COUNT GETTER
|
「怒っているヴァッシュ」でリクエストいただきました。落書きを進呈、ということだったのですが、
絵一枚で怒っている理由を表現できませんでしたので、ちょっと解説をつけてみました。
なにやらウルフウッドの様子がおかしい。
隠し事をしている気配がある。
「なぁ、ウルフウッド」
「なんや」
仕事に行くようになって、たたき起こされるまで寝過ごすことはなくなったものの、休日にまでさくさくと身支度を整えてテーブルについているというのは解せない。
第一。
「今日は君も僕も仕事ないな」
「そやな」
「どっか遊びに行く?」
「・・・別に、ええ」
そう、昨晩だって本当ならばベッドを共にしたってよかったばすだ。
最近になってようやく、ためらわず腕をひくようになって、温もりを分け合って眠る日も増えた。
すこし前までややこしい目線で訴えて適わず、情けない顔で部屋を後にしていたウルフウッドなので、こんな絶好のチャンスを逃すとは思えない。
「だったら、いちにち、家でだらだら過ごそうか・・・」
語尾に少しばかり甘い雫を垂らす。
微かに体が揺れて、ウルフウッドの動揺と高調が伝わった。
かたり、とイスをひいてウルフウッドの側に周る。
ウルフウッドの肌に飢えているのは、紛れもない事実だったので、ためらう理由はなかった。
「ん・・・」
肩に手をおいて、ゆっくりと口付けた。
どうしようか、と惑う気配も髪に手を差し込んでゆっくりとなでると合わせる唇が深くなった。
「…朝っぱらから、こんな所でスルんかい。ワイそんな色情とちゃうで」
腕を外されて、ひどく野卑めいた言葉が投げかけられた。
おかしい。
ウルフウッドが、照れたり動揺のあまりふさわしくない言葉や言動をとるのは今にはじまったことではないが、繰り返すが最近ようやく、固さがとれてきて、なんというか、いい感じだったのだ。少なくとも先週の半ばまでは。
今だって、ウルフウッドが自分を欲しがったのが絡めた舌先からも伝わった。
唇が離れる寸前、はっ、と何かに気がついたように体が固くなったのだ。
「・・・じゃあ、僕が色情なんだな」
拒否されてむかついたのが八割、秘密を暴きたいのが二割ぐらいだろうか。
ウルフウッドのシャツの襟首を掴み、にこりと笑ってボタンが飛ぶのもおかまいなしにその肌を開いた。
「・・・!!!」
左肩から胸のあたりに、汚いかさぶたと紫と黄色の変色した肌。
「これ・・・・」
何か隠しているとは思ったが、まさかそれが怪我だとは想像していなかった。
もしかしたら、どこかで他の誰かと何かをしたんじゃないかとか、そんなありきたりな妄想しかしていなかったのだが。
「ちゃんと手当てしたのか」
「・・・・」
「膿んでるぞ、傷口」
「…ちょっとケンカの仲裁に入ったら、吊り棚が落ちてきよってな」
「理由もいいんだけど、僕がきいてるのは、消毒したりクスリぬったりシップはったりはしたのか、て所だけど」
「せやから、気にしよるやろ。あいつらが」
ウルフウッドがあいつら、というのはおそらく仕事先の、施設の子供達のことだろう。
「治療室のおばはんやら絶対しゃべりよるで!」
「つまり、ほったらかしてたんだな、十日近く」
仕事上での怪我を、その場の人たちに知らせたくなかったという気持ちはわからないでもない。
十日たってもこの様子だと、その時は大層な怪我に見えたろう。
「どうして帰ってきてからでも、自分で手当てぐらいしなかったんだ」
「・・・・・・」
なんとなく、分かる。
「…ぎゃーすかいいよる」
「何?」
「…せやから、心配しよるやろ。大したことない、いうても信じひんし、…また病院つれてかれたら結局大騒ぎやないか」
「誰が?」
「ゴミがでるやろ。シップ貼ったら匂いもするし……」
「で?」
「…そうやって機嫌悪するやないか」
「誰の機嫌が悪くなるから、消毒もしないでほっておいたって?」
「・・・・・・」
ウルフウッドはシップを貼られた頬を痛そうに撫でた。
「怪我増えとるやないか・・・」
びんた一発で許してやったのを、ありがたく思っていただきたいものだ。
きちんと膿を出して消毒して、(幾ばくか乱暴だったかもしれないが)再生ガーゼを傷口にあてて、もう遅いだろうけれど一応シップも貼って包帯を巻く。
ぱっと見にはすっかり重病人だ。
「もういいよ、早くシャツ新しいの着てこいよ」
ウルフウッドが着ていたシャツは、ボタンがほとんど飛んでしまって、めんどくさいけれど修繕しないととても着れない。
「なんで」
「そのシャツボタンとれてるだろ」
「今日一日、家でだらだらするんやろ」
内緒にしたかったことがバレて、すっかり開き直った男は、あれほどの制裁をくらっておきながらすっかり先ほどの続きをするつもりらしい。
「そんな怪我人としたいと思わないよ」
救急箱を片付けようと立ち上がった腕を掴まれる。
「オンドレが、舐めて直してくれたら、ええやん」
ウルフウッドにしたら、名一杯色気めいて言ったつもりなのだろう。
だけど今の僕の職業をウルフウッドは嫌というほど知っているはずだ。
「悪いけど、黄色ブドウ球菌やら溶連菌やら緑膿菌やら白血球の死骸がわんさといる傷口なんて金もらっても舐めないね!冗談じゃない!僕が病気になる!」
本当は。
掴まれた腕がほんのりと熱を持っていたけれど。
それよりは腹をたてていたので、傷がきれいになるまでは、絶対にさせないと心に誓ったのだった。
てけてんてんてん・
長い解説すみませんでした・・・!
|
|
|
|