RAGE AGAINST THE MACHINE

  前回の「LUNA SEA」を書いた後あたりから、暫く音楽のない生活を送りました。と言っても2,3日なのですが。(苦笑)「聴きたくても聴けない」ではなく、「聴きたくない」状態でした。まぁ、結局は「自分が聴きたいものだけ聴けばいいじゃん!」っていう、ごく当たり前の事に気付くのですが。それすら忘れてしまう位、追い詰められた(結果的に自分自身を追い詰めてしまったのだけど)状態まで陥りました。危ない、危ない。で、ここ数日は自分の聴きたいものばかりを聴くのですが‥‥これが自分のルーツミュージックばかり。たまたま掲示板の方で話題になったMOTORHEADから始まり、RAINBOWという大切なバンドまで。この週末はLED ZEPPELIN, AEROSMITH, HANOI ROCKS‥‥どれも大切なバンドです、今でも。そして、このバンドも今現在の僕にはなくてはならない存在です。それが今回取り上げるRAGE AGAINST THE MACHINE(以下RATMと略)なのです。

◎BURRN!なら『RAGE』といえばジャーマンメタルだった'92年(笑)
  このバンドのデビューは'92年。何となく憶えてます。最初に1stアルバム「RAGE AGAINST THE MACHINE」がリリースされた頃、僕は専門学校の2年生でした。当時の僕はバンドに夢中で勉強なんて二の次のような生活を送ってました。時代はグランジの波が押し寄せ、NIRVANAとPEARL JAMが人気を二分していました‥‥アメリカでは。日本では圧倒的にNIRVANA優勢。来日したからねぇ。僕は当時はPEARL JAM派でした。理由は簡単。ギタリストが2人いたから。サウンドが当時僕がやってたバンドが目指すべく方向性に近かったから。本当にそれだけです。まぁこの頃はMANICSがNO.1だったんだけどね、何だかんだ言って。(笑)
  確か雑誌「BURRN!」のアルバムレビューで1stのリリースやバンドの存在を知ったと記憶してます。点数が70点台だったと思います。当時の僕は今ほどひねくれていなかったので(笑)『90点のアルバム=名作』なんて本気で思ってました。今ならそのレビューをやってる記者で判断しますが。「こいつが言う70点は一般的に、という意味で、このレビュー読む限りでは僕の好みに近いな?」とか。で、RATMは当時の僕には『聴く対象』にはならなかったのです。まぁ学生の頃は今以上に金がなかったし、親の仕送りにバイト代があってもバンドのスタジオ代や友人との飲み代に変わっていたし、CDも特定のジャンルのアーティストのものが多かったから、新しいものに目を向ける余裕がなかったというのが現実でした。
  当時のクラスメートAくんが「とみぃ、RATM聴いた?」と僕に話し掛けてきました。「いや、聴いてない。あのB!誌で70何点付いてたやつでしょ?どうだった?」と問いかけると「絶対にとみぃが気に入ると思うんだけどなぁ‥‥うちの近所のレンタルCD店で借りたんだけど〜」のような事を言ってました、確か。それはよ〜く憶えてるんですよ。何故なら、RATMに関しては1stのあのジャケットが衝撃でしたからねぇ。モノクロとはいえ、『炎で燃える僧侶』ですから。あんなのをジャケ写に使うHR/HMアーティスト、当時はいませんもの。あのMETALLICAやGUNS N'ROSESだってそこまではしなかったでしょうし。
  で、聴いたかというと‥‥聴きませんでした。(笑)そのAくんから借りもしなかった。その場だけでRATMは消えていったのでした、'92年の僕の中から‥‥

◎RAGE AGAINST THE MACHINE快進撃、しかし‥‥
  その後、'96年にRATMは4年振りの2nd「EVIL EMPIRE」を発表、何と全米NO.1になってしまうのでした。あのマドンナが自身のレーベルに欲しがった(が断られた)とかいう話題は知りませんでした、当時。あの頃の僕の『心のベストアルバム』はRADIOHEADの「THE BENDS」でしたから。そしてMANICSの「EVERYTHING MUST GO」にショックを受けた'96年。自身の音楽活動に行き詰まった'96年。「ギターロックには限界があるのか?」と曲作りに悩んだ'96年。'96〜'97年というのは僕にとっては『悩みまくった2年』なのです。実際に僕はこの頃、ギターを置いてキーボードやシーケンサーを使った音楽活動をしてました。自身が歌うこともなく、女性VO.と男性ラッパーを向かい入れて‥‥そう、globeのように。(笑)ヒップホップやテクノに夢中になり出したのもこの頃。UNDERWORLDの「BORN SLIPPY」のお陰で‥‥危うく道を間違えるところでした。どんどんギターを弾かなくなり、自身が歌うことも少なくなり、曲作りもループを使ったりとかの試行錯誤。何かが間違ってました、今思えば。

◎FUJI ROCK FES.とWOWOWライヴ映像
  '97年春、僕は約4年勤めた会社を辞め、上の3人組ユニットも解散させ、時間とゆとりある生活を送ってました。そこへFRF開催の知らせがSMASHからのDMで届きました。出演アーティストの中にその名前はありました。『RED HOT CHILI PEPPERS』と‥‥(笑)そう、最初はレッチリ目当て。RATMは二の次。仕方ないです、まだ音は未聴だったのですから。
  友人と行く事を決め、出演バンドの音を集めることにしました。たまたまその頃WOWOWでRATMのライヴが放送されるとの事で、ビデオ録画することにしました。映像は'96年のレディング・フェスのもの。
  ‥‥全てが衝撃でした。まず彼等の演奏のポテンシャルの高さ。特にギターのトム・モレロにはこんなもの初めて見たってな衝撃を受けたのでした。僕の中ではKING CRIMSONのロバート・フリップを生で観て以来の衝撃だったのです。そして観客のテンションの高さ。数万人がモッシュする様に、鳥肌すら立ちました。「な、何なんだ、これは!?」
  結局FRFには行けなかった僕ですが、その時の映像はまたまたWOWOWで放送されたので見ました。ここ日本でも同様の光景を見る事が出来た方々、その場で体験できた方々を羨ましく思い、それが出来なかった自分を恨めしく思ったものです。
  しかし‥‥この衝撃の出合いを切っ掛けに、再び僕はギターロックと向き合う覚悟が出来たのでした。'97年夏の事でした。

◎「RAGE AGAINST THE MACHINE」という『複合体』
  聴いてもらえば判る通り、RATMはヘヴィロックともとれるし、ヒップホップともとれる存在です。ヒップホップとヘヴィロックの融合は'80年代から多くのミュージシャン達によって試されてきました。BEASTIE BOYSが"FIGHT FOR YOUR RIGHTS"で、ANTHRAXとPUBLIC ENEMYが"BRING THE NOISE"で、FAITH NO MOREが"EPIC"で、それを実験してきました。しかし、ここまで明確に形にし、それをメジャーにしたのは明らかにRATMです。先人達がその下地を作ってきたから、というのもあるでしょうが、それを差し引いてもRATMの存在というのは『異質』なものです。
  KULA SHAKERのアルバム評の所でも書きましたが、ロックにとって『グルーヴ感』というのは非常に大切なものです。そのバンド・バンドそれぞれにそれぞれのグルーヴ感があるでしょうし、聴き手それぞれにも別々のグルーヴ感があるでしょう。僕の場合、初めて『異質なもの』を聴いてしまった、と感じたのはAEROSMITHでした。小学校5年生の頃の話です。今思い返せばその『異質なもの』が『グルーヴ感』だと理解出来ますが、当時はそんな事つゆ知らず、オシッコちびりかけてました。(爆)数年後、その『異質なもの』をLED ZEPPELINに感じました。ROLLING STONESにも。勿論それらのバンドのグルーヴ感は全く別のものですが、僕の中にある基準値は一緒だったようです。その後、その基準値を物差にして僕はロックと接してきたのかもしれません。結局はあの頃感じた『異質なもの』を求めてロックを聴いてる、それが新しいバンドから感じ取れなくなると過去のバンドに戻ってしまう‥‥その繰り返しだったのです。
  ところがここ数年、その『異質なもの』を感じさせるバンドが幾つか現れました。それがKORNであり、このRATMだったのです。
  少し音楽的な話を。トムのギターワークは、ギターに精通してる人なら判ってもらえると思いますが、それまでのギタリストと比べてかなり異質なものです。よく『ジミヘン以来の衝撃』なんて言葉を耳にしますが、正にそれに値する存在でしょう。サウンド的にはよくあるHRバンド程ゴツゴツしてなくて、どちらかというと線が細い印象を受けることもあります。(特にライヴでは)が、それを感じさせないのはリズム隊の生み出すグルーヴ感が心地よいからかもしれません。シングルギター・バンドでは特にリズム隊の仕事が重要になってきます。レコーディングではダビングすればギターは何本でも入れられるわけですが、ライヴではそうはいかない。となると、それを補うのはベースやドラムの仕事になるのですが、これの良い見本となるのがLED ZEPPELINではないでようか?よく『ZEPの凄さはロバート・プラントのVO.ではなく、ジミー・ペイジのギターとジョン・ボーナムのドラムとの絡みだ!』と言われますが(実際僕もそう思う)、ドラムとギターの絡みが下手なバンドほど醜いものはありません!実はROLLING STONESもこの絡みが生きてくるからこそ素晴らしいのです。AEROSMITHもそう。つまり僕が求める、ロックに対する『グルーヴ感』とはそういうものなのです。それを兼ね備えた存在がRATMであり、KULA SHAKERである、と。そういうわけです。
  ギターに関しては本当に聴いてもらえば判りますが、いろいろなエフェクトを使っています。でも、再現出来ないギミックは一切なし。全てアルバムでやってること、ライヴでもやってます。僕はライヴ映像から入ったから感じませんでしたが、中には「アルバムではすげ〜事やってるけど、ライヴじゃ、ねぇ?」と思ってた方もいたと聞きます。実際ここ日本には、来日が決まるまでその「生のRATM」を観た人間が少なかったですから、本当の良さが判る訳ないです。そう、全てはFUJI ROCK FES.で変わった、と。
  RATMの詩の世界にも少し触れてみますか。左の旗はRATMが掲げる「アメリカ国旗」だそうです。上下逆さまの星条旗にピースマーク、そして「something doesn't smell good!」(「何か気に入らねぇ!」位の意味でしょうか?)、「666」の不吉な数字。これがRATMの考える、現代のアメリカ国旗なのだそうです。御存じでしょうが、彼等の歌にはラヴソングなどありません。全て世の中の不満・不条理・差別・無知などを歌にしています。歌詞の解説をするだけでHPがひとつ作れてしまう位、彼等の歌詞は深いです。中にはここ日本に住んでる限り、理解出来ないであろう内容のものもあります。僕自身も全てを理解してる訳じゃないですし。もしこれから聴いてみよう、と思ってる方がいたら是非国内盤をお薦めします。僕自身、最初に買った1stが輸入盤だったために、かなり理解するのに苦労したので。確かに詩の世界を理解出来なくても彼等の音楽を楽しむ事は可能です。特にバンド少年少女はあのサウンドに衝撃を受ける事でしょう。でも、もし少しでも彼等自身に興味を持ったのなら、迷わずに対訳の付いた国内盤を買って下さい。って、別に僕はSO○Yのまわし者ではありませんが。(笑)
  僕自身、イギリス好きとか言いながら、学生時代は「アメリカン・カルチャー」なる講議を受講していたので、何を歌っているのか、その内容が多少理解できるものもあります。別に「頭使ってロック聴け!」なんて説教臭い事は言いませんが、今の日本を見ていると、何となく彼等の歌詞から何か感じ取ってくれるんじゃないか?‥‥なんて淡い期待をしてしまうわけです。考える切っ掛けにはなるかな、と。

  先月のCLUB KはこのRATMの特集でした。改めて大音量で彼等の音楽に触れて、ヒップホップ云々やヘヴィロック云々ではなく、『'90年代のハードロック・バンドとしてのRATM』を感じ取る事が出来ました。やっぱり一度はライヴで見てみたいバンドです。‥‥そこへ、今年のFRFへの再登場の噂が‥‥!

  メロディーがなきゃダメ、って方には両手を挙げて薦められる存在ではありませんが、彼等のサウンドや歌詞には一聴の価値があると思うので、心を閉ざさずにトライしてみて下さい。それこそヒップホップ系のアーティストからグランジ系、更にはU2まで、彼等が一緒にツアーを回ったアーティストは多種多彩です。それだけのリスナーにアピールできるものを持った、数少ないバンドです。あとはあなたがそこから何を感じるか?なのですから‥‥

('99.3.14.)



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