卒業式の日、式自体は多少のハプニングがあったものの、むしろそれが単調な式に彩りを添えることになった。 式終了後は、かねてからの打ち合わせどおりマリア様の前で記念写真を撮ることになっている。 マリア様の前に移動した山百合会のメンバー達は、さっそく記念写真を撮り始めた。 皆、はしゃいでいた。まるで夢の中の出来事のようだった。 薔薇別・学年別など大方の組み合わせで撮り終えた所で、 「カメラちゃん、もう一枚撮ってくれるかな?」 聖はそう蔦子に話し掛けると、近くにいた祐巳の手を取って引き寄せた。 「きゃ?!何するんですか、白薔薇さま!」 突然の行為に祐巳は少し驚く。 「いや〜、この姿で祐巳ちゃんを抱くのも今日が最後だからさ、抱き納めって言うのかな? そこをぜひとも一枚撮って欲しいと思ってさ」 そう言いながら背後から祐巳を抱きしめる。 祐巳はちらりとあたりを見回す。このチャンス逃すものかとばかりに駆け寄ってきた蔦子さん、そして少し向こうには紅薔薇の二人。 (ああ、お姉さま怒ってるな……) 心の中でお姉さまに頭を下げながらさらに向こうを見る。その目線の先には志摩子さんがいた。 (志摩子さん、ありがとう) 志摩子さんもこちらに気がついて微笑んでくれた。 (良かったわね、祐巳さん) なんだか志摩子さんがそう言っているように見えた。 さらに振り返って白薔薇さまの顔を見る。その顔は、今まで見た中で最も穏やかで、優しく見えた。 フレームにマリア様が収まる位置に二人は移動して蔦子の注文に応じて何枚か写真を撮ってもらう。 「こんな感じでいいかな?」 白薔薇さまが祐巳の両肩に後ろから手を添える。 「そうそう、そんな感じー。あ、もう少し顔を近づけてー」 白薔薇さまの顔が祐巳の真横に来る。白薔薇さまの吐息が祐巳の頬にかかりそうだった。 「じゃあ、いきますよー。ハイ、チー……」 シャッターが落ちるほんの一瞬前、祐巳は素早く横を向いて白薔薇さまの唇からすこしずれたほっぺに口付けをした。 「ズ……?!」 パシャッ! シャッターの落ちる音がする。そして次の瞬間、 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 その場にいた志摩子を除く山百合会のメンバーすべての口から、悲鳴とも怒声ともつかない声が流れた。 あっという間に二人は囲まれて問い詰められる。 「ちょっと!聖!これはどういうこと!!」 「聖!!ずるいわよ!!」 「白薔薇さま!!祐巳に何をさせたんですか!!」 「祐巳ちゃんはそんな破廉恥なことなんてしないって思ってたのに……」 「白薔薇さま!!祐巳さんにそんなことさせるなんて卑怯です!!」 なぜか聖だけが問い詰められる中、一瞬聖は祐巳と目を合わせた。 その顔は満面の笑みに包まれていた。その顔を見ながら、祐巳は心の中で呟いた。 ――白薔薇さま、私も白薔薇さまのことを愛していますよ。 END
あとがき まず最初に、私にこのような発表の場を与えていただいたTTGの管理人さまに感謝します。 初投稿、初SSということでかなり拙い部分もあるSSですが、ご照覧いただければ幸いと思います。 他のSSサイトの作品に影響を受けた部分もありますので、気付かれてもそっとして いただければ…(苦笑 なお本編中、白薔薇さま⇔聖などキャラクターの呼称の表記が統一されていませんが、 意図的な演出ですのでそこは汲んでやってください。 本作は当初全三話構成で、最後は写真撮影に向かう道すがら志摩子がすべてを悟って 祐巳におめでとうを言う――そんな感じのラストでしたが、投稿に際して思い切って コミカルな感じで終わらせるべくその部分を第四話として再構成してみました。 ですので、少々蛇足臭いと感じるかもしれません。 そこらあたりの感想をいただければ嬉しいです。 本作が好評ならば、これからも聖×祐巳のSSを書いていけたら良いなぁ、と思っています。 それでは、ごきげんよう。
黄薔薇放送局 番外編 聖 「……(本編でもこうなるのかな?)」 江利子「(ニヤニヤ)」 聖 「!? いきなり背後に立って何やってるのよ!」 江利子「いやいや、さっきからずっといたわよ(ニヤニヤ)」 聖 「……」 江利子「……」 聖 「……」 江利子「……」 聖 「そ、それはともかく」 江利子「ともかく?」 聖 「ともかく……そ、そう! D15Bさん、こんなすばらしい作品を書いてくださってありがとう!」 江利子「そうね。作者さまへのお礼は大事よね。 D15Bさま、ご投稿ありがとうございましたm(_ _)m すばらしい作品を書いてくださったD15Bさまにぜひご感想をお願いしますわ。 ……さ! お礼も終わったし、見事祐巳ちゃんをモノにされた聖さまからコメントを」 聖 「べ、別にそんなのいいじゃない。た、ただ……」 江利子「ただ?」 聖 「や、やっぱり祐巳って可愛いよねぇって(真っ赤)」 江利子「(惚気かよ) はいはい、それはよござんした」 乃梨子「ねぇ、由乃さま」 由乃 「なに?」 乃梨子「上のお二人の会話、何にもオチが付いていないみたいですけど」 由乃 「あー。放送局書いている奴がさぁ…… 『ハッピーエンドにそれ以上どんな駄文を書きちらせと!?』 と開き直って、オチらしいオチも付けずに無理矢理終わらせただけよ」 乃梨子「……こんな失礼な態度とって投稿作家様ますます減っていかないですかね?」 由乃 「まーその時は自業自得何じゃない?」 乃梨子「はぁ」 由乃 「まぁ上はあんな感じだし乃梨子ちゃん、締めをぴしっと頼むわ」 乃梨子「……それは年長者の由乃さまの役割では? ……いいです、やります D15Bさま、そして読んでくださった皆様ありがとうございましたm(_ _)m さて、感想は作者の原動力ともいいます。 最近はSSリンクのも更新も寂しいようですが、 こういうときこそ新しく誕生された作家さまにぜひ応援のメッセージを。 それではごきげんよう」 由乃 「よ、お見事!」 乃梨子「ありがとうございます(ため息)」 令 「最後の締めくらい私にやらせてくれてもいいのに(;´д⊂)」