建物名称 ゆめ地創館
所在地 北海道天塩郡幌延町
高さ 全高50m
竣工 2007(平成19)年
概要 日本の発電量の約3割を占めている原子力発電は、火力や水力といった従来型の発電方式よりも低コストで高効率と謳われている反面、安全性の確保と使用済み燃料から排出される高レベル放射性廃棄物の最終処分をめぐっては長年にわたって議論が絶えない状況である。高レベル放射性廃棄物の最終処分方法としては300m以上の高深度地下へ埋設することが法令で定められている。しかしさまざまなリスクに対する不安感を完全には払拭できずにいる"危険物"の処分場を積極的に誘致する市町村は存在せず、現在に至るまで有力な候補地もないままなのが実情である。
幌延深地層研究センターは幌延町の誘致を受け核燃料サイクル開発機構(現・独立行政法人日本原子力研究開発機構)によって2001(平成13)年に開設された。実際に地下500mまでの各層に坑道を掘削し、地下水・岩盤などの地質環境の探査や処分施設の設計・施工に必要なデータ収集といった研究活動を約20年かけて実施することにしている。ただし研究期間中に放射性廃棄物の持ち込みや使用をしないこと、将来的に当施設を最終処分場に転用しないことが地元に確約されており、研究終了後には坑道を埋め戻すことになっている。
ゆめ地創館は当センターの研究内容をPRすることを目的として2007(平成19)年に完成した施設で、名称は一般公募で決定した。 館内展示は無料で観覧できるほか研究施設の見学会も定期的に開催している。
TF式分類 第1種 II類
登頂日 2007年7月8日
 2007年7月8日の登頂記録

北緯45度線が横切る北辺の地・幌延町は札幌市から直線距離で約220kmのところにあります。札幌駅前から日本海オロロンライン沿いに走る特急バス「はぼろ号」に乗って幌延深地層研究センターまでは4時間50分。長距離かつ長時間の旅ではあるものの、ゆめ地創館のオープンに合わせてセンターの目の前にバス停が新設され、札幌駅からダイレクトアクセスできるのは非常に便利。幌延駅と豊富駅を結ぶローカルバスも通るので、立地のわりには交通の便は意外といいのです。

研究センターの敷地内に6月30日にオープンしたばかりのPR施設ゆめ地創館。この時点における日本で一番新しい展望タワーです。2階建ての事務所棟の上に円筒形のタワーが立つシンプルな造形の建物で、塔体を3層の濃淡に塗り分けたデザインは地層をイメージしています。

建物本体は盛り土の上に立っているのでエントランスをくぐるとまず階段でアプローチすることになります。バリアフリーという大義名分があるとはいえ、そんなに人の出入りの多くないであろう施設に自動ドアどころかエスカレーターまで設備されているのはオーバースペックだなぁというのが率直な感想。

館内には2基のエレベーターが設置されています。右奥が地下展示室へ、左が展望室へ行くのですが、順路としてはまず地下展示室を見学するように定められているのでそれに従います。

来場者を誘導するように頭上にかかるタペストリーに描かれているのはゆめ地創館のイメージキャラクター「ポピン」で、希少な高山植物であるブルーポピーをモチーフにしています。ブルーポピーはセンターに隣接するトナカイ牧場で栽培されており、幌延町ではトナカイとブルーポピーを町のシンボルにしています。

地下展示室行きエレベーターはその名も「バーチカル・トランスポーター500」! 地下500mの深さまで2分かけて下降するさまを複数のテレビモニタによる映像を通して体感させてくれます。
もちろん地下展示室がそんなとてつもない深さにあるわけはなく、あくまでもそういう設定であり演出です。そもそも研究用の坑道ですらまだ100mにも達していないんだから。エレベーターを用いた同様の演出は夕張や大牟田にある石炭博物館でも行われているのを実見したことがあります。
照明が抑えられて室内が暗いのも地底深くにいるように感じさせる演出。ひょっとすると閉所恐怖症の人は息苦しさを覚えるかも知れません。
展示は地質、化石、生物など、小学生くらいの年代の興味を引きそうなものを主な題材として地底世界を紹介する内容です。
もっとも、ゆめ地創館の本来の役割としては「高レベル放射性廃棄物の最終処分は高深度地下への埋設が最も現実的で安全な方法である」ということをアピールしたいはずなのですが、それに関連する展示スペースはフロアの片隅になんとなく遠慮がちに設けられているように見受けられました。
地下展示室から展望室までの直通エレベーターには特にカッコいい名前がついているわけでもギミックが仕込まれているわけでもなくて、ごく普通。
そして一気に展望室へ。暗い空間から明るいところへ戻ってきてやれやれですが、通路が狭くてイマイチ開放感には欠けるかな。手すり部分にずらりとヒーターが設置してあるのが寒冷地らしい。
研究センターの南側に隣接するのは「ほろのべトナカイ観光牧場」。トナカイは今や町のシンボル的存在ですが、もともとは家畜として利用する目的で1989(平成元)年に10頭が持ち込まれたものでした。その後頭数が増えてくると珍しさも手伝って観光客を呼ぶようになったことから1995(平成7)年に町出資の第三セクターにより観光牧場を開設、1999年に現在地へ移転してきたものです。かわいいトナカイとふれあった後は食べることもできるよ!
北側には原野を走る一本道といういかにも北海道らしい風景が広がっています。約7km先には最北端の温泉街といわれる豊富(とよとみ)温泉があります。
ところで驚いたのは当館の来場者数の多さです。混雑を招くほどではありませんが、こんな辺地なのに(失礼)展示室も展望室も人の出入りが途切れません。
そんな中で来場者のおばさん同士の会話から漏れ聞こえてきたところによると、このタワーは地元住民から利尻島が見える施設を要望されてできたらしい。この写真でも右端のほうにうっすらと島影が写っていますが、見えるといっても山頂付近が申し訳程度に顔を覗かせているだけ。タワーの高さは要望を満たす最低限の規模に留められたということなのでしょうか。
研究センターのメイン施設である坑道の掘削には長い年月を要します。左側の足場の組まれた部分は東立坑の櫓。計画ではこのあと左奥に西立坑が掘削されることになっています。

1階はフロア全体をコミュニケーションホールと呼び、一般にも貸し出している多目的室やギャラリーが備えられています。右奥の柵のあるエリアはパソコンで関連情報を閲覧できるインフォメーションルーム。

左手の天井に白い大きな四角形が見えますが、これは照明ではなくて天窓から光が差し込んでいるのです。

その天窓の真下からタワーを見上げるの図。

ちなみに館内ではスタンプラリーを行っていて、入館時にもらった台紙に各階でスタンプを押して受付に提示したところボールペンとポストカードをもらいました。でも当館のオリジナルグッズではないので写真は省略。せっかくかわいいキャラクターを制定しているんですから「ポピン」のストラップとかメモパッドなどの小物でも作ってほしいものです。

幌延深地層研究センター ゆめ地創館

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