D.C. the Origin レビュー
発売日 :2008年2月14日 価格(税込) :7140円 対応機種 :PlayStation2 メーカー :ブロッコリー メモカ使用容量 :83KB CERO :区分B ・まずはじめに
・ゲーム内容
・システム
・グラフィック
・サウンド
・シナリオ
・キャラクター
・総合評価一年中、桜が咲き続ける初音島を舞台にした学園恋愛アドベンチャー『D.C. 〜ダ・カーポ〜』シリーズ。
その第一作の18禁PCゲームから、アダルトシーンだけを削除したベタ移植のPS2版がこの『D.C. the Origin』です。
数年前に声優を総入れ替えし、新たなヒロイン6人と既存キャラのイベントも追加したPS2版『D.C.P.S.』が発売済み
さらに廉価版も出ていることから、いまさら追加要素のないベタ移植のフルプライスソフトなんて誰が買うのかと
熱心なファンすらも呆れさせたこのゲームは、やはり店頭でも売れ残り、1年後には80%OFF価格で売られるようになりました。
2003年に放送されていたアニメ版を見ていたこともあって、ちょっとばかり興味を持っていた私は
非常に手が出しやすいお手頃な値段、そしてオリジナルPC版、パワーアップしたPS2版ではなく
あえてこのベタ移植から手を出すのも面白いんじゃないかと、自分の中のあまのじゃく部分を突付かれたことから、購入しました。
たわいのない会話の単発イベントで進行する共通ルートを経てから
女の子ごとに用意された個別シナリオに突入する、ありふれた構成のアドベンチャー。
他のゲームとの差異は、共通ルートの「ガヤシステム」と選択肢が極めて少ない二点ぐらい。
ガヤシステムというのは、共通ルートで毎日2回は発生するマップ移動で流れるモブキャラの会話のこと。
カーソルを動かすたびに「いっただきぃ〜♪」「あー! 私のたまごやき〜…」、「一緒に帰ろう」「イヤー」
といった、ストーリー進行にまったく関係ないやり取りを聞かされるのですが
たまに「○○(あるヒロイン)、今日は屋上行かないの?」「うん。試験中ぐらいは勉強しないとね」
このような、ヒロインがどこにいるかのヒントをくれることがあります。
他のゲームのように、キャラアイコンやビックリマークなどの視覚ヒントにせず
聴覚ヒントにすることで独自性を表現したかったんでしょうが、ヒントとしてはさほど役立ちません。
前述した例の場合、移動場所が屋上・教室・廊下・中庭・食堂である以上、消去法でたどり着くのは教室だと思うのですが
教室を選択しても、そこにいたのは別のヒロインだったりします。
ヒントとしての機能を果たさないと、無意味にモブのボイスがリピートされる状態と化しますが
このモブのボイスというのが、本当に無意味…。
昼休みと放課後、2回の移動で用意されたモブボイスの種類はそれぞれ3つぐらいでランダム。
日数やプレイ状況によって内容が変わるわけでもないから、プレイヤーにとっちゃ、本当にうるさい雑音=名称通りのガヤになっている。
オプションの項目にガヤシステムON/OFF切り替えでもあったなら、間違いなく、OFF設定でプレイしましたよ。
ヒントになっていないならいないで
主人公との交流によって変わってきたヒロインの姿がモブの口から分かるとか、そういう使い方も出来たと思うんですけどね。
二つ目の選択肢が少ないは、正確に言うとキャラとの会話に関してです。
共通ルートでは、毎晩、翌日の起床時間を三択から選ばされるし(この選択によって、学校に着く前のイベント内容が変わる)
昼休みと放課後の場所移動もありますから、主人公の「行動」選択についての介入度は決して少ないわけではありません。
しかし、キャラとの会話中にプレイヤーが主人公の発言を選べることは皆無に近い。
単純に計算すると、一日に2回の会話イベント×10日間の期間でヒロインごとに20回のイベントは用意されているはずなのに
このうち選択肢が出現したイベントは2回ほどしかありませんでした。
ところが、こんなの序の口なんです。個別ルートに入ると誇張でもなんでもなく完全に一本道じゃないですか。
メインヒロインの音夢こそ3種類の結末に分岐するけど、それ以外のヒロインにはED分岐なんてものは存在しない。
個別ルートに入った時点でグッドED確定。
このうちの2名だけは2,3回選択肢が出現するものの(もちろん、その場の反応が変わるだけですが)
残りの4名のヒロインは最初から最後までずーっと、主人公とヒロインのやり取りを眺めているだけ。
プレイヤーが口を挟む余地なんて微塵もありません。
選択肢が出現しない、もちろんED分岐もないルートが含まれた恋愛ADVをプレイしたことはありますけど
さすがにED分岐が存在するのはメインヒロインだけなんてゲームは初めてです。
ただでさえゲーム性が薄いと評されやすいノベルタイプの恋愛ゲームにおいて
プレイヤーの介入可能な部分が相手役を選べるだけなら、ゲームとして出す必要はあるんでしょうか。
ゲームじゃない別の娯楽、一話完結式のアニメだとか、小説で一冊ごとにヒロインを変えるなりしても行えることです。
バッドEDの必要性を感じない人とか、相手役を選べる時点で十分な分岐だと思える人にとっては納得のいかない意見かもしれませんが
他の媒体でも表現可能なゲームというのが、最も好まない要素のひとつである私にとっては
この仕様はどうしたってマイナス評価にしかならない。
(ちなみにもうひとつの好まない要素は独自性の低さ。D.C.はその点も当てはまるけど、それについては総合評価で述べます)
『D.C. the Origin』でかろうじてゲーム性=ゲームならではの要素と認められるような部分は
起床時間によってイベント内容が変化するところしかありませんでした。
□システム
セーブ 常時可能で数は10個。クイックセーブもあり スキップ 手動、自動ともに可能だが、どちらも既読判定なし 読み返し ボイス再生も可能。通常のテキストと同じ枠内に表示される オート再生 使用するにはオプション項目で設定する必要がある。速度は速と遅の二段階のみ ボイス 主人公、男モブ以外フルボイス。男、女別にだけON/OFF切り替え可能 おまけ イベント絵鑑賞、サウンド鑑賞、シーン回想 その他 BGM・SE・ボイスの個別ボリューム調整とスタッフロールのカット可能。常時タイトル画面に戻れる 作成可能なセーブデータ数が10個というのは、近年の恋愛ADVとしては少ない方ですが
途中でゲームをやめるときしかセーブを使わないゲーム内容ですし
おまけのシーン回想でほぼすべてのイベントが収録されていることから、10個じゃ足りないと不満を覚えることはないはずです。
セーブデータの情報量が少ない点も、同じ理由から特に不親切だとは感じません。
10種類のキャラアイコンから任意に好きなものをセーブデータに付けられる機能があるため
誰狙いのデータかぐらいは判別出来ますし、このゲーム内容なら、その程度のことが分かれば十分です。
でも、マップ画面移動時にメニュー画面を呼び出せない(クイックセーブなどの機能が使えない)のは不思議だったな…。
このときほどクイックセーブを使う機会なんてないのに。
仕方ないからマップ画面に移る直前の画面でクイックセーブを実行してましたけど。
スキップは既読判定なし、自動スキップはコントローラーのボタンに振り分けられておらず、使用するにはメニュー画面を呼び出す必要がある
さらにシーンが変わるたびに勝手に自動スキップが解除される…と散々なものなんですが
「あらすじモード」という独自のスキップ機能が、通常スキップのダメっぷりをカバーしています。
名称通りに、短いシーンから長いシーンまで、すべてのシーンを数行(1〜3回のページ送り分)で簡潔に説明してくれる機能なので
普通だったらプレイ環境に多大な悪影響をもたらすスキップ機能の微妙さが特に苦にならない。
この機能を使って個別ルートをプレイすると、本当にあっという間に終わる。
私はスキップ機能としてしか見ていなかったけど
再プレイは面倒くさい、でもシナリオの内容はざっと確認したいなんてときにも使えるわけですね。
一部のシーンにはあらすじモードが用意されていませんが、そのときは従来のスキップの出番です。
自動スキップをワンボタンで発動出来ないのは気になりましたが
メニュー画面の項目の一番上が自動スキップになっているので、そこまで不便でもありません。
メニュー画面といえば、呼び出しボタンが×ボタン、L1=○、L2=×という振り分けがされているため
本当に左手だけの片手操作ですべての機能を使用することが可能となっています。
そのこと自体はいいんですが、メニュー画面の項目の中にも、ボタン振り分けの中にもオート再生が割り当てられていないため
オート再生を使用するにはいちいちメニュー画面からオプション項目を選択して
そこからオート再生項目を…といくつかの手順を要求される、面倒くさい仕様にもなっています。
私の場合は、2段階しかない速度がどちらも合わなかったから、使うことは滅多になかったですけどね。
ログ機能は決められたメッセージ数だけ遡れるのではなくて、シーンごとに切り替わるタイプ。
シーン途中だったら、いったんゲーム機の電源を切った状態で再開しても、きちんとログは残っていますが
シーンが切り替わってしまえば、メッセージ送りした直前に表示されていた台詞でも見られない。
どちらがいいかは好き好きの問題でしょうが、私としてはシーンごとじゃなく、一定数が表示される方が使いやすいです。
読み飛ばしてしまった台詞が気になってログを使っても
シーンが切り替わったせいで再確認できなかったことが何度があり、ログ機能としての役割を果たしていないときがありました。
それから操作性などにおいて、元がPCゲームであることによる弊害がいくつか見られます。
オプションやおまけモードの画面レイアウトが、マウスのフリー状態で操作しやすいものとなっているため
上下左右にしかカーソルを動かせないコントローラーの十字キーでは思ったようにカーソル移動を行えないのです。
しかもこのカーソル移動、押した方向に移動してくれるわけじゃなくて
左十字キーを押しても下に移動するような一方通行だから、スムーズに操作を行えない。
画面レイアウトを変えずとも、おまけモードでは、LRボタン=ページ切り替えにするとか
コンシューマゲーム向きな操作性にすることだって出来たはずでしょう。
そういった適応がまるで見られないから、マップ画面やおまけモード内ではイラつかされました。
また、オプション画面やシーンが切り替わったときの現在地表記のフォントがかなり小さくて
オプションで何かを設定変更するたびにいちいちテレビ画面に近づかなければならないのはおっくうでした。
PCのように近距離でプレイする場合は小さいフォントでもネックにはなりづらいのでしょうが、これはテレビ用のゲームです。
そのへんをもっと意識して移植して欲しかった。
最後に。原因が分かりませんが、何度かメッセージウィンドウの透明度を変更しても反映されないことがありました。
ゲームを中断して再開したときには元に戻っていたりしましたが…。
こういうのもバグなのかな。
キャラクターデザイン&原画は七尾奈留とigulの二人で、それぞれが半数分のヒロインを担当しています。
igul氏は七尾氏よりも丸みのある輪郭で描くなど、よく見ればすぐに見分けはつきますが
絵柄の雛形は同じですし、複数絵師による統一性のなさといった弊害は生じていません。
むしろ、複数絵師を起用することによって双方の絵師が抱える判子絵という共通の欠点を軽減させています。
まったく同じ顔が6人いる状態と、わずかでもタッチの異なる判子絵キャラが3人ずついる場合
やはり後者の方が判子絵度は低くなりますからね。
立ち絵の動きは大人しめで、主に変わるのは表情だけですが
音符や怒りマーク、汗などの漫画的表現を加えることによって、キャラたちの細かい感情を伝えることに成功しています。
この漫画的表現、あくまで既存絵に記号を被せたに過ぎませんから
手間がかからない反面、単なる手抜きとしか受け取られないリスクも大きいと思うんですよ。
でも、怒りがどんどんヒートアップしていく姿を、怒りマークを増やすことで表現するような上手い使い方をしているから
手抜きに感じたり、立ち絵数自体を増やして欲しかったと思わされることはなかったですね。
していることはただの差分なのに、案外、受け取る情報量としては、実際に顔つきを変える場合と変わらないものなんだと知りました。
また、上目遣いやじっとこちらを凝視する目つきなど、女の子の可愛い表情をばっちり押さえており
ポーズ変化がほとんどない分、顔の角度が変わることによって別人のように見えてしまうデメリットも避けられています。
故意か偶発かは問わず、わりとある「その立ち絵を表示しないでくれ…」と目を背けたなる残念顔がひとつもない。
恋愛ゲームのグラフィックの最重要課題が「攻略対象をいかに魅力的、生き生きに描く」にあるとすれば
D.C.の立ち絵レベルはかなり高い。
ことりの友人であるみっくん、ともちゃんに立ち絵がなかったことは
彼女たちの出番の多さからすると不自然でしたが、立ち絵に関する難点はそれだけかな。イベント絵の総数は166枚、差分抜きで61枚。キャラ別では最多が12枚、最小が5枚。平均では8枚。
重要シーンを暗転ですませるようなイベント絵の使い方に納得がいかないときもありますし
美晴と隠しキャラは立ち絵との相違、体のバランスがおかしかったりする拙さが見られたことは、立ち絵が高水準なだけに残念。
しかし、あるイベント絵を別ルートで流用するとき、そのまま背景と服装だけを変えて使いまわすのではなく
反転させることによって、すぐに差分だと気づかせないようにごまかしていたのには、ちょっと感心させられました。
ここで反転させないで使いまわしていたら、感心どころか呆れていましたからね、絶対。
背景はライトアップされた夜桜以外に褒めるべきところはないですね。
自宅の背景が昼と夜できちんと切り替わったり、主人公の部屋のデザインがありきたりじゃないところは好感が持てたんですけど
商店街の背景が固定なのは明らかな手落ちですよ。
場所を移動しても常に同じ店が建っているのは不自然すぎるでしょう…。
買い物や外食で外出しても常に同じ店構えだから、えらい狭い島に思えてきてしまう。一部背景とイベント絵で残念な部分もありましたが
七尾氏が担当した音夢・さくら・ことりの3名はイベント絵でも高水準を保っていますし
パッケージ裏に掲載された上記3名の汎用全身絵に惹かれて買った場合、グラフィック面の満足度は高いものになるはずです。
□サウンド
ボイスはアダルトゲームで常連の人気声優で固めているだけあり
声の可愛らしさ・演技面ともにコンシューマーゲームに引けを取らない堅実さ。
水越姉妹、美晴、隠しキャラはキャラの持つ特徴をさらに倍増させており、萌えゲーにおける声の力を再確認させてくれます。
ただ良くも悪くも、コンシューマのオリジナルギャルゲーで耳にしてきた声たちと変わらないから
このゲームで初めて聞いた人たちばかりなわりに、新鮮味は薄かった。
まあ、エロゲとギャルゲという年齢制限の違いはあれど、萌え産業な点は一緒なわけだし
好まれる声が似通ってしまうのは仕方ないことでしょうけどね。
女のモブキャラにはすべてボイスがついている一方で、男のモブにはついていたりいなかったりする点は
出演している男性声優が一人だけであることを思えば仕方のないことかもしれませんが
(さすがに一人の声優にすべての男キャラを任せるのは荷が重すぎる)
それならモブにはボイスなし、喋るのはメインとサブキャラだけの仕様にするべきではと思いました。
モブ同士の会話で、女キャラにだけきちんとボイスがあり、話し相手の男キャラは無音という状態は不自然でしたからね。
BGMは23曲でボーカル曲は4曲。
状況に合わせた曲はきちんと流れ、ヒロインごとのテーマ曲も用意されています。
基準値は満たしているけど、BGMに感化されて涙腺が緩む・焦燥感に駆られたり
サウンド鑑賞モードで繰り返し聞いてしまう(サントラが欲しくなる)ような、惹きつける魅力には欠けています。
ボーカル曲も悪くはないのですが、クライマックスからEDまでの短い間隔に3曲も流す演出は
シナリオの空々しさに拍車をかけるという、作り手の意図することと正反対の結果をもたらしていました。
シチュエーションコメディやバラエティ番組における
過剰な笑い声のせいで笑いが引っ込んでしまう現象がこのゲームでも起きています。
ここは笑うところ=泣くところですよとご丁寧に教えてくれる(誘導する)ことが逆効果になっている。
そう受け取ってしまう原因はシナリオの力不足にあるとはいえ、その力不足さを聴覚面で補わせるほどの曲ではなかったとも言えます。
とはいえ、最初に挿入歌を聞いたときは、曲に釣られた部分もないわけではなかったんです。
しかし、流されるタイミングがマルチシナリオだというのにみんな同じだから、2回目以降は「そろそろ曲くるな」と読めてしまう。
聴いているだけで涙が出てきそうになるような名曲でもない以上
同一曲、同タイミングの挿入歌マジックが何度も通用するはずありません。
あと、さくらのテーマ曲に問題あり。
BGMにしろボーカル曲にしろ、使い方が合格ラインに達しているとすれば、あとの評価は好みで左右されますが
このさくらのテーマ曲に関してだけは物申したい。
これはD.C.だけの問題点ではなくて、「キャラ別テーマ曲」を取り入れたゲームで多々見られることなんですが
キャラのテーマ曲がどのような場面にも溶け込む曲調でない場合、使用シーンを限定して欲しい。
さくらのテーマ曲というのが、コミカルシーン専用の曲だと勘違いするほど能天気な曲調だから
事実上さくらイベント=コミカルなやり取りになっている共通ルート時点で多用するならまだしも
上記が当てはまらない個別ルートでも同じように多用されると、無理が生じてくるんです。
主人公がさくらに見惚れるシーンでもおちゃらけた曲が流れるから、まるで雰囲気が出ていない。
わざわざシリアスや甘ったるい曲を流すほどのシーンじゃないと判断されて、キャラテーマを流すことに決めたんでしょうが
どんなシーンにも馴染む曲調でもなければ、アレンジVer.を用意しているわけでもないのだから
こういった安直な使用はやめてもらいたい。
他にもBGMが綺麗にリピートしない「今、きちんと再生されなかった」と気づいてしまう
たぶんオリジナルPC版ではなかっただろうミスもあり。
これは見過ごせない人もいるだろうけど、私としては許容範囲内に収まるレベルのものかな。
効果音は電話の着信音とねじ巻きぐらいしか記憶にないので、評価の対象外ですね。
□シナリオ
コミカルなやり取りが繰り広げられるバタバタとした日常の中で女の子との親交を深め
ヒロイン決定後はファンタジーとシリアス要素が増大した世界観になる、恋愛ゲームでは定番の二段構成。共通ルートにおけるヒロインたちとの交流の合間に挿入される授業風景。
家事を担当する妹の料理の腕が壊滅的なことから、家庭の味とは無縁の生活。
これらの描写が、主人公がどんな学園・日常を生活を送っているかという情報をさりげなく
しかし着実にプレイヤーに伝達しているため、日常生活感はよく出ていました。
また、ヒロインのイベントに関しても、それなりの量が用意されていて
個別ルートに進むためには特定キャラをずっと追い続ける必要があるから
必然的にヒロインの情報量、思い入れが強まった状態で個別ルートに臨めます。
ヒロインたちは最初から主人公に想いを寄せるキャラばかりだけど
共通ルートの段階で十分な交流を図ることが出来るから、恋愛過程に物足りなさ、置いてきぼり感を覚えることはなかったです。
そんなわけで、共通ルートの内容だけを指せば、萌えゲーとしては、十二分に合格点をあげられるものだと言えました。
もし最後までこのノリを通していたなら、キャラ同士の横の繋がりが水越姉妹以外ほとんどゲーム内容に反映されておらず
一対一で進行するイベントばかりだったことを除けば、これといった不満を覚えることもなかったかもしれません。
しかし、上記の感想はあくまでも共通ルートに限定したものです。
プレイ時間の比率からすると、共通ルートは前後編の前編どころか導入部の段階にしか至っておらず
比重を置いているのが個別ルートの方であることは明白。
いくら共通ルートでの単発イベントの印象がよかったところで、肝心の個別ルートがイマイチでは意味がないのです。
しかし、私にとっての個別ルートは、共通ルートで蓄積したヒロインの好感情が霧散するようなものだった。
何の起伏がないまま終わる
起承転結のバランスがまずい
いろんな要素を詰め込みすぎててぐちゃぐちゃになっている
シーン切り替えの唐突さなど
ルートごとに主な問題点が違っているため、個別ルートの何がいけなかったを一概に述べるのは難しいのですが
ほぼすべてのルートに共通して言える欠点が、話に引き込まれなかったことです。
例外として、最後に攻略した隠しキャラだけは及第点をあげられるものだったけれど
隠しキャラをクリアするまでは、個別ルートのADVで初めて「ひとつもかすらない」結果で終わるのかと思っていましたから。
キャラの可愛さ(萌え)だけを突詰めた、その場限りのイベント群はいいけれど
一連のストーリーとして展開するとなると、物語として読み込ませるだけの力はない。
それだけに、共通ルートが楽しめただけに、ドラマ性があって当然という、今の風潮になる前の作りでやってみたかった。
もっとも、このゲームが恋愛ゲームで受けのいい要素、スタンダードな部分をかき集めた集合体的作品だから
PC版発売当時、既に恋愛ADV=シナリオ重視が定着していたことを思うと、土台無理な話というものですが。
それからもうひとつ。このゲームのシナリオ面には意図的な不備が残されています。
主人公の両親は仕事で海外に滞在しており、主人公は義妹と二人だけで生活しているのですが
ゲーム開始時点、そのあたりの込み入った(と思われる)事情に対する説明がない。
主人公兄妹の共通の友人である後輩が初めて会話に絡んだときも、既に初登場イベントを済ませたかのようなやり取りをする。
プレイヤーが主人公の家庭環境や人間関係を把握している前提で、説明を省いている感じなんですね。
他にも、過去の出来事である「学園のクリスマスパーティー」というキーワードが何度も出てきて
そのたび含みのある使い方をされているのですが、クリスマスパーティーに関する詳細も明らかにされない。
あるキャラとの再会イベント(プレイヤーにとっては出会いイベント)で
クリスマス…→ああ、はい。クリスマスパーティーのときの…なんて会話がされますが
プレイヤーにとっちゃ何のことだかさっぱり分かりません。
そのうち回想シーンでも入るのだろうと深く考えないようにしていたんですけど
そのあたりの説明を目にしないまま、最後のキャラをクリア。
結局クリスマスパーティーに関するくだりは何だったんだ? と腑に落ちないものを覚えながら
PC版レビューサイトをはしごしていたんですよ。
そうしたら、自分と同じような疑問を抱いた感想がいくつも目に留まること。
それらのレビューで分かったことをまとめると、PC版オリジナルが発売される前にプロローグソフトが発売されており
その内容というのが、主要キャラの顔見せ+例のクリスマスパーティーを題材にしたものらしいんですよ。
つまり、私が不可解に感じた主人公の家庭環境とか、後輩の出会いイベントとかも
そのプロローグソフトの方で済ませてある=だから本編で省いたということなんでしょうか。
……なんというか、この事実を知ったとき、『D.C. the Origin』というタイトルの真の意味を理解しました。
プロローグと本編を分割させたようなやり方はPC版のときに散々非難されていたのに
移植版でも修正することなく発売に踏み切ったわけでしょう。
つまり、オリジナルの悪い面までも忠実に再現した、 “Origin”というタイトル通りの中身。
6年もの時間が経過した今、プロローグソフトと本編を1本に合わせた移植版が出たところで
それにケチつけるような了見の狭いファンなんていないだろうし、仮にいたとしたって、免罪符にはならないだろうに。
これを知ったときには、さすがにハズレを引いちゃったんだなぁ…と否応にも実感させられました。
このOriginからD.C.ファンになった人がどれぐらいいるのかは分かりませんが
特に好きというわけでもない私ですら呆れてしまったのだから、はまった場合は更に辛いんじゃないでしょうかね、この仕様。
□キャラクター ※攻略順。ネタバレあり。
■朝倉純一 (CV:なし)
卒業を間近に控えた学生。
名前変更の項目がタイトル画面やオプション内にあり、好きなタイミングで行えますが
隠しキャラと兄呼びキャラを除いた全員が変更不可能な名字=朝倉呼び状態なものだから
そもそも、このゲームに名前変更機能は必要あるのか? とそのあたりが不思議でした。
どうせなら純一も固定にしてしまい、隠しキャラにもきちんと名前を呼んでもらいたかった。
手のひらからイメージした和菓子を生み出す能力を持ち、不定期に他人の夢を覗いてしまう特殊設定があるけれど
純一ならではの特徴、個性になっているかと言えば、どちらも弱いです。
前者はシナリオに活かしきれなかったという、よくある意味のない設定の類だし
後者も主人公や攻略対象の過去回想シーンを、主人公が見ている夢に置き換えているに過ぎません。
夢を通して過去や本心を知るというのは、古今東西あらゆるメディアで使い古された手段ですし
使い方も至ってありきたりなものだから、主人公の特殊設定がシナリオに新鮮味を与えることにはなっていませんでした。
この主人公の一番の特徴は、恋愛に関して常に受動的なところではないでしょうか。
人間というのは相手によって態度や性格が変わるのが当たり前の生き物ですから
恋愛ゲームでも、恋愛対象となる相手の数だけ恋愛模様も変わってきます。
ところがこの朝倉純一は、誰のルートでも積極的に働きかけた相手を受け入れる側に回ってばかり。
複数のライターが起用された作品では、どうしても書き手ごとに主人公の性格や口調が多少違ってきてしまいます。
実際に複数ライターのD.C.でもそういった部分を感じ取ってしまうことがあったのですが
告白やキスなど、恋愛の重要局面で働きかけるのは女の子側という部分だけは全ルート共通。
このゲームのコンセンプト、テーマはそれじゃないかというぐらい一貫しているんですよ。
全員妹、全員ツンデレといった特定縛り作品の需要があるように、女の子側が積極的な恋愛ゲームを好む人もいるでしょう。
でも私はそういった特定属性だけに絞った作品には魅力を感じられません。
同級生がいるから下級生が、冷たい態度のキャラがいるから好意的なキャラが際立ち、映える。
主人公への対応が、「好意的・丁寧語・積極的」とみな似通っているD.C.は
相互関係で成り立つ属性の魅力、カップリング萌えの乏しいギャルゲーでした。
恋愛に受動的な部分を除けば、ギャルゲー主人公としては環境、性格ともに平均的ですね。
友人の変人ぶりを馬鹿にしているけど、お前も変人だよと突っ込みたくなるタイプ。
ただ、15歳にしては妙に達観しているのと、しなくていいところまで比喩で表現するのは目に付きました。
このゲームのシナリオはどうにも淡々としていて、いまいち盛り上がりに欠けるところがあるのですが
その原因は冷静に状況を説明する主人公の語り口にもあると思うのです。■水越眞子 (CV:長崎みなみ)
朝倉兄妹と同じクラスの友人。音楽部に所属し、フルート演奏を得意とする。
さばさばとした性格で、バレンタインには多くのチョコを送られるほど、同性からの人気が高い。
一学年上の姉・萌のマイペースな性格に振り回されている苦労人でもある。
プレイ前はヒロインの一人に見えますが
実際にプレイすると、元々専用ルートやEDなど用意してなかったサブキャラを
シナリオを膨らましたり推敲する時間的余裕がないまま、急遽ヒロイン化させてしまったような印象を受けました。
共通ルートは常に姉とセットの登場で、眞子単体のイベントは片手の指で足りる程度しか用意されていませんし
個別ルートでは他のヒロインが3,4時間かかるところを、彼女だけは1時間未満でEDを迎えられます。
ヒロインの中には、眞子以上に共通ルートでのイベントが少ない、あるいは皆無なキャラもいたりするんですが
それらのヒロインにはそうするだけの理由があるのに対し、眞子にはイベントを少なくさせる必要性がありません。
個別ルートも、短いなりに濃縮された内容になっているわけでもなく、最後まで何の起伏がないまま終わります。
起承転結の承転がごっそり抜けており、話を盛り上げようとかの意欲がまるで感じ取れない。
シナリオが悪かったときに非難を受けるのはシナリオライターになりがちですけど
眞子シナリオで非難を受けるべきは、書いた当人よりも、これにOKを出した立場の人間にあると思えてならない。
作り手側の「他にもヒロインがいるし、眞子はこの程度でいいや」という手抜きが透けて見える。
主人公は眞子のフルート演奏を毎日聴くことになり、日ごとに上達していくのを感じ取るほど「フルート演奏」の比重は高いのに
それを助けるためのグラフィック演出がまるでなし。
眞子がフルートを演奏しているイベント絵や立ち絵が用意されていないんです。
共通ルートの序盤で姉と協奏しているイベント絵を描いておきながら
肝心の眞子ルートではなしって…明らかにイベント絵の使い方を間違ってますよ。
他にも、眞子の使うフルートが変わった形をしていて前々から気になっていた〜なんてことを主人公が言ったときも
視覚情報が与えられなかったプレイヤーには、そのとき初めて知る始末だったりするし。
サウンド面でも、告白が本気ではないと判明したときにコミカルな曲に切り替わることもなく、ずっと甘いムードの曲が流れているとか
全体的なやる気のなさが、端々から伝わるルートでした。■水越萌 (CV:夏野向日葵)
主人公のクラスメイト・眞子の姉であり、一学年上の先輩。
口調も言動も非常におっとしており、活発で勝気な妹とは正反対の性格。
昼休みの屋上で鍋を作ったり、眠りながら登校するなど、一般常識からは程遠い言動を取ることもしばしばある。
最初の回想シーンでオチが読めてしまうほど、ラブストーリーとしては定番のテーマを扱っています。
しかし、他界した恋人を引きずる相手役は、恋愛ゲームにおいてはやっかいな存在です。
逝ってしまった人への想いが強すぎればプレイヤーはないがしろにされた気分を味わうし
かといってあっさり乗り越えられると、そういった設定にした必要性に欠けてしまうことになる。
必然的にその設定を持つキャラは人気が出づらいものですが、萌も例に漏れずそうなりました。
しかも彼女は、今でも夢の中で初恋の人と会っているわけだから、過去形の出来事ではない。
現実世界での肉体的な繋がりは主人公で、夢の世界では子供に帰って純真な気持ちで戯れる…と使い分けているように見えてしまう。
そこまで悪く受け取らなくても、精神的な二股をされているような、すっきりしないものを抱いた人も結構いるのでは。
別れを告げられてからラストまで、転から結が短すぎてバランスが悪かったから
承部分にあたる蜜月期間を削ってでも、転結に重点を置くべきだと思いましたね。
序盤そうそう交通事故に遭って入院。春休みも無駄にし卒業式も出られないという導入部は目新しくてよかったんですが。
それにしても、看護師以外のヒロインから排尿を手伝わされるイベントを恋愛ゲームで目にすることになるとは…。■白河ことり (CV:日向裕羅)
学園のアイドル的扱いをされている、顔見知りの同期生。
彼女をよく知らない男子生徒は高嶺の花のように思っているが
実際は気さくな性格で、主人公のセクハラとも言える下ネタも軽く受け流せる会話上手。
共通ルートのイベントが楽しくて、人気キャラなのも頷ける、確かに可愛いとすっかり参っていたのですが
(このD.C.が一番楽しかった&好印象だったのはこのときだった…)
個別ルートで意外な積極性を見ているうちに、なんだかどんどん冷めていってしまいました。
人の心が読める以上、異性に夢なんて持ちようもないだろうから
下手にカマトトぶられるよりかはずっと自然ですけど…頭では理解しても心情としては引いてしまったのが本音。
それに共通ルートの内容が個別ルートに反映されていないのも残念でした。
私としては、共通ルートで毎日昼休みにお弁当を分けてもらうことで距離を縮めていった意識があったから
個別ルートでそのあたりの話題が出てこない、なかったかのような扱いをされたのは悲しかった。
彼女のシナリオに対する感想は萌とほぼ同じ。
蜜月期間が長いのに対して、話が動き出してから結末までが短すぎる。
当たり前のようにあったものが突然なくなるなんて並大抵のショックじゃないのに
起承転結のバランスが悪いせいで、あれだけで終わっていいのかなぁ…と、納得のいかないものを覚えてしまう。
あの立ち絵演出は静かな恐怖を表現出来ていただけに、もっとこの欝パートを引き伸ばして欲しかった。
また、一枚絵の表示場所もちょっとずれていました。
エピローグのラスト「よく出来ました」で晴れやかな笑顔を表示させた方が、綺麗に終われたと思います。■朝倉音夢 (CV:鳥居花音)
幼い頃に朝倉家に引き取られた義理の妹。主人公とは同い年でクラスメイト。
学校ではしっかり者の優等生で通っており、傍目から見たら「ずぼらな兄とよく出来た妹」の図そのまま。
兄に対する想いが強い反面、嫉妬深くもあり、主人公が他の女の子と親しくするのを目にすると、途端に不機嫌になる。
いまや大定番となった妹キャラ。
ギャルゲーをプレイする人ならお馴染みの属性ですが、私にとっては初の「恋愛対象の妹」だったりします。
いざ攻略してみると、ここまで妹キャラが浸透したのも当然のことだと思えます。
それぐらい、この妹キャラというのは利便性の高い属性だと分かりました。
他人だったら恋人にしか行えないことを、異性としての答えを出さないまま、享受することが出来る。
いきなり抱きついてくるのも、指輪を欲しがるのも、自分の匂いが残るシャツをパジャマとして着るのも
それが他人の異性だったら意味が生じてしまう。
どれだけ鈍感な人間だって、自分への特別な感情がある上での行為だと気づくし、無下に扱うわけにもいかない。
でも、妹だったら、“妹だから”の四文字で面倒くさいことが棚上げされてしまう。
ついでに主人公のことを好きな理由も同じ四文字で片付くし。
便利属性幼なじみの更なる上をいく、進化した幼なじみが妹キャラだったんですね。
今更な結論だろうけど、なぜこれほど人気があるのか、その理由が理解出来てすっきりしました。
(同時に女向けの兄キャラの人気がいまひとつな理由も分かったし)
話が妹論になっているので、音夢個人の感想に戻りますが
音夢が何かしらの萌え要素を見せてくれても、上記に書いたように、妹キャラの利便性を再確認させられるばかりで
個人的には可愛いとかそういう風に思えたことは特になかったですね。
それどころか、眞子をはじめとする別ルートでの嫉妬深さにちょっと怖くなったぐらい。
これは音夢が悪いというよりも、嫉妬した音夢にいちいち怯えたり
音夢のご機嫌伺いをするかのような主人公の態度に原因があるんですけどね…。
それでこの嫉妬深さ、ライター側としても扱いにくかったのか、半分のルートで音夢は途中退場させられます。
同じ家に住む妹である以上、他のキャラのように「気づけばいなくなってた」なんて退場のさせ方は無理があるし
登場させ続ければ、音夢をもてあますのは分かりきっている。もう、理由つけて追いやるしかないな。
そんな面倒くさがったライターの心情が聞こえてくるほど、ぞんざいに扱われているんですよ。
音夢が退場する=島を出て行く理由もあることはあるんですが(人によってはその行動が健気に映るかも)
それを分かった上で見ても、厄介払いしているという印象は拭えませんでした。
別ルートでの扱いがいい加減でも、当人ルートで真価を発揮しているならいいんですが
この音夢ルートというのが、あの眞子ルートを下回るほど酷いものだった。
音夢クリア時点でまだ3つのルートが残っていたけれど、これ以上プレイをするのはやめようと本気で思ったぐらいですからね。
機会があったらやってみようという気になっていた続編や乙女ゲーに対する興味も、夢音クリア後には綺麗さっぱり吹き飛んでいたし。
眞子のように最初から試合を放棄したかのような投げっぷりじゃなくて
尺や選択肢など別ルートよりも力を入れていることが分かって、ダラダラと長くやらされる分、救いがない。
退屈な授業のとき、時計ばかりを何度も見て残り時間を計ったりするけれど、音夢ルートはまさにその状態だった。
シーン回想からラストシーンが4月29日だと分かっていたので
早く29日こないかな、もうちょっと29日だからあと少しの辛抱…と、そんな風に自分を励ましていましたよ。
桜が体からこぼれる奇病にかかる、それを治す代償として恋人だった記憶を消さなければいけないとか
設定だけが先行していて、演出、構成、テキストの腕が追いついていない。
正直な話、話が面白ければ、桜を吐き出す理由自体に説得力や根拠はなくてもいいんです。
でも実際はさくらの説明が淡々とされるだけで、盛り上がりも何もあったもんじゃない。
そのせいで設定が重いのに反して、終始あっさりしている。
グラフィック演出もダメですね。
桜に埋もれている音夢を目撃したときすら専用グラフィックを用意しない。
なぜ、こういう重要なシーンを暗転だけで済ませてしまうんでしょうか。
エピローグでは音夢が死んだかのような演出をしているけど、このときにはもう音夢の生死なんてどうでもよくなっていました。
キャラの死というのはやはりある程度の衝撃は受けてしまうもので
もし同じことが共通ルートや個別ルート序盤で起きていたら、何らかのショックは受けていたはずです。
(それが呆れや驚愕の方が強かったとしても)
でも、実際には何の感情も沸いてこなかった。
つまりそれだけ、退屈なシナリオが音夢に対する思い入れをかき消してしまったということです。■芳乃さくら (CV:北都南)
主人公の隣の家に住んでいた同じ年のいとこで、主人公のことを“お兄ちゃん”と呼ぶ。
6年ぶりに主人公の前に現れるが、なぜかその姿は6年前と同じ。
昔から主人公に恋心を抱いており、人目も気にせず迫ってくるが
見た目が小学生ゆえに、周囲からは微笑ましい目で見られている。
他ルートで明かされなかった枯れない桜の秘密が明かされる“解答編”かと思いきや、実はそうじゃない。
枯れない桜誕生の経緯は判明しますが、分かるのはそれぐらいとも言えて
他(特に音夢)ルートのフォローを期待すると肩透かしを食らうかもしれません。
さくらの最大の問題点は別キャラルートにおける存在感の希薄さ。
他ルートでの音夢の扱いもどうかと思いましたが、さくらの場合は、おざなり以前に登場すらしません。
「お兄ちゃん大好き」を絵に描いたような積極的に好意をぶつけてくるキャラのはずなのに
共通・個別ルートともに、別キャラ狙いのときは姿を見せなくなります。
想い人に好きな人が出来たら、自分の想いを抑えて姿を現さなくなる…
そんな大人の一面を見せたくてこういう仕様にしたとは到底思えませんが
仮にそうであったとしても、この空気読みすぎとも言える仕様は失敗だったと言わざるを得ません。
さくらというキャラは、小さな外見とは裏腹に「願ったことがすべて叶ってしまう」大層な設定を持っていますが
これだけ重い設定を与えるなら、さくら狙い以外のユーザーから、さくらうざいと言われる危険を冒してでも
各ルートでさくらを登場させて、さくらの抱えている苦悩を垣間見せる構成にするぐらいでないと
その設定の効果は表れないのでは?
しかもこのさくらルート、いろんな要素(ロリ、教師、いじめ、三角関係・修羅場)を詰め込みすぎた上に
次々とシーンが切り替わるから、盛り上がりが持続しません。
音夢からいきなりキスされる冒頭は引き付けられたのに、その音夢との三角関係だって大して絡みませんし
異分子に対する排他的な空気といったドロドロした要素もあっさり片付けられてしまう…。
ひとつとして踏み込まれて描かれていない。
書いてる側としては、それらは全部「願いがすべて叶う」設定に集約させているつもりかもしれないけれど
プレイする側としては、ここまでいろんな要素に手を出す必要があったとは思えませんでした。■天枷美晴 (CV:春野日和)
朝倉兄妹を慕っている後輩。主人公とも親しいが、特に音夢に懐いている。
ドジで慌て者ながら、一生懸命で裏表がない性格から、誰からも好感を持たれるタイプ。
ロボットだということは知っていましたが、よくある「実はロボット」オチだとばかり思い込んでいました。
まさか共通ルートでは人間なのに、個別ルートに入った途端にロボットに入れ替わる展開だとはね…。
美晴の共通ルートイベントは、マップ移動で発生するものがひとつ、あとは登校時に何度か遭遇するだけという少なさです。
また、全ヒロインを攻略しないと専用ルートが開きません。
攻略するまでは、イベントがやたらに少ないことや攻略制限がついていることを不思議に思っていたのですが
美晴ルート=美晴の替え玉であるロボットルートだと知ると
イベントが少ないことも、攻略制限がついていたことも頷けるようになります。
共通ルートで人間の美晴イベントをたくさん用意してしまうと、人間の方を攻略したかったと言われる
→だからほとんど登場しない
美晴ロボット(以下美晴´)ルートをすんなり読み進めるためには、人間の美晴がどんな性格か知っておく必要がある
→美晴がサブキャラとして登場する、音夢やさくらルートをプレイさせることで基礎知識を植えつける
これらの前提が必要だったわけですね。
狙っていたキャラとは別人がヒロインになってしまうという、珍しい展開を見せる話ですが
ロボットが相手役にも関わらず、ロボット=人の心を持つのかという普遍的なテーマを持ってこなくて
代用品として生まれた存在に焦点を当てたことはさらに珍しいと思いました。
だから極端な話、これがクローンとか双子の妹とか影武者とかでも成立しなくもない話になっています。
ロボットだからといって、必ずしも前述したテーマにする必要はありませんし、いい切り口だと思いますけどね。
シナリオ内容も、暗くジメジメとした雰囲気になってしまいそうな設定でありながら
美晴´の性格で、さわやかでほのぼのとした恋物語に仕上がっています。
だから中盤までは、一生懸命に本物に近づこうとする女の子と、それをサポートする少年の恋愛模様を
温かい目で見守っていたという感じだったんですが…まとめ方がちょっと頂けなかったです。
私としてはあのタイムカプセルを掘り起こす部分は蛇足にしか思えませんでした。
美晴とのタイムカプセルは、美晴´ルートに入らない限りは掘り起こされることはなかっただろうから
美晴が出来なかったことを代わりに美晴´が叶えてくれたという見方も出来るけれど
美晴のタイムカプセルは、美晴本人が一緒に掘り起こすからこそ意味があるという考えから抜け出せないんです。
それまで美晴´は美晴´であって、美晴じゃない的なことを主張し続けていたからこそ
美晴´が掘り起こしちゃってよかったのかと引っかかる。
「思い出探しという行為自体が思い出になった」で留めておいてもらいかった。
暦先生が都合のいいサブキャラの典型にしかなっていないのも残念。
この人の美晴へのスタンスとかロボット工学に関する気持ちを改めて語らせるだけでも
随分と話に厚みが増すと思うのに…こういうところで浅いなと感じてしまう。
それと、タイトル画面で流れる曲は、美晴ルートで初めて耳にする作りの方がよかったと思います。
使われるにしても、あくまで美晴クリア後という条件付とかね。
タイトル画面のデフォルト曲として聞き慣れてしまったせいで、キー曲としての効き目が薄まっていました。■鷺澤頼子 (CV:草柳順子)
「この家でメイドとして働かせて欲しい」と主人公に申し出てきた少女。
猫耳を生やし、メイド服を着ていて、自分のことは語ろうとしないなど、すべてが謎に包まれている。
名前が行方不明になっている猫と同じなこと、そして猫耳を生やしていることから
主人公は「猫の恩返し」ではないかと疑っている。
いまどき珍しいぐらい隠されている隠しキャラです。
アニメで存在を知っていたものの、公式サイトでも説明書でも触れられていなかったので
セーブアイコンで頼子らしきキャラを目にするまでは、アニメ版オリジナルのキャラだったと勘違いしていました。
最近は「サブキャラかと思ったら攻略出来た」なんてキャラまでが隠しキャラ扱いされることに違和感が覚えていただけに
彼女の隠しっぷりには、これぞ隠しキャラと妙に嬉しくなりました。
やっぱり、実際にプレイするまでは立ち絵すら分からないような扱いをしてくれないと、「隠しキャラ」と呼ぶには値しません。
シナリオはシンプルでストレート。現代のおとぎ話として、最初から最後まで素直に楽しめました。
導入部も杉並との軽妙なやり取りで結構引き付けられるし
肝である頼子の変化と成長、近づいていくプロセスもきちんと描かれています。
珍しく主人公が進んで動いていたのも好印象ですね。
主人公がヒロインのために行動を起こし、それがヒロインに変化をもたらしたのは、このルートぐらいだと思う。
このルートひとつで他ルートに目を瞑れるようになったりはしませんでしたが
最後に頼子ルートをクリアしたことで、わりと上向きな印象で終われたのも事実です。
深夜たまたま目にしたマイナー映画が、思いのほかよくてラッキーとか、そんな感覚に近いかな。
キャラ的にも、グラフィック、内面ともに満足いくものでした。
猫耳属性なんてこれっぽっちもなかったのに、猫耳の魔力に囚われている自分がそこにいました。
猫耳の位置だけが変わる差分立ち絵が連続で表示されると、まるで猫耳が動いたかのように見えるんですが、これがたまらない。
人間の耳なんて動きようもないから(仮に動かされても気味悪いだけだけど)動くことの魅力は獣耳だけの特典ってわけですね。
静止画の猫耳には魅力を感じないけれど、「動き」にあってこそだというなら、よく分かります。
メイド服もフリフリしすぎていないし、主人公の服を借りた白シャツとジーンズ姿も私好みでした。
ただ、私服のときのリボンは余計。
ヘアバンドのように結んでいる状態ならまだしも、額に乗せただけだから、そこばかり目がいってしまう。
全体的に現実ではありえない髪型や服装といったものがそれほど見られないゲームだっただけに
この頼子のリボンだけは浮いていて残念でした。
あと、二人でピクニックに行った際、頼子側から膝枕を持ち出してきたのを見たときは
このルートですら例のアレは避けられないのか…と本当にがっかりしました。
頼子ルートでは、当初は喋ることすらも精一杯というキャラが相手だけに、どうしても主人公側が歩み寄っていく必要があり
そのあたりが他キャラルートと異なっていて気に入っていたんですよ。
それだけに、頼子ですら「大事なところは女の子側から」というD.C.の法則から外れることがないのか…と落胆してしまったんです。
□総合評価
男性向け恋愛シミュレーションゲームの公約数を寄せ集めた、ギャルゲーの標本とも呼べる作品。
作っている側自身にも何か新しいことをやろうという気は毛頭なくて
様式美とされるお約束、2002年当時に同ジャンルで流行ったものを取り入れ、反対にユーザーを限定する要素は切り捨てた、
反発を招かない無難に受けるものという趣旨で作られたのが、このD.C.じゃないかと思います。
恋愛ゲームというのは、単純によく出来た作品だから人気が出るというわけではなくて
プレイヤーにとっての不快要素がどれぐらいあるかが評価に大きな影響を及ぼすジャンルです。
例えば主人公の親友の出番が非常に多くて、その親友が過半数の攻略対象と結ばれる展開が用意されている場合
そのゲームの購入を検討している相手に対して真っ先に教えることは、親友に関することになりがちです。
盲目的なファンでもない限り、親友の件に関しては「注意書き」のような形ですすめるものではないでしょうか。
ところがこのD.C.ではそういった前置きが必要ない。
多数のユーザーからは嫌がられるような要素が排除されているから、すすめる側としてはとても楽な作品。
しかし、無難に遊べるゲームというのは、そのゲームでなければいけない決め手もない。
先人を追随し、毒にも薬にもならず、話題に上ることがないまま埋もれていった数々の凡作…
そういった扱いしかされない平均的なギャルゲー以上の感想を持てなかった。
このゲームで最も優れた部分は、甘酸っぱい、甘く切ない…そういった手垢がつきまくった単語ではなくて
こそばゆいという言葉をジャンル名に使ったことだと思います。
ジャンル名通りのこそばゆさを満喫出来るかと聞かれたら私は否定しますけど
人によって抱いているイメージが異なる単語だけに、こそばゆさなんてロクになかったとか、そういった否定の仕方は出来ない。
そういう意味においても、上手いキーワードを持ってきたものです。2009年09月11日
加筆 2009年09月28日