COUNT GETTER



HIT  444 & 2500  なぞのこびと様 
            赤と青の・・・ 



「なんじゃこりゃぁぁ!!」
 ウルフウッドはベッドで悲鳴をあげた。
 気がつくとパンツも履いていない状態で、だが、しっかりと上着とシャツはきている。
 それだけなら多少変態チックなかっこうで済んだろうが、その身につけている上着は、どう考えてもウルフウッドの体に一回りも二回りも大きくて、太股のあたりまですっかり隠れている。
 それだけではなくて、まじまじと自分の手を見ると、幼い子供の手にしか見えなかった。 
 なんや、これは。
 昨日の晩、寝る前までは、いや、その前の記憶がかなりあやふやだ。
 トンガリのあほうと酒盛りをした。
 何やら、あいつはポケットから包みを取り出していなかったか。


 ぱらぱらと五つばかり、可愛らしい包装紙の小さなものが置かれた。
「これ、魔法のキャンディーなんだ」
「ほーー」
 全く真剣みのない声で返答すると、ヴァッシュは憤慨したように言い募った。
「これはね、若返りの秘術を込めたキャンディーなんだ」
「ほーー、ロステクって言うやつかい」
 馬鹿にしきった声で、肩肘をテーブルについて、グラスに酒をそそぐ。
「・・・君がさ、実年齢より老けて見えること気にしてるみたいだからさ」
 自分が今いくつだったか、つらつらと数えて、別に困ることもなかろうと考えた。
 いきなり幼児になってしまったら、この先生きていくのが大変だが、五つや六つ若返った所でたいした事はない。
「別に気にしとらんわ」
「そ、そう?」
 しょんぼりした様子に、悪戯心が起こった。
 置かれたキャンディーを手にとって、包みをかさかさとあける。
 食べてみるの?と顔を輝かせた間抜け面にむかって、ぴん、とキャンディをはじいた。
「えっ」
 見事に口の中に飛び込んで、ヴァッシュが目を白黒させた。
 ほっぺにキャンディーの形の膨らみができて、こいつは若がえらんかて充分にガキや、などと考えた。
 むぅとした表情のヴァッシュは、かさかさと包みをあけると、人の襟元をひっつかんで、なんとか口にいれようとする。
 ばたばたとテーブル回りで暴れていたら、店主に追い出されてしまった。
「若返ったか」
 とっくにとけてしまった様子のキャンディーを揶揄って、そういってみる。
 むすっとしたヴァッシュは、ちゃんともってきたらしいキャンディーを、やけくそのように立て続けに自分の口にほうりこんだ。
「・・・よぉそんなもん、いくつもまとめて食うな」
 呆れたように言うと、再び衿をつかまれて、唐突に口づけられる。
 しまった、と思った時には遅く、口腔には二つの甘いかたまり。
「・・・・」
「・・・捨てたら承知しない」
「・・・」
 まぁ、こんな事を往来で、ヴァッシュからしかけてくるなど雛にも希な出来事で、
そのせいだったろう。
 自分には似合わないあめ玉を、口の中でころがしながら宿に帰った。


 まじまじと自分の手足を見ながら、そういえばあの後もうひとつ残ってた、
とヴァッシュも食べていなかったか。
「う、ウルフウッド・・?」
 頼りなさげな声と共に、ノックがある。
 ようやく回りを見渡すと、ベッドの下に、パンツの入ったズボンが落下していた。
 もしかしたら、ヴァッシュもなのか?
 色んなことが頭を渦巻いた。
 この後お子さま台風で、はたしてあの兄貴と渡り合えるのかとか、このままやったらちちくりあうにも体裁が悪いとか、色々。
 がちゃり、とドアがあく。
 が、いつものヴァッシュである。
「ああーーっ・・・夢じゃなかったんだ・・・」
 ヴァッシュはへなへなと膝をついた。
「・・・オンドレは、なんで変わってへんねん」
 様々な不条理はおいていて、とにかくそこだけをつっこんでみる。
「・・・だって、僕産まれて二年もたったらこの位の姿だったもん・・・」
 自分が十歳若返ったとして、ヴァッシュの十年前の姿といえば。
 そういえば賞金首の写真も、一緒だった。
 がっくりとウルフウッドはうなだれた。
 何かしら期待があったのかもしれない。
「・・・なんでズボンだけ脱げとんのやろ」
 ヴァッシュは気まずそうに目をそらす。
「それは・・君が自分でベルト外して下ろしたからだろ」
 懸命に記憶をほり起こす。
 そういえば、部屋に連れ込んだのではなかったか。
 途中、いい所で、体が妙に熱くなって、意識がゆっくりととぎれてしまったような気が・・・。
「・・・悪いクスリだったのかと思って、怖くなって逃げちゃったんだ、ごめん」
 その辺の薄情さは許し難かったが、ようやく今の状態を現実として認識し始める。
「どうするんや・・・」
「あ、ちゃんと成長するってほうを手にいれてきたから!」
 もはや何が起こっても驚かない覚悟で、ウルフウッドは昨日と同じ大きさで、色の違うキャンディーを差し出され、黙って口に入れた。
「一個でどうだろう」
 ちょっとでも若い男がええのかとしょうもないつっこみを入れたかったが、とにかく効き目を見て考えることにした。
 

 しかして、無事にウルフウッドは成長した。
「ああ、よかった」
 ひとつではなんとなく頼りなく感じたので、渋るヴァッシュからもうひとつ奪い取って、元通り。
「・・・怪しいもん拾てくんな」
「拾ったんじゃないよ!・・・でも、もう目留面ちゃんの店で買い物するのはよすよ」
 むちゃむちゃ怪しい店名やんけ!
「ああ、でも本当、あのタイミングでよかったよ」
「何がや」
「だってさ、その・・・入れて直後だったりしたら、多分僕許せなかったと思うんだよね」
「・・・・・・・・・」
 そこが一番のポイントやったんとちゃうやろな!! 

 ウルフウッドは、まだまだこの男の事が理解できないと、頭を抱えた。


                          END
こびと様からいただいたイラストです。

 444いただいたイラストをネタにSSを◆という事で承りました。
もっと愛らしい牧師のお話をご所望だったのでは・・・
心配でござりまする
ちゃんと成長したウルフは雪辱したと思います

 
 2500◆モリタと中島さんの合作イラスト◆をお受けしました。
ニコ番だったので、おまけのへたれ牧師。↓