ギレンの野望
〜独裁の道程〜

登場人物紹介
「私」
 これを書いている本人。シミュレーション、RPG、バーチャロンが得意。好きなものはザクとギレン。嫌いな者は弟。周囲から外道と呼ばれて困っている。

「弟」
 弟。私をマニアと呼ぶ嫌な奴。気分のいいときには必ず横から口を出す。恋愛系ゲーム(?)が得意なので、私の理解の範疇を越えている。バーチャロンも得意。好きなものはガンダムとシャア、嫌いな者は私。兄貴という言葉に妙に反応する。


某月某日「俺様の野望作戦発動」
 ゲーム雑誌で「ギレンの野望」の記事を目にする。
 一年戦争を支配者の立場で体験、戦局を動かしていき、自分の選択次第で原作ではあり得なかった展開を実現する、というもの。
 いい、すごくいい。早速このゲームの購入を決定して発売日を待つ。


4月9日「ジオン公国に栄光あれ!」
 「これは愚民なる地球市民に対する裁きの鉄槌である。神の下したメギドの炎に必ずや連邦は屈するであろう!」
「ジークジオン!! ジークジオン!!」
 ソフトを買って10分、早速ギレン閣下な気分に浸っている。
 良質なムービーと共に聞こえてくるこの演説。ファーストガンダムを愛する私の気分は否応なく盛り上がろうというものだ。
「こんなもので盛り上がれるなんて、マニアだなぁ。」
 いつのまにか帰ってきた弟が口を挟む。私が盛り上がっていると必ず水を差す嫌な奴だ。
「そっちこそ、1人で盛り上がってむなしくないの?」
 ええい、うるさい。


同日「恋愛大作戦」
 作戦提案、報告などが行われ、支配者の気分を満喫できる作戦フェイズ。コマンドも兵器開発、諜報活動など、戦争の臭いしかしない。いい感じだ。
「ねえ、これってキャラゲーだよね。」
 そうとも言えなくもない。私は認めんが。
「じゃ、恋愛とかあるの?」
 恋愛ゲーに毒された愚か者がッ!
 貴様に常識はないのか!?
 戦争にそのようなものは必要ない。ガンダム世界の恋人達は殺し合うか、悲惨な死がまつかの2択だ。
「そうなんだ。じゃあ、戦友との友情とかもないんだ。」
 修正してくれるわッ!!


同日「マニアと人と。」
 作戦フェイズから行動フェイズに移る。部隊を移動させ、行動を決定するフェイズである。このフェイズに移ると兵士の命運が私の一存にかかっているのがよくわかる。例えるなら『神』の気分といえよう。
「またゲームに浸ってる。やだね、マニアは。」
 やかましい。おとなしく戦略マップでも見ていろ。
「ガシャポン戦記と同じマップなんか見ていてもねえ…‥。」
 お前にはマップ上に見える戦略ラインと重要拠点が見えんのか!
「その違いはマニアにしか分からないね。」
 殺す!


さらに同日「殺し合い宇宙」
 ターンの締めくくり、攻撃フェイズ。前フェイズで攻撃指令を出した部隊が一斉に攻撃を開始する。
「かっこいい!」
 リアルなザクが戦闘機を打ち落としていく様が絵になっている。SD系のゲームでは想像できないよさだ。加えて、戦闘前にパイロットが一言しゃべるのがまたいい。
「シャアがしゃべってる、かっこいい!」
 ふん、それぐらい当然だ。こっちではスレンダーやデニムがしゃべっている。
「誰それ?」
 ガンダム第一話に出てきた面々だ。有名だぞ。「少佐〜!」とか言いながら死ぬあたりが何ともよい。
「やっぱりマニアだ。」
 黙れ。


それでも同日「第一次降下作戦」
 ゲームの流れも分ったので、『第一次降下作戦』を発動する。
 実行と共にギレン閣下の演説が始まり、再び気分を高揚させてくれる。さあ、攻略開始だ。連邦軍重要拠点『オデッサ』に部隊を侵攻させる。
 重要拠点での戦いは局地戦フェイズに行われる。重要拠点付近のマップが拡大され、その中で戦うことになる。
「重要拠点だけあって敵の数も多いね。みんな戦車と飛行機だけど。
 まあ、初戦は楽にできているのだろう。シャア、ランバ=ラル、ジョニーライデンなどの有名パイロットを揃え、戦力的にも負ける要因はない。突撃だ。
 …こうして、オデッサでの戦いは始まった。


まだまだ同日「戦闘」
 基地周辺から敵が近づいてくる。基地にいれば防御効果があるものを。馬鹿CPUをランバ=ラルで迎撃する。
「あれ、簡単にやられてる。」
 ランバ=ラルが爆撃機なんぞにやられている!?
 くそ、シャアで復讐だッ!
「全滅してるけど。」
 有名パイロット軍団で戦うも、一瞬で返り討ちに。このゲームでは普通の戦争と同じく数が力のようだ。深く心に刻み込み、復習への糧とする。
 気がつけばもう午前4時。寝て今日の授業に備えなければ。


4月10日「強者の論理」
 前日に教訓をえ、早速ザクの量産に入った。開始してから10ターン、10部隊、計30機のザクで再度オデッサに侵攻する。
 …楽勝だ。私の考えは正しかった。このゲームは多数で少数の敵をいたぶるゲームである。
「相変わらずマニアの上に陰険なんだから。ゲームが違えば他人の恋愛度は最低だね。」
 その程度がどうした。私はサクラ大戦の「恋愛度」を「忠誠度」だと最後まで思いこんでいた人間。恋愛ごときを弱い者虐めにはかえられぬ。ああ、いい気分だ。
「サディスト!」
 ん〜、聞こえんなぁ。


4月11〜13日「規則正しい生活」
 午後12時にゲームを始め、午前4時に就寝、7時に学校という生活が続いている。これもギレン魔力か。
 日に日に体調を崩していくが、この規則正しい生活をやめることはできなかった。
 それは、次の理由による。
「お兄ちゃん、早く寝てよ。」
 もちろん弟の声だ。奴に復讐するいい機会をそうそう潰すことはできない。自分も楽しくて一石二鳥。体調と引き替えに弟の睡眠を妨害する。
 いい気分だ。と言いたいが、気分が悪いのでこの作戦は今日で終わりだ。


4月14日「V作戦」
 シャアが連邦のV作戦をキャッチしたらしい。
「V作戦って、ガンダムが出てくるやつでしょ、早く出てくればいいのに。」
 不吉なことを言うな。陸戦型ガンダムの出現でただでさえ戦闘がきつくなっているというのに。
 数ターン後、シャアからまた連絡が。木馬に負けたから補給をくれとのことだ。原作ではここで補給を送らずに木馬に負けたに違いない。早速補給部隊を送ってやることする。史実違うことができるのがこのゲームのよいところだ。


4月15日「泥棒作戦」
 「諜報部が敵国開発プランを入手しました。」
 突然の報告。ジオンで敵兵器が開発できるとは。期待をふくらませつつ開発させることにする。なにができあがるかが楽しみだ。
「ボールじゃないの?」
 発送が悲しい奴め。せめてガンキャノンと言え。
「じゃ、ガンタンク。」
 もういい。


同日「ガルマの死」
 シャアから再び木馬に敗れたと報告がある。どうやら、原作でも補給を行っていたらしい。ショックだ。
「あれ、デニムとスレンダーがいないよ。」
 V作戦で殺されたパイロットはゲームからいなくなるのか。戦場で負けても負傷するだけなのに。二重に厳しい。
「原作で戦死するパイロットって全部お兄ちゃんが育ててる奴じゃん。」
 原作と違う行動がとれると知って原作で死ぬパイロットを育てていたのだが。これはかなりまずい。
 また数ターン後、原作通りにガルマが戦死。育てた労力が無駄になってゆく。
 そしてランバ=ラルも戦場に向かってゆく。こいつが死ぬと本格的にまずい。
「いい気味。」
 私が苦境に立たされているとき、弟が必ず横で見ているのはなぜだろう


4月16日「戦死者万歳」
 ガルマ追悼式を行うかどうかを聞かれる。当然、答えはYES。ここまでくれば原作通りにやっていくのみだ。
「あ、マニア向け。」
 弟を黙らせつつも画面に見入る。確かにガンダム愛好家向けだ。アニメーションと同時にギレンの演説が挿入される。
「全軍の士気が50上がりましただって。人の死を食い物にしてんの?最悪だね。」
 確かに全軍の士気が50(MAX100)上昇している。これはすごい。
 ガルマは指揮官としてはあまり役に立っていなかった。死んで役に立ったと言うことだ。
 ホワイトベースの面々に感謝せねばなるまい。


4月17日「ガンダム大地に立つ、が」
 開発部から新兵器ができたとの知らせを受ける。そういえば、この前手に入れた敵国開発プランが開発期間を終える頃。喜び勇んで開発室をのぞいてみる。
「あっ、ガンダムだ!!」
 プロトガンダムができあがっていた。シャアではないが「連邦のモビルスーツは化け物か!」と言いたくなる性能。
 ギレン閣下を乗せ、早速戦場に送り出すことにする。
 このとき、同時にドム開発も終了。ガンダム+ドム10部隊を配備する準備を進める。これで連邦も一掃できるだろう。


4月18日「ドム発進!」
 V作戦をランバ=ラル部隊から報告があった。木馬に敗れたらしい。
「兄貴! ドムの一個小隊を送ってくれだってさ。」
 ドズルの「兄貴!」をまねして弟が叫ぶ。できれば「兄貴!」に反応するのはやめてもらいたいのだが。
 それはそうとして、ドムを送ることにする。原作と違うところが妙に私の期待をそそる。ふふふ……これで木馬も一巻の終わりだろう。


同日「続き」
 数ターン後、ランバ=ラル隊から報告がある。どうやら、ホワイトベースとそれに積まれていたモビルスーツを捕獲することに成功したらしい。
 さすがドムだ。「グフとは違うのだよ、グフとは!」などと心で叫びつつ、ホワイトベースと、そのモビルスーツの実戦配備を進める。


4月19日「オデッサ壊滅作戦」
 マ=クベが連邦軍のオデッサ攻略作戦を察知、オデッサの指揮を執らせて欲しいといってきた。
 原作ではここで核爆弾を使うことになっている。核を使えば中立勢力の非難は免れないが、やはり核使用の魅力は大きい。マ=クベを指揮官に任命する。
「マニアの上に外道なんて最低だね。」
 これは核だからいいんだ。


同日「マ=クベ、お前は用済みだ」
 同ターン、連邦がオデッサに攻め入ってくる。しばらくの交戦の後、核爆弾発射。すばらしく邪悪でいい気分だ。
 だが、予想通り中立勢力から抗議がくる。どうするべきか思案しているところに思わぬ助け船が。
「兄貴!マ=クベを死刑にしようぜ。」
 マ=クベに核を使わせ、責任だけはとらせた上に処分。良いゲームだ。
 残念なことにキシリアの嘆願によってマ=クベは死刑を免れたが、中立勢力は納得したようだ。


4月21日「父上、あなたも用済みだ」
 地上もほとんど制圧したこの日、連邦軍が突如として重要拠点ア=バオア=クーに攻めいってくる。
 しかも、デギン公王が勝手に和平交渉に乗り込もうとしているらしい。和平だけは阻止せねば。幸いなことに、以前開発したコロニーレーザーが連邦軍を捕らえているという。発射するしかない。
「外道な総帥、このままではデギン公王も巻き込んでしまいますが。」
 弟が何か言っているが無視し、うるさい父親もろともに葬り去ることに決定する。
 発車後、ギレンは兵士に口止めをするが、数日後にはこの兵士も消されていることだろう。


4月22日「キシリア、お前も邪魔だ」
 部下よりキシリアが父の死について調査をしているとの報告を受ける。
 災いの目は早いうちに摘むに限る。キシリアを早速逮捕、謹慎処分にする。
「外道な兄上、私に何の落ち度があったというのです!」
 弟が読み上げてくれたが、ギレンはこういった。「自分の胸に聞いてみるのだな。」と。とてもいい気分だ。男として生まれたなら一度はこう言ってみたいものだ。


4月23日「条約破棄」
 実はこの世界、核の使用とコロニー落としは南極条約というもので禁止されている。が、当然それも破ることができる。
 ルナ2攻略に際し、核の封印を解いた私は核バズーカ装備型ザク10機を参戦させる。
 …楽勝。核の力は偉大なりだ。
「お兄ちゃんみたいな人が戦争を起こすんだね。」
 ふん、いくらでも吠えろ。勝ったものが正しいのだ。


4月24日「続・条約破棄」
 ルナ2を攻略したことにより、コロニー落としを再び実行できるようになった。当然、南極条約は無視だ。
 例によってアニメーションが挿入され、コロニー落としから連邦軍本部ジャブローが核汚染される様をしっかり魅せてくれる。
 すばらしい。いい気分だ。


同日「ジャブロー落つ」
 コロニー落としと共にかねてから準備しておいた、ギレンが乗ったガンダム+ドム20小隊をジャブローに降下させる。
 コロニー落としで弱った連邦をいたぶるのは爽快の一言につきる。ジョジョ風に言えば「俺は弱いものいじめをするとスカッとする性格ッ!」となるか。
 2ターン後、連邦軍本部、南米ジャブローは落ちていた。


同日「ハッピーエンド」
「なんか、納得できないね。」
 なぜか、こういうときだけ帰ってくる弟が言う。
 「ギレンが世界を平和に治めた」というエンディングのどこが納得できないと言うのだ。
「ギレンの能力はともかくとして、勝利までの道のりが外道でマニアだし。」
 こう考えたらどうだ。ギレンが肉親を殺してまで独裁をしたのも、南極条約を破ったのも、平和を愛するあまり自分以外に任せておけなかったからだと。
「納得できないね。」
 嫌な奴め。恋愛ゲームにおける「キャラクターの意外な一面」は納得するくせに。
「ゲームが違うから。」
 …‥やはり、お前は殺すしかないようだ。


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