ある程度予想はしていたものの、朱雀様の初陣は実に相当情けないものでありました。

パラメーターがてんで初期のままなのですから頼りないのも致し方ないのですが、その数字以上に弱々しく感じるのです。この私の不安感がダイレクトに伝わっているのか、朱雀様、大変ぎこちない動き。威厳、オーラともにゼロです。
とてもこれから乱世に名乗りを上げようとしている剛の者とは思えません。
敵が出てきて後ずさり、飛んでくる弓矢にいちいち絶叫。ミスおっかなびっくりとしてここらじゃ名が通っていることでしょう。

バッサバッサと夜叉のごとき殺戮を繰り返していた大喬時代からは考えられないこの腰抜けぶり。
全ては旅の同伴者
――― 張文遠(胸キュン髭ランキング第1位)(管理人脳内調べ)が原因です。
…いや張遼様が原因というか、張遼様への愛が原因というか。
血のにじむような思いをしてようやく張遼様に巡り合えたというのに、建国戦に進むまでの間に死んだらシャレになりません。
絶対ヘマできねー!という思いがプレッシャーとなって朱雀様を襲います。
期待と不安と緊張感。愛しさと切なさと心強さと。
当面の朱雀様の方針は「とにかく死なない」。基本です。底辺のレベルです。ですが一番大事なことですよ、ハイ。
大事にしてね、もうあなただけの体じゃないのよ…と、まるで妊婦にかけるような言葉が胸の中を駆け巡る、未だこの戦場はミッション1。



今までのように突っ込み蹴散らしの一騎当千型の戦はまずもって出来ませんので、敵兵を一人一人倒してゆくという地味かつ確実な戦法を繰り出す朱雀様。
本来振り回すべき武器は槍ですが、活躍するのは8割は弓です。遠くからチクチクといやらしい攻撃で兵数を減らせ!しかも移動は常にカニ歩き(シフト移動)姑息な手段で乱世を切り開かせて戴きます。
しかし防御面では鉄壁を誇るこの作戦、決定的な欠陥がありました。ガードの鬼と化したおかげでゲージは元気に青々としておりますが、残り時間がやばいことになっています。
敵の撃破に手間暇かけすぎ。シェフの手仕事か。

このままでは、撃破こそされないものの制限時間というもうひとつの戦いに破れてしまいます。ああそんな馬鹿な。
焦った朱雀様は一転、転がるように敵総大将の元へ走り出しました。それまでソロソロと抜き足差し足状態の移動してたくせに、猛然と全力疾走。
普段運動してない人がこんなに必死で長距離走ったらもう大変ですよ。きっと朱雀様の横っ腹キリキリしてると思います。マラソン大会の練習の初日って、必ずこうなりませんか。なりませんか。私はなりますよ。いや横っ腹の引きつりなんて今はどうでもいいんです、時間がないんです。どんどこ走りますよ、どんどこ。

私に構わないで下さい、とばかりにわらわらと寄ってくる雑魚兵を避けつつ進むもんだから、気付けば朱雀様の背後にはすごい数の追っかけが。韓流スター並みに人気爆発ですね。嬉しくないよ。
せっかく馬超モーションなのだから馬でも奪えることが出来れば半ば無敵状態でドカドカ進めるというのに、こんな時に限って誰一人乗っておりません。敵、全員徒歩。荒くれ者らしく馬ぐらい乗ってろよ!と思ってしまうのは完全に八つ当たりです。
それでも何とか無事辿り着くことが出来、思い切ったダッシュ攻撃+ヤケクソ無双乱舞でなんとかモブ顔のお頭を倒すことに成功しました。

頑張りすぎて、眩暈がしそうです。ミッション1ごときの疲労じゃありませんよこれは。
ゼーゼー肩で息をしながら、果たしてこの先無事に生き抜いていけるだろうか…と、朱雀様が不安で胸を一杯にしていると、優雅にたなびくマントが視界の端に入りました。



あ 、 張 遼 様 が い た ん だ っ た



建国戦のスイートハニー的(誇張あり)な台詞を拝聴することだけに意識を集中していたので、戦力にすることを全く考えてませんでした。
染み付いた習性(=旅といったら一人旅)とは恐ろしいものです。弱っちいんだから何もわざわざ1人で前線に立たずに、一緒に戦ってもらえばいいじゃないか。大いに助けてもらえばいいじゃないか。
そんな気持ちを抱きつつ改めてお姿を拝見すると


『ご安心めされよ。この張文遠、槍となり盾となってお守り致そう』(※張遼ボイスで)


…なんつーことを張遼様が囁いてくれているような気になってきます。幻想という名の思い込みパワーです。


勝手にやる気満々になってしまった朱雀様はお頭との一戦で傷ついた体を癒すべく、肉まんを求めてお店に向かいました。

ちわーっす、肉まんくださーい←暖簾をくぐる感じで
らっしゃい!お客さん、今日はとびきり上物入ってますよ!(本来こんなことは言いませんが)

どれどれ、と小銭を握り締めながらお品書きをみつめると護衛依頼や盾に混じって、「呂布」の文字が。


うおぉぉ――い!!


確かに多数の武将が同行者を求めている、と表示されてましたが…まさか呂布がいるとは。

未だかつて店頭に並んだことのなかったお前が今になって何故。身売りか。怪物業も色々と取り締まりとか厳しくなって(どこの取り締まりか知らんけど)やりづらくなって転職か。というか、何だってこのタイミングで販売なんだよ…!お前も人妻相手に躊躇していたクチか!

言いたかないですが、どいつもこいつも振る舞いが露骨すぎます。
もう少し落ち着いて行動してください。

しかしずっとお供に欲しくて欲しくてたまらなかった人材の呂布。
これまでは怪物という名の障害として立ちはだかってくれたり、領主として君臨しているのを遠巻きに見つめるだけ(間違って戦闘になっても困る)だった憧れの将軍がちょっと財布の紐をゆるめるだけでこの手に…!
張遼様と呂布とに囲まれながら旅をするなんて、天罰食らいそうなほどゴージャス。贅沢。幸福。盆と正月がいっぺんに来たとはまさにこのことです。
がしかし、悲しいかな、実際盆と正月は一度に味わえないのが現実。
盆(張遼様)と正月(呂布)を一挙に手に入れてしまえば、ゴールデンウィーク(建国戦台詞)は手を振って消えてゆくのです。それじゃ何のために今まで苦労してきたんだかわかりゃしません。
本来の目的を思い出した朱雀様は、下唇をかみ締めながら肉まんの代金のみを店員に手渡しました。

とても(血の涙がでそうなほど)つらいけれど、さようなら呂布様。

振り向いてはいけない、振り向かず店から出てゆかねば…!すぐにまた戦いが待っているのだから、諦めて戦場に赴かねば…!




いくら払えば、次回のミッションまで呂布様をお取り置き出来るんだろうなあ





朱雀様、ぜんぜん諦めきれてないままミッション2へ。未練タラタラ。