Band Journal
1月号に載ったTrombone Quartet Zipang第2回演奏会の評
3つの武器を使い 多くの聴衆を魅了したステージ トロンボーン・クァルテット・ジパング
10月17日/すみだトリフォニーホール大ホール
文・・・古田儀佐エ門(ホルン奏者)
写真・・・堀田正矩
コンサートはコープランドの、あの有名なファンファーレで幕を開けた。ステージ正面に一段高くしつらえられたオルガンの前に現れた4人の音楽家によって私の世界は拘束されていく。何処へ連れてゆかれるのか?ラヴェルのアダージョを挟んだ、ペーテルスとシャルパンティエによる2曲のトロンボーン4重奏曲は完全に私の思考能力を奪った。奪い切った。訓練されたアンサンブル奏者が自己を表現し尽くす。それがどんなに難しいことか。勿論、彼らは簡単にこなしていた訳ではない。困難な部分がなかった訳ではない。しかし、彼らは演奏能力、アンサンブル能力と同様に優れたエンタテインメント能力を使い切る事によって、聴く者たちを日常の外へ連れ出してくれるのである。この3つの能力のバランスこそが、現在の彼らの持つ最大の財産と言える。休憩後のステージにはそれがさらに判りやすい形で現れていた。お馴染みのエル・サロン・メヒコ。次から次へと現れる美しい旋律。躍動するリズム。しかし、やはり僅か4人のトロンボーンでこの全ては表現し尽くせないのか?その瞬間、門脇氏の右手が一閃!只一打のバス・ドラムによってすべての色彩が完結する。想像していた結末ではありながら、こんなにキマるのは、並や大抵のエンタテイメントではない。平たく言って趣味のよさが物をいう!といった処か。続く「オペラアリア・セレクション」では杉山明子、村治学という二人の役者が、さらに世界を拡げる為のパワーを放出してきた。私のα波は全開である。メロディーの羅列ではない。なまじな歌手のコンサートでは感じられないドラマを観た。岸良氏が何気なく呟いた言葉が印象に残った。「同じメンバーで10年は演ってみないと判らないと思う・・・」私も思った「あと8年は死ねない・・・」と。
バンドジャーナルの1月号に、ホルン奏者の古田氏の評が掲載されました。とてもとても素晴らしい文章で感動しています。本当に有難うございました。しかし、文才があるなぁ〜。演奏の方もとても褒めていただき身が引き締まる思いです。ステージが終わって2ヶ月が経とうとしていますが、録音を聴く度に反省ばかりだったので、古田氏の評で元気が出ました。また来年も頑張るぞ!!
古田さん、ありがとうございました!!
ジパング・メンバー一同