悲しい別れを経験し、修羅の旅から離れること数ヶ月。
心の傷は、いつか時間が癒してくれるもの。
猛将伝どころかもう三國無双4が中古品としてチラホラ店頭に並ぶほど時は流れに流れました。充分すぎるほど流れました。傷が癒えるどころか風化する勢いで流れました。
そろそろいいんじゃないか、喪に服して(司馬懿のために)封印した修羅モードを再開しても。
もうきっと彼も許してくれるんじゃないか、他の武将と戦乱を旅しても。

そんなわけで、ご無沙汰していた修羅モード再開とあいなりました。



これまで見かけの可憐さからは想像もつかぬ骨太さで修羅街道を生き抜いてくれた大喬さん、今回もはりきって仲間探しを始めます。
申し訳ないほど強く育っている彼女です。護衛としてのお供などいりません。
「愛の言葉囁き要員」としての武将が1人いればそれでいいです。もう充分です。武勲とかどうでもいい。いらん。
そういう割り切った趣旨での旅ですから、何から何まで割り切らせていただきますよ今回は。
とにかく愛の建国戦が目的なんです。それが全てです。
だから、なるべく早めに
―――何が何でもミッション1の段階で運命の人と出会っておきたいのです。
まあそうなると、土地を選ぶ際に提示される情報の「同行者を求めて〜」の記述があるかないかが重要なポイントとなります。
「〜が消息をたったらしい」というのも同様に仲間入りを期待できるのですが、はっきり言ってこの場合は賭けです。
窮地を救ったところで、100%一緒に旅が出来るという保証がありません。
前回の陸遜のように、大した欲しくもないアイテムで誤魔化されて脱力するのはもう嫌なんです。
危ないところをどうもありがとう。これも運命です、ともに戦地を駆け抜けましょう。
…みたいな、ロマンティックが止まらない出会いも正直捨てがたいとは思うのですが、もう夢見る頃はとっくに過ぎました。いい加減、刺激よりも安定を選ばせて頂きます。

とにかくミッション1で売りに出されている武将を買い上げねば、と土地情報をチェックするも、黄忠弓が眠ってたり輸送部隊がいたりいなかったりというどうでもいい報告ばかりで武将の影も形もありません。
寂しい一人旅には懲りています。
心に綴られている会いたい武将リストの中の誰かと遭遇するまで諦めてはいけません。リセットです。

再びミッション1の画面。

「呂蒙が同行者を求めて旅をしているらしい」

呂蒙さんはとても好きなのですが、今回のリストには入ってません。ちょっと悩みましたが心を鬼にしてリセットしました。
さあ気を取り直して。

「呂蒙が同行者を求めて旅をしているらしい」

またしても呂蒙さんです。心で詫びながら再びリセット。

「呂蒙が同行者を求めて旅をしているらしい」

・・・・リセット。

「呂蒙が同行者を求めて旅をしているらしい」

・・・・・・・・・・リ、リセット。

「呂蒙が同行者を求めて旅をしているらしい」



だんだん怖くなってきました。



リセットしてもリセットしても呂蒙さんだけ何故かリセットされてません。もしや画面に焼きついているのではないかと疑ってしまいます。
旅しすぎです呂蒙さん。どんだけ同行者求めてんですか。
呂蒙さんの猛烈アタックに遠慮してか、他の武将が顔すら出してくれないではないですか。困ります。
明らかに待ち伏せされていることにちょっと怯えてしまった大喬さんは、手が震えてリセットボタンではなく裏の主電源を切ってしまいました(どんな震え方を)
たすけて孫策様!と思ったとか思わなかったとか。

そんなこんなでブッツリ電源を落とした後、何事もなかったように修羅モード開始です。
連続出現した猛将のことはとりあえず忘れることにしました。彼だってちょっとやりすぎたと思っている頃でしょう。
呂蒙さんとはこんなことでギスギスした関係になりたくないのです。これからも仲良くやっていきたいのです。
そんな思いが通じたのか、もう呂蒙さんはおりませんでした。ホッと安心しましたが、少々寂しく思ったのは内緒です。

今回のミッション1で、呂蒙さんの代りとして大喬の前に現れたのは
―――

「周泰が同行者を求めて旅をしているらしい」

来ました。

来ましたよこれ。

会いたい武将ランキング4位の周泰さんが販売されておりますよ。
やりました。ようやく努力が実を結びました。リセット祭り(&呂蒙祭り)もようやく終焉です。
武勲換算が最も高い、そこそこの難易度の土地だったようですが、たかがミッション1の敵の強さなど知れています。
迷わずそこを選択した大喬は、店主に財布ごと投げ出す勢いで周泰をお買い上げ。
野望に一歩近付きました。

あとは5ミッション行動を共にして、励ましあい助け合い支えあって愛を深め、建国戦という名の国乗っ取りステージをこなせばOKです。
やっと愛の言葉をこの耳で聞くことが出来る…!
まだミッション1だというのに、やり遂げたような達成感に包まれました。
ミッション2、3と無難にこなし、訪れたミッション4。2人の旅は順風満帆です。
体力ゲージは満タンに近い上、金もそれなりに貯まっていたので、肉まんには目もくれず点心を購入してみました。
2000円使ったところで痛くも痒くもありません。アーハッハッハ。余裕があるって素晴らしい。
大喬と周泰は手を取り合って、山賊だかなんだかよくわからない程度の小物の悪党を倒しに出かけました。
散歩がてらのミッション4。大事なのは次の建国戦なんです。こんなもん消化試合同然ですよあなた。

剣を振り上げて襲い掛かってくる敵兵をバッサバッサと難なく倒し、向かうは総大将の頭の拠点。
早いところ倒してしまいましょう、ホントに、とっとと!一秒でも早く!
建国戦のことで頭が一杯だった大喬さんはまっすぐ小走りで、敵地へと向かいました。
ええ、建国戦のことで本当に頭が一杯だったんです。
まさか通り過ぎたその横で、関羽が山賊に絡まれているとは夢にも思わなかったんです。


「どなたか、力を貸してもらえぬか!」


ああなんということ。助けを求められてしまいました。
関羽様ともあろうものが山賊ごときに苦戦しないで下さい。
いつもならば、はいはいと喜んでお助けいたしますが今回はちょっと事情が違うんです。
建国戦が無事済むまで、一切ほかの武将とは関わりたくないんです。
どんな些細な接触も今は神経質すぎるくらいに避けておきたいんです。
だから冷酷と罵られようとも、この場は見なかったことにさせて頂きます。

ああ…ごめんなさい関羽様…!と断腸の思いで走り出す大喬さん。しかし、その時、逆走するように彼女の横を何か黒いものが横切りました。信じたくありませんでしたが、周泰でした。


勇ましくマントを翻しつつ敵陣に突っ込み、関羽に群がる敵を斬る。斬る斬る。そして突っ込みすぎて囲まれて
斬られる斬られる。
それを助けようとしたのか、関羽様も青龍偃月刀を大きく振り回しはじめましたが、振りも大きけりゃ隙も大きいようで、山賊の下っ端にいいようにやられています。
見てられません。
なにをしているの、デカい男が2人も揃って。
仲間である周泰に死なれては元も子もないので、仕方なく大喬は扇を敵に向かってブン投げました。いちいち相手するのも面倒なので、無双乱舞で一掃です。
おかげで周泰は無事救出できましたが、関羽も無事救出してしまいました。
成り行きとはいえ、非常にまずい展開です。
しかし、救出したからと言ってみんながみんな仲間となってくれるわけではありません。ありませんよ。
だっていつもそうだったじゃありませんか。
謝礼がわりアイテムです。今回もそのパターンのはずです。兄者のもとに帰るはずですきっと。ていうか、帰ってくれ、頼む。



「関雲長、義に従い貴殿と共に行こう!」 

 



想像以上に関雲長は義を重んじる男でした。


そしてそれ以上に空気を読もうとしない男でした。




力尽きた大喬の指は再び震え、リセットボタンに吸い寄せられます。
乱世はまだ終りそうもありません。





もしや私には修羅モードの才がないのでしょうか。