トロンボーン吹きの幸せ!

 みんな、トロンボーンクァルテット(四重奏)をやろう!二重奏、三重奏、五重奏、六重奏、八重奏と様々な楽譜があるけれど、四重奏が一番レパートリーが豊富です。私も、高校時代に仲間と出たアンサンブルコンテストに始まり、現在活動しているトロンボーンクァルテット・ジパングまで、多くのクァルテットを経験してきました。

 皆さんがトロンボーンを始めるきっかけは、ほとんどが合奏だと思います。吹奏楽かオーケストラでしょう。合奏には、多くの仲間と音楽を創り上げていく喜び、大音量の快感、名曲を演奏する幸せ、様々な楽器と共演できること等、たくさんの魅力がありますが、室内楽にはそれとはまた違った喜びがあります。クァルテットで言えば、四人だけで創り上げるということ。四人だけで練習し、四人だけで本番をやり、四人だけで拍手をもらえるのです。いやがおうにも仲間意識は強くなります。合奏では大音量に隠れて聴こえなくなってしまう音色も、十分に聴き取ることができるし、サロンのような小さなスペースで、お客さんの近くで直接語りかけるように演奏することもできます。そして、トロンボーンクァルテットでは、トロンボーン四本の暖かい音色・ハーモニーに包まれる言い様のない喜びと幸せ。これは、エステサロン(僕は未経験ですが)や温泉以上の快感であることをお約束します。

 では、クァルテットをやっていく上での注意点を挙げてみましょう。

 まず、和音をよく合わせること。その曲のなかで一番シンプルな和音、主和音(ド・ミ・ソ)等を取り出しチェックしてみましょう。曲の最後の音はチェックしやすい場合が多いようです。合わせるときは、四人同時に音を出すのではなく、まず一人が吹き(例えば低いド)、もう一人がその音に重ね(高いド)、うねらず調和したらもう一人(ソ)、そして最後の人(ミ)が入るという風に合わせてみましょう。世の中には、絶対に正しい音程などというものは存在しません。音程は、音楽の流れによって、高く取っていったり低く取っていったりと変化していくものです。大切なことは、四人がその流れを同じ気持ちで感じ取る、そして、音楽的な音程を創るということなのです。ですから、必ずしもチューナーのメモリとぴったり合っていなくても、四人で合っていればOKです。それには、四人共がお互いをよく聴き合うこと。誰が合っていて誰が間違っているというのではなく、四人で音楽的なハーモニーを創っていきましょう。うねらなくなり、合ってきたなと思っても、何度も合わせてみましょう。和音の精度はどんどん上がってくるはずです。曲の中のひとつの和音が「調和する」ことを四人共が経験すると、曲の他の部分は全て取り出さなくても、自然と合ってきます。あとはリズムに乗って、お互いを聴き合い、お互いを尊重しあい、エンジョイしながら吹いてみましょう。

 次はバランスについてです。私達はついつい、一番奏者がしっかり吹き、2,3,4番はそれに合わせていくというパターンを作りがちですが、本来は、ピラミッドのように低い声部がしっかりとしていることが理想的です。低い声部は全体を包み込むようにしっかりと吹き、上の声部はそれに乗っかるように、そして一番奏者は、2,3,4番の和音に包まれながら、軽く演奏できるとよいでしょう。

 最後に、室内楽をする上で一番大事なこと。それは、気心の知れた仲間と、時間をかけて創り上げていくということ。室内楽には、その演奏を聴くだけでなく、演奏者の人間関係を感じる喜びというのもあります。合奏の場合は大人数ですから、心のいがみ合いも大音量でかき消される場合がありますが、たった四人の場合はそうはいきません。バレバレです。練習の時などに、言いたいことを何でも言い合えることは大切です。しかし、その前にまず、「相手に言われたことを素直に聞ける」、「自分の言ったことを相手に素直に聞いてもらえる」ような信頼関係を作らなくてはなりません。それには時間もかかりますし、何よりも相手を尊重し、よく我慢することが大切です。9の我慢に、1の我が儘。何か相手に言うときは、言い方をよくよく考え、でも、たくさん話し合い、数多く練習しましょう。練習すればする程、音は心地良く調和してきます。そうやって出来上がったトロンボーンクァルテットのなんと素晴らしい響き!これは、私達トロンボーン吹きにだけ与えられた特権なのです!!

 

我が輩の辞書にはトロンボーンという文字がある〈その8〉

 チャイコフスキーの白鳥の湖で奏でられるあのオーボエのソロ。知っていますよね。何という美しいセンチメンタリズムでしょう。……というわけで、今年12月12日、すみだトリフォニーホールにて、私のやっているトロンボークァルテット・ジパングの三回目のコンサートがあります。是非、聴きに来て下さい。

2001年12月12日(水)19:00開演(18:30開場)
すみだトリフォニーホール大ホール(JR錦糸町駅 北口下車 徒歩3分)
一般 ¥2,500 高校生以下 ¥1,500 (全席自由)
<プログラム>
 ヘンデル     グロリア
 ドンディーヌ   トロンボーン四重奏のための組曲
 ドビュッシー   「ベルガマスク組曲」より
           前奏曲、月の光
 モーティマー    組曲「パリジェンヌ」
 チャイコフスキー  バレエ音楽「白鳥の湖」(語り付)
お問い合わせ 
新日本フィル・チケットボックス 03-5610-3815 
CNプレイガイド 03-5802-9990
トリフォニーホールチケットセンター 03-5608-1212
アクタス・ブラスプロ 03-5458-2512