俺の屍を越えていけ
〜ジードの逆襲〜

8月30日「オープニング」
 ゲームを開始するとアニメシーンが展開される。内容は下のようになるだろうか。
 京を騒がす鬼の親玉「朱点童子」討伐のおふれが出て久しいなか、ついに朱点童子の前まで来た夫婦がいた。しかし、男は騙し討ちにされ、女も子を人質に取られ「子供の命と引き替えに」朱点の前に屈する。朱点は約束を守ったが、助けたのは命だけ。自分の所まで辿り着く戦士の素質を受け継いだ子を恐れ、成長を早め2年までしか生き延びられない短命の呪いと子をもうけることのできない呪いををかけた。しかし、それを哀れに思った神が子供を保護し、呪いは解けないまでも神と交信することによって子を授かれるようにしてくれた。
 このことがゲームシステム、展開に大きな影響を及ぼすのである。

同日「スタート」
 異常に長い説明書を読み終え、子供を1人作ってゲーム開始。
 とりあえず、初代当主(家長)瀬崎晶、第一子瀬崎澄のパーティ構成で鬼退治に出かける。
 行ける場所は「相翼院」「九重楼」「鳥居千万宮」の3カ所。どこも敵の強さはさして変わらず、奥に進むほど強敵が現れるようになっている。ここでLVアップに励み、最終的には朱点童子を倒す力を身につけるのである。
「これって退屈じゃないの?」
 相変わらずの弟の疑問。私のやっているゲームを全てクソゲーと決めつけたがる嫌な奴だ。そんなことはやってみるまでわからないに決まっている。

同日「おもしろい」
 「相翼院」突入。そこら辺をうろついている河童みたいな敵にぶつかり、戦闘を試してみる。
「おっ、早い」
 その通り。ロード時間があまりなく快適にできている。
「このスロットはなに?」
 そのスロットは戦利品スロットだ。勝利後に得られる戦利品があらかじめわかるようになっている。戦利品によってやる気が違って来るというわけだ。また、このゲームではピンチになった敵はすぐ逃げるので逃がさないように倒す戦術を練る必要も出てくる。
「グラフィックは少しへぼいね。」
 悪くないとおもうのだが?
 そんなことを言っているうちに戦闘終了。スピーディだ。連続戦闘もさして苦にならないので戦闘→LVUPの手順が楽しめる。これはいい。
「でも、人間ダビスタなんでしょ、つまらなそうじゃん。」
 まだ抵抗するか。

同日「人間ダビスタ」
 ある程度ゲームを進め、キャラクターの年齢が0才8ヶ月になると神と交信し子供をもうけることができる。これには鬼を殺すことで得られる奉納点を消費し、消費が多いほど有能な神から子供を授かることができる。このゲームでは素質次第でキャラの生長が決まってしまうためこれは非常に重要となる。しかし、ただ闇雲に点数の高い神と交信すればいいわけではなく自分の欠点を補う遺伝子を持つ神と交信しなければならない。また、バランスが良くコストパフォーマンスが良い神を見つけたからといってその神とばかり交信していると「近親婚→虚弱児→寿命が短くて困る」となってしまうためにかなり気を使う。
 いろいろ考えた末に晶と澄に1人ずつ子をつくらせ、前者を「当主の家系」、後者を「補佐の家系」とする。また、昔な気分を味わうため、「当主を継ぐのは代々男、剣士のみ」という制約を勝手に作る。
「相変わらず男尊女卑だね。古いったらありゃしない。」
 だまれ、時代に合わせているだけだ。

9月1日「挫折」
 しばらくして晶は千尋(女)、澄は総治(男)を神より授かる。しかもそのしばらく後に初代当主晶死亡。男が総治しかいないためいきなり当主の座は補佐の家系に。思い通りには行かないものである。

9月3日「奥義」
 代を重ねるにつれて素質が高くなり、戦闘一族になってゆく瀬崎家。徐々に生長してゆくのが楽しい。
「それにしても、この一族って生まれてから2ヶ月は戦闘訓練、その後は鬼討伐に出かけて、子供つくって死んでいくだけでしょ?空しくないのかな。」
 もはやクソゲーと呼ぶことをあきらめた弟が言う。もちろん私は気にしない。おもしろいからだ。
「あれ、奥義創作とか出てるよ」
 なになに、「双光竜騎斬創作」なるほど、奥義に体得した者の名前がつくのか。これもいい。奥義は一子相伝だが、同じ職業の子孫に継承できるシステムになっている。丁度いい、これから補佐の家系は代々薙刀士にすることにしよう。

9月4日「再び挫折」
 4代目当主「竜騎」死亡。家督を継がせるのは…‥しまった、男がいない!
 一族は「織絵」「一葉」「鈴音」「清音」「小真名」の5名、全員女。この瞬間、私の頭には「末期養子の禁」「お家断絶」あど江戸時代の言葉の数々がよぎった。
「ゲームなんだからどうだっていいじゃん。」
 それもそうだ、これはゲームなのだからあまり気にする必要もないような気がする。5分悩んだ末、当主の家系から「清音」指名、泣く泣く5代目当主とする。

9月6日「ジード降臨」
 中ボスも楽に撃破できるようになり、溜めに溜めた奉納点で当主の家系「元綱」と風の女神を掛け合わせ、子供を作る。
 1月後、風の女神から送られてきた子供はモヒカンだった!このゲームでは子供の外見が青年なるまで親神が育てているようなのだが、風の女神様の趣味はモヒカンらしい。
「お兄ちゃん、ゲームなんだからいいじゃん。」
 いやいかん。瀬崎の名字を冠する者にモヒカンなどいては。あまりに腹が立ったので「ジード」と命名。名前は北斗の拳の雑魚からとってきた。同じモヒカンで、顔もよく似ている。奴にはぴったりだ。職業も当主の家系の職業である剣士から槍使いに変更。徹底的に迫害することにする。

9月7日「ジード初陣」
 むかついたのでジードにはろくに訓練も施さず、装備も出陣部隊の余り物、さらに初陣から前列で戦わせることにした。
 早速出陣。今月はいきなり中ボスに挑むとしよう。もちろんジードが死んでもリセットはなし。
「くそっ、迫害しやがって!いつか這い上がってやる」
 何を言っているのだ?
「モヒカンなだけで迫害されてるジードの心境。」
 馬鹿な。ジードは瀬崎家に生まれたくせにモヒカン。モヒカン罪で死ぬところを生かしてやっているというのに。
「いつか殺してやる〜!」
 ジードが言ってるならそれでもいいだろう。

同日「ジード生き延びる」
 苛酷な戦闘の後帰還。予定通り最後の戦闘でジードが健康度0(HPとは別にあり死にかけると減少。低いと次の月に高い確率で死亡する)になった。期待しながら月初めの報告を聞く。
「お兄ちゃん、1人死んだよ」
 おお、よくやった(なにを?)。ん、当主寿命で死亡だと!?ジードが生き延びている!?殺したはずなのに!
「ところで次の当主はどうするの?当主の家系にジード(男)がいるけど。」
 もちろん補佐の家系から選ぶに決まっている。いや、むしろモヒカンなどを産んだ家系は一生補佐の家系を補佐。当主と補佐の地位を逆転させるとしよう。7代目当主は「栄」に決定する。

同日「ジード落雷撃」
 2回目の討伐でジードが奥義を創作する。その名も「ジード落雷撃」。強力な奥義なのだが名前が悪いために使う気も起きない。、この奥義の名前を残すのも汚らわしいのでジードの子は槍使い以外の職業にすることがもう決定する。もちろん、苛酷な虐めに耐え抜いて生き延びたらの話だが。

同日「ジード最強伝説」
 しばらくジードの健康度を0にしてから帰還することを繰り返す。ジードの回復アイテムの分まで他のキャラに回せるので討伐がスムーズになり、LVもかなり上がってきた。しかし、ジードはしぶとく生き残っていた。普通は健康度が0になって帰還することを3回繰り返せば死ぬはずなのだが。
「俺強い、俺生き延びる。」
 弟が後ろからうるさい。
「ステータス見ろ。」
 仕方なくジードのステータスを確認すると…‥普通のキャラと比べジードのHPは1.5倍、心技体の能力も1.5倍程度ある。なんだこれは!?
 嫌な予感がしたので歴代能力ランキングを確認する。すると大抵の能力値でジードが1〜3位の間にいる。それどころか素質は20000点。2位が10000程度であることを考えると驚異的とすら言える。いや、それよりもこれだけ能力値が高いとクリア後もランキングに顔が残る可能性がある。
「俺の時代が来たって事よ、グフフ」
 弟が相変わらずうるさい。とりあえず、これ以上能力が伸びないように本格的に殺してみることにする。
「そ、そんな、後悔するぞ。」
 しない。

9月8日日「ジードの遠征」
「あれ、ジード殺すんじゃなかったの?」
 ふん、ジードの能力を生かして大ボス達を殺す作戦に切り替えたのだ。もちろん、ボスを殺して手に入れた奉納点は新・当主の家系につぎ込む。
「ひ、ひどい」
 なんとでも言うがいい。全てはモヒカンが悪いのだ。
「でも、成人まで生き延びたから子供は作らせるんでしょ。」
 そういえばついにジード達も成人。当主である栄には奉納点10000の神を、弟がうるさかったのでジードにも1000点の神をあてがうとしよう。
「相変わらず外道だなあ。」
 モヒカンと結びつけられた女神のことを考えていないのか?

同日「ジードの活躍」
 子供が生まれるとしばらく訓練期間を置かなくてはならない。一族から教師を選ぶのだがその間2人あまる。普段なら大事をとって安全なところに行くのだが、余っているのはジード。これなら朱点童子に突撃させて死んでもらうのもいいだろう。もし死んでも息子が跡を継いでくれる。
 思い立ったが吉日。早速朱点童子が待つ大江山に突撃。中ボスを撃破しながら進んでゆくと朱点童子と対面。戦闘になる。
 楽勝。
「ぐへぐへ、これで俺の名が歴史に残るぜ。」
 それはまずい。リセットしなければ!と思ったのも束の間、2段オチだったために後半面に続くことになった。
 ふう、危ないところだった。

9月9日「ジード死亡」
 結局、ジードはとことん生き延び、1年11ヶ月で寿命を迎えた。くそ、長寿ランキングにも載ってしまっている。
「つまり、これが実力ってやつ?」
 モヒカンだから核にも耐えられるほどの生命力があったのだろう。許せん。

同日「PS死亡」
 最近、ロード時間がやけに長い。以前はすぐに行われた画面切り替えも、ゲーメストを1ページ読めるぐらいかかる。
「俺を迫害するからよ。へっへっへ」
 死んだ奴は黙っていろ。とりあえず修理に出そうと思ったが、10000円ぐらいかかるらしいので断念。藁にもすがる思いでPSを横置きにしてみる。
「民間療法なんかに頼っても、ジードの呪いは解けないと思うけどねぇ。」
 なおった。スムーズに読み込みを始める。前よりも早いぐらいだ。どうやら、民間療法でも効果があるらしい。
「ケッ、運のいい奴。」

9月10日「ジードの呪い」
 ジードが死んでから8代目直継、9代目時定と代を重ねていったが(もちろん当主は新・当主の家系から)、いまいち能力が伸びない。奉納点の高い神との子供のはずなのだが。逆にジードの家系はへぼい神でもそこそこの能力を叩き出し、新・当主の家系と同等の能力を持っている。
「神罰だね。こりゃもうジードの家系を当主にするしかないね。」
 では、美形の男が生まれたらそうしてやろう。過去の記録を見れば1人もいないがな。
「そんなこと言ってると生まれるんだよ。」
 ……生まれた。なんということだ。

同日「ジードの子孫」
 弟に言った手前、しかたないので初志を当主に据えてやる。
「お兄ちゃん、こいつ、素質がバカ高いよ」
 素質25000…‥。
「さすが俺様の子だぜ、ゲヘゲヘ」
 黙っていろ。

同日「ジードの復活」
 しばらくLVアップを繰り返していると奥義を修得。
「ジード落雷撃を復活!だって。」
 あの奥義は闇に葬ったはずなのだが、まさか、名前が残っていたとは。ジードの子孫はどこまでも忌々しい。
「でも使うんだね。」
 よく考えて見ろ、もうジードの血は10%以下しか混じっていない。こいつはジードであってジードではないのだ。よって今後は交配も元当主の家系優先にする。
「あーあ、プライド捨てちゃって。外道は手段を選ばないよね。」
 言っていろ。

9月11日「クリア」
 ジードの家系復活と共に、もう一方の家系も伸び始め、12代当主「軍司」でクリアに成功。こいつもまた忌々しいことにジ−ドの家系だが。そしてエンディングへ。

同日「終了」
 まさか、エンディングにまでジードが出てくるとは。
「無駄に活躍したから出番も多かったね。」
 くそ、ゲームは面白かったが納得いかん。2周目だ。今度はモヒカンのない一族をつくるぞ!
「もうやめればいいのに。」
 …‥その後、3代目にしてモヒカン誕生。俺の屍を越えて行けはお蔵入りに…‥。



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