2002年5月8日 西日本新聞掲載 九州は祖先からの故郷であるからか、九州に関する團伊玖磨さん(1924〜2001)の音楽は多い。2年前から團さんに頼まれて、團さんが九州を題材にして作曲した作品の編纂をしているが、昭和26年に作曲した『久留米市の歌』が契機となり、九州各地から委嘱されて書いた作品は大小合わせ50曲に近い。一人の作曲家がひとつの地方にこれだけ数多くの作品を書いているというのはきわめて珍しい。特に「うた」を伴う作品が際立つ。 |
團さんが九州をテーマに作曲したさいごの合唱曲が『筑紫讃歌』(犬塚尭作詞・1989年)である。『筑紫讃歌』は年来の構想であったこれまでの作品の集大成として、福岡市制百周年を記念し同市に献呈され、作曲者自身の指揮で初演された。オーケストラと合唱に二人の独唱者を伴い8章にわたる演奏時間約55分を要する大曲である。 |
團さんの九州を題材にした作曲は、亡くなるまで続いていた。有明海と玄界灘という静と動の対照的な姿を交響詩にあらわしたいと、犬塚尭に依頼していた「ふたつの海」の詩は、すでに團さんに手渡されていた。丸山豊の遺作となった「大樹頌歌」(1989年)はカンタータに作曲をする構想をもち、この詩も團さんの手元に届けられていた。このふたりの詩人の合唱曲が團さんの追悼コンサートで演奏されるのも何かの縁であろうか。 |