所ではシンジの要請に従って遠隔操作により無人戦車が使徒に攻撃を仕掛けていた。
だが砲撃は全てATフィールドを貫通する事は出来ず、何ら戦果を表さなかった。そればかりか使徒の外周が輝きだしたと思うと使徒の表面から光が放たれた。
その光の直撃を受けた戦車が消滅した、その映像を見た発令所とケイジでは全員が沈黙していた。
もしシンジの制止が遅ければレイの乗る初号機がこの戦車のようになっていたのである。
だがシンジはこの結果がわかっていたのか次々と新しい指示を出していく。
 
「冬月さん、引き続き使徒に対して攻撃を仕掛けてみてください。それも出来る限り色々な種類の攻撃を仕掛けてみてください、ATフィールドの強度を知りたいんです。」
「解った、シンジ君。ところで初号機の方はどうするのかね?」
「出撃は見合わせます、今のままじゃ出た途端ねらい打ちにされてしまいます。さすがに光線は回避出来ませんからね。
それとデータがそろい次第作戦会議を行いたいので関係部署に連絡をお願いします。大丈夫ですあの移動速度ではここに来るまでまだ時間があります。
綾、データ収集を引き続き頼む、僕は上に行って様子を見てくる。」
 
そう言ってシンジはケイジを出て何処かへ行った。
リツコは出撃が見送られた事によりエヴァの最終チェックをスタッフに任せて、使徒のデータ検証に向かった。
レイは一人だけその場に取り残されていた。もちろんレイが独りぼっちになったわけでなく周りでは技術者達は忙しく動き回りケイジ内は慌ただしくなっていた。しかしレイはその場で何も出来なかった。
 
レイは先ほどのシンジに怒られた事を考えていた。
『お兄ちゃんがあんなに怒るなんて初めてだ、きっとまだ怒ってるんだろうな。
私なんて考え無しな事言ったんだろ。こんなんじゃあお兄ちゃんに嫌われちゃう。』
思い悩んでいるレイに綾が声を掛けてきた。
 
「レイさん、そろそろ上に行きませんか?私もデータ収集が終わりましたので上に行くのですが、ご一緒にどうです?」
「綾さん・・・・私・・お兄ちゃんに嫌われちゃった。」
「そんな事無いですよ、マスターはレイさんの事を心配しているんです、だからあんな風に厳しく叱ったんですよ。」
「でも、でも・・・」
 
レイはさっきまでの威勢の良さが消えていた、まるで迷子になった子犬のように怯えていた。
自分の言った事で大好きな兄に嫌われたのではないか、愛想を尽かされたんじゃないのかと怯えていた。
 
「レイさん、マスターは誰よりもあなたの事を案じています。だからこそよく考えてから行動出来るようになってください、すぐにとは言いませんがマスターはレイさんがそうなるためにはどんな手助けもしてくれます。
ですがそれに甘えてはいけません、マスターの真の望みはあなたに一人の人間として自立してもらう事なんですから」
 
綾はそう言ってレイにほほえんだ、レイはその笑顔が母ユイにそっくりだと思った。
自分よりもずっと母に似ている、大人びていると言うのとは違う慈愛に満ちていると言った方が似合っているように思った。
常に見守ってくれていて暖かく手をさしのべてくれるそう言った母親のような雰囲気が羨ましかった。
そしてそれを認めるたびに自分が子供だと言う事を思い知らされていた。
 
「レイさん、厳しいようですけれども私たちは手助けはしますが決断し実行するのはあなたでなければいけないのです。
マスターがもしあなたを見放す事があるとしたら、それはあなたが自分の意志というものを捨てて他人の良いなりになった時だと思いますよ。
『自分の主は自分だけ』それを忘れないでください。他人の意見を採り入れるのは構いませんがそれを鵜呑みにせず自分で考えて決断してください。」
「そんなの、良くわかんないよぉ。どうしたらいいのよ?私、お兄ちゃんみたいに頭良くないから・・・・」
「今はまだ難しく考えないで良いですよ、でも私の言った事は心の片隅にでも覚えておいてください。いつかきっと必要になると思います。さあ、上に行きましょうか、もうみなさんがそろっている頃ですよ。」
 
そう言って綾はレイを強引に引っ張っていった。
そのころシンジは諜報部のブラフォードらと一緒に地上に来ていた。
シンジとブラフォードは武装もせず進行中の使徒の直ぐ近くで観察していた。どうやら今度の使徒は武装していない限り敵と認識しないようだった。
もちろん今回はシンジもアダムとしての気配は完全に消していた、サキエル戦での失敗に懲りていたからである。
 
「どうですか?使徒の様子は。」
「シンジ君、今のところは相変わらずだがどうする?何か仕掛けようか。」
「いいえ、長距離砲すら通用しない相手では機動歩兵といえ荷が重いですよ。それにあの巨体ではまず致命傷を与えられません。」
「確かにそうだな、では我々は引き続き偵察に当たろう。シンジ君はもう下に戻った方がいいだろう。」
「解りました、何か動きがあった時は冬月さんに直接報告してください。後を頼みます。」
 
そう言ってシンジは本部内に戻っていった。
会議室には技術部だけでなく保安部・諜報部等の全部署のトップが全員そろっていた。
しかも西田や時田までオブザーバーとして招かれていた。
シンジより少し遅れて綾がレイを連れてやってきた。
レイは少し怯えたように自分の席に着いていった。シンジは先ほど言い過ぎた事を後悔していた。
 
作戦会議が始まって直ぐにブラフォードから連絡が入った、内容はNERV本部直上に移動した使徒は真下に向かってボーリングを始めたとの事だった。
ゲンドウは直ぐにブラフォードに手出しを禁じて偵察の徹底を命じた。
そしてリツコに本部到着時間の割り出しを急がせた。
 
「さて、しばらくはまだ時間があるが今回の使徒は強力なATフィールドと加粒子砲をもっている。現在のエヴァの能力ではこのATフィールドを中和しているだけでもかなりの時間がかかる、そうなった場合加粒子砲の的になる。何か妙案のある者はいないか?」
 
ゲンドウに意見を求められた一同だがこれと言ったアイデアは思い浮かばなかった。
 
「シンジ、あなたにも思い浮かばないの?」
「うん、被害を気にしないのなら手は無くもないけど・・・」
「マスター、まさかバスターランチャーやフレイムランチャーの事を言ってるんじゃあ・・・・・・」
「ああ、でもどっちも上の都市を壊滅させてしまうからね使えないよ。それにアレはまだアメリカだしね。」
「ちょっとシンジ、都市を壊滅って・・・」
「うん、母さんちょっと威力のありすぎる武器でねN2兵器よりは使徒に聞くはずなんだけど、ちょっと威力がありすぎてね恐らく直径一キロぐらいは吹き飛ばす可能性があるんだ。」
 
その言葉に集まった一応の顔が青ざめた、よりにもよってN2兵器以上の破壊力など考えるだけでも恐ろしい。
 
「まあ、使えないんだからしょうがないし何か代案を考えないとね。」
「マスター、今回届いた荷物でどうにかなりませんか?エネルギーソードやシーザスベイルの他にもリニアレールキャノンやビラルケマも送ってきてくれていたんですけど。」
「だめだ、リニアレールキャノンやビラルケマではATフィールドを貫通出来ても致命傷は難しいので牽制にしかならない、かといってエネルギーソードでは接近するのが問題だ。せめて参号機でなくても初号機がもう一機あれば二方向から同時攻撃を仕掛けるって言う方法がとれるんだけど・・・」
 
全員が落ち込んでいた。しかし、そこに声がかかる
 
「あのっ、それなら私が何とかします!」
 
意外な所から掛けられた意見に全員の注目が集まった。
それは・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき
 
ふぇいです。今回は2話構成にしています。
訳は少し早めにマナを登場させるため、マナのJAを零号機の代わりに使う事にしました。
実際にはJAに零号機ほどの性能はありませんが、次回でシンジのチューニングによりかなり性能が上がっています。
もちろん核リアクターは搭載されていましたがシンジの手により取り替えられています。
外装もJAである事を隠すためにシンジが思いっきり改造する予定です、楽しみにしてくださいね。
今回登場した時田博士は父親の時田シロウ博士とは違いとても優しい性格です。その為トライデントの開発のためにパイロットにされていたマナやトウジを助けようとしたため父親と仲違いして、日重が二つに分かれた時にNERVよりの方につきました。
あと、マナの脱走にもこっそりと手を貸していましたし、そのあとも匿ったり等と色々と暗躍するなどのんびりした性格の割にやり手です。
しかし、登場機会がそれほどあるわけではありません。只でさえキャラが増えすぎて既に名前だけ登場というキャラが多すぎるのです。
一応次回とその次まではしっかり登場してもらおうと思います、なぜなら次回はともかくその次はJAのお披露目です。
時田シロウ博士としっかり喧嘩してもらいましょう、ちなみにJAは暴走しますがNERVが悪戯をするつもりはありません。
まあ、実際にはどうするかはまだ未定ですがなるべく早いウチに続きを書いてさっさとアスカを登場させようと思います。
それまで暫くお待ちください。