街 〜運命の交差点〜 レビュー
発売日 :1999年1月28日 価格(税別) :5800円 対応機種 :PlayStation メーカー :チュンソフト 全編ノーマルで、花火までをクリアした状態の感想です。
プレイを始めた頃と連休がぶつかったんですが
睡眠時間以外はずっと街をプレイし続けるほど、どっぷりはまりました。
プレイ時間は30時間超えているにも関わらず、2日半でクリアしてしまった…。
ゲームはいろんな要素から構成されるだけに、欠点や不満が別メディア作品より多くなりやすいにも関わらず、
街にはケチつける部分(粗)が見当たらない。
面白かったんだけど、「ここ」がちょっと…の、「ここ」がこれといってない。
総合的な面でここまで優秀なADVは初めてプレイしたように思います。
その上、発売されたのが10年ともなると、
グラフィック、システム周りがネックになってしまうものですが、それらの面すら欠点になってない。
文句言ったりケチつけたくてレビュー書いてるつもりなんてこれっぽちもなかったのに
いざこうやって批判するところのないゲームに出会うと、ちょっと悔しいものです。
□ゲーム内容
渋谷を舞台にしたある8人の5日間(2人だけは3日間)の物語を最後まで読み終えることが、このゲームの目的です。
街のシナリオを大雑把に分類すると、一人称視点で進む陰鬱とした雰囲気の市川、高峰シナリオ、
三人称視点で進むコミカルなその他6人のシナリオと、2つに分けられますが、
お互いの立場が入れ替わった設定の牛尾と馬部の2人を除けば各シナリオに関連性はなく、それぞれ独立、完結しています。
そして、各シナリオが最初から独立してる内容な分、ひとつのシナリオ内での分岐というものはこれといって存在しません。
ときどき出現する選択肢でどれを選んだかにより、バッドエンドを迎えることがありますが
バッドエンドを迎えるというのは、シナリオが途中終了するのと同意義なため、
ゲームを続行させるためには、バッドエンドにならない選択肢を選ぶしかなくて
プレイヤーが自由に選択肢を選ぶ権利はそれほどありません。
つまり街は、今や恋愛ADVで最もポピュラーとなったメインキャラクターの数だけ専用シナリオが用意されている反面、
1つのシナリオ内に分岐はない1本道なものと主な作りは一緒なんです。
けれど、街はそれだけで終わりません。
別の主人公のシナリオへと飛ぶことの出来る「ザッピング(ZAP)」システムが存在し、
独立しているはずの8人の物語が、互いに影響を与え合う内容となっているため、
特定の主人公の物語だけ読み進めることが出来ない作りとなっています。
例えば、主人公Aが喫茶店で時間を潰している最中、近くの席にいたテレビ局のプロデューサーNに声をかけられ、
本来の目的そっちのけで芸能界デビューし、唐突にシナリオが途中終了することがあります。
(例えなものの、街にはこういう突発的なバッドエンドが多い)
この場合、一般的なADVだと、時間を潰す場所として喫茶店ではなく別の店を選んでいれば、
この展開を回避できるようになっていますが、街ではその選択肢が出現せず、Aの喫茶店行きは決まっています。
では、どうやって、バッドエンドを迎えないようにするのか?
Aが喫茶店へ行くことが決定的なら、Nが喫茶店へ行くことを阻止すればいいわけです。
Nが喫茶店にいた理由は、友人である主人公Bが待ち合わせ場所として喫茶店を指定したからなので、
主人公Bのシナリオをプレイして、Nから待ち合わせ場所を聞かれたとき喫茶店以外を選択すれば、
AとNの接触を回避し、なおかつAシナリオの途中終了を防げるというわけです。
このように、AとBが直接絡むようなことはなくても、間接的には影響を及ぼし
主人公Bにとっての些細な選択が、知り合いですらないAの人生を左右する
それが街というゲームの構造であり、魅力でもあるのです。
ただし、主人公たちが直接接触することがあまりないだけに、
同じ状況を別視点で見ることの面白さに関しては、それほど期待出来ません。
たまにある接触シーンでも、三人称視点のシナリオが多いゆえか、
どちらの視点でプレイしてもテキストがそのまま使い回しなことがあり、マルチ視点ならではの魅力は薄い作りとなっています。
そしてこのゲームはゲーム性も薄いです。
上の方で述べた例で、AとNを会わせないようにするためには、
Bのシナリオで喫茶店以外の場所を選ぶしかなく、別の手段で回避するといったことが出来ません。
また、Aの芸能界デビューバッドエンドを迎えた際、
「このバッドエンドを迎えないためには、BシナリオでNとの待ち合わせ場所の選択を変えよう」
といった感じで、丁寧にヒントを教えてくれるため、プレイヤーが自ら考える必要もなく、詰まることもありません。
ところが、プレイヤーが考えたり物語を分岐させる要素がないにも関わらず
「見てるだけ」や「やらされてる」気分になった覚えはないんです。
再び先程の例を使いますが、
AよりBシナリオを先にプレイして待ち合わせ場所に喫茶店以外を選択していれば、
Aシナリオをプレイしたとき、喫茶店シーンでバッドエンドになることもなくゲームが続行するんですが、
そのままAシナリオを続行させても、「つづく」と表示されて、それ以上進めなくなることがあります。
これは別主人公のシナリオのある地点から、Aシナリオへと飛ぶことで解除出来ます。
つまり、特定のシナリオだけ進みすぎないよう、
別の主人公のシナリオもプレイさせるように仕向け、バランスを取っているんです。
そして、このつづくのタイミングというのが、主人公が絶体絶命の危機になったときの「引き」シーンだったりするため
否応にも、続き知りたさに他主人公でプレイしてしまうわけです。
こうして定期的に「つづく」を発生させ、シナリオ間を頻繁に行き来させることで
テキストを読み続けることで感じやすい「見てるだけ」や「やらされてる」を軽減させ、
ゲーム性があるよう感じさせることに成功していると思いました。
それから「TIP」という、辞典のようなシステムで専門用語の解説を任せているため、
説明文でシナリオの雰囲気や進行を壊すような心配がない上に、
同じ語句の説明が続き物だったり、パロディネタもしっかり解説してるなど、遊び心も満載。
いつのまにか、メインシナリオの続きだけはなく「TIP」の解説も楽しみにしているぐらいでした。
と…いろいろ褒めはしましたが、残念に感じる面もあります。
「つづく」が使われるシーンは全てが上手いタイミングというわけではなく、
他シナリオをプレイさせるために、無理やり終わらせてると感じるときがあって、そういうときは少し興ざめしました。
他シナリオに影響を与える選択肢の内容と結果の傾向が同じなのも気になりました。
行動的、いつもと違う選択をした場合に他主人公をバッドエンドへと導いてしまうことばかりで、ワンパターン気味。
一部のシナリオは他のシナリオで中盤にあたる時期で終わってしまうこと、
こんな終わり方って…と少々気落ちしてしまう結末もあるせいか、
全シナリオを読み終えたときに感慨に浸ったりは出来ませんでした。
8人目のシナリオが終わったときに何かしらの演出があったのなら、余韻や達成感を得られたように思いますし、
ちょっとした「ご褒美」的なものを入れて欲しかったです。
□システム
ゲーム開始直後、メッセージスキップとロードがないと気づいて先行き不安になったものですが
意外なことに、この2つの機能がないことが欠点になっていませんでした。
街では、主人公別の進行状況を10分単位の縦グラフで表示される「移動マップ」というものがあり、
通過したことのある場面なら、いつでも好きなときに移動することが出来ます。
(『YU-NO』をプレイしたことのある人は、宝玉無制限の「A.D.M.S.」を想像してもらうと分かりやすいかと思います。)
この移動マップ、いつでも好きなときに無制限でシナリオ間を行き来可能な上に、各時間で何が起きたか(起こっているか)の説明、
選択肢が出現する場合はそれ専用のマークも表示される親切設計となっています。
更に、バックログ(読み戻しモード)使用中に○ボタンを押すと
ボタンを押したときに表示されていたテキスト部分に飛べるため、
移動マップを使うまでもない、少し前のシーンに戻りたいときなどは非常に重宝しました。
これだけ便利な機能なのに、ロクに見かけないのは不思議です。もっと浸透して欲しい。
それからもう一つ、プレイしやすいなと好感が持てたことがありました。
3日目の夜までプレイしたとき、前日に戻って選択肢を選び直した結果、バッドエンドになったとします。
このバッドエンドのデータをセーブすると、進行状況は2日目で終わった状態になってしまうのですが、
この後でバッドエンド直前の選択肢まで戻り、最初に選んだ方(バッドエンドにならない方)を選ぶと
3日目の夜までの進行状況が再度出現するんです。
つまり、ある程度進んだ状況から序盤のバッドエンド集めを開始しても、これといってペナルティが発生しない。
移動マップという存在ならではの活かした方だと思いました。
しかし、最初から最後まで快適なプレイ環境を提供してくれた移動マップも、
バットエンドが解除した後の進行フラグが進みすぎている(まだ読んでいないテキストから始まる)、
選択肢地点に移動したときに戻りすぎている、「玉にキズ」的部分があります。
特に前者の方は、バックログを使わないとなぜそういう状況になったかいまいち分からないことがあり、不親切だと思いました。
□グラフィック&サウンド
街では台詞の細かいニュアンス、心情表現はテキストに任せており、音声は一切ないため
出演者の演技力はあまり反映されない作りとなっています。
それだけに、役柄のイメージに合うか否かが最重要になるのですが、これが見事なまでに、ピッタリ。
どういう風にキャスティング決めたかは知りませんけど、
神経質な作家にダンカンを起用するなんてなかなか結びつかないのに実際は見事なはまりよう。
美少女・美女役が、身近にいても不思議じゃない現実感がある配役だったのも良かった。
実写だけに静止画から動画に切り替わったときのギャップはもちろん、
シナリオと絵柄が合わないといった問題も起こらず、実写であることの魅力はフル活用されていました。
動画では音声も入れるなんてことをせずに、最初から最後まで音声なしで通したのは正解だったと思います。
音声を入れれば臨場感は多少上がったかもしれないけれど、
普段から音声ありだと、テキストを読む時間とのズレが生じるし
一部だけだと、それまで作り上げた声イメージと実際の声の差異に戸惑ってしまいますからね。
BGMがシナリオ毎に異なっている点も○
隆士シナリオのその日の終わりに流れる曲は、この曲を聞いているだけで涙腺が緩みそうなるほど心にくるものがありました。
実写だけに、ゲームでは指摘する方が野暮になりがちな、「毎日同じ服を着ている」が非常に目立ったこと、
香月ミカレや厚士など、たまにミスキャストに思えたことがあったのはちょっと惜しいですけど。
□総合評価
自分が『街』のファンかと言われると、違うと思います。
8つのシナリオ全てが楽しめたわけではないし、全シナリオをクリアしたとき、もっとプレイしたかったのに…
と寂しく感じるようなことは特になかったように思います。
おまけシナリオの『青ムシ抄』も、出現条件が面倒ゆえに見てない状態です。
しかし、そんな特にファンというわけでもない私からしても、素直に面白いと言える“ゲーム”でした。
高評価に至ったとのは、それが一番の理由だと思うんです。
ゲームだからこそ面白かった、ゲームならではの面白さだった。
演出とテキスト・シナリオを評価していますが、ドラマだったり、小説だったら、ここまで楽しめかどうかは疑問。
テキストを読むことが苦痛な人は決して薦められないですが、逆に世界設定説明など、ゲーム本筋に関係なくても
用意されたテキストはつい全部読んでしまうタイプの人は、ぜひプレイして欲しいですね。
実写を理由に避けているADV好きがいたら勿体ないことをしてると思いますが、
シルエットモードがあるから、実写が苦手でもプレイしてみてとは言えないですね。
メーカーの配慮にこう言うのもなんだけど、シルエットでプレイしたら、魅力半減どころじゃないでしょう。2007年06月11日