序章 第6話.MH
 
地下整備場
 
そこにはラキシスのKOGだけでなくもう一機のMHの姿があった。
それはKOGに対を成すかのように白銀の装甲を身にまとっていた。そして白銀の機体の肩の装甲はまるで天使の翼のようである。
 
「この子はセラフ・ミラージュって名付けたの。ホントはソープ様に黙って作ったからミラージュの名前入れちゃだめなんだけど・・・誰も見てないし、ミラージュマークも入れてないから大丈夫だよ。」
「もしミラージュマシンだというのが問題ならシュペルター・サードと名乗ると良いだろう」
 
そう、これはマキシマムのかつての愛機に搭載されていたのLEDミラージュ用のスーパーイレイザーエンジンを流用した機体である。
すなわち、この機体はれっきとしたミラージュマシンである、しかもこの装甲の色からはこのMHはこう呼ばれるはずである。
 
「白銀の騎士(ナイト・オブ・クローム)」と
 
「これが僕たちの機体?」「す、すごい、なんてきれいな・・」
「そうだこれはお前達の機体だ!そしてシンジお前は今日から3代目シルバーナイトの銘を名乗るがいい。それはかつて我が父が、そして友でありライバルが受け継いだ銘だ!その名に恥じぬように精進するがいい」
 
シルバーナイト、白銀の騎士に乗る者の異名であり、かつてはマキシマムの父である剣聖ダグラス・カイエンが、友でありライバルもあった強天位騎士ジャコー・クオン・ハッシュがその銘を名乗っていた。
 
「し、師匠、ぼくが、そんな」
「そんな情けない声を出すな、曲がりなりにもお前は私の教え子だ、そして私が認め天位騎士として相応しい力を与えている、自信を持て。」
「は、はい・・・はい!必ず立派な騎士になって見せます。」
「おめでとうシンジ」「おめでとうございます、マスター」
「ありがとう姉さん、綾。」
 
「さぁて、早速乗ってみて起動をしてみて、ふたりとも」
「「はい」」
 
二人はそれぞれのコックピットに収まっていく、そこは二人のために特別に用意された場所である。
まるで誂えたかの用に二人の体は違和感無くシートに収まっていく。
そしてシンジと綾は起動準備をする、綾が起動キーをいれ機体と同調する。その瞬間、機体に綾の意志とも言うべき物が駆けめぐる。そして、
 
「イレイザーエンジン始動!」
 
フィィィィン、フィィィィン、
二つの鈍い音が響き渡る、そして音質が変わる
キィンキィンキィン、キィンキィンキィンン
鈍い音は甲高い金属音になり整備場に鳴り響き、その全身に力がみなぎる。
そして白銀のMHがその目を開く。   
 
「セラフ・ミラージュ、シュペルターサード起動!!」
 
コックピットの中で二人はこの機体の秘めたのすさまじさを感じ取っていた。
シンジにとってこの機体が相手ではエヴァと言えども敵ではないと感じられた。それほどの圧倒的な力であった。
ラキシスとマキシマムが起動を終了させ、降りてきた二人を迎える。
 
「二人とも、本当におめでとう。」「二人とも立派になったな。もうこれで一人前だ。」
「「ありがとうございます!!」」
「でも気を付けてね、この子はまだ起動できるだけでおそらく戦闘は無理だと思うの。」
「そうなんですか」
「ええ、細部の調整が間に合わなかったの、それに戦闘データもゼロの状態だからそっちもどうにかしないといけないの。ゴメンねこんな中途半端にしてしまって。」
「いいえここからは綾と二人で何とかしてみせます。それにこれは僕たちのMHなんです、向こうに行ったら僕たちで整備しないといけないですから。」
「はい、姉様。心配しないでください、私がきちんと面倒を見ます。」
「二人とも、この子のことよろしく頼むわ。」
 
 
マキシマムとラキシスはとても嬉しかった、それはシンジと綾がとてもたくましく育ってくれていたからである。二人ならきっとこのMH何とかしてみせると確信していた。
 
「さて、二人とも上に行ってこれからの事を相談しましょうか」
「「はい、」」
 
4人が再び応接室に揃い、そしてマキシマムから今後のことの説明を受ける。
その内容の大半は、シンジ達を過去へと遡らせることであった。
 
「以前にも言ったことがあるが、神だけに限らず過去に戻るいうことには凄まじく制限を受けることがある。私自身、以前過去に戻ったときには厳しい時間制限を受けた。だが今回はそれを回避する方法を考えてある。」
 
マキシマムはあっさりととんでもないことを言っている。それはすなわち神自らの掟破りである。
マキシマムの考えた方法とは複数のS2機関を持つシンジの体を分解して時間を遡るエネルギーとする方法であった。
最初この考えを聞いたみんなから反対にあったが、実はこうしないと神として力のありすぎるシンジは時間を遡る際に世界そのものに拒絶されてしまう可能性があったからである
つまりシンジは肉体を持ったままでは時間を遡れないと言うことであった。
この意見を聞いてシンジと綾はひどく落ち込んだ。しかし、ラキシスから提供されたある物のおかげでその問題は一気に解決した。
 
それは、ドウターと呼ばれる光子生殖基であり人間の「心」精神・記憶・経験といった物を肉体の情報と共に記憶しておく素子であり。これに情報を送り込んだ人間が死ぬと全く同じ記憶と外見を持って再生するという物でもある。
ジョーカー太陽星団でもただ一つしかなく、しかもそれはマキシマムの師匠ログナーが使用していて、実際に使える物はもう無いはずだった。
しかし、ラキシスは長い旅の間にとある惑星で二個一組のこのドウターを入手していたのである。
これさえあれば、シンジと綾の二人を無事に過去へ戻ることが出来るだけでなく、向こうの世界では孤立無援の二人にとって「不死」という強力な武器を手に入れることにもなる。
 
結局、シンジと綾はラキシスを見送った後マキシマムにMHと共に過去に贈ってもらうこととなった。
今、二人は旅立ちの準備で大忙しであった。それは、何も二人の準備だけではなくラキシスとマキシマムにささやかながらお礼をしようという二人の心遣いだった。
そして二人がパーティの準備を終えた頃、ラキシスも旅立ちの準備が終わり、マキシマムもまたシンジ達のMHをドーリーに積み込みを完了していた。
 
そして、ささやかな最後の晩餐が始まった。
 
「師匠、姉さん今日まで色々とりがとうございました。」
「ううん、こっちこそ20年とっても楽しかったよ。色々とありがとう。」
「ああ、私もお前が最後までついてきたことをとても嬉しく思っている、よくがんばったな。」
「・・・・・」
 
綾はさすがに不安そうだ。
確かに綾は生まれてからまだ10年も立っていない。なのに数少ない肉親と呼べる存在と分かれなければならないのだ。
 
「姉様、兄様もう会えないのですか?」
「ああ、おそらくはもう2度と会うことはないだろう。だが、生きている限り出会える可能性はゼロではないのだ。」
「ええ、でもひょっとするとまたすぐに出会えるかもしれないわよ。」
「そうですね、生きていれば何だって出来ます。可能性はゼロじゃないんですね。」
「そうだ、シンジ諦めるのは死んでからにしろ。」
 
相変わらずのマキシマムの非常識な言葉にシンジは苦笑を漏らした。
 
「師匠そんな無茶な、死んじゃったら諦めるも何もないでしょう」
「馬鹿もん、常にそういった心構えでいろ。生きている限り前に歩み続けろ、振り返るのは最後にしろ。第一おまえ達はこれから完全な不死の存在になるんだぞ。そんなこと気にするな」
「はい」
 
確かに師匠の言う通りだった、自分たちは灰になっても再生できるようになる。
それならば後悔なんてしてはいられない。
そしてシンジは嬉しかった、師匠が自分たちのことを心配してくれている。
それだけで十分であった。
 
そうやっていく内に別れの時はやってきた。
ラキシスはKOGに乗り込み、空間の歪みを探す。
そして、そこへ飛び込もうとする。
 
「みんな、元気でね!」
「姉上それではまた何時の日にか」「はい!姉さんもお元気で」「姉様!さようなら」
 
それぞれが短いながら自分たちの思いを告げる。
そしてラキシスはKOGと共にその闇の中に消えていった。
 
「姉さん・・・」「姉様・・・」
「さて、次はお前達の番だ準備は良いか?」
「「はい」」
 
セラフ・ミラージュを納めたドーリーの前で二人は互いの手を繋いだまま立っていた。
 
「では二人とも心を平静に保っているんだ、いくぞ!」
 
マキシマムがその太刀を振るうとシンジと綾のからだが少しずつ消えてゆく。
 
「綾、あや・・・」「マ・マスター・・」
 
互いの名を呼びながら二人の体が消えてゆく、そして二人の消えた後には幾つかの真紅の球体と光り輝く結晶が残されていた。
S2機関とドウターである。
S2機関に向かってマキシマムはもう一度太刀を構える。
そのとたんS2機関を中心として周囲が闇に包まれていく。それはマキシマムを、そしてドーリーはおろか辺り一帯を包み込んでゆく。
全てが闇に包まれたのを確認するとマキシマムは太刀を振り下ろした。
その瞬間闇の中の空間が断ち切られ虚空が生まれる、全てが引き寄せられてゆく。マキシマムを除いて。
 
全てが虚空の中に消え失せた後、マキシマムはただ一言こう言った。
 
「それでは私も行くか。」
 
そういって彼もまたその姿が消えていった。まるで幻だったかのように。
 
そしてこの世界そのものが全て無へと回帰した。
 
 
 
 
 
あとがき
 
おかげさまを持ちまして
やっと異世界編とも呼べる序章が終了しました。
 
今回はついにシンジ&綾専用MHセラフ・ミラージュ:シュペルター・サードが登場しました。
この期待の全体のイメージはプロトタイプKOG オージェ・アルスキュルです。
エルガイムのオージェとは少し違います。
実際に私のイメージラフでは頭部はオージェよりも破裂の人形やクラウド・スカッツの様な形で、手足もレッドミラージュのようにがっしりとした形ですが鋭角的なデザインをしています。
そして肩の装甲はオージェと同じくアクティブ・バインダーですがデザインを天使の翼のようにしています。(要するにガンダムWのゼロカスタムみたいな感じです)
とまあえらく具体的なイメージですがあんまり気にしないでください。FSSを知らない人にはまったく解らないようなこといってしまいすいません。
 
あとイレイザーエンジンですがこれも詳しい説明を省かせてもらいます。
なぜなら、まるっきりFSSの文章を書くだけになってしまうからです。それに私自身良く理解していませんから。
 
まあ、次回から二人とも過去に遡り活躍する・・・・事にはなりません。
既に次からの第1章は第2話まで書き上がっており今第3話に取りかかっています。
先のことはあんまりいえませんが、次回シンジはとんでもない事態に陥ってしまいます。
おまけにそのせいで綾はしばらくお休みになります。
詳しくかけませんが、まだおとなしく話は先に進んではくれません。
 
それでは続きをお待ちください
 
PS:実は続きなんですが書き上がっていても読み返すと誤字脱字が沢山、おまけに表現のおかしい所もあります。
現にこれまでアップされた物にも沢山あったと思います。見直しをしたつもりでもそれがけのミスがあるので、みなさんおかしな所がありましたらメールにでも書いておくってください。
ある程度まとまると改訂版(修正版)を出すつもりです。(あくまでつもりです)
 
 
FSSファンへのお詫びと説明
MHの設定、並びにシルバーナイト・ナイトオブクロームと言った名前の設定こちらに関しては私の勝手な解釈でこの様にさせてもらいました。
納得がいかないと思いますがなにとぞご勘弁を。
それとドウターに関する設定はFSSの物を元にさせてもらいましたが、こちらは実際にはログナーの物とは大分かけ離れています。
こちらも私の勝手な解釈と言うことで許してください。
実はドウターを使うことを決めたのは例のタイムパラドックスうんぬんの話を決めたからです。
簡単に過去に戻ったのでは面白くないと言う考えからこんなめんどくさいことをしました。
あと暁姫(LEDミラージュB4デストニアス)の方もスタント遊星戦でファティマを射出後MHとともに行方不明(死亡)という設定にさせてもらいました。だって本編がそこまで行っていませんから。
次回からはしばらく綾もお休みですし、MHの出番もありません。おまけにシンジの出番も訳あって減ってしまいます。
 
そんなこともあり次回からしばらくこのお詫びと説明はおそらくないと思います。
ただ、みなさんからのアイデアや希望は全てとは行きませんが面白い物が有れば採用させてもらいます(間に合えばだけど)
そんなわけでこのお話の感想などお待ちしていますのでよろしく。