このお話は、えーと。
「オリジナル女の子キャラと夫婦になって
一緒に年越ししてるヴァッシュ」
の話です。なにぃ!って思われる方はここで戻るして下さいせ。
読んでからおこっちゃいや!!
言ってみましたら「超人ロック」のパロディであるかもしれません。
あ、パロディじゃなくてぱくり!ぱくりです。
超人ロックも、300才とか400才ぐらいまでは、人との交流にさまざまな葛藤や
遠慮や戸惑いがあった模様ですが、いいかげん千年も生きていると、なんかも
うつきぬけちゃって、まっとうに考えたら「おいおいそれどうよ」てことにも、
「んー、僕にできるんだったら、取り組んでみよっかなっ」ってなさっていたり
するあたり。そんなヴァッシュです。
細かく状況を説明すると、話が長くなってまうのでここで説明しておきました。
ライザというのは、超人ロックに造詣があればピンとくる名前ですが、
特に人物としての関連は全くございません。人の名前を考えるのが苦手なんじゃ。
大晦日にジャンルキングと話をしていて、
「なんとか『心の隙をついて』取り組んでみる」
と豊富を語られ、確かにそういう活動に付随する出来事として、
心の隙をつかれる場合はあると思うのですが、取り組むにあたって
自らの心の隙をつかねがならないというのは、本来的にはおかしな文法です。
そういうもんじゃない・・・。なのですが、少なくともキングや私に於いては、
大変にその使い方ツボに入って大うけでした。
そんな心の間隙をぬってこの話を書いてみるみるという話でした。
・・・実は関係ない?。
「Happy New Year!」
ライザは大はしゃぎでグラスを掲げた。
「あたしね、自分がこんな風に綺麗なお洋服着て、旅行先でカウントダウンするなんて生
まれて初めて!ヴァッシュありがとう。・・・大好き。今年もよろしくね!」
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
三ヶ月前に知り合って、程なく一緒に暮らし始めた。
「・・・気が早いけど、来年もいっしょだったら嬉しいな」
アルコールに微かに頬を染めて、ライザは可愛らしく首をかしげた。
出会いはありがちと言えばありがち。怪しい連中に追われている所を助けた。
匿っている間に好意を持たれて、現在に至っている。
「ヴァッシュはいつもこんな風に新年を迎えてたの?」
少しばかり、人とは違う所のある女の子。
気質的に文字が判別できないとか、計算が苦手とか。
「今年は、贅沢した方かなー」
ライザは、心を覗き込むようにヴァッシュの瞳を見つめる。
生きていく上で多少の困難が生じる欠けた部分がある代わりに、彼女には特別の力が
あった。
「ヴァッシュは自立プラントなんだよね」
「うん、そうだね」
「すんごい、長生きなんだよね」
どういう作用が働いたのか、もう遠い遠い昔になってしまったあの決戦の後、僕は『まっ
さら』になってしまった。
髪は全て金髪に戻り、気持ち悪いことに腕が生え、傷跡も全てなくなった。
幾度かプラントとしての力を使うこともあったけれど、ちらほらと黒髪が覗く他、あきれる
位『健康』に過ごしてきた。もう500年ぐらい経っただろうか。
高いビルの最上階、ネオンの輝く夜景を眺めながらふと思い出す。
まだこの星が砂だらけだった頃。
「そうだよ、しかもずっと見た目若いままだし。羨ましいだろ?」
ライザの唇が尖る。彼女は嘘をついたり自分の気持ちを隠したりしない。
「今はあたしの方がぴちぴちだもん!あー、でも10年もしたらきっと憎いだろうなぁ・・・」
「がんばって老けるようにするよ」
「あたしの為に?!」
「うん、君の為に」
その言葉に嘘がないことを彼女は知って、顔をほころばせた。
ライザは人の心が読める。
相手が頭の中で繰る言葉が分かるとか、そういうものではないようだが、話される言葉
と気持ちに距離があればその違和感を感じ取る。
笑顔で話していても、辛い気持ちや痛みがあれば、それを看破してしまう。
そのせいで、人から愛される時も、憎まれる時も激しく、その能力を利用されたり気味
悪がられたり、なかなかに波乱万丈な人生を歩んできていた。
共に暮らすようになってほどなく、ライザから告白された。
『あたし、ヴァッシュの事が大好きなの。愛してる。ヴァッシュだって嘘つきで、空っぽに笑
ったりするけど、いつも優しいから。優しい嘘しかつかないでしょう。でも、あたしにはつか
なくてもいいよ。・・・だってわかっちゃうし』
随分聡い子だと思ってはいた。単に勘がいいのか、よほど人を見る目が肥えているの
だろうと思っていたが、そうではないのだと知った。
『気味悪いでしょ。でも、わかっちゃうの。嫌だったら言ってね。・・・って言わなくてもわか
るんだけど』
彼女は嘘をつかない。それは生まれてからずっと、いつも嘘をつかれつづけていたか
ら、与えられる言葉と心の違いに傷ついてきたら、自分はしたくないのだと、そんな彼女
の生き様が感じられた。
『・・・そうだね。僕は君を守ってあげられるんじゃないかと思う。同情とは違うように思うけ
れど、そうかもしれない。でももし君が嫌じゃなかったらだけど・・・このまま一緒に暮らそ
うか』
自分の腕の範囲、手の届く距離で守れる人を、物を、慈しみたいと、そんな気持ちで。
ライザは、ヴァッシュの言葉と、おそらくはその心をゆっくりと吟味して、照れくさそうに、
幸せそうに頷いた。
『ヴァッシュ、あたしのこと好き?愛せそう?』
『うん・・・』
少しお互いに照れて、ライザは飛びついてきて、口付けられて。
『ヴァッシュおじいさんみたいだけど、あたしは若いし、セックスも大好きだから、どうしても
ヴァッシュが嫌なら諦めるけど。・・・しよう?』
あれよあれよとのっかられて、いいかげん使い方も忘れるぐらいのブランクがあったも
のの、無事そこそこ普通のカップルとして成立した。
「お待たせいたしました。こちらは合鴨の…」
コース料理を運んでくる若い給仕は、丁寧に話していても少し訛りがある。
「ねぇ、ヴァッシュ」
給仕が立ち去ると、先ほどまでゴキゲンだったライザが、半眼で睨みつけてくる。
「あたしの前の恋人って、西なまりのある男だった?」
「えっ?!」
ライザと暮らすようになる以前、深い関係になった相手ももちろん居る。一桁ではないだ
ろう。でも、ライザの前に一緒に暮らしていた相手は、もうとうに寿命を全うしていて。
「・・・読んだんじゃないよ。だってここに来てたくさん居るじゃない、西なまりの人。でも低
い、いい声の男が話してると、ヴァッシュ黒目が大きくなるんだもん」
ライザは、単に特殊能力だけでなく、やっぱり観察眼があるのだろうと感心する。
そう、この町に来て何度かどきりとした。
けれど、それは単に記憶に掠る、その程度のことだと思っていた。
西訛りの、酷く似た声に記憶のインデックスが呼び出される、その程度の。
少し笑いたくなる。
彼よりも、もっと長い間、深い関係だった人達もたくさん居た。
けれど。
「あたしが目の前に居るのになー。なんか腹立つよ。前の人思い出されちゃ!」
ヴァッシュは自分がおかしくなって、くすくすと笑った。
「あーーっ、笑うかなぁ!」
「いやいや、ライザが可愛くて笑ってるんじゃないよ。わかんない?」
「そんな細かいのはわからんないっ。わかるのはヴァッシュが本当におかしいって思って
笑ってるってぐらいだもん!」
ライザの膨れ具合もおかしくて、勝手にツボに入ってしまって、おかしさがとまらなくなっ
てしまう。
「ヴァッシュ感じわるーーいっ」
涙が滲んでくる。
「あのね・・・」
ごめんねライザ。それからたくさんの特別な人達。
ひとしきり笑いの波がひいてから、ちょいちょいとテーブル向こうのライザを呼ぶ。
ごく小さな声で。
「うん、思い出してた。ごめんね。認める。何分『初めての人』が西なまりの男だったから
ね。・・・やっぱり忘れ難いみたい」
ライザが、その告白に、かえってどぎまぎしたようで、頬を染めた。
「そ、そうなの…それはしょうがないかな。うん…」
返すライザもひそひそ声で。
「あ、あたしもね、実は初めての人はおんなの人なの。その人のことはちょくちょく思い出
す。ヴァッシュと比べちゃったりもしてるかな…ごめん」
忘れられない。
どうしたって。
もう何百年も前の話なのに。
「初めての人ってやっぱりトクベツだもんね」
「うん、ごめんね。・・・でも、今一番ライザが大事だから」
嘘はなく、言葉を綴る。
「どっちのが、たくさん好き?・・・とか聞いちゃうから、あたしダメなんだよね。きかないか
ら!あああ、ヴァッシュも答えないで!考えないで!!」
己の愚かさを悔やみ、頭を抱えて悶絶するライザ。
こういう所が愛おしいと思う。
「そだなぁ、よくばりだから二人と一緒に暮らしたいよ。もし今あいつがここに居たら、なん
とかして説得して二股かけることにする」
「えーーーーっ!!。それやだそれやだ!」
「でも、もう居ないから。砂粒よりも小さく小さくなって、痕跡なんかどこにもないから、安心
していいよ」
「納得いかん!だいっ嫌いヴァッシュ!!」
テーブルをひっくり返してレストランを飛び出しそうなライザの細い手首を捕まえる。
「僕は大好きだから」
痕跡はここにだけ。
ヴァッシュの心にだけ。
「・・・今の一番じゃなくなったら、すぐ別れるからね」
「うん、捨てていいよ」
「愛してる?」
「うん、愛してる」
人を愛するという気持ちを教えてくれたあの男に。
「・・・愛してるよ」
心から感謝して。
おしまい
↑迷った末に読んでトホホになってしまったらすみません・・・。昔のやおい小説をこっそり置いてみたり!
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