騎士と妖精と熾天使の幻像
 
序章 第5話.成長
 
 
綾の目覚めからさらに数年後、既にシンジの力はマキシマム相手に何とか互角に渡り合えるようにはなっていた。
既に全ての天位・剣聖剣技を修得し、最近ではMHの訓練も受けその中でモータースキルも修得していた。
もっとも、剣聖と呼ばれたマキシマムに比べ実戦経験の劣るシンジでは、本気になったマキシマムの相手ではない。
そして最近ではシンジだけではなく綾も同じように剣の稽古を受けていた。
マキシマムにしてもシンジだけではなく、自分の妹にも優れた剣の才能があることを喜び、惜しげもなく天位・剣聖剣技を教えてゆく。
ただし、シンジとは違いミラー・カルバリィブレードといった剣技は使えなかった。
 
 
そんな風に時間が流れていく中、相変わらずラキシスは何かをやっているようだった。
昼間はほとんどMH整備上に詰めっきりで、夕食になると家に上がってくるといったことを毎日繰り返していた。
以前練習用にMHシュミレータを作ったこともあり、シンジたちも何かを作っているだろうということは察していたが、それが実際何なのかということまでは解らなかった。
実は、ラキシスとマキシマムは自分達がそれほど長い時間シンジ達と居られないということに気がついていた。
それはラキシスにとって新たな旅立ちであり、シンジ達との永遠の別れであった。
 
ラキシス達が急いで作っているものそれは、MHであった。
それはマキシマムのかつての愛機であったミラージュシリーズ最強の一つ、B4型デストニアスと呼ばれたMHのイレイザーエンジンを流用して作られたMHであった。
もっとも、マイトはおろかマイスターでもないラキシスにとって製作は難航を極め、マキシマムの協力を得てもまだに第2次装甲の取付までしか完了していなかった。
 
そうしている間にも時は進み、そしてさらに数年の後にその時が来てしまった。
しかしシンジと綾にはその日まで何も告げられていなかった。
 
その日も朝、ラキシスが起きてくるよりも早くシンジと綾は朝食の準備をしていた。
料理の出来ないラキシスのために料理は10年以上シンジの仕事であった。もっとも綾が生まれてからは二人で食事を作るようになっていた。
 
「おはようございます、姉さん、師匠。」
 
すでにシンジがラキシス達と出会ってからおよそ20年近い時間が過ぎていた。
シンジは全く年をとっていなかった。
背はあまり伸びておらず、髪だけが伸び今では腰に届くほどである、中性的な顔立ちも一層と美しくなっており、その髪の長さもあってまるで女性のようである。
腰に太刀を帯びているが、体つきもとても刀を振るうようには見えないほどほっそりとした体格をしている。
 
「おはようございます。姉様、兄様。」
 
綾も生まれたときから、髪が少し伸びただけで体つきなどは殆ど成長していない。というより年を取っていない。
綾は生まれたときに既にシンジと同年代の姿をしていた、ファティマは成人後には成長が止まり年を取らなくなる。
だがこうして二人が並ぶとまるで兄妹か姉妹のように見える。
それは、二人とも性別は違うが中世的な顔立ちであり、どことなく似ている為である。
それは綾がシンジの遺伝情報を元に外見を調整されている為とはいえ、実の兄妹と言っていい程よく似ている。
 
その二人の関係も今では誰が見ても恋人同士と言ったモノである。かつてのシンジからは信じられないほどだった。
今のシンジにはかつての弱々しい雰囲気はかけらも存在しない。
全てはマキシマムの訓練のおかげである。
地獄とも思える訓練のおかげ、でシンジには大抵の事には怯えたりしなくなった。
 
「ふたりともおはよーう」
 
ラキシスは相変わらずであった。
出会ったときから何も変わらずまるで時間というモノと無縁のようである。
 
「姉上、綾、シンジおはよう。」
 
そしてマキシマムもまた出会ったときから何一つ変わらぬその姿を現した。
 
「さあ暖かいうちに食べましょう」「兄様、姉様どうぞ」
「「「「それじゃあいただきます」」」」」
 
ちなみにこの家では朝食は和食であった。
いつもなら食後はマキシマムとの稽古であるが今日は少し違っていた。
 
「あれ?師匠、今日の稽古は?」「兄様?」
「今日の稽古はなしだ。」
 
シンジと綾は不思議そうな顔をしている。
 
「もうお前達には稽古の必要はない。」
「え、それじゃあ、まさか」
「そうだ、姉上は今日中に他の世界へ行かなければならない。そして、私も近い内に元の世界へ戻らねばならん。」
「そんな急な!」「そうです、兄様何もそんな急に行かなくても」
「二人とも何時までも私たちに甘えているつもりだ?もうお前達には十分な力を与えているはずだ。天位・剣聖剣技だけではなくこちらの世界ではオーバーテクノロジーと呼ばれる知識まで与えてあるのだ。これ以上必要なことはもう無いだろう。」
「「でも、」」
二人はまだ納得がいかない。
 
「ごめんね、もっと早くに知らせたかったのだけど時間がなかったの。」
 
ラキシスにとっても辛そうである。彼女の生きてきた時間からすればほんの一時であるが、実の兄妹のように暮らした家族である。別れが辛くないはずはない。
 
「もうこれ以上言うな、姉上も辛いのだ。解っていたはずだ、いつかは別れの時がくる。それはあらかじめ言っていたはずだ。」
「いいのよ蒔子、私もちゃんと言わなかったんだから。でもね、急いだおかげで何とかモノになったわ。」
「姉上、間にあったのですか?」
「ええ、何とか。調整はまだ全然だけど起動可能な所までは持っていけたわ。
実はね、二人に私からプレゼントがあるの。まあ、実際に見てもらった方がいいわね。ついてきて、こっちよ。」
 
二人はラキシスに導かれるまま地下の整備場まで来た。
そこで見たモノはなんと・・・
「「これは!!」」
 
 
 
 
あとがき〜
 
やっとです、ついに次の話で登場します。例の物、MHです。
これもFSS読んでないと分かりにくいですが、MHとは全長18メートルぐらいのロボットです。主な武器は剣・槍・斧といった接近戦用の物です。これは騎士の反射神経・回避能力の前には火器はまず命中しない事と、ある程度の重量を持った物理攻撃は装甲等を破壊するのに有効なのだからです。
というより騎士の反射神経で避けるのなら、当てられるのは騎士のスピードということになります。すなわち上に書いたような武器になるわけです。
一応、対人・対物用の火器は内蔵されていますがMH同士の戦いでは牽制にもなりません。(例えるならガンダムの頭のバルカンのような物、まさに豆鉄砲)
ただこれにはバスターランチャー砲という例外もあります。これはそのうち登場させる予定なのでその時説明します。
 
ともかくこれでシンジも一人前の騎士です。
今回は途中経過と言うことですが、実はこの5話は本来次の6話と一つでしたがあまりに長すぎたのでちょうどいい所で分割しました。
 
そんなわけで結構短くなっていますが次の6話は分割されても4話と同じぐらいの文量があります。そんなわけで続きを楽しみにしてください。
 
今回は話も短かったのであとがきも短くさせてもらいます。
 
FSSファンへのお詫びと説明
ラキシスはミラーを使えます。でも綾にはダイバーパワー無しという設定でミラーを使えなくしました。あとカルバリィブレードも使えません
逆にシンジダイバーパワーの代わりに使徒の力を代用しています。
だから一応全ての剣技を拾得しています、ですが苦手な技もありますのでこの話の中では全く使用しない予定の技もいくつか有ります。
もっとも例外がいくつか有ります。それはブレスト・ノックダウンとレイダウン・グランドスラム・かあちゃんソードです。さすがのマキシマムもこんな技は教えないでしょう
それとおふざけで綾の方は逆にかあちゃんキック・ねえちゃんキック・ドラゴン殺しを拾得しています(もちろんこっちの師匠はラキシス)。が、使う予定は全くありません!
次では綾と並んで設定を無視した存在が登場します。言わなくてもお解りだと思います。
その内に暇な時にでもラフを描いてみようかな〜なんて思っていますが、期待などしないでください。何時になるかまったく解りません。