(( Fate/staynight ))
はじめに 血潮は鉄で心は硝子。 幾たびの戦場を越えて不敗。 ただの一度も敗走はなく、 ただの一度も理解されない。 彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。 故に、生涯に意味はなく。 その体は、きっと剣で出来ていた。 海と山に囲まれた都市、冬木市。何ら変哲もないこの街に、侵食する闇があった。 手にした者の願いを叶えるという聖杯。 その聖杯を実現させるためには聖杯に選ばれた7人の魔術師が必要だ。 されど願いを叶えるのは一人のみ、故に。 聖杯は7人の魔術師に7騎の使い魔(サーヴァント)を与える。 サーヴァントのマスターとなった魔術師は他のマスターを消去し、自身こそが聖杯に相応しいことを証明しなければならない。 この聖杯を求めるすべての行いは「聖杯戦争」と呼ばれる儀式。 かつて幾たびかの聖杯戦争があった。そして、再びこの冬木市で。聖杯戦争が勃発しようとしている。 各種システム 伝記活劇ビジュアルノベル。AVGですが、ノベルというだけありテキストやシナリオに力の入ったゲーム。 奈須きのこ氏独特の世界観とシナリオ描写は健在。複雑かつ精巧な舞台設定と、よい意味で歪んだシナリオ展開はプレイヤーを掛け値なしにゲームに惹きこむ魅力があります。 ただ、それは良い方に作用した場合のこと。これらの世界をプレイヤーに理解させるために各所に説明が盛り込まれていますが、説明的過ぎる、また理解するには複雑すぎるという欠点も同時に持ちます。 悪く解釈すれば、シナリオライターに「こういう世界観が良い」という価値基準を押し付けられている感も否定できません。 ライターが楽しんで書く、ということは良い方にも作用しますが、過ぎるとそれは独りよがりな自慢話と同じで、プレイヤーを置いてけぼりにしかねない、という点に薄々ながら感じさせられました。 ・・もっとも、単純に世界に惹きこまれるだけの魅力を持つシナリオであるのも事実。 戦慄の戦闘、怒濤の展開、逆転のシナリオ、日常の情景、侵食する事態、そのいずれも物語の流れの上で必要不可欠で、またどれもが先を気にさせる退屈させないテキストでした。 まとめて言ってしまうと、Fateはキャラクターを愛するゲームではありません。 声は一切なく、ハートフルなシナリオでもなく、音楽が別段いいわけでもありません。シナリオを楽しむゲームとも少し違う気がします。 シナリオを理解する過程を楽しむゲーム、と言えるでしょう。 正確には。 シナリオを楽しむために世界を理解する必要がある、ということでしょうか。プレイヤーに理解させる「作業」を要求する「説明」部分があまりに多いため、ここを苦にしては面白みが半減してしまうのです。 同人サークルとして発表された「月姫」はシナリオこそ絶大な評価を受けましたが、グラフィック及びBGMが欠点である、というのが大方の評価でした。 その同人的アキレス腱であったグラフィックは商業メーカーにステップアップするに並び、大幅な向上を遂げたと言っていいでしょう。 中でも戦闘関連のCGは、緊張感あふれるシナリオ、幾たび交わされる剣戟のエフェクト及び効果音と相まって、思わず酔いしれてしまう程。背景も綺麗。 ただ、CGはともかくもキャラクター(特に立ち絵)については多少気になる部分が。 ・・原画である武内崇氏の絵はどうもCG向けではないように思われます。 表情が豊富なのはいいのですが、一枚のキャラ絵としての綺麗さは思うに水準かそれ以下。彩色が巧みなのでそうは目立ちませんが。 決して下手ではありません。美少女ゲームのCG向けではないということです。どちらかというと漫画向け。 BGMはおおむね良好。演出及び効果という役割のBGM(バックグラウンドミュージック)としてはまぁ満足に足るクオリティだとは思いますが、これだけの作品だともう一レベル上を目指して欲しいところ。 一本クリアするのにプレイ時間が20時間前後かかるので、最後のシナリオを踏破するころには心身ともにヘロヘロになりました。 さすがにこの頃には奈須きのこ氏の独特のテキスト表現にも若干の飽きがきていた頃です。もうすこし省ける部分は省いてよかったのでは・・と思う次第。 いろいろ文句もたれましたが、結論としてFateは「必須買い」の一手。 脳みそ読解力パーツをフル回転させる必要はありますが、既存のエロゲと一線を画す作品。「月姫」や「歌月十夜」が好きな方にはさらにオススメ。・・ただこれらをプレイした身から言わせてもらえば、Fateは精錬度、完成度が向上した変わりに新鮮さ、驚愕度は弱まりました。 ・・・・仕方のないことだとは思いますが(´・ω・`) 尚、戦闘には各種エフェクトが挿入されますが、これらをフルに活用するためにはそれなりのPCスペックが要求されます。エフェクトを切ることも可能ですが、著しく旨味を損なうのでオススメしません。
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