THE BOOM「百景」

●そして「歌」が残った

  THE BOOMを『MONTHLY PICK-UP』に取り上げるのは、今回で2度目ですね。基本的に「同一アーティストを二度取り上げない」のがあのコーナーの信条なのですが、時として例外が生じてしまいます。過去、複数回ピックアップされたアーティストはMr.Childrenモーニング娘。HEATWAVEの3組のみ。いろんな意味で俺の音楽感や人生観を変えて来たアーティストばかり。そこに今度はTHE BOOM通算11作目となるオリジナルアルバム「百景」を加えることになりました‥‥だって、本当に素晴らしいポップアルバムなんだもん。アルバム全曲を聴く前から決定していたことですから、俺の中で。

  このアルバムに接する前、俺は収録曲を数曲耳にしていました。先行シングルの "僕にできるすべて""朱鷺 -トキ-" といった先行シングル曲(とはいってもこれらは一昨年末のリリースなんですけどね)、今年5月の武道館&大阪城ホールでのデビュー15周年を記念するスペシャルライヴにて配られた "24時間の旅""光" といった楽曲達。これらを聴いただけで、既に俺の中では「間違いなく名盤!」と勝手に思い込んでたのね。それは、ここ数年‥‥いや、ソニーから東芝に移籍した後の作品群が常にハイクオリティーなものばかりだったからってのも大きいんだけどさ。

  けど、まずなによりも、俺の心を大きく揺さぶったのがこのTHE BOOMとスタッフ、そしてプロデューサー佐藤剛からのメッセージでした。既にいろんなところで語り尽くされた話題なので敢えてここで再びその内容には触れませんが、とにかく俺に強烈な印象を与えた大きな出来事だったのです。

  勿論、そういった事象によって音楽の内容が左右されることはありません。実際に自分が聴いて、本当に良い/素晴らしいと思えたのなら、それは自分にとって本当に良い音楽/歌なのだ、と。当たり前だけど、それが全てですからね。

  で、実際に耳にした "24時間の旅""光" といった楽曲は、THE BOOMらしい、非常にクオリティーの高い優れた楽曲だったのです。もうこの2曲だけで満足なのに、更に上記のシングル曲まで収録される。しかも再録音までして。そりゃ期待しちゃうに決まってるじゃないですか!

  正直、ソニー時代末期の彼らはアルバム毎に極端な方向に進みすぎていて、作品によってはちょっと馴染めないものもありました。俺内での名曲度が非常に高い "手紙" を収録したアルバム「TROPICALISM -0°」は一部では評価が高いようですが、俺的には正直馴染めないアルバムなんですよね。個々の楽曲は最高に素晴らしいものが多いのですが‥‥しかし、東芝移籍後の作品群‥‥「No Control」「LOVIBE」がいろんな意味で先の「TROPICALISM -0°」を更に進化させたような内容なのにも関わらず、素晴らしいアルバムだったこと、更には「OKINAWA〜ワタシノシマ〜」で過去の楽曲を更に深化させていったこと。こういったことを経て、オリジナルアルバムとしては約3年9ヶ月振りとなる「百景」は、THE BOOMが「沖縄」や「ブラジル」に走る前の、本当にシンプルな「歌」を聴かせてくれていた原点に立ち返ったかのような味わい深い作品群に仕上がったのです。勿論、ここには「沖縄」も「ブラジル」も「スペイン」もまだ存在します。しかしそれらが独立した要素として混在しているのではなく、既に「THE BOOM」というジャンルの中のひとつの「色」として見事に混じり合っている。全ては「歌」を聴かせるための、単なる味付け程度に過ぎない‥‥そんな強気な姿勢が感じられる、優しくて力強いアルバム。それがこの名盤の魅力であり、今のTHE BOOMの魅力なんだと思います。オリジナルアルバムをリリースしてこなかった約4年近くのブランクで、彼らは「いかにして『歌』を聴き手に届けるか」という命題と格闘し続け、そしてその答えを見つけ形にした。だから「どんどんコピーして」もらってでも多くの人に聴いてもらいたい‥‥それだけの自信があったから。それだけの自信作だったから。

  「歌」は確かに最後の最後に残りました。そしてそれはちゃんと俺のもとに届きました。さて、今度は皆さんのもとに届ける番ですね‥‥その切っ掛け作りとして、俺は今この文章を書いています。昨日届いたばかりの、この素晴らしいアルバムを何度もリピートしながら。

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Update : 2004.7.2.

【DATA】

2004年7月度オススメ作品


[artist] THE BOOM
[title] 百景
[format] album
[release] 2004.6.

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