騎士と妖精と熾天使の幻像
第2章
第1話.新たなる時の始まり
2014年
太平洋上に正体不明の物体が現れた。
日本政府はただちに国連軍に迎撃を要請し、同時に自衛隊には民間人の避難・保護を指示した。
国連軍はただちに航空戦力を先行させ、太平洋艦隊まで出動させた。
だが結果はさんざんなモノだった。先行した部隊はレーダーをあてにして目標を発見できず、太平洋艦隊に至っては発見したもののその物体に対して無差別な攻撃を仕掛け味方にまで被害を出す始末であった。
軍上層部はこの情報を公開しなかった。また、このミスを隠す為に国連軍は導入可能な全ての戦力を集中させていた。
そして、その戦場は第三新東京市に近づいていった。
第三新東京地下 NERV本部 所長室
「あなた、ついに来ましたね。」
「ああ、この時が来てほしくはなかったが。逆らえんのか、運命には」
「お父さん、お母さん。心配しないで私が必ずみんなを守るわ。」
司令室にはゲンドウとユイ、レイの三人が集まっていた。
すでに使徒襲来の連絡は所内に通達されリツコは発令所に詰め、冬月は政府高官との連絡に忙しい。
そんな中、碇家の3人は司令室にいた。これからレイは一人で戦場に出ることになる、心配した二人が時間を作り少しでも一緒にいようとしていたからだった。
すでに国連軍の初戦敗北の連絡は入っており、これを政府に報告し首都近郊で国連軍が戦果を上げられないときには強制的にNERVへの指揮権委譲の約束を取り付けていた。
そしてNERVでは既に汎用人型迎撃兵器エヴァンゲリオン初号機の出撃が決定しており、パイロットであるファーストチルドレン碇 レイもその準備に追われている最中の出来事だった。
「私はきっとこの時の為に生まれてきたんだと思うの。そんな顔しないで、絶対に帰ってくるから。」
二人はやるせない気持ちだった。この子は自分たちの業によって生み出された、とはいえ大事な娘であった。
その娘が一人で戦おうとしているときに自分たちはまともな援護すらできるかどうか解らない状況だった。
使徒の力については14年前の南極、そして先ほどの国連軍の戦闘結果からATフィールドの存在が確認されその威力の危険性に注目していた。
いくらそのATフィールドにエヴァしか対抗手段がないとはいえ大事な娘を一人で出撃させなければならない二人は身を切られる思いだった。
「レイ、危なくなったらすぐに後退しなさい、体勢を立て直す時間ぐらいは稼げるわ。だから決して無茶はしないで。」
「レイ、お前にはすまないと思っている。だが私たちはお前に頼るしかない。頼む」
「うん!それじゃあ行って来ます!」
レイは二人の心配が何よりも嬉しかった、そしてその二人の為にも必ず使徒を倒そうと心に誓っていた。
レイが出ていった後の司令室には二人だけが残されていた。ユイは笑って送り出したがすぐに泣き出してしまった。
ゲンドウもいつもと変わらぬ表情だったがレイが出ていくと不意に顔を伏せていた。
そんな二人の元にアメリカ第一支部から緊急連絡が入ってきた。
その内容は「当支部より追加人員を二名そちらに派遣した」という物だった。
二人は当惑した。この忙しい時期にたった二人だけ派遣するという意味がわからなかった。
おまけによく読んでみると「派遣する」ではなく「派遣した」となっていることであった。
しかも、こちらの到着場所と時間はなんと国連軍の総攻撃のまっただ中であった。
大急ぎで確認を入れようとしたが本部内はすでに大騒ぎに近い状態で連絡の取れる様な状態ではなかった。
ゲンドウ達が急いで調べ上げたその人員のデータは「Dr.シン&アヤ・バランシェ」となっていた。
仕方が無く保安部に連絡をしてみたがほとんどの者が出動しており、かろうじて動けそうな者はクリスだけであった。
クリスは正規の保安部員ではない為、出動状態ではなく発令所で戦況を見ようとしていた。
ゲンドウ達はクリスに頼み、大急ぎでDr,バランシェ夫妻を迎えに行く様に伝えた。
クリスは二人を保護するように命令を受けると詳しく確認もせずにその場に急いだ。
ここでゲンドウ達とクリスは大きな勘違いをしていた。
その勘違いはあながち間違いでもなかったが二人に出会ったときには驚くことになる。
シンとアヤの二人はすでに箱根まで来ていた。使徒襲来を予測して少し早めに移動していたが、その予想を上回る国連軍の失態により交通手段のストップまでもが早まってしまった。
そのため、二人は箱根で足止めを食らっていた、仕方がないので二人は歩いてNERVに向かおうとしていた。
しかし、その目の前に第三使徒サキエルが現れる。
サキエルは目の前にある小さな存在に気がついたようである。それは小さいとはいえアダムと同質の存在が二つもあるのである。
サキエルは混乱していた。本来は唯一であるべきアダムらしきモノが三つもあるのである。
サキエルの様子に気がついたシンはアヤをつれて全力でその場を離れた。
そしてある程度距離を取ったところでペースを落とした。全力疾走するシン達の速度は時速200q近くまで出ていた。
そして、こちらにやってくる存在に気がつき普通の走る速度までスピードを落とした。
一台の黒塗りのセダンがこちらに向かって疾走してくる。そして二人の前に止まると中からシン達と同じぐらいの金髪の少女が降りてきた
「あれー、なんでシン兄達がここにいるの?」
「クリス!どうしたんだその車。免許なんて持ってないだろ無免許運転はだめだぞ。」
「しょうがないのよ、司令からの緊急の仕事を頼まれたの・・・・・ええと、なんだっけ?」
「クリスさん、だいじょうぶですか?」
さすがのシンとアヤもあきれていた。仕事の内容も確認せずに無免許で車を運転するとは・・・・
「ああ!思い出した。バランシェ博士夫妻を迎えに行けって言われたの。」
「「ふ、夫妻!!」」
「あれ?どしたの、ひょっとして知ってるの?」
「あのなぁ、僕たちの名前を知ってるだろ。」
「うんシン兄は・・・・・あ。てへへ、ごめん思い出した。でも夫婦ってどうしたの、結婚したの?」
「まったく、父さん達勘違いしてるな・・・まあ良いやクリス、それじゃあ連れて行ってもらおうか。NERVへ」
クリスはアメリカでシンに懐いて「シン兄」と呼んでいた為、本名の方を忘れてしまっていた。
二人はクリスの乗ってきた車に乗り込みNERVへと向かっていった。
その途中クリス達の車は大きな影に覆われていた。長話をしていた為サキエルに追いつかれてしまったのだ、しかも国連軍の戦闘機が集結しつつあった。
戦闘機からは次々とミサイルが撃ち込まれ、戦車や自走砲からも砲撃が行われたが全く通用していなかった。それでも足止め程度にはなっていたが。
クリスは巧みなドライビングテクニックで流れ弾を回避していく、そしてある程度の距離を取ったところで国連軍が撤退を始めていく。
「まずい!クリス急いで距離を取るんだ。国連軍がN2兵器を使うぞ。」
「え、ウソ!やばいじゃない、あいつら何考えてんのよ。間に合うかな?」
「クリスさん!そのビルの先を右へ、そしたら公園の向こう側の下り坂へ。そうすれば爆風の直撃は回避できます。」
「わかった!」
クリスは車の速度を上げアヤの指示に従って行く。タイヤが悲鳴を上げフレームがきしむ、それでもコントロールを失わず疾走していく。
そして公園を越えて下り坂を疾走していく途中、後方から凄まじい光と爆音と爆風が襲いかかる。
幸いクリス達の車は直撃は逃れられたが上からの落下物を交わすのに苦労していた。
難を逃れた三人はそのままNERVへと急いでいった。
国連軍幹部達はうろたえていた。
自分達の切り札とも言うべきN2兵器がまったく通用していなかった。
おまけに、極秘扱いにしていた戦況が日本政府にばれてしまった。そのために指揮権をNERVに委譲するように日本政府だけでなく国連からも通達されてしまった。
幹部達は怒り狂っていた、本職である自分達を差し置いて得体の知れない組織に指揮権を奪われたのである。
この時代では戦自が国連軍に取り込まれており日本駐留の国連軍は殆どが元戦自の部隊であった。
そして、NERVとはゲヒルン時代から犬猿の仲であっただけにこの事は幹部連中の恨みを買うことになった。
同じ頃NERV本部内はエヴァンゲリオン初号機の出撃準備に忙殺されていた。
「国連、日本政府から通達がありました。指揮権がNERVに委譲しました。」
「了解。レイ、シンクロ開始して。」
[OK、シンクロスタート!]
レイにとってエヴァ初号機とのシンクロは元の体に戻るだけであるが、そうしてしまうとレイの体の方が無反応になってしまうので半分程度しかシンクロしないようにしている。
そのためレイのシンクロ率は何時も50%に前後になっている。
「シンクロ率51%。発進準備完了まで後二分です。」
「レイ、後2分で出撃できるわ。気を付けてね。」
「りょうかい。大丈夫、心配しないでお姉ちゃん。」
「ええ、それでも気を付けて。危険なようなら一旦後退しても良いのよ。」
「くすっ、お母さん達と同じ事言ってる。大丈夫だよ、絶対にみんなを護ってみせるから!」
レイの姿にリツコ達発令所の全員が辛そうな顔をする。
レイはそんな雰囲気をうち消そうとするように明るく答えた。
「ファーストチルドレン、碇レイ、エヴァンゲリオン初号機出撃します。」
「了解、射出します。がんばってね、レイ。」
「うん、いってきます。」
そしてエヴァ初号機はカタパルトから射出されていった。
そして地上では、
クリスの運転する車は止まっていた。
よく見ると車のタイヤが無くなっている。N2爆弾の爆風にせいで道路に亀裂が走っており、その亀裂にタイヤを取られてしまったのである。
「本部〜〜、発令所聞こえますか〜・・・だめね、さっきので壊れちゃったみたい。」
「そうみたいだな。仕方ない、ここから歩いていくか?」
「ええ〜〜、まだ大分距離あるよ。」
「仕方がないさ、それより使徒の方はどうなってる、アヤ。」
「はい、大したダメージはないようです。あと1分40秒ほどで活動を再開するでしょう。」
「急ごう、それまでにNERVに着かないと・・・・・」
シンの言葉を遮るように大きな音がした、道路が二つに割れそこから現れた物は・・・
「エヴァ初号機!誰が乗っているんだ。」
「あー、レイだ。がんばってね〜。」
「なんだって、レイが・・・そうか、あの子しか動かせないんだったな」
「あれ?シン兄、レイのこと知ってるの?」
「ああ、クリスには言ってなかったけ。レイは・・・」
「マスター急いで避難してください。使徒の活動が始まりました。」
「解った!掴まれクリス」
「う、うん」
シンはクリスを抱きかかえその場を離れた。
そんな事とは知らずレイは、
「さてと、それじゃあいくよ!」
レイは初号機をサキエルに突進させていった。
その動きに反応したサキエルは目から光線を放つ、レイは即座に横に飛びソレを回避する。
そこへ今度はサキエルの方から掴みかかってきた。
「このっ、離しなさい。」
レイは掴みかかってくる腕を払いのけカウンタをたたき込む。だが、サキエルにはたいしたダメージはないようだ。
そればかりかレイの攻撃をものともせず再度掴みかかってくる。
その途端、兵装ビルから援護射撃がはいる。攻撃自体は効いていないがサキエルは一瞬攻撃が遅れた
その隙にレイは距離を取りプログナイフを取り出し、再びサキエルに突進していく。
今度は左右にステップしながらフェイントをかけて突撃していったが、初号機は壁に阻まれたかのように進めなくなる。
「な、ATフィールド!しまった!」
逆に今度はレイが隙をつかれて攻撃されてしまう。
サキエルにプログナイフを持つ右腕を掴まれてしまった。レイはその手をふりほどこうとするが恐ろしいほどの握力ではずれない。
そればかりか気味の悪い音と共に初号機の右腕があらぬ方向に曲がっている。
「ぐっ、はなせ・・きゃぁーー」
「レイ!しっかりして。援護射撃は出来ないの?このままじゃあレイがやられるわ!」
「だめです、初号機が近すぎて撃てません!今撃てば初号機を巻き込んでしまいます。」
発令所ではリツコ達が焦っていた。
レイの窮地に何もすることが出来ないのだ。おまけにレイとエヴァは負傷・損傷している、一時的に後退させたかったが使徒はそれすらも許そうとはしてくれなかった。
レイはエントリープラグの中で激痛に耐えていた。いくらシンクロ率が50%前後とはいえ、直接シンクロしているためその痛みは普通ではない。
ましてや初号機はレイにとってもう一つの体である、傷つけられた痛みは他のチルドレン達よりも遙かに酷い物だった。
その痛みのため反応が遅れた。
「しまった・・きゃぁーーー」
「レイ!しっかりして、レイ!」
初号機はサキエルに頭を鷲掴みにされていた。レイは必死で抵抗していたがサキエルの手は放れない、そればかりか頭をつかんでいる腕の肘から光る槍のような物がのびて縮んでいった。
その途端プラグ内のレイの頭には凄まじい激痛が走っていた。まるで鈍器で殴られたようだった。
「先輩!大変です。頭部装甲に亀裂が入っています。既に最外部は破損して機能していません。」
「なんですって!マヤ急いでシンクロをカットしなさい。このままじゃあ中のレイの方が持たないわ。早く!」
「了解、シンクロカットします。」
シンクロがカットされ初号機は動きを止めたが、その時既にレイは意識を失っていた。
動かなくなった初号機にしばらく攻撃を加えていたサキエルだったが、反応のないことに気が付くと初号機を近くのビルにたたきつけてそのままNERVの方へ向かって歩き出した。
本部では意識を失ったレイの状態を調べようとするがプラグが故障したのか通信が全て途絶していた。
そしてシンは
「レイ!なんて事だ、サキエルが強すぎるぞ。」
シンは先にクリスをシェルターに放り込むとレイの事が心配でアヤと二人で見に来たのであった。
だがそこで見た物は、かつての自分と同じようにやられている初号機の姿があった。
今のレイの動きはかつての自分の初陣よりも遙かに良い動きであった。だがサキエルの見せた動きはそれ以上であった。
下手をするとバルディエルに乗っ取られた参号機以上かもしれない。
「マスター、パイロットは無事なようです。シンクロを強制切断した模様です、おそらく意識がないものかと思われます。」
「ほんと!レイは大丈夫なんだ。」
シンジはほっとしていた。自分の身代わりとなったレイが傷つくなど考えたくもなかった。
シンジは今心の底から怒り狂っていた、レイを傷つけたサキエルに対して、そして自分自身のふがいなさに。
「アヤ、初号機に乗り込む。一緒に来てサポートを頼む。」
「イエス、マスター」
シンとアヤは初号機がたたきつけられ倒壊したビルを上っていく。そしてエントリープラグを外部から操作してイジェクトしていく。
そしてイジェクトされたプラグのハッチを開けアヤと二人で乗り込んでいく。
プラグの中には激痛にゆがんだ表情のままレイが意識を失っていた。
シンはレイを抱きかかえシートについた、そしてアヤはシンの膝の上に座った。
「アヤ、レイへのシンクロを頼む。ボクは再起動の方をなんとかする。」
「解りました、外部シンクロを開始します。・・・レイさんとの接続完了、マスター同調完了です、いつでもいけます。」
「わかった、こっちもいける。いくぞ、アヤ!」
「はいっ!」
シンジは初号機を再起動させた。
傷つきあちこちが破損したまま初号機は再び動き出した。
「マスター、右腕が破損していて使えません。それと素体の強度に問題がありソニックブレードやパラレル・ディレイアタックのたぐいは使用を控えてください。無理をすると使った途端こっちの方が破損してしまいます。」
「それは厳しいな、まあ何とかするさ。それにソニックブレードの一撃でとどめなんかさせてやるか!レイを傷つけた分は10倍にして返してやる。」
「?、マスター!大変です。サキエルの進行方向に人がいます。それも民間人のようです。」
「なんだって!・・・・まさか、トウジの妹なのか?」
「わかりませんが、急がないと危険です。」
「わかった、ボクは足止めをする。アヤはNERVに連絡をいれてブラフォードさんを呼んでくれ。」
「了解、コントロールはそちらに全て回します。」
「よし、いくぞっ!」
シンジはレイ以上のスピードでサキエルに襲いかかった。
サキエルは後ろから不意をつかれ、その一撃をまともに食らっていた。
反撃にはいるが初号機はその攻撃を紙一重でかわし、レイと同じようにカウンターをたたき込んでいく。
レイとは違いその攻撃はサキエルの動きを鈍くしていく。
発令所では混乱していた。意識のなくなったレイと連絡を取ろうとして作業をしていると、急に初号機が再起動したのである。
なのに、レイからなんの連絡もない。そればかりか今戦っている初号機の動きはレイのものとは違っていた。まったく効いていなかった攻撃が通用するようになっていた。
発令所の人間がその戦いを見守っていると初号機の方から連絡がはいってきた。リツコはあわててレイを呼び出したが、そこにはレイによく似ているが全くの別人がいた。
「発令所聞こえますか?」
「あなたは一体誰なの?そこで何をしているの?それにレイは無事なの?」
「レイさんは無事です。今は意識がありませんが外傷のたぐいはありません。」
「そう、よかった。・・・って、ちょっとまって今あなたが初号機を操縦しているの?それにあなたは一体誰なの」
「操縦しているのは私ではありません。申し遅れました、私はアメリカ第一支部から今日付けで派遣されましたアヤ・バランシェと言います。今操縦しておられるのは同じく派遣されましたDrシン・バランシェです。」
「あ、あなたが・・・それにバランシェ博士って・・・夫婦じゃなかったの?」
「ああ、その件ですか・・・・」
「アヤ!長話してないで用件を早く言ってくれ。足止めにも限界がある」
「この声、何処かで・・・・」
「ああ、そうでした。すいませんが諜報部のアーレン・ブラフォードさんに連絡して欲しい事があるんです。お願いできますか?」
「え、ええ、わかったわ。ちょっとまってて。」
そういってリツコは綾の回線をすぐに諜報部のブラフォードの所に繋げた。アヤとブラフォードは面識があるのか簡単に用件を伝えていった。
その内容を聞いてリツコ達は背筋に寒気が走った。
なんと戦場に民間人がいるというのだ、しかも今エヴァを操縦しているバランシェ博士はそれを庇いながら足止めをしているというのだ。その腕前はまさに凄まじいとしか言い様がなかった。
連絡を受けたブラフォードは直ちに諜報部を出動させ民間人の身柄を確保した。
エヴァでその連絡を受けたアヤは機体のコントロールを元に戻した。
「マスター、民間人無事に保護できたそうです。コントロール正常に戻します。」
「よし、もう良い。一気に片を付ける、いくぞっ!」
「はい、サンプリング・プロ・エミュレート開始します。」
発令所で見ていたもの達は信じられなかった今までの動きでさえすばらしいものだったが、民間人保護の連絡を受けてからの動きは全くの別物だった。
まるで相手の行動を全て予測しているかのような動きだった。
そして、少し距離を置いた初号機が身を低く構えるとその姿が消えた。
その凄まじすぎるスピードに普通の人間の目は追いつかなかった。だが、消えた初号機は正面のサキエルの向こうに立っていた。
しかしサキエルは動かなかった。それもそのはず、その時既にサキエルの胸にコアがなかったのである。
初号機は凄まじいスピードで突進しサキエルがATフィールドを張るよりも早くコアをえぐり取っていたのだ。
初号機はサキエルにとどめを刺してからATフィールドを張りだした。それもコアを握りしめている左手の平に収束させている。
そしてそのATフィールドの輝きが消える頃にはコアの姿はなかった。
もっともこれらの行動を全て見ていたのは諜報部で現場の指揮に当たっていた者達でもブラフォードだけであった。
発令所では初号機のフィールドはサキエルのフィールドを貫通するのに使っていたと判断していた。
そしてサキエルは崩れ落ちていった
そしてNERV本部内に第三使徒サキエル殲滅の連絡が流れた
その途端、発令所をはじめ、整備部・保安部など場所を問わずに歓声が起こる。
その連絡をゲンドウとユイは司令所で受け取っていた。二人とも日本政府や国連との交渉でずっとココにいたのである。
本当は二人とも発令所に行きたかったのだが、強引に指揮権委譲を行ったせいで国連軍からの突き上げが酷く、仕方なく日本政府に協力してもらってやっと大人しくなったのである。
二人ともレイの無事を喜んでいたが、発令所から詳しい連絡を受け取ってすぐにケイジへと向かっていった。
既にケイジには人だかりが出来、レイが降りてくるのを待ち望んでいた。
だが、そこから降りてきたのはレイ一人ではなかった。おまけにレイは意識を失ったまま同じ年頃の少年に抱きかかえられていた。
そして少年の顔を見た全員が驚いていた。
あとがき
ついに始まりました。
ここからがTV版エヴァ本編に相当する部分ですが、早くも登場キャラが入れ替わっています。
おまけに舞台背景をいじった関係でかなりオリジナル色が強くなっています。
そんな訳でどうでしたでしょうか?こんなのはエヴァじゃないとか言われそうですが私自身は結構楽しみながら書いています。
まあ、かなり趣味に走ったキャスティングをしていますが、面白かったら是非感想のお便り等送ってください。<ウイルス付きはやめてね〜
後、これは余談ですが既に序章、第一章、第二章と書いきてていますがこれ以外にも外伝と呼べる間章を作成し、一部の方々に配布させてもらいました。
この文章を書いている頃はまだ間章1「血塗れの戦乙女」だけですが第二章が公開される頃には間章2「夢見る少女」が配布されているかもしれません。
なにぶんこっちは外伝的なモノで締め切りに縛られていない為、超不定期です。あんまりあてにしないでください。
では今後の展開についてですが、「シンジは初号機を使わない」これは既に決定事項でしたが今回は暴走の代わりとして持ってきました。
よってこれ以降は恐らく乗らないと思います。だって、エントリープラグ三人乗りはきついでしょう。
なぜ三人乗りなのかというとコア=レイ、インターフェース=アヤ、操縦者=シンとなっているからです。
今回アヤを乗せたのはアヤを介して擬似的にシンがレイにシンクロするという方法をとったからです。
これは次回で詳しく説明しようと思います。
また、これ以外にも次回からは新キャラが登場してきて二章全体ではかなりの大所帯になります。一部のキャラは次回から登場します。
それではこれからもよろしくお願いします。
巻末のおまけ
???「全く!何であたしがこんな役割なのよ。」
???「そうよ、あたしなんか間章の方でとんでもないキャラにされてるのよ。おまけにあいつまで出てくるし。どうなってるのよ!」
?? 「別に問題ないわ、私はそれなりに幸せになれそうだし・・」
???「あんた、思いっきりキャラ変わってるわね。おまけに変な属性まで付いてるし。」
?? 「羨ましいの?そりゃあ、あなたよりはずっ〜〜〜と幸せに慣れそうだもの」
???「きぃ〜〜〜〜、ちょっと!ふざんけんじゃないわよ。???はアレだからともかく、何であたしまでこんな目に遭わなきゃならないのよ!」
???「ちょっと、???それってどういう意味よ。それじゃあまるであたしが悪党みたいな言い方じゃない。」
?? 「悪党・・・・悪い人・・・・碇君、お兄ちゃんをいじめる人・・・・・・それはあなた達。」
???&???「「ちょっとあたしが何をしたって言うのよ!(怒)」」
?? 「自覚がない、だから作者さんが怒ってるの。だから酷い目に遭うの。人はこれを自業自得というの。」
???&???「「なんですってぇ〜〜〜(怒)」」
?? 「あ、お兄ちゃんからだ。もしもし・・・・・わかったの、すぐ帰るからまってて。プチッ」
???&???「「ちょっと、あんたまさかこのまま帰る気なの。」」
?? 「うん!お兄ちゃん達が一緒に帰ろうって。じゃ〜ね〜、ばいば〜い」
???&???「「あ、こら待て〜〜〜。ひとりだけにげるなぁ〜〜〜」
??を追いかける???と???の二人であった・・・・・・
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・・
「行ったか?ふぅ、出番を増やせと五月蠅いくせに肝心なときにはこうだ、全く。次回から更に二割出番カットだな。
むっ、まずい気づかれたか!それではみなさんまた次回でお会いしましょう。」
そう言って姿を消す作者、その後には悪鬼のごとき表情の二人
「「くぅおらぁ〜〜〜〜〜出てこい、作者ぁ〜〜〜」」
おしまい