2009年10月17日 アクロス福岡で行なわれた『筑紫讃歌』&『筑後川』の
演奏会の様子が ライブ録音され、fontecよりCD発売されました







                                            プログラムノートより抜粋

 『筑紫讃歌』、『筑後川』と團伊玖磨                                   中野政則
 
 「有明の海を経た筑後川の水は、やがて東シナ海で揚子江の水と合体する。一衣帯水である」「川は河口では終わらない。海へ向かうみなかみである」
 團伊玖磨が語る 『筑後川』 の世界だ。團は、エッセイ集 『パイプのけむり』 に 「新しい島影を求めて東アジアの海の道を漂流
(さまよ)ってきた祖先の道に、僕は故里を感じる」と書き、日本では珍しいその姓から、自らのルーツを遠く中国大陸からの漂流民に求めていたようだ。
 『筑紫讃歌』については、こう語る。
 「僕にとって福岡は父祖の地である。その福岡のために思いの丈を盛った曲を創る―この事は至福の行為だった。犬塚堯さんの優れた雄大な詩をいただいて、すぐに作曲に掛かった時、心に鳴り響いた音は、どんどん変質して、一人の人間の父祖の地を乗り越え、飛び越して、日本という東アジアの海に浮かぶ国の生い立ちと、その生い立ちを与えた海の向こうの国々と、そして、空の上により大きく広がっていた空、太陽の上になお眩しく輝いていた太陽、そしてその下に生きた人々への讃歌となって立ち昇った」
 2009年10月12日、アクロス・福岡シンフォニーホール。
 『筑紫讃歌』と『筑後川』を歌う夫々200名の「特別合唱団」は團の指揮、歿後は現田茂夫の指揮でうたい継いできた合唱団。
 「九州を愛した作曲家」と称される團の作品に生命を吹き込む人たちである。
 「生前の團伊玖磨が、自作品の演奏再現に若手指揮者中最も信頼をおいていた指揮者」と評価されている現田の指揮に、佐藤しのぶ、青戸知、九州交響楽団が舞台を飾り、合唱団と創り出す音楽へ共感した会場は、拍手と歓声が鳴りやまなかった。
「23年間の音楽生活で三本の指にはいるすばらしい演奏会だった」と現田自身も喜びを押えきれなかった。

                                    CDご希望の方は團伊玖磨さんの音楽を楽しむ会までご連絡下さい