シンクロテストを終えて着替え終わった後、
アスカはレイの見舞いに行くことにした。
まさか、ミサトが来ているなんて、ことはないわよね。
そう思いながら、レイの病室のドアを軽くノックする。
「どうぞ。」
返事を聞いてから、そっとドアをあけた。
どうやら、ミサトは来ていないようだ。
アスカにしてみれば、また、
『あれだけ落ち込んでいたのに、どうしてふっ切れたのか』
なんて話を蒸し返されたくないのである。
ほっとして病室に入る。
シンジもいない。 既に帰ったようだ。
レイひとりが、水色のパジャマを着てベッドに横になっている。
それにしても、窓ひとつないなんて、趣味の悪い部屋ねぇ、
と思いながらアスカは、
「どう、調子は?」
と尋ねた。
「調子ってなに?」 いきなり切り返された。
アスカは心の中で、額に手を当てて耐えた。 これだもんねぇ。
「ま、まぁいいわ。どう、シンジはやさしくしてくれる?」
「碇君は、いつもやさしいわ。」
く〜っ! あてつけやがって。
それじゃあ、【とっておき】をあげるわ。
レリエル戦の後、シンジが病室で目覚めたときに、あんたが言った台詞よ。
「そう、よかったわね。」
どうだ、まいったか。 ・・・と、あたしはレイの見舞いに来たんだったわね。
元気そうね、とアスカが言おうとしたところへ、
「ありが、とう。」
「へ?」
「心配してくれて、ありがとう。」
レイは、まっすぐにアスカを見て言った。
実は、レイは最初の受け応えが少し無愛想だったかも知れないと、
反省して言ったのだが、アスカにはこれ以上ない驚きだった。
「あんた、一人前にお礼言えるんだ。」
アスカは驚きのあまり、とんでもなく失礼なことを口走る。
「どうして?」
「ああ、いや、ゴメン。 今のは忘れて。
そっかぁ。シンジね。
(シンジが、見舞いがてら、この子にいろいろ教えてるのね)」
「碇君が、どうかしたの。」
「ううん、なんでもない。
で、どう? レイ、何か困っていることはない?」
レイは、ゆっくりとかぶりをふった。
「ありがとう、大丈夫よ。」
その後が、アスカの予想を超えていた。
「初めてね、名前で呼んでくれたの。」
そういうと、レイは微笑んだ。
『う・・・。 どうして、そんなきれいな顔で笑えるのよ。』
それは、どこかぎこちない笑みではあったが、だれをも魅了する微笑だった。
『これも、シンジが教えたの?』
やっぱり、退院してからも、レイにとってはシンジが必要かもね。
アスカは、あることを決断した。
それからしばらく、アスカは本日のシンクロテストのことを中心に、
(ほぼ一方的に)おしゃべりしてからレイの病室をあとにした。
「シンジ、帰ってる?」
帰宅早々、アスカはシンジの姿を探す。
「ああ、アスカ。お帰り。」
台所の方から、シンジの声はした。
アスカが台所に行くと、シンジは夕食の支度をしているところだった。
「どうだった、シンクロテストの結果は。」
「そんなもん、OKに決まってるでしょ。」
「そうかぁ、よかったね、アスカ! じゃあ、なにかお祝いを・・・。」
アスカは最後まで言わせなかった。
「どうでもいいわよ、そんなこと。 私にすれば、通過点なんだから。
それより、あんた、レイのことどうするつもりなのよ。」
「え、綾波? 綾波が、どうかしたの。」
「もうすぐ、退院なんでしょ。でも、当面左腕は動かせそうにないわよね。
で、誰がレイの面倒をみるわけ?」
「そ、そりゃネルフのスタッフが行ってくれるし、
ぼくだってお見舞いを兼ねて、食事の差し入れくらい・・・。」
「・・・だめね。」
「え?」
「あんたがレイの面倒をみなくて、だれがみるのよ!
でも、あんたをレイのところに泊まらせたら、
間違いが起きないとも限らないし・・・。」
「そ、そんなこと、できるわけないよ!」
シンジは真っ赤になって抗議するが、アスカは取り合わない。
「やっばり、ここに来てもらうわ。!」
「でも、部屋が足りないんじゃない?」 尋ねるシンジに、
「あたしがレイと同室でもいいわよ。
いろいろと、教えてあげないといけないこともあるし。
う〜ん、でも、荷物が入らないか。」
アスカは、少し考え、
「そうだ、どうせ隣の家にだれも住んでいないんだから、
ネルフの権限でそこも借り切って、
隣接しているリビングの壁をぶち抜けばいいのよ。
そうすれば、広大なリビングもできるし、一石二鳥よ。
あたしって、あったまいい〜!」
「え? ちょ、ちょっと、アスカ。」
「そうと決まれば、ミサトに電話よ!」
「ア、アスカ・・・。」
「いいから、あんたは夕食の支度の続きをしてなさい!」
「・・・はい。」
アスカから電話を受けたミサトは最初は、忙しいのに、とぶつぶつ言っていたが、
アスカが辛抱強く事情を説明すると、やがて納得した。
納得してからが、早かった。
ユイに連絡して了解をとりつけると、早速手続きを開始し、
ネルフの権限で業者を手配し、さらには技術部にまで手を回して、
2名ほどの応援を確保した。
そして、リビングの壁を取り払う工事は、どういうウラ技を使ったのか、
なんと明日中にやってしまうことになった。
シンジは、アスカとミサトの行動力には、目をみはる思いだった。
レイの退院は、部屋の改装した上で、
荷物の移動を済ませてからがいいというので、4日後ということになった。
翌朝、シンジが見舞いを兼ねて、そのことをレイに伝えに行くことになった。
「そうだ、たまには花でも買って行こう。」
シンジは駅前の花屋に寄り、幾つかの花を選んで花束にしてもらった。
花束を抱えて、店から出てきたところで、その少年に会った。
「やあ。」
銀髪の少年は、屈託なく笑って言った。
誰だろう、どこかで会った覚えもないが、と思うシンジをよそに、
「花はいいねぇ。 花は全てを満たしてくれる。
そうは思わないかい、碇シンジ君。」
「君はだれ? どこかで会ったっけ。」
「ぼくは、渚カヲル。君と同じ、【仕組まれた子供】さ。
フィフィス・チルドレンとして、ネルフに赴任することになってね。
君に案内してもらおうと思って、待っていたんだよ。」
「どうして、ぼくがここに・・・。」
不審に思って尋ねるシンジを、カヲルは不意に手で制した。
「え!?」
いぶかるシンジの前を、風に飛ばされたらしい白い帽子が転がっていく。
帽子はころころと転がり、歩道から車道に落ちたところで止まった。
それを追って、小さな女の子が走ってくる。
「危ないよ。」
まさに車道に飛び出そうとする女の子を、カヲルが素早く抱きかかえる。
ちょうどそのとき、歩道すれすれのところを、
一台のダンプカーが轟音をあげて走り過ぎていた。
実際、危ないところであった。
ダンプカーは帽子をまたぐ様に走り去ったが、
カヲルが抱き止めなければ、あやうく女の子は轢かれるところであった。
シンジは、車がもう来ないことを確かめて、帽子を拾って来た。
そのときになって、女の子の母親が駆け寄ってきた。
何度も二人にお礼を言う母親と別れた後、
シンジはカヲルをネルフに案内することにした。
『渚カヲル君か・・・。 少なくとも、悪い人ではないみたいだ。』
先程のことがあり、最初わずかに感じた警戒心はなくなっていた。
「あの、渚君。」
「カヲルでいいよ。」
「・・・カヲル君、ぼくはこれから、ちょうどネルフに行くところだけど、
よかったら、一緒に行かない?」
「ああ、ありがとう。
その前に、ぼくもその花屋にちょっと寄って行きたいが、いいかい。」
「うん、いいけど。」
カヲルは、花屋に立ち寄ると、黄色の薔薇を一輪だけ買った。
「カヲル君、それは?」
尋ねるシンジにカヲルは、
「これかい。別に深い意味はないよ。
ただ、君が持っている花束を見て、懐かしくなったから買っただけだよ。」
そういうと、カヲルはその一輪の薔薇をワイシャツの胸ポケットに挿した。
二人は歩き出した。
「花は、好きだよ。」
カヲルは、ひとりごとのように語り出した。
「ここしばらく、なにかと忙しくて、花を見ることもなくてね。
急に懐かしくなってしまったんだよ。
ぼくの生まれた家の庭にも、花はいっぱい咲いていた。
小さい頃は、その花たちに囲まれて育ったんだ。
とくに、薔薇の花が多かったね。
ふふ、セカンドインパクトが起きて数年しかたっていないというのにね。
当時は、裕福だったんだな、ぼくの家は。」
そういうカヲルの横顔は、どことなく淋しそうだった。
シンジは、カヲルの中にかっての自分と同質の、孤独の影をみた気がした。
シンジはいつものネルフ関係者専用ゲートではなく、
正門受付からネルフ施設に入った。
もちろん、カヲルが同行しているからである。
シンジが来客用のインターフォンをとって、カヲルの訪問目的を告げると、
指定の応接室にカヲルだけ入室し、待機するよう指示があった。
シンジがその応接室までカヲルを案内すると、
「ありがとう、ここでいいよ。 本当に助かったよ、シンジ君。」
とカヲルが言う。
「いいよ、こちらに来るついでだったんだし。」
シンジはカヲルの紅い瞳で見つめられると、なんとなく気恥ずかしく思い、
つい目をそらしてカヲルの胸の黄色の薔薇に目をやった。
「ふふ、気になるかい、この花が。」
「う、うん。 黄色の薔薇ってめずらしくて。 赤と白、それにピンクくらいしか、
知らなかったから。」
「黄色の薔薇の、花言葉は知っているかい。」
「ごめん、花言葉なんて、ほとんど知らないんだ。」
「今度、教えてあげるよ。 それじゃ。」
「うん、それじゃ、また。」
カヲルは応接室の中に消えた。
シンジは、そのままレイの病室へと向かった。
応接室の中で、カヲルは胸の薔薇を抜き取ると、まじまじと見つめた。
そして、その黄色い花に語りかけるように言った。
「そうとも、この花の意味を、たっぷりと教えてあげるよ、
碇シンジ君。」
カヲルは、花をみつめたまま、しばし微笑んでいた。
ユイの執務室__。
そこに、カヲルとの面接を終えた冬月と、その報告を受けているユイがいた。
カヲルはまだ、先程の応接室に待機させてある。
『よくもまぁ、ぬけぬけと。』
これが、冬月の感想である。
カヲルが携えたゼーレからの紹介状によれば、精神汚染を受けた、
弐号機パイロットの後任に、フィフス・チルドレンを赴任させるのでよろしく、
ということであった。
表向きはともかく、実態としてゼーレとは対立関係にあるネルフである。
そこへ、ゼーレの息がかかった者が送り込まれれば、
破壊工作要員と見るのが当然であろう。
もちろん、正門受付を通るときの自動スキャンと、面接前の身体検査で、
異常がないのは確認済みであるが、そんなヘマをするゼーレではない。
「セカンド・チルドレンは復調したので、いらぬ心遣いはけっこうだ、
とでもして、本国に送還するとして・・・。」
今後の対応を口にしようとする冬月に対して、
「いえ、あの少年はうちで引き取ろうと思います。」
と、ユイは言った。
「ユイ君!
それは危険すぎるぞ。」
「危険なのは、重々わかっています。
ですが、チルドレンの数は多いにこしたことはありません。
それに、相手の出方を知るうえでも、ここは様子をみるべきだと思います。
そして・・・。」
「そして?」
「もし、彼をこちらに引き込むことができれば、
あきらかにこちらが優位に立つことができます。」
「自信があるのかね。」
冬月の言葉に、ユイは黙って首をふった。
「自信がある訳ではありません。
ですが、そのときがくれば説得するだけの価値はあると思います。
私の勘ですが・・・。」
「私は、やはり反対だ。だが、司令代行の君がそういうなら、止めるまい。
では、まずシンクロテストからということになるが、それでいいかね。」
「ええ、けっこうです。」
結局、カヲルは受け入れられ、シンクロテストの準備が進められることとなった。
一方アスカは、部屋の模様替えで大忙しであった。
午前十時には工事業者が来て、リビングの壁の撤去を始めている。
その前工程として、壁側の家具の移動、レイの部屋への家具の搬入を行った。
午後になると、あらかた壁の撤去自体は終わり、
配線と塗装などの細かい作業に入る。
そうなると、今度は以前空き家だった方のリビングへの、
予定していた家具の移動だ。
もちろん、実作業をアスカがするわけではなく、専ら指揮・指図を行っていた。
実作業を行っているのは、ネルフの技術部から刈り出された、
2人の若手職員である。
このときのためにアスカは、昨夜のうちからパソコンのCAD機能を駆使して、
家具の配置をある程度決めていたのだが、実物を目の前にすると、
気が変わるのが、アスカの、アスカたる所以である。
ともかく、男手があるうちに、力仕事でやれるところは全部やっておこう。
そう考えるアスカであった。
気の毒なのは、今日の仕事は主にLAN工事(パソコン関係の配線)だと、
ネルフから聞いてやってきた、2人の若手職員であった・・・。
夕方が近づいてきた頃、ようやく作業は終わろうとしていた。
後は、コマゴマとした軽い調度品の配置だけである。
そのくらいなら、シンジにさせても大丈夫だろう。
(あくまで、実作業は自分ではしないアスカだった。)
「ふう。」
アスカは、一息ついた。
『あたし、なんでこんなにレイのために、一生懸命なんだろう。』
とも思う。
『ひいてはシンジのため?
シンジがレイのことを、大事にしているから?
でも、あたしだってシンジのこと嫌いじゃないんだけどな。
うん、加持さんの次に好きかも知れない。
でも、ねぇ。あれだけシンジを頼り切っている姿を見せられたら、
そして、人形らしくなくなってきた姿を見せられたら、
レイのこと、応援したくなるのが人情でしょ。
・・・ちょっぴり、淋しいけど。』
「あ、あの。もう、帰っても、宜しいでしょうか。」
技術部の若手職員に声をかけられて、アスカは我に返った。
「え・・・・・・?
え、ええ、ご苦労様でした。リツコによろしくね。」
アスカがそういうと、若手二人は逃げるように帰っていった。
まるで、アスカの気が変わるのを、おそれているかのように。
カヲルのシンクロテストは、弐号機の模擬体を使って行われた。
「まさか、信じられません!」
開始早々、マヤが悲鳴に近い声をあげる。
リツコも、モニターに現われた数字を見た。
「こんな・・・、こんなことって。
ありえないわ、パーソナルパターンの設定も、なにもしていないのに。」
『やはり、彼女は眠っているのか。』
カヲルは、周囲の喧騒をよそに、そうつぶやいた。
『・・・彼女は心を閉ざしている。
だからこそ、僕は抵抗されることなく、
自在にアダムのコピーであるエヴァを操れるのさ。』
今度は、声には出さなかった。
『なにしろ、僕は【アダムより生まれし者】だからねぇ。
所詮、コピーに過ぎないエヴァの素体など、従順な子供でしかないのさ。
ま、あまり高すぎても、怪しまれるだろうから・・・。』
「90.9%!」
それでも、カヲルのたたき出した数値は、驚愕に値するものであった。
翌日__。
シンジとアスカは、ネルフ本部から呼び出しを受けた。
そこには、ミサト、リツコ、マヤの3人のほか、一人の少年がいた。
「紹介するわ。
渚カヲル君。
今日から、フィフス・チルドレンとして、あなたたちの仲間に加わります。」
ミサトの紹介に続いて、カヲルが挨拶する。
「よろしく。」
「よろしく。」
シンジが、あらためて挨拶を返すと、かすかに微笑をうかべるカヲル。
「よ、よろしくね。」
アスカの顔が少し赤い。
『や、やだ。どうして赤くなるのよ。』
幸いにして、ミサトはカヲルの方を向いていて、気付かれずにすんだ。
「彼は、すごいのよ〜。
弐号機の模擬体を使って、いきなりシンクロ率90.9%を出したし・・・」
お気楽にしゃべるミサトに対して、
「ミサト!」
リツコがやめさせた。
もちろん、アスカを気遣ってのことだ。
しかし、遅かった。
「それって・・・。私が、控えにまわるということ?」
アスカが、乾いた声で言う。
「あ、そうじゃなくてね、アスカ・・・。」
ミサトが、ようやくおのれのミスに気付いて焦る。
リツコはそんなミサトを横目で睨みながら、
言葉を引き継いだ。
「アスカには、これまでどおり、弐号機の専従パイロットをやってもらいます。
カヲル君には、たしかに素質があるけれども、
エヴァへの適性はなにもシンクロ率ばかりではないわ。
シンクロ率は、そのときどきで変化するものだし、
ある程度以上の数値があれば、後は実戦経験の方が重要よ。
そのことは、アスカもわかっているでしょう。
カヲル君は、非常時に備えての交代要員として登録しますが、
当面は、さらに細かいデータ取りと、戦闘訓練をしてもらうことになるわ。
依存はないわね、カヲル君。」
「ええ、おまかせします。」
カヲルは屈託のない笑みを見せて言った。
アスカは、内心ほっとした。
それと同時に、
これから先についての不安は、やはり拭い去れないでいた。
そして、そんなアスカをカヲルは値踏みする様に見つめていた。
・・・誰もそれに気付くことはなかったが。
初号機の中で、ゲンドウは言い知れぬ孤独を感じていた。
ここに取り込まれてから、会話ができたのはユイだけである。
それも、司令代行という忙しい身であるためか、なかなか時間を割いて自分に会いに来てくれるのも難しいようである。
『ユイ、おまえも、この様な孤独に、ずっと耐えてきたのか。』
先日のユイとのやりとりで、自分のおかれている状況と、ユイが自分に何を望んでいるのかは、わかった。
これまでに感じていた不安は、解消したと言っていい。
だが、不安がなくなった分、自分のことを理解してくれる人がほとんどいないということが、孤独感をさらに増大させていた。
この次に、ユイにいつ会えるのかは、定かでない。
待ち遠しいと思う反面、
『ユイ、おまえもこんな思いを、長い間続けてきたのか。
私が、初号機に話しかけてきたことは、いくらかでもおまえの救いになったのか。』
と考えていた。
『・・・?』
気配に気付いたのは、そのときだった。
見ると、例の子供が傍らにたたずんでいた。
ゲンドウの視線に気付くと、いつものようにふっと掻き消えそうな気配を見せた。
『逃げなくていい。』
ゲンドウは、できるだけやさしく言った。
子供は、去ることをやめ、おずおずとゲンドウを見上げた。
『私のことが、気になるのだろう。』
子供がこくりと頷く。
『では、いつでも来るといい。私は、いつでも歓迎するぞ。
淋しいと感じたら、私でよければいつでも相手をしよう。』
子供はゲンドウのことをしばらく見つめ、やがて嬉しそうにニコリと微笑んだ。
そして、一瞬の後、風のように消えてしまった。
『なんだ、恥ずかしかったのか?
せっかく、話相手ができるかと思ったのだが・・・。』
後には、再び静寂が訪れていた。
まだ、先は長い。
焦らずに行こう、とゲンドウは自分に言い聞かせるのだった。
あとがき
アスカが、健在です。
そこへ、カヲルが現われました。
アスカの不安は、現実のものとなるのでしょうか。
また、カヲルは一体、何を狙っているのでしょうか。
さらに、カヲルの異常に高いシンクロ率は、何を意味するのでしょう。
カヲルの過去が、これからのことにかかわってくるかも知れません。
次回をお楽しみに。