騎士と妖精と熾天使の幻像
 
第1章 第16話.傭兵
 
 
 
北米大陸ロッキー山脈
「ふぅ〜〜、こっちで合ってるはずなんだけどな。おかしいな。」
 
シンジはロッキー山脈を一人で歩いていた。
家を出てから既に一週間、シンジはアメリカに来ていた。理由はもちろん綾を探しに来たのである。
シンジは自分の生まれた頃に起きた自然現象や異常現象を調べ上げた。
それは師マキシマムが綾を何処に隠したか調べるためであった。
綾をドーリーごと隠すのならそれなりの場所を必要とすると判断し、その上で他の人間に発見されないような場所を調べ上げていった
 
そうしている内にある一つの現象にたどりついていた。
自分が生まれたのと同じ頃このロッキー山脈の一角で局地的な大地震が発生、山崩れが起きたというものだった。
実はこれが只の地震ではなかった。なぜなら直前まで兆候はなくおまけに震源地の特定まで出来なかったからである。
当時は調査隊が派遣されたりしたが原因がつかめ無いどころか、熟練のガイドやGPSを使っても遭難するという不可思議なことが多発して調査はうち切られた
今では現代のバミューダートライアングルと言われミステリースポットの一つに数えられていた。
シンジはコレが師匠の仕業だろうと思った。
自分が来るまで周囲に結界でも張って侵入者を防いでいるのだろう。
 
そうしている内にシンジも迷っていた。絶対的な感覚を持つシンジですら自分の居場所が解らなくなっていた。
すぐにその異常に気づき調べてみるとやはり周囲に結界が張られていた。
それは周囲の空間に歪みを起こすもので結界の周辺では時間までもが狂っていた。
シンジは身長に結界の隙間を探した。そうして、やっと結界の一部分がもろいことに気が付いた。
「やっぱり、ここからなら中に入れる。それっ!」
ゴオゥ
シンジが腕を振るうと何もなかった岩壁が無くなり巨大な空洞が姿を現した。
 
その中には巨大な機械があった。それはシンジのMHを納めるドーリーであった。
シンジはすぐに内部に乗り込んでいった。
そして真っ先にMHの医務室へ向かった。そこでは治療用のカプセルの一つが稼働状態であった。
すぐにシンジは端末を操作しカプセルを開けた、そして中を見ると長い間再開を夢見ていたパートナー綾の姿があった。
しかしなぜか目を覚まさない、シンジは不審に思い端末を操作して綾の体調を調べようとしてみるとそこに一つのメッセージが表示された。
 
シンジへ
やっと綾を見つけることが出来たようだな、綾はお前に会うのをとても楽しみにしている。
早く目を覚まさしてやれ、これ以上待たせるなよ。
まさかとは思うが方法がわからん等とは言うな、少し考えれば解るはずだ。
それでもわからんと言うのなら童話を思い出して見ろそこに答えがある。
綾のことを頼むぞ、幸せにしてやってくれ
                                        マキシマム・ハルトフォラス・バインツフェルフ・カイエン
 
シンジはメッセージを読んだ後しばらく考え込んでいた、師匠にしてはやけに手の込んだことをしているとは思ったがその方法が解らない。
どうしても解らないので童話を色々と思い出していくシンジ、だが突然その顔が突然真っ赤になった。
「そうか、師匠の仕業じゃないなコレ、綾の考えたことだなまったく・・・・・でもいいか、長いこと待たせたんだし。
よしっ!それじゃあ、お姫様姫を起こすとしようか。」
そうしてシンジはカプセルの中の綾に顔を近づけて行った。そして自分の唇を綾の唇に重ねた。
そしてゆっくりと綾の目が開いていった。
 
「おはようございます、マスター。」
「おはよう、長いこと待たせてゴメンね。綾」
 
シンジと綾にとって5年ぶりの再開であった。
 
 
 
それから約5年がすぎていた。
 
ゲヒルンアメリカ第1支部 所長室
 
「では、そういった方向でうちは動くとするか。」
年輩の男性と幼い少年と少女が話をしていた。
「ええ、三号機は予定通りには無理です、とても間に合いません。だから今技術陣を引き抜かれるわけには行きません。」
「ああ、確かに今のウチから技術部を引き抜かれたりしたら、ウチの方は開店休業状態だな。だが何もしない訳にはいかんだろう、どうすればいい?」
「それですが本部の警備・保安・防諜の強化のための人員を派遣するというのではどうでしょうか?」
「それはいい案だが、うちにはそんな人材がいないぞ。」
不思議なことに相談を持ちかけているのは年輩の男性の方だった。
逆に対応策を練っているのは少年達であった。
「ですから傭兵を雇うというのはどうでしょうか。彼らに本部の保安部の教官になってもらったり、諜報員として働いてもらうと言う案ですが。」
「うーん、正規の軍人ではなく傭兵かね。少しまずいんじゃあないか。」
「いえ、下手に軍関係者を頼ると背後関係や派閥なんかを気にしなきゃいけなくなるんで面倒です。それに型にはまった軍人より傭兵の方が柔軟な態度がとれますし、何より実戦経験が豊富です。」
「確かにそうだが傭兵にも少なからず背後関係はあると思うぞ。」
「ですからこっちで調べておきました。全くのフリーで何処にも所属せずに『信頼と金の続く限り味方でいる』という変わった主義を貫いている傭兵団があります。」
「それはまた、何とも面白そうな連中だな。それで実力の方は?」
「その手の業界ではトップクラスですね。もっとも、負け戦や退却戦なんかではおそらく正規軍や国連軍でも勝てませんよ。それほど土壇場に強いということですから使えると思いますよ。でも、彼らを裏切ったりすると手痛い仕返しを喰らうそうです。」
少年は非常に楽しそうに説明をしていた。
そんな少年を見て男性は疑問に思っていたことを口にした。
「しかしそれほどの連中なら引っ張りだこじゃないのかね?それに報酬も結構かかるんじゃないのかね。」
「いえ、それが彼らの仕事の決定基準が『面白いかどうか』だそうですよ、報酬の方も赤字でも平気で仕事を引き受けることもあるそうですから大丈夫でしょう。」
「そうかね、では後は君に任せるよ、Dr.バランシェ。」
「わかりました、後はこっちで調整しておきます。」
そういって部屋を出ていこうとする少年達に男性が問いかけた。
「そうだ、その傭兵団の名前は?」
「『黒騎士(ブラックナイト)』だそうですよ。全員が黒い服やスーツアーマーを使用していることから名付けられたと聞いています。」
「『黒騎士』?『黒騎士』?何処かで聞いたような気がするが、気のせいか。いや呼び止めてすまなかった。」
「いえ、それでは失礼します。モラード所長。」
そういって二人は部屋を後にした。
それから一週間後
アメリカ国内某所
数人の男達が相談をしていた。
「なあ、おやっさん次の仕事どうすんだよ?いい加減なんか仕事見つけねえと、エストやバーシャがまたうるせえぞ。」
「そうはいってもなあデコース、こないだの国連とドンパチやった件でどこからも仕事が来ないんだよ。今ブラフォードとバーバリュースの二人が色々と当たってくれている、もう少し待っていろ。」
「ちぇっ、国連のヤツらちょっとおちょくっただけなのにマジになりやがって。まったく。」
一番年輩の男性と若い金髪の男が話していた、そこにもう一人の顎髭の男が参加する。
「アレはデコースお前も悪いぞ、それにヨーンまでたきつけて、後始末が大変だったんだぞ。おまけにクリス嬢ちゃんまで暴れ出して男爵やバーシャが戻るのが遅かったら大変なことになってたぞ。」
「へーへーすんませんね。ボクちゃんが悪うございました。」
金髪の男が形だけ謝っているとそこに新たに三人加わった。
一人は背の高い紳士風の男、もう一人も背が高く長髪の若い男だった。そして三人目はまだ少年であった。
「団長、いま戻りました。」「ただいま戻りました。」
若い男と少年が挨拶をする中、紳士風の男の口から仕事の案内が持ちかけられる。
「団長、どうやらウチを名指しで依頼が来ているが、どうする?」
「ウチを名指しで、本当か?」
「ああ、それも意外なことに国連の研究機関でゲヒルンとか言う組織だ。そのアメリカ第一支部から長期の依頼で内容は警護・防諜と保安部職員の教育、それに新型兵器のテストとなっている。どうする、断るか?」
「ゲヒルンアメリカ第一支部だと!国連がウチに仕事だと本気か?それにあそこは・・・・・・バーバリュース、そこの所長から依頼が来たのか?」
「いや、違う。主任研究員Dr.バランシェとなっているが。何か不味かったか。」
「そうか、うーーん・・・・よし、一度そこへ言ってみるか。」
団長と呼ばれていた男は少しの間考えていたがすぐに答えを出した。
「解った。ではその旨を向こうに伝えておく。それで団長アンタ以外は誰が行くんだ。」
「儂の他はブラフォード、それにエストを連れて行く、実はあそこにエストの父親がいるんだよ。」
「えーー、団長それ本当ですか。」
「ああ、訳あって儂が預かっているんだが、ちょうど良い機会だし連れて行こう。」
「おやっさん、俺も行きてぇよぉ。なぁいいだろぉー」
「お前はだめだ。これ以上話をややこしくしたくない、今回は大人しくしていろ。」
「ちぇっ、いいよいいよウチで留守番してるから何処へでも行ってくればぁ。」
金髪の男デコースが同行を申し出るが全員に反対され、すねてしまった
そして団長と呼ばれた他の男から全員に次々と指示が下る。
「グラードには悪いが武器の調達をやってくれ、必要ならバーシャに手伝ってもらってくれ。」
「解った、資金の方は何時もの通りでやっておくよ。」
 
顎髭の男グラードは了承した。
「バーバリュースはヨーンとパルスェットと一緒に向こうさんの裏を探ってくれ。この時期にウチに声を掛けるなんてよっぽどの事があるはずだ。」
「ああ、解った。ヨーンすまないがパルスェットを後で読んできてくれ、打ち合わせをする。」
「わかりました。」
 
紳士風の男爵と呼ばれていた男バーバリュースは少年ヨーンを部屋から送り出し自分のコンピュータを準備する。
そしてしばらくするとヨーンは一人の少女を連れてバーバリュースと打ち合わせを始めた。
 
「パルスェット、ヨーンと一緒に調べものを頼みたい。」
「はい、わかりました。それじゃあヨーンさん一緒に行きましょうか。」
 
少女パルスェットはヨーンを連れて部屋から出ていった。
「ブラフォード、何もないとは思うが万が一の時にはエストを守りながら逃げることになる、用意を頼む。」
「はっ、了解しました。」
長髪の男ブラフォードは自分の装備を準備するため自分の部屋に戻っていった。
そして団長はデコースにも仕事を頼む。
「デコース、お前にも一つ頼みたいことがあるんだが頼めるか?」
「なんだよぅ、ボクちんはお留守番じゃないのかよぅ。」
「ドイツに飛んでゲヒルンドイツ支部を調べてくれ、だが揉め事を起こすなよ。あっちはアメリカと違って国連の勢力の強い土地だ、何が起こるかわからん。」
「別に良いけどよぅ、何を調べんだよ?」
「ああ、惣流キョウコという女性に関して調べてくれ。気を付けろよ、この女性はゲヒルンドイツ支部の所長だ、くれぐれも接触はさけろ。深追いもするな二週間で戻ってこい、それ以上はこっちの仕事に問題が出る。」
「えーーー、なんだよそれポッチじゃあ大したこと解んねえぜ。それでもいいのかよ?」
「ああ、内容よりも相手の反応が知りたい。くれぐれも気を付けろよ。」
「わぁーたよ、それじゃあちょっくら遊びに行ってきますか?」
そういってデコースも部屋から出ていった。
それと入れ違うようによく似た二人の女性が入ってきた。
一人は方で髪を切りそろえ、もう一人は腰のあたりまで伸ばしていた。
髪の長い方の少女が団長に問いかけた。
「ロードス叔父様、私も一緒にクライアントの所に行くと聞きましたが、どうかしたんですか?」
「ああ、今回依頼が来たのがゲヒルンのアメリカ第一支部なんだよ。それでエストお前を連れて行こうと思ってな。」
「そうですか、解りました。」
「私はどうしましょうか?」
今度は髪の短い方の女性が団長ロードスに質問した。
「ああ、バーシャお前にはグラードの手伝いで武器の調達を頼みたいんだがやってくれるか。」
「はい、それじゃあエストまたね。」
髪の短い女性バーシャはもう一人の髪の長い女性エストに挨拶をしてグラードの所へといった。
数日後ロードスはブラフォード、エストを連れてゲヒルンアメリカ第一支部に来ていた。
そして、所長室に招かれていた。そこにはモラード所長の他に二人の少年と少女がいた。
「久しぶりだな、モラード元気そうで何よりだ。」
「なにぃ、ロードスお前なのか?それに後ろにいるのは・・・エストか!」
「はい、お久しぶりですお父様。お元気そうで何よりです。」
モラードは驚いていた。傭兵との契約に関する折衝のつもりで来ていたらなんとそこに現れたのは古い友人と預けていた自分の娘であったからだ。
「モラード所長、ドラクーン団長のことをご存じなんですか?」
「ああ、私の古い友人だ、それに後ろにいるのは彼に預けていた私の娘なのだよ。」
「そうですか、初めましてボクはここの主任研究者をつとめるシン.バランシェです。シンと呼んでください。傭兵団『黒騎士』団長ロードス・ドラクーン殿」
「何、まさか君がDr.バランシェ?じゃあ君が儂らを雇おうというのか?」
ロードスだけでなく横にいたブラフォードやエストも驚いていた。
自分達の仲間ヨーンやパルスェットと同じぐらいの少年が主任研究員でしかも自分達を雇おうというのである。
「初めまして、ドラクーン様。私はアヤ・バランシェといいます。アヤとお呼びください。」
「何?ではどっちが依頼主なんだ?おいモラード笑ってないでいい加減に教えんか。」
そこには腹を抱えて笑っているモラードの姿があった。
「スマンな、今回のことを言い出したのはシン君の方だよ。儂はただ名前を貸しているでだよ。」
「まさか、こんな子供が・・・・」
「まさか!ひょっとしてスーツアーマーを開発したバランシェ博士なんですか?お父様たしかアレはここで開発されたと聞きましたが。」
今度はエストが何かに気が付いて驚いているようだ。
そして、その質問に対するモラードの答えは肯定だった。
「ああ、そうだよエスト。アレはシン君がアヤ君と二人で基礎コンセプトから設計開発全てを手がけてきたものだ。」
その言葉にロードス達は沈黙してしまった。
スーツアーマー、それは近年になり開発された現代の甲冑と呼べるものだった。
鎧のような装甲を持ち、内蔵された人工筋肉のパワーアシスト機能により常人よりも俊敏な行動を可能とする新しい陸戦用装備であった。
初期のものは重甲冑の騎士や鎧武者のような姿をしていたが、最近ではずいぶん軽量小型化され普通のボディアーマー等と変わらない物までが存在していた。
もちろんロードス達もこの存在にいち早く目を付け早くから使用していて、その性能には今まで何度と無く助けられていた。
だがそれを開発したのが目に前にいる少年達とは信じられなかった。
「まあ、その事は後でお話ししましょうか、まず契約内容に関してですが・・・・・」
少年のハッキリとした物言いに驚きながらもロードスは少年の語る内容を吟味していた。
 
まず警護・防諜と保安部職員の教育に関しては『黒騎士』をアメリカ第1支部に所属させ、その後に出向・派遣と言った形で本部へ送り込み、その本部での仕事ということだった。
また新型兵器のテストとは他ならない、ここで開発された新型スーツアーマーのテストを引き受けてもらいたいと言うもので、しかも報酬の一部としてその新型を無償供給してくれるとあってロードスは悩んでいた。
スーツアーマーは普及してきたとはいえ陸戦用のフルセットとなると装甲車よりも値の張る物が少なくなかった。
ましてや自分達の使っている物はそれをカスタムチューンしているとはいえ、かなり古くなっていた。入手直後は圧倒的に高い性能を出していたが現在の新型と比較するとそれほどの差はなくなっている。
おまけに新型の方が電子装備の性能が良く、ことレーダーやソナー、火器管制システムなどは圧倒的な性能の違いを見せていた。
早い内に仲間達に新しい物を用意しようとはしていてもなかなか手に入る物ではなかった。
だが、その最新式のテストができるうえに報酬としてもらえるのならまさに一石二鳥であったが、一つ気になっていたことがあった。
 
「一つ聞いても良いかな?うちとしては仕事の内容も報酬も問題はないが、なぜ我々をそこまで買ってくれるのかが良くわからんのだが。良ければ教えてくれんかね。」
 
その問いにシンはとても真剣な顔つきになりこう言った。
 
「いずれ本部は戦場になります、コレは覆しようのないことなのです。その時のために今できることは全てやっておきたいんです。
例え無駄になっても後で後悔をしたくないんですよ。そしてあなた方は決して我々を裏切らないと確信しているからです。」
 
その言葉自体はありきたりの答えであったがシンの口調には何か底知れない重みのような物が感じられていた。
ロードスはそのシンの言葉を信じてこの仕事を受けるつもりでいたが、団員と相談した上でもう一度詳しく話をしたいと言った。
シン自信この場ですぐに返事が返ってくるとは思っていなかったらしくそれを了解した。
そしてモラード所長とロードス、エストはしばらくその場に残り久しぶりに親子の会話を楽しんでいた。
 
シンとアヤはブラフォードを連れてスーツアーマーの研究棟に連れてきた。それはブラフォードに早速テストしてもらうためであった。
そこに用意されていたスーツアーマーは試作用に灰色に塗られていたが一般に出回っている物よりも小柄でどちらかというとスマートな体格をしていた。
それに普通の物と大きく違う点は盾を装備していることだった。現行の型はおろか今までスーツアーマーには盾の必要など無かったためブラフォード自身初めに見たときには何か理解できなかった。
 
「こ、これは盾ですか?」
「ええ、この新型は装甲の厚さを従来の1/3の抑えて反応速度や機動性を2倍近くまで向上させています。装甲の方は薄くしても強度自体は以前の1.5倍近い物がありますよ。あと盾はオプションや予備バッテリーなどを取り付ける意外にも武器としても使えるようにしています。どうです?よかったら使ってみますか?」
「かまわないのですか!」
ブラフォードは驚いた、いくら信用しているとはいえ初対面の人間に最新型の新兵器を扱わせようとは。
 
「ええ、どうぞ。既に最終調整は済ませてあります、後は微調整だけで使えますよ。」
「ではお言葉に甘えて、お借りします。」
 
そういってブラフォードはスーツアーマーを着込んでいった。それはとんでもない物だった、今まで自分の着ていた物の2倍以上の出力がある。
まさにモンスターと呼べる物だった。
 
「す、すごい、なんてパワーだ!」
「気を付けてくださいね。出力が高すぎるから扱いはすごくデリケートになっています。それに限界が解らないのであまり出力を上げすぎないでくださいね。」
「はい。」
 
それからしばらく後にロードスが探しに来るまでブラフォードは新型を堪能していた。
そして3人は仲間達の元に戻っていった。
 
「どうだったブラフォード、新型とやらの性能は。」
「そうですよ、ブラフォードさん。ちょっと見ただけですけど、かなりパワーがあるように見えましたよ。」
「ええ、団長とんでもない化け物ですよアレは。出力でウチの2倍以上、装甲強度も最新型の5割り増し、おまけに稼働時間も2倍近くになっているんです。それに装甲強度は上がっていますが重量は最新の軽量型の2/3しかないんです。」
「なんだと!そんなにすごい物なのか。」「ええっ、そんなのアリなんですか?」
 
ロードスもエストも信じられなかった。そして、ブラフォード自信体験していながら信じられなかった。
「ええ、今でも夢見ているのかと思っていますがアレは本物です。」
「そうか・・・ならばこの仕事ぜひともうけるべきだな、儂もその新型を使ってみたいしな。」
 
その後、仲間達との間で多少の議論が繰り返されたがドイツからデコースが戻る頃には既に契約の細部まで詰められていた。
そして傭兵団『黒騎士』はゲヒルンアメリカ第一支部に所属することになった。
 
 
それからすぐ後にゲヒルンは解散し新たな組織として動き出した。
 
 
 
 
 
 
あとがき
 
すいません全16話で第一章を完結させる予定でしたがこの話の分だけ丸一話増えてしまいました。
それでも必ず次回で第一章を完結させて見せます。
それと今回は新キャラが大量に登場してきました。
前回言ってた通りFSSの方からの登場となりました。一応ここで全員の名前を紹介しておきます、本編ではある一人を除いて少しずつしか登場しませんので、おそらくこれだけ揃うのも後一、二回だと思います。
 
それでは傭兵団『黒騎士』のメンバーですが以下のようになっています。
団長        ロードス・ドラクーン    初老の白髪の男性。団員からは団長・親父さんと慕われている
副長        グラード・シドミアン    顎髭の壮年の男性。髭と髪型はまるでライオンの鬣のようになっている。副長として作戦・指揮も担当している。
情報・狙撃担当   バーバリュース・ビィ    紳士風の男性。実際にイギリスの貴族の出身らしく男爵と呼ばれている、家族は娘二人(一人は養女:町)
斥候・薬物担当   アーレン・ブラフォード   髪の長い若い男。背が高くインディアンのような服装をしている。
近接・格闘戦要員  デコース・ワイズメル    金髪の若い男。何時もふざけたような態度をとっているが戦闘能力は最強、家族は妹のバーシャ。
近接支援要員    ヨーン・バインツェル    黒髪の少年。14歳くらい元気そうなの少年、戦災孤児、まじめな性格のためデコースに良くからかわれる。
またの戦闘要員以外に下にある女性達が活躍しています。
作戦参謀      エスト・カーバイト     栗色の髪の長い女性。団長ロードスの元で育てられていたモラード博士の娘、作戦立案能力に優れている。
会計・物資調達担当 バーシャ・ワイズメル    栗色の髪を肩で切りそろえている女性。エストによく似ているが血のつながりは無い。デコースの妹
衛生・治療担当   パルスェット        茶色の髪の少女。ヨーンと同じぐらいの年齢の少女、戦災孤児でヨーンと一緒にロードスに拾われる。
また今回出番がありませんでしたが
機材整備担当    京
機材整備担当    町
おまけ       クリスティン・ビィ
となっています。
またこれ以外にもアメリカ第一支部の所長としてモラード・カーバイト博士が登場しています。
FSSに詳しい方ならお解りだと思いますが、かなりいい加減な選別をしています。
それでも人員的にはかなり面白い構成にしてみました。
しかし登場したばかりの彼らですが、上に書いたように次からは一部の人しか出番が無くなってきます。
次回は舞台を再び日本に戻しゲヒルンでの最後の話となります。
 
あと、スーツアーマーの設定についてですが、これは私のオリジナルで基本的な形状はヨーロッパの中世の甲冑や戦国時代の鎧の様に人間の体の上に装甲(甲冑)を着込むと言った感じです。(以下の設定はあまり本編とは関係のない説明です)
ただし装甲内部に人工筋肉を張り、内部の人間の動きをトレースしてその力や瞬発力を増幅させる機能があります。
発表された初期のモデルは装甲の関係で間接の可動範囲に限界があったが、現在では装甲の代わりに防弾防刃繊維を張った物が登場してきています。
最初期の物のイメージは宇宙飛行士の宇宙服に装甲を付けた様な感じで、現在の装甲タイプは重甲冑のようなフォルムで重量級の装甲タイプはガンダムのドムの様な感じです。
重量型はその重量以上の運動性を与えるためにホバースラスター等を装甲に内蔵しています。
最新型のジャケットタイプの物はアニメ「スプリガン」に登場していたアーマード・マッスル・スーツにプロテクターを取り付けたような感じでイメージしています。
ちなみに今回ブラフォードの使用していたのはシンとユイの最新型試作機「カルバリィ・C」というモデルで現行型の装甲タイプを薄くした高機動モデルです。
これも暫くは登場の予定はありませんが結構バリエーションを考えています。機会があったら他のも登場させます。
 
 
詳しいキャラ紹介や時系列の流れはその内にまとめてみようと思います。
 
それでは次回第一章最終話“NERV”をおたのしみに。
 
PS.今回出てきたバランシェ博士達に関しては特に説明の必要はないと思いますが、彼らはシンジと綾です。
   二人は再会してからアメリカ支部に転がり込んでモラード所長の世話になっているという設定にしています。