私がやっている特別な練習をこっそりお教えしましょう

<ペダルトーン>
 私は、一日の練習の最初に必ずペダルトーンの練習をします。ペダルトーンというのは、息や体、アンブシュアがリラックスした理想的な状態でないと、ロングトーンする事はなかなか難しいものです。ということは、一日の初めに体を理想的な状態に持っていくのに、最もふさわしい練習だとも言えるでしょう。練習のポイントは、1.口の中を縦に広く取り、下あごを前方に出す。2.暖かい息をたっぷりと送り込む。3.口の周りはゆるめるのではなく、リラックスした状態できれいに張れているように。4.音が下がるにつれて、さらに下あごをを前へ出していく。ペダルトーンは、曲の中ではあまり使うことはありませんが、唇をほぐすのにはとても良い練習です。経験の浅い人は、すぐには出ないでしょう。しかし、毎日続けてチャレンジしてみましょう。必ず出るようになります。

とてもためになる一言
“ロートーンを征するものはハイトーンを征する”

<ダブル・トリプルタンギング>
 曲の中のパッセージを吹くのにシングルタンギングでは間に合わない場合、ダブルorトリプルタンギングを使います。ダブルはトゥ・ク・トゥ・クという発音、トリプルはトゥ・トゥ・ク・トゥ・トゥ・クという発音になります。練習の時はゆっくりとしたテンポから。トゥとクの音が同じになるように、そして口の周りが暴れないように注意します。理想は、ロングトーンをしている時のように、息がスムーズに楽器の中に入っていくこと。安定したリズムで、クリアに刻めることです。この練習は速いテンポで細かく刻むための練習ではありますが、上級者は[譜例3]のような練習もしてみましょう。これが安定して吹けるようになると、あなたのトロンボーンのグレードもググッと上がることでしょう。

とてもためになる一言
“ダブル・トリプルで細かいパッセージが吹ける頃には、唇の反応は相当に良くなっているはず!”

<リップトリル>
 これもまた、自分のトロンボーンに自信がついてきた人が憧れる技術です。しかし、トリルはトロンボーンの技術の中で最も難しいものの一つです。そして、根気よく時間をかけて練習しないと、出来るようにはなりません。ある程度経験を積んで、音の力が抜けており、唇も柔軟になっていることが必要です。まず、トリルはリップスラーの早いものだと考えて下さい。息はロングトーンと同じように常にスムーズに流れるように。初めはあごを動かすことによって音程を変えるのですが、その動きが少なくなるようにトレーニングします。ゆっくりとしたテンポのうちは、二つの音程のそれぞれのセンター(中心)をハッキリと狙って。速くするにしたがって、二つの音程の間の真ん中を狙います。息が唇の出口からスムーズに流れ出て、音程を変えるための動きは最小限になるように。

とてもためになる一言
“トリルが思い通りに出来る頃には、吹けない曲など殆どないでしょう。”

<F管でのリップスラーとタンギング>
 これは、本邦初公開です。ローターリーを使うとポジションが7つから6つになり、F管になります。この状態でリップスラーとタンギングをするのです。普段のB管より管は長く、7ポジションにもなると、ものすごく長い管に息を通すことになります。スラーはかからず、タンギングをする以前に音が当たりません。しかし、それを克服した頃には、B管なんて簡単簡単!だまされたと思って、やってみて下さい。

とてもためになる一言
“練習には工夫が必要です!”

我が輩の辞書にはトロンボーンという文字がある<その11>

 オーケストラのトロンボーンは3本でハーモニーを作ることが多いのですが、それぞれのパートは他の楽器と同じ音を吹いている場合が多いのでです。だから、トロンボーンの中だけで合った和音を作って、他の楽器とは合わない…というわけにはいきません。一番奏者はトランペットの1番と同じ音、弦ではヴィオラなどと同じ音を吹いたりもします。三番奏者は、テューバやコントラバスなどと同じことが多く、その間で、2伴奏者はホルンやチェロと同じ音だったりします。もちろん、木管楽器と同じ音の場合もたくさんあります。作品によって様々な楽器とアンサンブルをするのです。私達は、ステージ上の横の人だけでなく、四方八方にアンテナを張って、送信/受信しなければならないのです。