ビンテージ・シルキーのマウスピースについて

ラインアップの変遷について

このコンテンツは、1960年から現在に至るまでのシルキー・マウスピースのラインアップの変遷をとりあげたものです。残念ながら、1970年代以降の資料に関しては正確な年を記すことができません。なお、モデル名のアンダーラインは新たにラインアップに加わったことを示します。

@1960年3月 (184 West Washington)

trumpet/cornet K, J, H, "Llewellyn", B, A, S, V, R
french horn "Farkas", W
trombone R, G
tuba A, H, J

"A List of Instruments & Mouthpieces made by the Schilke Company"より
  • レノルド・シルキーは、1956年頃に「シルキー社」を設立。1959年に工房を自宅からシカゴ市内へ移転し本格的な制作活動に取り組むようになります。上記はこの当時のラインアップで計16のモデルが存在したことを確認することができます。
  • トランペットの"Llewellyn"はシカゴ交響楽団で首席奏者として1920から30年代に活躍したエドワード・ルウェリン(Edward B. Llewellyn)を示します。このモデルは現行の「9」に引き継がれています。
  • ホルンの"Farkas"はシカゴ交響楽団で首席奏者として活躍したフィリップ・ファーカス(Philip Farkas)を示します。現在、ホルトン(Holton)社よりファーカス・モデルとしてSC, MC, MDC, DC, VDC, XDCの各モデルが発売されていますが、オリジナルのファーカス・モデルはシルキーであるということは興味深い事実です。このオリジナル・モデルは現行の「30」に引き継がれています。
  • テューバの"H"はオーガスト・ヘルバーグ(August Helleberg)のマウスピースをもとにシカゴ交響楽団奏者のアーノルド・ジェイコブス(Arnold Jacobs)によってデザインし直したモデルです。"H"はHellebergを示していると推測されます。このモデルは現行の「67」に引き継がれています(現在のカタログではアーノルド・ジェイコブスの名前は伏せられています)。
  • テューバの"J"はパーツを交換することでカップの深さを調整できる現在のラインアップにはないモデルです。
  • この当時から銀メッキと金メッキの仕上げの選択をすることが可能でした。 

A1961年8月 (184 West Washington)

trumpet/cornet K, J, H, "Llewellyn", B, A, S, W, V, R
french horn "Farkas", W
trombone R, G
tuba A, H, J

"Schilke Mouthpieces for Brass"より
  • トランペットのラインアップに"W"が加わります。このモデルは"S"をセミフラットリムにしたモデルで、現行の「16C2」に引き継がれています。
  • マウスピースの複製、改造、カスタムデザインのマウスピースやスクリューリムのマウスピースの制作なども言及があります。

B1963〜1967年頃 (223 West Lake)

trumpet/cornet 5A4, 7B4, 8A4, 8E2, 9, 9C4, 10B4, 11, 11E, 12, 12B4, 13C4, 14C2, 15B, 15C4, 16C2, 16, 18, 18C3d, 20, 22, 24
french horn 28, 29, 30, 31, 32
alto horn 38B, 38, 38D
tenor trombone 47, 53
bass trombone 57, 58, 59
tuba 62, 67

"Schilke Mouthpieces for Brass"より
  • イニシャルのモデル名から現行のラベリング方法へ移行した頃のラインアップ。このカタログでは現在と変わらぬラベリング方法の説明があります。
  • 1964年前後にラベリング方法は現在の番号による表記へと移行したものの、オーダーによってはイニシャルのモデルが入手可能であり、イニシャルのモデルと現行のラベリング方法によるモデルとが共存していた期間がしばらくあったと推測されます。
  • 1964年前後にラベリング方法は現在の番号による表記へと移行したものの、オーダーによってはイニシャルのモデルが入手可能であり、イニシャルのモデルと現行のラベリング方法によるモデルとが共存していた期間がしばらくあったという
  • トランペットのモデル名の移行:"K"→「7B4」, "J"→「12」, "H"→「11」, "B"→「9」, "A"→「11E」, "S"→「16C2」, "W"→「16」, "V"→「14C2」, "R"→「18」
  • 「9」はかつての"model B"と記述がありますが、説明ではルウェリンの名があげられています。ルウェンのモデルであるならば以前のモデル名は"Llewellyn"と表記されるべきなのですが、"Llewellyn"と"model B"とは異なるモデルにもかかわらず混同されてしまっています。
  • "CV"→「15B」、"R10"→「20」、"R20"→「22」、"R30"→「24」という移行も記されていますが、この4つのモデルはAの段階ではラインアップには存在しなかったモデルです。つまり、1961年から1967年までに開発されたモデルということになります。
  • ホルンのモデル名の移行:"Farkas"→「30」, "W"→「29」
  • アルトホルンのマウスピースがラインアップに加わります。現在は「38D」のみが販売されていますが、当初は3つのモデルが存在したことが確認できます。
  • トロンボーンのモデル名の移行:"R"→「47」, "G"→「53」
  • バス・トロンボーンのマウスピースがラインアップに加わります。
  • テューバのモデル名の移行:"A"→「62」, "H"→「67」
  • アジャスタブル・カップの"J"はこの段階でラインアップから姿を消します。
  • 「67」の説明文からアーノルド・ジェイコブスの名前も伏せられます。
C1967年 (223 West Lake)
trumpet/cornet 5A4, 7B4, 8A4, 8E2, 9, 9C4, 10B4, 11, 11E, 12, 12B4, 13C4, 14C2, 15, 15B, 15C4, 16C2, 16, 18, 18C3d, 20, 22, 24
french horn 28, 29, 30, 30B, 31, 32
alto horn 38B, 38, 38D
tenor trombone 40, 42, 45, 46, 46D, 47, 47C4, 53
bass trombone 47, 57, 58, 59
tuba 62, 66, 67

"Schilke Mouthpieces for Brass / the mark of excellence"より
  • 1967年6月にワバッシュに移転することから、同年の上半期に作成されたカタログ。
  • これまでなかったフリューゲルホルンのマウスピースについての言及(現在と同様にカスタム扱い)があります。
  • テナー・トロンボーンのラインアップに6つのモデルが加わります。また、トロンボーンとは異なるバックボアとシャンクをもつバリトンやユーフォニアムのマウスピースの制作も開始されました。

D1970年代以降 (1) (529 South Wabash)

trumpet/cornet 5A4, 6A4a, 7B4, 8A4, 8E2, 9, 9C4, 10B4, 11A, 11C2, 11, 11D4, 11E, 12, 12B4, 13A4a, 13A4, 13B, 13C4, 14A4a, 14A4, 14C2, 14, 15, 15B, 15C4, 16C2, 16, 17, 17D4d, 18, 18C3d, 19, 20, 20D2d, 22, 24, Tarr
french horn 27, 28, 29, 30, 30B, 31, 31B, 31C2, 32
alto horn 38D
tenor trombone 40B, 40, 42B, 42, 43A, 44E4, 45B, 45, 46, 46D, 47B, 47, 47C4, 50, 51B, 51, 51D, 52, 52D, 52E2, 53
bass trombone 57, 58, 59, 60
tuba 62, 66, 67

"Schilke Mouthpieces for Brass / the mark of excellence"より
  • シグネチャーシリーズというスペシャル・アーティストモデルが各楽器のラインアップに加わります。
  • トランペットのシグネチャーシリーズ:「6A4a」→ビル・チェイス(Bill Chase), 「13A4a」→マイク・バックス(Mike Vax), 「13A4」→記述なし, 「13B」→フランク・リサンティ(Frank Lisanti), 「14A4a」→フォレスト・バックテル(Forrest Buchtel), 「14A4」→記述なし, 「20D2d」→ジョージ・メーガー(Georges Mager), 「Tarr」→エドワード・タール(Edward Tarr)
  • 「Tarr」というエドワード・タールのために制作されたカスタムマウスピースがラインアップに加わります。カップはバロックスタイルのカップで、シャンクはミニル・ローバー(Menil Lauber)社のバロックトランペットにマッチするようにデザインされています。国内のカタログには記されていませんが、現在でも受注生産(リムやシャンクを選択することが可能)されています。
  • ホルンのシグネチャーシリーズ:「27」→デール・クレベンガー(Dale Clevenger), 「31B」→フランク・ブローク(Frank Brouk), 「31C2」→デビット・スプラング(David Sprung)
  • テナー・トロンボーンのシグネチャーシリーズ:「42B」→トミー・ドーシー(Tommy Dorsey), 「43A」「45B」「47B」→イザベラ・シアーズ?( Isabella Sares), 「51B」→ジェイ・フリードマン(Jay Friedman), 「51」→ラルフ・サウアー(Ralph Sauer), 「52D」→ジョー・オウエンス(Joe Owens), 「52E2」→トーマス・ベバースドルフ(Thomas Beversdorf)
  • 「43A」「45B」「47B」はかつてのキメラ・シアーズ(Cimera-Sares)のマウスピースと記述(「43A」→#3, 「45B」→#2, 「47B」→#1)されていますが、"Cimera-Sares"というモデルがシルキー社にもともと存在したかどうかは定かではありません。なお、Cimeraはヤロスラフ・キメラ(Jaroslav Cimera)を、Sarasはイザベラ・シアーズ( Isabella Sares)を示していると推測されます(カタログにはフルネームで記されていない)。
  • アルトホルンの「38B」, 「38」が欠番になります。
  • バス・トロボーンの「47」が欠番になります。

E1970年代以降 (2) (529 South Wabash)

trumpet/cornet 5A4, 6A4a, 7B4, 8A4, 8E2, 9, 9C4, 10A4a, 10A4, 10B4, 11A, 11C2, 11, 11D4, 11E, 12A4a, 12A4, 12, 12B4, 13A4a, 13A4, 13B, 13C4, 14A4a, 14A4, 14B, 14C2, 14, 15A4a, 15A4, 15, 15B, 15C4, 16C2, 16, 16C4, 17, 17D4, 17D4d, 18, 18C3d, 19, 20, 20D2d, 22, 24
french horn 27, 28, 29, 30, 30B, 31, 31B, 31C2, 32
alto horn 38D
tenor trombone 40B, 40, 42B, 42, 43A, 44E4, 45B, 45, 46, 46D, 47B, 47, 47C4, 50, 51B, 51, 51C4, 51D, 52, 52D, 52E2, 53
bass trombone 57, 58, 59, 60
tuba 62, 66, 67, 69C4, S-H

"Schilke Mouthpieces for Brass / the mark of excellence"より
  • トランペットのシグネチャーシリーズ:「10A4a」→記述なし, 「10A4」→記述なし, 「12A4a」→記述なし, 「12A4」→記述なし, 「14B」→記述なし, 「15A4a」→記述なし, 「15A4」→記述なし, 「16C4」→トーマス・スティーブンス/マリオ・グアネリ(Thomas Stevens/Mario Guarneri)
  • テナー・トロンボーンのシグネチャーシリーズ:「51C4」→バイロン・ピーブルス(Byron Peebles)

E1989年以降〜現在 (Melrose Park)

trumpet/cornet 5A4, 6A4a, 7B4, 8A4, 8E2, 9, 9C4, 10A4a, 10A4, 10B4, 11A, 11Ax, 11C2, 11, 11D4, 11E, 12A4a, 12A4, 12, 12B4, 13A4a, 13A4, 13B, 13C4, 14A4a, 14A4, 14A4X, 14B, 14C2, 14, 15A4a, 15A4, 15, 15B, 15C4, 16C2, 16, 16C4, 17, 17D4, 17D4d, 18, 18C3d, 19, 20, 20D2d, 22, 24
french horn 27, 28, 29, 30, 30B, 31, 31B, 31C2, 32
alto horn 38D
tenor trombone 40B, 40, 42B, 42, 43A, 44E4, 45B, 45, 46, 46D, 47B, 47, 47C4, 50, 51B, 51, 51C4, 51D, 52, 52D, 52E2, 53
bass trombone 57, 58, 59, 60
tuba 62, 66, 67, 69C4, S-H

"Schilke Mouthpieces for Brass / the mark of excellence"より
  • トランペットのラインアップに「11Ax」と「14A4X」が加わります。この2つのモデルは、いずれも「X」バックボアをもつシルキー社のピッコロトランペットのために開発されたマウスピースでコルネットシャンクのみ制作されています。
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