●何故オジー在籍時を神のように崇めるのか?
BLACK SABBATHというと現在では「ヘヴィロックの元祖」や「ストーナーロックの元祖」的存在として捉えられているようだが、これが10年前ともなると「グランジロックの元祖」と呼ばれていたり、更に俺が中〜高校生の頃は「ヘヴィメタルの元祖」「初めてヘヴィメタルバンドとして認識された存在」なんて紹介されたりしていた。しかも初代ボーカルのオジー・オズボーン在籍時のみに関して、だ。サバスはオジー脱退後も元RAINBOWのロニー・ジェイムズ・ディオ、イアン・ギラン(DEEP PURPLE)、グレン・ヒューズ(DEEP PURPLE)、レイ・ギラン(後にオジーバンドのジェイク・E・リーとBADLANDSを結成。故人)、トニー・マーティンといろいろなボーカリストを迎え、その歴史はオジー在籍時よりも遙かに長い。しかし、人々がBLACK SABBATHというバンドを思い浮かべる時、その大半がオジー在籍時のような気がする。もっとも代表曲と呼ばれるものの殆どがオジー在籍時の初期に集中している事も大きく影響しているだろう。では、何故人々は初期サバスを神のように崇めるのだろうか?
まずは簡単なサバスの歴史から。'60年代末、イギリスはバーミンガムのパブやクラブでジャズ/ブルーズロックを演奏しているEARTHというバンドがいた。メンバーはジョン・オズボーン(後のオジー/VO)、トニー・アイオミ(G)、テレンス・バトラー(後のギーザー・バトラー/B)、そしてウィリアム・ワード(後のビル・ワード/DR)の4人。後に彼らはバンド名を現在のBLACK SABBATHに改名、ここから彼らの歴史が始まる。
1970年2月13日の金曜日、ファーストアルバム「BLACK SABBATH」でデビュー。たった3つのコードだけで構成された超ヘヴィブルーズと呼べる表題曲、"Black Sabbath"1曲でその後の彼らの運命は決定付けられてしまったも同然だった。元々は「人々を恐怖に陥れる音楽」という発想の元にスタートしたサバス。単に奇をてらった存在なだけではなく、卓越したテクニックをも持ち合わせていた。それはジャズ等を演奏してきた事に起因し、特にベースのギーザーのプレイはCREAM時代のジャック・ブルースをも脅かす存在感で、このベースとトニーのギターリフが一丸となって奏でるユニゾンプレイこそが、初期サバスの魅力のひとつだった。ジャズ的なインタープレイは各楽曲の要所に組み込まれ、縦横無尽に各楽器が暴れまくる様は、同時期にデビューしたLED ZEPPELINにも匹敵するものだった。そして、既に当時からアルコールやドラッグにドップリ浸かっていたと思われるメンバー(特にオジー)によって引き起こされるダウナーな陶酔感、サイケ的要素、意味もなく襲ってくる恐怖感。地獄の底から聞こえてくるかのような、この世のものと思えぬヘヴィさ。これこそがサバス最大の魅力であり、当時の多くのロックファンが惹かれた要素なのである。
バンドは同'70年に代表作といっていいセカンド「PARANOID」を発表。ここからシングルカットされた"Paranoid"が英米シングルチャートで大成功を収める。他にも誰もが知ってるであろう名曲が数多く収録されていて、オジーのソロ時にも必ず演奏される"War Pigs"や"Iron Man"といった曲がその代表だろう。その後もバンド史上大傑作と呼ばれる機会の多い2枚「MASTERS OF REALITY」('71年)、「VOL.4」('72年)をリリースしていくものの、オジーのドラッグ癖は更にエスカレートする。5作目「SABBATH BLOODY SABBATH」('73年)はピークを越えたバンドが、次にどう進んでいけばいいかという迷いと実験が伺える1枚。一般的には初期サバスで聴くべきと言われているのはここまでなのだが、個人的には6作目「SABOTAGE」('75年)も7作目「TECHNICAL ECSTASY」('76年)も捨てがたい。そしてこのアルバムの後にオジーが脱退。新しいボーカルを入れるものの上手くいかず、結局オジーが出戻り、オリジナル・サバスとしてはラストとなる8作目「NEVER SAY DIE!」('78年)を発表するも、やはり音楽的には先のアルバム群には及ばぬ内容。肉体的にも(この頃はメンバー全員がかなりのハード・ジャンキーだった)ボロボロだった頃の1枚としては非常に気になる存在だが‥‥そして再びオジーが離脱。バンドは2年後にRAINBOWを脱退したロニーを迎え、新生サバスとして「HEAVEN AND HELL」を発表、バンドとしても音楽的にも新しく生まれ変わるのであった‥‥(これ以降の話は、またの機会に)
以上が簡単なオジー在籍時のバンドの歴史である。オリジナル・サバスはその後、'85年夏のライヴ・エイドで1日だけ復活、そして'92年秋のオジー引退公演の最終日に再び集結。実はこの後にオリジナル・サバス復活の噂で湧いた事があった。が、メンバー4人それぞれがバラバラのマネージメントに所属し、話し合いこそ持たれたものの、折り合いがつかず流れてしまう。それが何故か'97年に入り、BLACK SABBATHはオジー、トニー、ギーザー、ビルの4人で復活するのだ。バンドは存続していたから、KISSのようなケースなわけだ。誰もが祭り/イベントとしての一時的再結成と思っていた。が、翌'98年になってもバンドはオジー主催のヘヴィロック・フェス『OZZ FEST』で英米を回り、同年10月にはオリジナル・サバスとしては初のバンド公認ライヴ・アルバム(しかも2曲の新曲入り)「REUNION」を発表、その後も'99年12月までライヴ活動を行う。多くの人間はミレニアムを機に、サバスは封印されたと思っていた。が‥‥実は2001年現在も、バンドは存続していて、しかもオリジナルメンバーでまた『OZZ FEST』に出演していて、新たな新曲まで披露している。しかも来年2002年秋には、オリジナルサバスとしては24年振りのオリジナル・ニューアルバムを発表するという‥‥
'80年代はメタルの、'90年代に入ってからはグランジ、ストーナー・ロック、ヘヴィロックのオリジネーターとして崇め立てられているオリジナル・サバス。その魅力はこの最新作「REUNION」にも封じ込められている。先に挙げたような代表曲が殆ど収められていて、尚かつ現在進行形のバンドとして新曲も収録されている。まぁ新曲に関してはオジーのソロ曲に毛が生えたような印象を受けるが(逆にオジーが唄えば全てサバス風という印象を受けるし、ここ数年のオジーは意識的にサバス的要素を盛り込んでいる)、ライヴ音源に関しては‥‥多くの人間が驚く事と思う。1曲目"War Pigs"から観客の大合唱‥‥ここ日本では考えられないだろう。「何故オジー期を崇めるのか?」という疑問こそ、実は日本人が多く陥る問題なのだ‥‥何故なら、殆どの日本人がオリジナル・サバスを体験していなかったからだ。オジー在籍期のサバスは、現在に至るまで1度も来日していない(初来日はロニー加入後の'80年。その後も2度来日している)。'72年頃、1度来日が決まったらしいが、すぐに流れてしまったという。もし、この時期に来日していれば、間違いなくサバスへの、ここ日本での評価は変わっていたはずだ。
そう、ここ日本では欧米程オジー期サバスに対してあまり深い思い入れも、高い評価も成されていなかったのだ。それが'90年代に突入してからのグランジ〜ヘヴィロックという流れを経て、欧米に追いつけ追い越せという感じでようやく正統な評価を得るようになったのだ。現在のファンには想像もつかないだろうが、俺が中学生の頃は、オジー在籍時よりもロニー加入後の2枚(「HEAVEN AND HELL」「MOB RULES」)への評価の方が高く、オジー期は「日本人向きではない」と切り捨てていた雑誌もあった程だ。雑誌での「'70年代の名盤100選」というような企画でも、サバスは1枚入っていればいい方で、それも的外れな選出(「SABBATH BLOODY SABBATH」だったり)がされていたりと、かなり俺の中でも印象が薄かった記憶がある。そんな中、やはりというか伊藤政則氏が別誌の同企画で「VOL.4」を挙げ、そこで初めて俺はサバスの音に触れる事になるのである‥‥
同時期にブレイクしたことから、よくLED ZEPPELIN、DEEP PURPLE等と一緒に日本では紹介される機会の多かったサバスだが、日本では先の2バンド程評価も知名度も高くはなく、逆に欧米ではDEEP PURPLE以上の人気を得ていた。日本の宗教が仏教というのも大きく影響しているのだろう(「BLACK SABBATH」というバンド名自体、キリスト教下で育った人間でなければ深く理解できない要素があるだろうから)。今でいえばMARILYN MANSONのような存在といえばいいのだろうか? 音楽的にも、表面的なイメージ的にも、BLACK SABBATHというバンドは、当時の他のバンドと比べても抜群に斬新な存在だったのだ。そういうサバスの黒魔術的イメージに影響を受けてか、後にジミー・ペイジやリッチー・ブラックモアもそっち方面に片足を突っ込んだ事があったが、やはり格というか意気込みが違い過ぎた。ドラッグにより死の直前まで行ってしまったからこその、あの存在感・恐怖感。あれは誰にも真似できないものなのだ。
サバスが後陣達に与えた影響を考える時、最も解りやすいのが『OZZ FEST』だろう。現在でも行われている、このヘヴィロック見本市は'96年からスタートしていて、当時の出演バンドはオジー(ソロで)、SLAYER、SEPULTURA、BIOHAZARD、FEAR FACTORY、NEUROSIS、POWERMAN 5000、EARTH CRISIS、CELLOPHANE、COAL CHAMBER。新旧のヘヴィロックの見本市といった感じで、翌'97年にはオリジナルサバスの他にオジーのソロ、MARILYN MANSON、PANTERA、TYPE O NEGATIVE、FEAR FACTORY、MACHINE HEAD、POWERMAN 5000がメインステージ、DRAIN、VISION OF DISORDER、DOWNSET、NEUROSIS、COAL CHAMBERがセカンドステージに出演している。こうやってどんどん大規模になっていったのは、興行的に大成功している証拠である。また、出演するバンドも「サバス/オジーから影響を受けたバンド」という共通項でのみ選出され、中にはTHERAPY?やFOO FIGHTERSといった、およそメタル/ヘヴィロックとは結びつかないバンドも'98年版には出演している。何故FOO FIGHTERS?と思うかもしれないが、よく考えて欲しい。デイヴ・グロールは元NIRVANAである。NIRVANAというとパンク的イメージがあるが、そのヘヴィなリフは間違いなくサバスの影響下にあるものであり、他の同時期に現れたシアトル勢‥‥SOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINS等の音は、まんまサバスではなかろうか?
この「ヘヴィロックの見本市」という姿勢は現在も貫かれていて、今年もオリジナルサバスを筆頭にMARILYN MANSON、SLIPKNOT、PAPA ROACH、LINKIN PARK、DISTURBED、CRAZY TOWN、ZAKK WYLDE'S BLACK LABEL SOCIETY(メインステージ出演者中、唯一のインディーバンド。単にオジーバンドのギタリストというだけでメインに選ばれたのか?)といったメンツで興業されている。若干「売れ線バンド」が多いのが気になるが(特にPAPA ROACHやLINKIN PARKといったバンドや、ヒップホップ色の強いCRAZY TOWN)、その分セカンドステージには活きのいい若手が多い。ここ日本でも名前が知れているバンドとなるとMUDVAYNE、UNION UNDERGROUND、GODHEAD、そして期待の新人BEAUTIFUL CREATURESといったバンドだろうか? 特にゴスと言っても過言ではないGODHEADやパンキッシュなUNION UNDERGROUND、そしてAC/DCを彷彿とさせるBEAUTIFUL CREATURES等、本当に幅広い。こういうバンド全てが本当にサバスの影響を受けているのかは正直判らないが、直接にせよ間接的にせよ、サバス・チルドレンであることには違いない。ここ日本ではあまりサバスの影響下にあるバンドを見かけないだけに、ちょっと判りづらいかもしれないが(どうしても日本ではDEEP PURPLE的様式美に走りがちだし。例えばB'zがサバス的楽曲をシングルリリースするとは到底思えないし)こういう感じでオジー在籍時のサバスは、幅広い影響を与え続けてきたのだ。その結果が、先のサブタイトルのように「神として崇め」る事に直結しているのだ。
今回のテキストを読むに当たり、是非先のライヴ盤「REUNION」を聴いてもらいたい。言葉で説明するより、その音や雰囲気をライヴから掴んで欲しい。どれだけ熱狂的に受け入れられているか‥‥もし更に興味を持ったなら、その再結成ライヴの模様を収めたビデオ&DVD「LAST SUPPER」という作品も出ているので、参考にしてもらいたい。
最後に、今回のテキストを終えるに当たり、ひとつ‥‥
是非、2002年のフジロックに
BLACK SABBATHを!
これが最後のチャンスです!!